1 2015 年 5 月 25, 28 日 第 3 章: 情報の経済学(続き) 3.6.勝者の呪い(Winner’s Curse) Common Values:「楽観的な私的情報」 「本来の価値より高い評価」 Common Values を読み込めない「非合理的な」入札者は 落札すると本来の価値より高く払ってしまい 損することになる! 2 例:ローマ帝国帝位競売 ・エドワード・ギボン(18世紀ごろ):「ローマ帝国衰亡史」 ・1世紀ごろ:近衛兵隊が皇帝ペルティナクスを暗殺 ・近衛兵隊が「せり上げ入札」実施:高い給料を保証する人に帝位落札 入札者二人: スルピキアヌス: ユリアヌス: 内部事情を知っている 放蕩老人 ・ユリアヌスに落札:しかし、徴税できず2か月後に打ち首! 3 例:油田採掘権オークション(「勝者の呪い」用語の起源) 油田の価値は入札者間でほぼ共通 しかし、価値(埋蔵量、品質など)を正しく知らない Bidder 1 の私的情報: Bidder 2 の私的情報: Bidder 3 の私的情報: Bidder 4 の私的情報: 1億円 4億円 2億円 5億円 平均が真の価値: 3億円 せり上げ入札で、そのまま指値していくと… Bidder 4 が落札して4億円(二位価格)支払う⇒1億円の損失に ただし、他の人が脱落していくのを読み込む合理的な入札者なら損をしない(?) 4 現実の経済主体は「合理的」か「非合理的」か? 「合理的」な入札者: 勝者の呪いをおそれる。 楽観的な私的情報でも「控えめに」指値 低価格で落札 「非合理的」な入札者: 勝者の呪いを理解してない。「熱狂」してしまう。 価格高騰、勝者の呪い 実験結果(Surveys Kagel (1995), Kagel and Levin (2011) etc) ・勝者の呪いおこる ・経験を積むと合理的に(ただし時間かかる) 現実の統計データ(Hendricks, Porter, and Boudreau (1987) etc) ・油田採掘権オークションにおいて入札者はある程度合理的 (落札企業はプラスの収益をあげている): ・経験者のみの参加、取引内容高額 5 現実には、潜在的に「合理的入札者」と「非合理的入札者」が混在 合理的な入札者は 「ライバルが非合理的かもしれない」と予想 「入札価格が不当に高騰するかもしれない」と予想 最初から入札に参加しない可能性あり ⇒入札参加者は非合理な人ばかりになる ⇒勝者の呪いが深刻化 6 「勝者の呪い」対策の一例 入札参加者を制限: 経験者のみ許可 品質を各人が事前にチェック 築地のマグロせり: 事前に個別にマグロチェック 上場企業株式発行市場: 事前にヒアリング 7 3.7.Information Cascade あるいは Herd Behavior(群集行動) 一部の経済主体の偏った私的情報のみが突出して利用される ⇒ 他の経済主体の私的情報が隠ぺいされた状態が長期継続 ⇒ 不自然な配分や行動の長期化へ 8 例:バブル(Bubbles):Information Cascade による説明 A社の価値について各投資家が私的情報をもっている: ‘Good’ or ‘Bad’? 投資家は A 社株を購入するか? 投資家1の私的情報: GOOD 投資家 2 の私的情報: GOOD 投資家 3 の私的情報: BAD ⇒ ⇒ ⇒ 投資家 4 の私的情報: BAD 投資家 5 の私的情報: BAD 投資家 6 の私的情報: BAD ....................... ....................... ⇒ ⇒ ⇒ 購入 購入 購入 「前の二人は GOOD であろう。 2:1で GOOD だ」 同様に購入 同様に購入 同様に購入 株価高騰 (バブル) いずれは真の情報が明らかに ⇒ “Crash and Crises(金融危機)” 9 例2:有能な(しかしちょっとは問題な)職員は解雇されるか 職員Aの能力について各同僚が私的情報をもっている: ‘Good’ or ‘Bad’ 会社は職員Aを解雇するか 同僚1の私的情報:BAD 同僚 2 の私的情報:BAD 同僚 3 の私的情報:GOOD ⇒ ⇒ ⇒ 同僚 4 の私的情報:GOOD 同僚 5 の私的情報:GOOD 同僚 6 の私的情報:GOOD ....................... ....................... ⇒ ⇒ ⇒ クビ! クビ! クビ! 「前の二人は BAD であろう。 2:1で BAD だ」 同様にクビ! 同様にクビ! 同様にクビ! 職員Aを解雇 (あるいは社内ニート) いずれは真の情報があきらかに(ハラスメント、名誉棄損) 10 その他の例: ネット上の口コミ伝播 風評 調整ゲームとの違いは?: 悪いスタンダードへの移行 ベルリンの壁 11 Information Cascade の解決方法 必要情報が早く流布できるような制度設計 個人の私的情報が当人の行動に反映されることが大事 隣同士コミュニケーションで情報共有が大事 職員の業績評価についてきちんと査定、コンセンサス確立 情報開示のタイミング大事:同時公開
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