1 岡山大学「ものづくり講座」 QCサークルと人材育成 2015 2015年6月17日 17日 トヨタ自動車(株)古谷健夫 <目次> 0.前回の振り返り 1.仕事の意義・目的 2.コミュニケーション 3.QCサークル活動 4.リーダーの役割 5.まとめ 前回の振り返り 1. “質創造”マネジメント(経営)の目指す姿 ・一人ひとりの品質意識の向上 ・ばらつき・変化への的確な対応(品質保証) ・お客様の期待に応える新たな価値の創造(価値創造) 2.TQM(Total 2.TQM(Total Quality Management)は、経営の道具 Management)は、経営の道具 ・「風土づくり」「日常管理(SDCA)」「方針管理(PDCA)」 3.問題解決を実践した数だけ、経営目標の達成に近づく 4.一人ひとりがお客様の要望・期待に応えて、 SDCA・PDCAを回すことが極めて重要 品質管理とはマネジメントそのもの、日本の持続的な成長に貢献 1.仕事の意義・目的 「真実の瞬間」(ヤン・カールソン著) より “完成した暁の大聖堂の全容を思い描くことができてしか もその建設工事の一翼を担っている石工は、ただ目前 の花崗岩をみつめてうんざりしている石工よりはるかに 満足しているし生産的だ。真のビジネスリーダーとは大 聖堂を設計し人々にその完成予想図を示して建設の意 欲を鼓舞する人間のことである。” 1.仕事の意義・目的 使命・ビジョン(目指す姿)の例 NASA( (National Aeronautics and Space Administration) ) ケネディ大統領のビジョン(目指す姿): President Kennedy's bold challenge set the nation on a journey unlike any before in human history--a journey to land on the moon (ケネディ大統領の大胆な挑戦は、月への上陸という人類史上初めての旅に米国を導いた) 現在の使命: 現在の使命: To reach for new heights and reveal the unknown so that what we do and learn will benefit all humankind (未知なるものを解明し、新たなレベルへ到達することで全人類に恩恵をもたらす) 1.仕事の意義・目的 仕事の意義・目的の共有 ばらつき・ 変化への 的確なななな対応 使命の決定 ・お客様は誰ですか? ・お客様にどのような価値を提供しますか? 職場のビジョン(目指す姿)の決定 アウトプットの決定 ・お客様に提供するモノ・サービスは何ですか? お客様の期待に応える お客様の期待に応える 新たな価値の創造 新たな価値の創造 アウトプットのお客様評価を常にモニター 1.仕事の意義・目的 “We Are Ladies and Gentlemen Serving Ladies and Gentlemen” (紳士淑女にお仕えする我々も紳士淑女です) お客様に満足(Customer お客様に満足(Customer Satisfaction) していただくためには 従業員自身が心から満足(Employee 従業員自身が心から満足(Employee Satisfaction) していなければならない 2.コミュニケーション コミュニケーションの意義・重要性 コミュニケーションの意義・重要性 人間の2大宿命 ・人はモノを生産しなければ生きていけない ・人は群れていなければ生きていけない (人は一人では生きていけない) 家族・団体・会社・組などの 共通の目的を持った組織が誕生 一人ひとりの意思の疎通が必要不可欠 = コミュニケーションの重要性 2.コミュニケーション コミュニケーションの問題 川島冽著 川島冽著 「コミュニケーション力(すばる舎)」P40 「コミュニケーション力(すばる舎)」P4040-41より 41より 送り手の伝えたい情報が受け手の行動に反映されるもの 6% 送り手が伝えたい情報のすべて 100% 伝えたい情報が記号化できるもの 80% 受け手の理解 50% 理解した情報をもとに実際に行動に移してくれるもの 15% ある会社の役員会議で決裁事項の主旨が正確に伝わった割合 (追跡調査結果) ⇒ 副社長 67%、 部長 56% 課長 40%、 係長 30%、 一般 20% 2.コミュニケーション ・問題なのは、 問題なのは、 問題があることでなく、 それを隠し、そのまま潜在化させておくことである それを隠し、そのまま潜在化させておくことである (電気通信大学 鈴木和幸先生) 異常が発見されたら放っておかず、 素早い対応・迅速な解決を! コミュニケーションが取れるオープンな 職場風土づくりを!! 2.