第14条3項~17 項(産業廃棄物処理業)

BUNさんと泉先生の廃棄物処理法逐条解説
76
第14条3項~17 項(産業廃棄物処理業)
BUNさん(『土日で入門 廃棄物処理法』の著者)
泉 先生
(廃棄物部門でご活躍の女性弁護士)
<BUNさん>
今回は、産業廃棄物処理業にかかわるいろんな規定です。
まずは条文を見ていきましょう。
(産業廃棄物処理業)
第十四条
3 前項の更新の申請があつた場合において、同項の期間(以下この項及び次項において「許可の
有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の許可は、
許可の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。
4 前項の場合において、許可の更新がされたときは、その許可の有効期間は、従前の許可の有効
期間の満了の日の翌日から起算するものとする。
5 都道府県知事は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同
項の許可をしてはならない。
一
その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足
りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二
申請者が次のいずれにも該当しないこと。
イ 第七条第五項第四号イからトまでのいずれかに該当する者
ロ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号 に規定する暴力団員(以下
この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない
者(以下この号において「暴力団員等」という。)
ハ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのい
ずれかに該当するもの
ニ 法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のある
もの
ホ 個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
ヘ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
6 産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府
県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を処分する場合に限
る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの処分を業として行う者その他環境省令で定め
る者については、この限りでない。
7 前項の許可は、五年を下らない期間であつて当該許可に係る事業の実施に関する能力及び実績
を勘案して政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力
を失う。
8 前項の更新の申請があつた場合において、同項の期間(以下この項及び次項において「許可の
有効期間」という。)の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の許可は、
許可の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する。
9 前項の場合において、許可の更新がされたときは、その許可の有効期間は、従前の許可の有効
期間の満了の日の翌日から起算するものとする。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
1
※無断転載禁止
10 都道府県知事は、第六項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同
項の許可をしてはならない。
一
その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足
りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二
申請者が第五項第二号イからヘまでのいずれにも該当しないこと。
11 第一項又は第六項の許可には、生活環境の保全上必要な条件を付することができる。
12 第一項の許可を受けた者(以下「産業廃棄物収集運搬業者」という。)又は第六項の許可を
受けた者(以下「産業廃棄物処分業者」という。)は、産業廃棄物処理基準に従い、産業廃棄物の
収集若しくは運搬又は処分を行わなければならない。
紹介、掲載した、また、世の中の需要が高いと思う条文なのですが、実はこの第14条
第3項から12項までも、構成や文言としては、第7条の一般廃棄物の規定とほとんど同
じです。
一部、欠格要件の規定の仕方は、違っているのですが、これを解説し出すと、メビウス
の輪に入り込んだように、おそらく何頁有っても上手な説明はできないと思います。
ここはすみませんが、平成22年改正時に協会から出版しています臨時増刊号を参照し
て下さい。
(産業廃棄物処理業)
第十四条
13
産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、現に委託を受けている産業廃棄物の
収集、運搬又は処分を適正に行うことが困難となり、又は困難となるおそれがある事由として
環境省令で定める事由が生じたときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を
