1 岡山大学「ものづくり講座」 品質管理(2) 2015 2015年6月10日 10日 トヨタ自動車(株)古谷健夫 <目 次> 0.前回の振り返り 1.品質管理の歴史 2.“質創造”マネジメント 3.トヨタ自動車の歩み 4.これからの品質~日本の成長のために~ 5.まとめ 0.前回の振り返り 1.品質とは「もののよしあし・ねうち」、お客様が決める 2.品質とは「ばらつく」もの、「変化」するもの 3.品質管理とは、「要因」「評価尺度」に生じる 「ばらつき」「変化」との終わりのない戦い! 4.「異常」への気づきが、問題の発見につながる 5.「問題解決」がすべての基本、 ・PDCAサイクルを回すことは仕事そのもの ・問題解決のための道具がQC手法 ・特にQC7つ道具は、「ばらつき」「変化」を誰でも分かるように 表すことができる、極めて重要な道具 問題解決ステップ ⑧⑧⑧⑧ 標準化とととと 管理のののの定着 QC手法の活用 ⑦⑦⑦⑦ 効果確認 ⑥⑥⑥⑥ 実行 ⑤⑤⑤⑤ 対策立案 ④④④④ 要因解析 ③③③③ 目標設定 ②②②② 現状把握 ①①①① 問題のののの明確化 問題の真因を “5なぜ”で徹底追究 現地現物で事実・データに基づいて 問題を絞り込み共有 → → → → → → → A(S) C D P 「演習1:問題解決ー 「演習1:問題解決ー八百屋の親父ー 八百屋の親父ー」 1-① 最近、八百屋の親父の元気がない。売上が減少したからだ。どの ような要因が影響しているのか、自由な発想で、なるべくたくさん 挙げてください。 1-② 売上を増やしていくために、どうすればよいのか、これも自由な発 想で、なるべくたくさん挙げてください。 [影響を及ぼしていると考えられる要因] 影響を及ぼしていると考えられる要因] [売上を増やしていくためにすべきこと] 売上を増やしていくためにすべきこと] 1.品質管理の歴史 品質管理(マネジメント)の歴史 F.W.Taylor: F.W.Taylor: テイラー(米:1856 テイラー(米:18561856-1915) 1915) 科学的管理法:作業の 科学的管理法:作業の標準化 :作業の標準化、生産現場に 標準化、生産現場に管理の概念 、生産現場に管理の概念を確立 管理の概念を確立 Hawthorne effect : ホーソン実験(米:1924 ホーソン実験(米:19241924-1932) 1932) 行動科学: 行動科学:人間関係論、インフォーマル組織、仲間意識、 人間関係論、インフォーマル組織、仲間意識、 R.A.Fisher :フィッシャー(英:1890 :フィッシャー(英:18901890-1962) 1962) 統計学:穀物量の変動に関する研究、分散分析 分散分析、実験計画法、 実験計画法、 統計学:穀物量の変動に関する研究、分散分析、 W.A.Shewhart: W.A.Shewhart: シューハート(米:1891 シューハート(米:18911891-1967) 1967) 統計的品質管理(SQC):管理図 統計的品質管理(SQC):管理図、 管理図、正常・異常の区別、 正常・異常の区別、 W.E.Deming :デミング博士(米:1900 :デミング博士(米:19001900-1993) 1993) 品質経営(TQC・TQM)、デミングサイクル、デミング賞、 品質経営(TQC・TQM)、デミングサイクル、デミング賞、 田口メソッド、品質工学、 田口玄一博士(日:1924 ):田口メソッド 田口メソッド 、品質工学、 田口玄一博士(日:19241924-2012 ): ⇒ ばらつきの定量化、見える化の歴史 経営とばらつきの概念の融合 1.品質管理の歴史 品質管理(マネジメント)の歴史 ーなぜ日本では「品質」が「製品品質・製造業」だけなのか?ー 日 本 米 国 科学的管理法 QC 戦後復興期 デミング賞 (デミング博士) 統計学 SQC マーケティング 行動科学 戦略理論 競争力低下 1980年代 1980年代 日本の繁栄 JIT 改善 1980年代 TQC 系 列 チームワーク QCサークル 全員参加 マルコムボルドリッジ 国家品質賞 ISO9001 マネジメントの 仕組みの再構築 TQM 1990年代後半 1990年代後半 田口メソッド 日本経営品質賞 クォリティ重視のマネジメント の仕組み(体系) “質創造”マネジメント 競争力回復 1.品質管理の歴史 デミング博士の教え W.E.DEMING 1952.4.19 小柳賢一訳 「統計的品質管理の基礎理論と応用」 旧式の方法 1 2 設計 製造 3 販売(の努力) つながっていない 新式の方法 1 5 4 3 2 1.製品の設計 2.製造 3.市場に出す 4.市場調査 5.製品の再設計 この円の回転は転々として とどまるところがない 1.品質管理の歴史 デミングサイクル 石川馨著 「第3版 品質管理入門(日科技連出版社)」P31より 再設計 調査 サービス 企画 設計 進歩 販売 生産 品質に対する関心 2.