コミュニケーション 正直にものが言える職場の雰囲気 事実/関連のある情報を正直に報告 管理者が叱る・怒る 「しまった。本当のことを正直に報告して損をした」という感覚 事実を隠したり、ごまかしたりする陰険な職場雰囲気の創造 不良の捕捉や異常の発見ができず、 根本的不良対策が進まない 本人が「しまった」と反省しているにもかかわらず、追い 討ちをかけることは、会社にとっても大きな損失 2.コミュニケーション 異常の気付き・共有に関する問題点 Q:メンバーとリーダーは毎日話し合っていますか? 1回未満/週 1% 3回以上/日 56% 2~3回/週 8% 不良情報がパソコンの中 (一部の人しか見えない) 1~2回/日 35% 毎日コミュニケーション できていない人がいる! (N=791) 期間従業員も含む 2.コミュニケーション コミュニケーションの機会も少なく また、“目的・意識”が希薄になってきた 「コミュニケーションを取るための しくみ、ツールの再整備が必要」 『“朝市会”“朝礼”等での活性化』 2.コミュニケーション 朝市会の進め方 改善前 <会議体> 小集団活動(1/週) 各組メンバー、 テーマの進捗確認 <活動ボード> 不良数の集約、小集団活動進捗表 改善後 <会議体> 朝礼(1/日) 各組メンバー、 昨日の不良発生状況を確認 朝市(1/ 朝市(1/日) 課長・職制・スタッフ・品管・生技 日々の不良発生状況の共有化、問題点の洗い出しと検討 対策会議(1/週) 関係者、 対策の進捗確認 <朝市ボード 朝市ボード> 朝市ボード 不良数の集約、不良品の展示、問題点と対策状況の見える化マップ 2.コミュニケーション 朝市会の効果 ・不良率が低減 ・品質意識向上 その日の結果に一喜一憂(関心を持ちはじめる) 改善意欲の向上(あきらめずに改善継続) 朝市会スタート 不良率(%) <有形> <無形> 07 4 5 平均 /08 6 7 8 9 10 11 12 1 2 /09 3 4 5 6 2.コミュニケーション 異常へ 異常へ気づき( づき(感性) 感性) 異常とは 不良ではないが、“ いつもと違う ”こと どこかの部分が通常でなくなってきたこと ① 管理項目にある異常 → 比較的検知が容易 ② 管理項目にない異常 → “ 感性 ”による気づき ⇒ 作業者が製品や設備に関して 「おや、いつもと違うぞ」といった感じを おや、いつもと違うぞ」といった感じを 異常として報告してもらうことが極めて重要 3.QCサークル活動 風土づくりにおけるQCサークル活動の意義について QCサークル活動のねらい QCサークル活動の基本理念 1.人間の能力を発揮 1.人間の能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。 能力を発揮し、無限の可能性を引き出す。 2.人間性を尊重して、生きがいのある 明るい職場をつくる。 明るい職場をつくる。 3.企業の体質改善・発展に寄与する。 「TQCとQCサークル活動を推進し、人間の成長、 楽しい職場づくり、企業の発展をはかり、楽しい豊か な日本をそして世界をつくっていきましょう。」 (石川馨先生) 「QCサークル活動25年史(1987年)」より 年)」より 「QCサークル活動25年史( 3.QCサークル活動 問題解決の取り組み方法(活動例) 活動の種類 (例) 活動の リーダー 対象とする問題 活動の目的 会合の頻度 (例) ① プ ロ ジ ェ ク ト 役員 役員・ ・ 管理者、 管理者 、会社( 会社 ( 部門) 部門 ) 方針 方針の確実な 月1~2回 活動 監督者 に 取 り 上 げ た 問 達成 題 ( 組織としての 重要な問題) 重要な問題) 問題解決によ る目標達成と リーダーおよび メンバーの能 力向上 月2~4回 管理・ 管理 ・ 監督者 の支援が必 要(OJT) OJT) ③ QCサークル 最 小 単 位 の メンバーにとって 一 人 ひ と り の 活動 組 織 の リ ー 身近な問題 能力向上と明 ダー るい職場づくり 月2回程度 管理・ 管理・ 監督者 の支援が必 要(OJT) OJT) ② 小集団活動 職 場 第 一 線 職場で慢性的に のリーダーも 発 生 ( 再 発 ) し て し く は そ の 一 いる問題 歩手前のメン バー 3.QCサークル活動 トヨタのQC トヨタのQCサークル活動の変遷 QCサークル活動の変遷 1.QCサークル活動導入期(1962~) ・1962年 ・1964年 ・1965年 QCミーティングをスタート (工・組・班長と技術員主体) QCサークル活動スタート(リーダー:工長) デミング賞受賞 2.不良撲滅運動展開期(1967~) ・1967年 ・1970年 QCサークル活動を不良撲滅一本に絞った活動に変更 日本品質管理賞受賞 3.