透析療法が著効したリチウム中毒の1例 徳之島徳洲会病院 中嶋駿介 山本朋納 藤郷秀樹 小野隆司 【はじめに】リチウム製剤は治療域と中毒域の差が小さく、容易に中毒を来しやすいので 注意が必要な薬剤である。今回我々は、慢性的にリチウム製剤を服用していた患者におい て発症したリチウム中毒に対して血液透析が有効であった1例を経験したので文献的考察 を加えて報告する。 【症例】50 歳代女性。30 年以上前から躁うつ病にて近医精神科に通院し、入退院を繰り返 していた。来院 10 日前から下肢の脱力を自覚し、ふらついて転倒するようになった。脱力 が憎悪し、同院に入院したところ血中リチウム濃度が 2.56mEq/L と中毒域であったため、 内服を減量して対応していたが、意識障害が出現し、舌根沈下・眼球上転がみられたため、 全身管理目的に当院に転院搬送となった。 当院入院後は補液にて対応し、意識状態および神経学的所見は徐々に改善していったが、 尿量の増加が止まらず、それとともに血清 Na 値も上昇していった。補液に対する反応も悪 く、電解質異常のコントロールがつかなくなったため入院 5 日目および 7 日目に血液透析 を施行した。その後電解質異常はコントロールされ、特に後遺症もなく退院となった。 【総括】 治療目的に長期間リチウムを服用している患者において発症するリチウム中毒は、大量 服薬において発症するリチウム中毒より重症で難治性であるため、より積極的な治療が必 要となる。しかし、離島においてはリチウムの血中濃度が判明するまでに相当の時間を要 するために、血中濃度が判明する前に治療を始めることが求められる。このためより重症 度を上げた積極的な対応をすることが必要となる。
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