“質創造”マネジメント “質創造”マネジメント(経営)の目指す姿 『企業活動の原点は顧客創造です。顧客創造のためには新たな顧客価値の創造 『企業活動の原点は顧客創造です。顧客創造のためには新たな顧客価値の創造とその 新たな顧客価値の創造とその 顧客価値を損なわない創造的保証活動 顧客価値を損なわない創造的保証活動が必要です。それらを総合して 保証活動が必要です。それらを総合して質創造 が必要です。それらを総合して質創造と云おう 質創造と云おう という提案です。』 (2004年 2004年11月 11月 元(株)デンソー会長 故高橋朗氏 高橋朗氏 デミング賞本賞記念講演より) デミング賞本賞記念講演より) 2.“質創造”マネジメント TQM = “質創造”マネジメントの道具 “TQM”の全体像 改善・革新活動 “お客様の期待に応える “お客様の期待に応える 新たな価値の創造” 新たな価値の創造” 方針管理 (PDCA) PDCA) 維持向上活動 “ばらつき・変化への的確な対応” ばらつき・変化への的確な対応” 日常管理 (SDCA) SDCA) “一人ひとりの品質意識 “一人ひとりの品質意識の向上” 品質意識の向上” 風土づくり 会社の持続的な成長 問題解決 (QC的ものの見方・考え方) 2.“質創造”マネジメント 日常管理(SDCA) 維持向上活動 方針管理(PDCA) 改善・革新活動 Plan Standardize Do Act Check Do Act Check 2.“質創造”マネジメント SDCAとPDCAの関係 いつもの状態 問題解決 S:標準化 (Standardize) (PDCAサイクル) 新規・再発・慢性問題 A:是正処置 (Act) 問題発見 D:遵守 (Do) (SDCAサイクル) いつもと違う! C:異常への気づき (Check) 日常管理( 日常管理(SDCA 管理(SDCA)のサイクル SDCA)のサイクル(コミュニケーションが全ての基本) 現場力 =“やるべきことをきっちり実施できる能力” 2.“質創造”マネジメント 日常管理(維持向上)と方針管理(改善・革新) “質創造” P 経営目標・目指す姿 パフォーマンス (((( プロセス及及及及びシステムの成果・・・・ 能力)))) A S A 方針管理 D C D 日常管理 (品質保証) C (革新) P A 方針管理 (価値創造) D C S (改善) A P A D 日常管理 (維持向上) C D 日常管理が不十分な場合 S A C D C 時間 2.“質創造”マネジメント マネジメント体系 3.トヨタ自動車の歩み 品質保証の原点 豊田 佐吉 1. 研究と創造に心をいたし、常に時流に先んずべし。 (豊田綱領より) 2. 充分営業的試験をなし、その成績充分にあがら 充分営業的試験をなし、その成績充分にあがら ざる間は、決して販売すべきものにあらず。 ざる間は、決して販売すべきものにあらず。 (十分な商品テストを行うにあらずんば、真価を世に問うべからず) (発明私記より) 「お客様第一」 「品質第一」 豊田 喜一郎 監査改良の精神 1. 消費者の要望を直接把握し、これを商品に反映する。 2. 製品の品質と業務の運営を監査し、これを改善する。 3.トヨタ自動車の歩み G型自動織機の完成(1924 G型自動織機の完成(1924年) 1924年) 【自働化】 良いモノだけを作る生産システム 異常時には止めて本質的原因追求 品質第一 の原点 G1型トラックで不具合多発(1935 G1型トラックで不具合多発(1935年) 1935年) 喜一郎自ら、客先まで出向いてお詫びし、 車の下に潜り込んで不具合の原因を探る。 お客様第一 の原点 3.トヨタ自動車の歩み アメリカへ輸出開始 クラウン発売(1955 クラウン発売(1955年) 1955年) ★日本で初めての本格的乗用車、国内では好評 長距離を走るアメリカ では不具合多発 新機構サスペンションの 不具合、雨もれ など 「コロナは弱い車」 のイメージ ・注文はすべて キャン セル ・その後、輸出中止 PTPT-20型コロナ発売(1960 20型コロナ発売(1960年) 1960年) ★新しい技術への挑戦、発売当初は高い評価 ・新機構に対する 実車試験が不十分 3.トヨタ自動車の歩み ★人員2倍、生産7倍 ★能率の向上に反し、品質悪化 ・新人の増加と教育の不徹底 ・管理者の能力不足と未熟練 ・部署間の連携の悪さ 14 250 12 人員( 人員(× ×1000 1000人) 人) 車の急速な普及とともに、 会社は急速に発展 人員 200 10 生産台数 8 150 6 100 4 2 50 0 0 1955 56 57 58 59 60 61 年 当時の生産台数・人員の増加 「会社経営のやり方の大幅な見直し」と 「良質で廉価な製品の生産と開発」をねらい、 TQC(Total TQC(Total Quality Control:総合的品質管理)を導入 Control:総合的品質管理)を導入 生産台数( 生産台数(× ×1000 1000台) 台) TQCの導入(1961 TQCの導入(1961年) 1961年) 3.