活動テーマ拡大期(1974~) ・1974年 QCサークル活動再スタート、QCサークル活動推進委員会を設置 ・1975年 QCサークル活動要綱の見直し ・1980年 トヨタ賞創設(QCサークル社内最高位賞) ・1991年 QCサークル活動を業務と認定、トヨタのQCサークル活動のねらいを制定 4.NEW QCサークル活動展開期 (1993~) ・1993年 NEW QCサークル活動スタート ・1995年 TQMと名称変更 (旧 TQC:1961年導入) 5.G-QCC(グローバルQCサークル)活動展開期 (2004~) 3.QCサークル活動 推進組織 3.QCサークル活動 サークルレベル把握 Y軸:明るく働きがいのある職場 X軸:サークルの能力 3.QCサークル活動 QCサークル活動における管理者の役割 ①「期待」を示す サークル活動を「方針」 「方針」に取り上げる 「方針」 サークルに「大きな夢」 「大きな夢」や「高い目標」 「大きな夢」 「高い目標」を与える 「高い目標」 サークルに「やれる自信」 「やれる自信」を持たせる 「やれる自信」 ②「関心」を示す テーマの「進捗」 「進捗」を気にかける 「進捗」 サークルからの「テーマ」 「テーマ」に関する相談は優先する 「テーマ」 会合に「差し入れ」 「差し入れ」を持参して顔を出す 「差し入れ」 3.QCサークル活動 ③「支援」する サークルに「考え方・進め方」 「考え方・進め方」のアドバイスをする 「考え方・進め方」 サークルに不足する「リソーセス」 「リソーセス」を提供する 「リソーセス」 サークルに「技術的」 「技術的」なアドバイスをする 「技術的」 ④「感謝」する 目標達成に向けた「がんばり」 「がんばり」に感謝する 「がんばり」 発表資料の作成と「自分への報告」 「自分への報告」に感謝する 「自分への報告」 職場の「活力」 「活力」を上げてくれたことに感謝する 「活力」 3.QCサークル活動 クルト・レヴィン(社会心理学者)の実験(1939 クルト・レヴィン(社会心理学者)の実験(1939年) 1939年) 「社会的葛藤の解決」(昭和29 社会的葛藤の解決」(昭和29年発刊) 29年発刊) 2つの児童のグループ ①民主的な教師 ②専制的な教師 リーダーの醸し出す雰囲気と それに基づく「思考および生活の様式」 友好的な関係 敵対的な関係 児童たちの関係を支配 B=f B=f(P・E) クルト・レヴィンの式 B:Behavior 個人の行動パターン B:Behavior P:Personality 個人の資質(価値観・信念) P:Personality E:Environment E:Environment 個人の置かれた環境 *ある環境におけるある人の行動には関係性(意味)がある ⇒究極的に人を動かすものは組織の風土・文化 それをつくるのが部門長である 4.リーダーの役割 PDCA・ PDCA・SDCAを回すためのリーダーの役割 SDCAを回すためのリーダーの役割 (1)カスタマーファースト(お客様第一)の徹底 お客様に提供する価値の最大化 (2)ビジョンの明示 目指す姿の明確化と共有 意識の高揚 使命・役割の明確化 (3)コミュニケーションが取れるオープンな組織風土づくり Bad News Firstが実践できる組織 5.まとめ ①“品質” とは “ばらつく” もの、“変化”するもの “品質管理”とは“ばらつき”“変化”との戦い” →マネジメントそのもの ②“質創造”= 価値創造 + 品質保証 → 「(お客様の)評価尺度」 「要因(4M)」によって生じる 「要因(4M)」によって生じる “ばらつき”“ ばらつき”“変化”への的確な対応 ”“変化”への的確な対応が 変化”への的確な対応が “質創造”マネジメントの本質 ③TQM(道具)の正しい理解と活用および確実な伝承が必要 →「問題解決」「風土づくり」「日常管理」「方針管理」 ④コミュニケーションが取れるオープンな職場風土づくりが極めて重要 → 品質意識の向上(異常への気づき、等) ⑤リーダーの3つのキーワード →「カスタマー」「ビジョン」「コミュニケーション」 5.まとめ 自分で考え、やってみる 個人の能力向上と成長を実感 JOY OF WORK 職場の活性化・意識改革(風土づくり) 工程で造りこむ お客様の期待に応える お客様の期待に応える 新たな価値の創造 新たな価値の創造 (価値創造:PDCA)) 異常への気づき ばらつき・変化への ばらつき・変化への 的確な対応 (品質保証:SDCA) “質創造”マネジメント ⇒ 会社・組織の持続的な成長 5.まとめ 問題解決(改善)の種は無限 ①人間の能力が絶えず向上 (呉下の阿蒙にあらず) ②状況が変わってくる 「標準なくして改善なし」 (とりまく環境が変化) 「改善なきところ革新なし」 風土づくり・SDCA・PDCAに 「終わり」 はありません
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