当該委託をした者に書面により通知しなければならない。
14 産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者は、前項の規定による通知をしたときは、
当該通知の写しを当該通知の日から環境省令で定める期間保存しなければならない。
この条文は平成22年の改正で創設されたもので、BUNさんはこれを「ギブアップ通
知」と呼んでいます。処理業取消や措置命令を受ける事態となり、実質的にお客(排出事業
者)の産業廃棄物を受けることができない状態となったときに、契約を締結している排出事
業者に処理業者が直接通知しなければならない、という規定です。
具体的な「通知しなければならない」事由については、省令第10条の6の2に規定して
います。
そして、この通知を受けた排出事業者の対応としては、既に、解説しました第12条の
3第8項に「状況を把握するとともに適切な措置」をすることが規定されていましたね。
なお、22年の法律改正に合わせ、23年2月4日付けで環境省から施行通知が発出され
ていて、その中でも詳細に解説されています。
さて、次は条文の順番を逆にして、まず、第16項から見ていきたいと思います。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
2
※無断転載禁止
(産業廃棄物処理業)
第十四条
16 産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を、産業廃棄物処分業
者は、産業廃棄物の処分を、それぞれ他人に委託してはならない。ただし、事業者から委託を
受けた産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を政令で定める基準に従つて委託する場合その
他環境省令で定める場合は、この限りでない。
この条文は、いわゆる「再委託禁止条項」として知られているのですが、厳密に言いま
すと「再委託」とは限りません。
まず、簡単な方からですが、「産業廃棄物処分業者は、産業廃棄物の処分を、他人に委
託してはならない」これは、再委託禁止そのものです。
大前提の話ですが、処理業の許可を持っていなければ、他人の廃棄物の処理をするわけに
は参りません。もし、それをやっちゃうと、「無許可」となりますね。ところが、何らか
の事情で、仕事を受けたはいいが自分ではその仕事ができなくなってしまった、という事
態はままあることです。たとえば、インフルエンザに罹ってしまったとか。
その時に、同じ行為ができる人物に、「下請」させますね。これが、再委託となります。
受け手側、つまり、再委託を受ける人物の立場で言えば、産業廃棄物を処理する行為自体
は、産業廃棄物処理業の許可を有していればやれる行為ですから、先に勉強した第14条
第1項違反にはなりません。そこで、頼む方(委託する方)に制限をかけた訳です。
処分を委託された業者は、その処分を他の処分業者にさせちゃだめだよ、って、いう規定
です。
収集運搬業者の場合は、プラスアルファがあります。
「産業廃棄物収集運搬業者は、産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を他人に委託し
てはならない」です。収集運搬業者が収集運搬行為を他の収集運搬業者に委託するのは、
これは「再委託」です。収集運搬業者はもうひとつやってはいけないことがあり、それは
「処分」の委託です。
収集運搬業者は、通常、収集運搬業務しか受託しませんから、処分を収集運搬業者の判
断で委託してしまう、そういった状態を禁止している訳です。
あくまでも、処理の委託は、排出者が処理業者に直接することが大原則、という考えです。
ただし、ということで、この条文にも「ただし」書きがあります。
「政令で定める基準に従つて委託する場合その他環境省令で定める場合は、この限りでな
い。」ですね。
で、政令の基準というのは政令第6条の12で「あらかじめ本来の排出事業者から書面
で承諾書を取っておけ」等4つの事項を規定しています。これが、再委託の時の一般的な
手法です。
省令第10条の7でも、再委託できる場合を2つ定めているのですが、こちらはマニア
ックなケースです。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
3
※無断転載禁止
その一つは措置命令を受けてしまった者が、原状回復する場合。
もう一つは、中間処理業者が中間処理産業廃棄物を委託する場合です。
以前は、「再委託は事故等の万一の時しかやってはいけない」と教えているテキストが
多かったのですが、多様な委託形態において、再委託がどうしても出現してしまう場合も
あり、業界から国へ申し入れもあり、現在では、「ただし書きの要件さえ満たせば再委託
は合法である」というニュアンスに変わりつつあるかなぁと感じています。
さて、取り置きした15項を見てみましょう。
(産業廃棄物処理業)
第十四条
15 産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の収集又は運搬
を、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者以外の者は、産業廃棄物の処分を、それぞ
れ受託してはならない。
これは、なかなか含蓄のある面白い条文です。これは第16項の「再委託禁止」という
ことではありません。
収集運搬と処分を分けて書いていますが、二つ合わせて表現すれば「処理業者でなけれ
ば処理を受託してはいけない」なんです。
日本語としては、至極当然なことですよね。普通に考えれば、許可も持っていない人間
が、処理を請け負ったら、無許可になるじゃないか。無許可禁止の条文だけで十分じゃな
いか、と考えますよね。