トヨタ自動車の歩み ■ 実施事項と成果 ・全社的な品質保証体制の確立 ・個々の工程できちんと品質を造り込む活動 (自工程完結) ・部門間連携による課題解決や人材育成と職場の活力向上 ・方針管理・日常管理の徹底 ・QCサークル活動の導入 ・1964年:新型コロナの飛躍的成功 ・1964年:新型コロナの飛躍的成功 ・1965年:デミング賞 受賞 3.トヨタ自動車の歩み TQC導入の成果① RTRT-40型コロナの成功 (1964年) 1964年) 指 数 100 ★10万km連続高速走行公開テストを 走破、国内のベストセラーカーに 50 品質不良品・お客様への ご迷惑が半分以下に 0 1960 61 62 63 64 65 66 年 the first Japanese import to be designed for American driving conditions, 3.トヨタ自動車の歩み TQC導入の成果② (本社工場 品質管理実情報告書 1965年11月) (1)品質意識が向上 (1)品質意識が向上した 品質意識が向上した ・品質は工程でつくり込むものであるという意識 品質は工程でつくり込むものであるという意識 (2)原価意識が高まった ・ムダ排除、改善提案が活発に (3)問題意識が高まった (4)標準化が促進 (4)標準化が促進された 標準化が促進された ・改善したらすぐ標準化し、 管理を定着 (5)会社方針が徹底 (5)会社方針が徹底した 会社方針が徹底した 3.トヨタ自動車の歩み TQM(Total TQM(Total Quality Management) Management)(トヨタ自動車(株)の例) お客様第一 ・人と組織の活力向上 ・品質と仕事の質の向上 TQM 絶え間 無い改善 全員参加 TQMの基本的な3つの考え方 組織の全員がそれぞれの立場で ① お客様第一主義に徹し ② QCの基本的考え方を身につけ ③ その実践を通じて 変動に柔軟に対応できる企業体質を強化・向上する 変動に柔軟に対応できる企業体質を強化・向上する 4.これからの品質~日本の成長のために~ 労働生産性の国際比較2010年版 (生産性研究レポートNO.023) 財団法人 日本生産性本部 生産性総合研究センター *主要産業の生産性対米国水準比 製造業 70.6% 電気ガス 61.0% 卸小売 42.4% 飲食宿泊 37.8% 運輸 郵便通信 73.2% 48.4% 金融仲介 87.8% ビジネスサービス 50.8% サービス産業の労働生産性水準は、卸小売で米国の42.4 サービス産業の労働生産性水準は、卸小売で米国の42.4% 42.4%(OECD主要 (OECD主要21 主要21カ国中 21カ国中 第17位/ 17位/2005 位/2005~ 2005~2007年平均 2007年平均) 年平均)、飲食宿泊で同37.8 、飲食宿泊で同37.8% 37.8%(同20カ国中第 20カ国中第15 カ国中第15位 15位)と、米国の 4割程度の生産性水準にとどまった。運輸( 割程度の生産性水準にとどまった。運輸(米国水準比48.4 米国水準比48.4% 48.4%)やビジネスサービス( やビジネスサービス( 同50.8% 50.8%)も米国の半分前後の生産性水準であり、郵便通信( も米国の半分前後の生産性水準であり、郵便通信(米国水準比73.2 米国水準比73.2% 73.2%)な ど一部を除き、サービス産業の生産性は米国を大きく下回り、立ち遅れが目立つ。 4.これからの品質~日本の成長のために~ 問題解決の実践の数だけ、 経営目標の達成に近づいていく 全員で、いかに数多くの、 SDCA・PDCAを回すことが できるか! 4.これからの品質~日本の成長のために~ QC検定について 個人の品質管理に対する意識の向上 組織(企業・学校等)の品質管理レベルの向上 製品品質・サービス品質の向上 品質管理検定制度 参考文献 小野道照・直井知与編著 「品質管理教本-QC検定3級対応-」日本規格協会 5.まとめ まとめ 1. “質創造”マネジメント(経営)の目指す姿 ・一人ひとりの品質意識の向上 ・ばらつき・変化への的確な対応(品質保証) ・お客様の期待に応える新たな価値の創造(価値創造) 2.TQM(Total 2.TQM(Total Quality Management)は、経営の道具 Management)は、経営の道具 ・「風土づくり」「日常管理(SDCA)」「方針管理(PDCA)」 3.問題解決を実践した数だけ、経営目標の達成に近づく 4.一人ひとりがお客様の要望・期待に応えて、 SDCA・PDCAを回すことが極めて重要 品質管理とはマネジメントそのもの、日本の持続的な成長に貢献
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