ところが、ここに穴があったんですね。つまり、処理は受託するけど、実行行為(実際に
トラックで産業廃棄物を運んだり、焼却炉で産業廃棄物を焼却する行為など)は、他の許可
を持っている業者にやらせる訳です。
そうなると、自分自身は許可を持っていないので収集運搬業者でも、処分業者でもあり
ませんから、先ほどの第16項の「再委託禁止」にも引っかからないし、実行処理はして
いませんから、「他者の産廃を処理していません」よって、無許可にも該当しない、こう
いう、いわゆるブローカー行為が平成一桁代に横行してしまいました。
そこで平成9年の改正で創設された条文が、現第15項、この条文なのです。
結論、「いくら実行処理をしなくても、許可を持っていない人物は、受託することもし
てはいけない」という条文です。
(産業廃棄物処理業)
第十四条
17 第七条第十五項及び第十六項の規定は、産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者に
ついて準用する。この場合において、同条第十五項中「一般廃棄物の」とあるのは、「産業廃
棄物の」と読み替えるものとする。
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
4
※無断転載禁止
これは廃棄物処理法得意の「読み替え」条項ですが、具体的には産業廃棄物許可業者が
備え付けておかなければならない帳簿の規定です。省令第10条の8に具体的に示してい
ますので、現実的には難しくない規定だと思います。
<泉先生>
○14条3項について
許可更新申請をしても、管轄行政が、更新をするか、更新拒絶をするかの判断が遅くな
ることがあります。これは、更新ギリギリで申請をしたから、行政が忙しくて書類の審査
が間に合わないから、許可をするべきかについて疑問があって問い合わせや行政指導をし
ているから、など理由は様々です。そこで、従来の許可有効期間を過ぎてしまった場合、
行政が判断をするまでは、業の許可がある、すなわち処理業を継続できるとされています。
排出事業者から問い合わせがあった場合には、更新の申請をしているという受理印を示し
て、理解を得ていることが多いようです。行政には、標準的な処理期間が定められていま
すが、この期間を超えても、行政が判断を示さないことが時々あるようです。
○14条4項について
たとえば、更新の許可が認められたのが、従前の許可の有効期間の満了日から半年後だ
ったとします。そうすると、更新許可をした日から次の許可の有効期間を計算するのか、
従来の許可の有効期間満了日にさかのぼって有効期間を計算するのか、疑問が生じます。
そこで、この条文では、遡及的に有効期間を計算する、すなわち次の期間は遅れた分だけ
許可した日からの有効期間が短くなるということを明確にしたものです。
○14条5項について
これは一般廃棄物の許可と同様の許可要件と欠格要件です。
積極要件、つまり求められるのは、適切な施設・知識・技能・経理的基礎を有すること
です。
消極要件、つまりダメだしされるのは、廃棄物処理法違反等の前科など欠格要件です。
欠格要件は、平成22年改正で、規制緩和されましたが、5%以上株主や監査役まで対
象となるなど、まだまだ相当厳しいです。特に産業廃棄物処理業は、大規模な業者が増え
ており、株主が常時変動する上場企業や社外取締役・社外監査役など、業務を執行を担当
しない関係者が増えています。一段の緩和が必要ではないでしょうか。
○14条13項、14 項について
処理困難通知は平成22年の法改正で追加されたものです。当初は、排出事業者に処理
施設の状況を現地確認する義務を追加することが検討されていました。しかし、全ての排
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
5
※無断転載禁止
出事業者が処理業者の現地確認をすることは困難であり、処理業者側にも大きな負担です。
そこで、処理業者に施設の事故や営業停止等が発生した場合には、処理業者から排出事業
者に処理困難通知を出すという形で、法改正が行われたものです。この条文では、現に委
託を受けている産業廃棄物」について通知をすることになっていますが、これはすでに委
託を受けている産業廃棄物に限定されているのか、契約を締結していて今後委託を受ける
可能性がある産業廃棄物まで対象となるのかは、解釈が分かれるところだと思います。契
約は締結しているが、数年間取引がない、というような場合まで対象となる可能性がある
からです。この通知は、天災が原因でも出す必要があります。
○14 条15項について
受託禁止は、当たり前であり、受託禁止違反と無許可営業は同じことではないか、と思
いますが、BUN さんのいうような違反のケースがあるので、念のため法定したのではない
でしょうか。
○14 条16項について
再委託の禁止は、厳しい規制だと思います。私たち弁護士は、委任状にはほぼ必ず復代
理人の選任を認める記載を入れています。人間は生身ですから、急に仕事ができなくなる
危険があるので、復代理人はセーフティネットとして顧客のためにもなります。再委託し
ても、元の委託先が再委託先の選任やその仕事の内容を保証してくれるわけですから、信
頼関係があれば顧客としては不安がないはずです。廃棄物処理法は、処理業者に対する不
信が根底にありますが、今後はこれを乗り越えて、インフラとして信頼される形、すなわ
ち再委託が原則として可能になるような形になっていくべきではないでしょうか。
以上
BUNさんと泉先生の廃棄物処理法逐条解説
一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン
平成 27(’15)年 3 月 第 76 号
6
バックナンバーはこちらから
※無断転載禁止