BUNさんと泉先生の廃棄物処理法逐条解説 77 第14条の2第1項(産業廃棄物処理業) BUNさん(『土日で入門 廃棄物処理法』の著者) 泉 先生 (廃棄物部門でご活躍の女性弁護士) <BUNさん> 今回は、産業廃棄物処理業の変更にかかわるいろんな規定です。基本的には第7条の2 の一般廃棄物処理業の変更と同じような規定なのですが、一般廃棄物処理業許可は市町村 の自治事務ということもあり、法律では産業廃棄物の規定ほど、明確、詳細に規定してい ないことから、7条の2は取り上げないままにしてきました。 そこで、今回はまず産業廃棄物処理業の規定を見て、これと比較しながら一般廃棄物処理 業の規定も見ていきたいと思います。 7条を取り上げて、既に数年が経ちますが、やっと、積み残していた「宿題」に取りか かれるって感じです。 まずは条文を見ていきましょう。 <法律> (変更の許可等) 第十四条の二 産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者は、その産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処 分の事業の範囲を変更しようとするときは、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、 その変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。 (変更の許可等) 第七条の二 一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者は、その一般廃棄物の収集若しくは運搬又は処 分の事業の範囲を変更しようとするときは、市町村長の許可を受けなければならない。ただし、そ の変更が事業の一部の廃止であるときは、この限りでない。 ご覧の通り、14条の2と7条の2は、文言を産業廃棄物と一般廃棄物、知事と市町村 長を差し替えただけで全く同じです。 さて、この条文で問題になるのは、「事業の範囲」という概念です。どんなことが、「事 業の範囲」となされているのでしょうか? この規定に違反すれば、「無許可変更」となり、罰則は「無許可」に同じく第25条、 一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン 平成 27(’15)年 4 月 第 77 号 1 ※無断転載禁止 最高刑懲役5年。一方、「事業の範囲」でなければ、単なる「変更届出(無届け)」となるの で、こちらは最高刑でも罰金30万円(第30条)。刑罰は相当違ってきますから、「事業の 範囲」なのか、そうでないのかは大きな問題なのです。 この「事業の範囲」という文言が、最初に登場するのは、省令の第9条の2第1項第2 号なんです。(厳密に言えば、前述の法律第7条の2ですが、・・・) 是非、3段法令集で見ていただきたいのですが、この省令の第9条の2は「産業廃棄物 収集運搬業の許可の申請」という条文。と、言うことは、一般廃棄物処理業に関しては、 「事業の範囲」が登場しないままに、「事業の範囲を変更しようとするときは」と出てき ちゃう訳です。 これが、7条の2を飛ばしたって理由です。 だってそうですよね?「事業の範囲を変更しようとするときは」って規定されていても、 「じゃ、その<事業の範囲>ってなんなの?」ってなりますよね。 よって、まず、産業廃棄物の規定で説明したいと思います。 産業廃棄物処理業の許可を取るときは、「許可申請」しなければなりませんでしたね。 その許可申請書に記載すべき事項として、「事業の範囲」が登場するんです。 一般廃棄物処理業については、自治事務(以前は「固有事務」)である、ということを理由 に、細かいところは権限者である市町村に任せてある、よって、許可申請の事項までは法 令では規定していないってことのようです。 産業廃棄物処理業許可は法定受託事務(以前は「機関委任事務」)でもあることから、法令 で詳細まで規定しているってことなんでしょうね。 ところが、産業廃棄物処理業許可でも、「事業の範囲」という文言は登場するものの、 たったこれだけ。これじゃ、何を変更しようとするときは変更許可なのかわからないです よね。 実は、この「処理業の変更許可」という制度は、廃棄物処理法当初からあった制度では なく、昭和52年の改正で登場した制度なんです。その時の施行通知に次のように記載し ています。 昭和五二年三月二六日 環計第三七号 改正:平成一二年一二月二八日 生衛発第一九〇四号 各都道府県宛 厚生省環境衛生局水道環境部計画課長通知 (抜粋のうえ、いつものとおり、BUN さん流で簡略的な表現にしています。) (前略) 一 一般廃棄物処理業に関する事項 1 第七条第一項の許可は、事業範囲を定めて与えるものであるが、事業の範囲とは、取り扱う一 般廃棄物の種類(例えば、ごみ、し尿等)並びに収集、運搬及び処分(焼却、脱水等の中間処分の 種類並びに埋立処分及び海洋投入処分の最終処分の種類ごとに区分すること。)の別ごとに定める ものであること。 (中略) 四 産業廃棄物処理業に関する事項 3 産業廃棄物処理業の事業の範囲は、一般廃棄物処理業の事業の範囲に準じて取り扱うこと。 なお、産業廃棄物の種類は、有害な産業廃棄物である場合には、これに含まれる有害物質の種類ご とに細分した産業廃棄物の種類(例えば、水銀を含む汚でい等)とするほか、必要に応じ産業廃棄 物の性状に応じた区分(例えば、有機性の汚でい等)を行つて差し支えないこと。 一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン 平成 27(’15)年 4 月 第 77 号 2 ※無断転載禁止 これでおわかりのことと思いますが、「事業の範囲」とは、「廃棄物の種類」と「処理 の方法」なんですね。 ちなみに、この通知が発出された昭和52年はまだ、特管物の概念も、収集運搬と処分 の区分けもありませんでした。ですが、ご覧の通り、この通知は平成12年に改訂され、 今も生き続けている通知ではあります。 産業廃棄物で具体例を示せば、「廃プラスチック類の焼却」の許可を持つ業者がいると すると、「木くずも焼却したい」となれば、これは「廃棄物の種類」の追加変更になりま すので、変更許可となります。 また、「廃プラスチック類の破砕」をしたいとなると、これは「処理の種類」の追加変 更になりますので、変更許可となります。 しかし、「廃プラスチック類の焼却炉を1基から2基に増設したい」と言ったときは、 「廃棄物の種類」も「処理の方法」も変更は無いので、これは14条の業許可としては、 単なる変更届出となる訳です。 なお、既に本文でも「追加変更の時は変更許可」と書いています通り、「その変更が事 業の一部の廃止」のときは、届出ということになります。 <泉先生> 産業廃棄物の処理を委託する際、排出事業者は、処理業者の許可証をしっかり確認する 必要があります。確認のポイントは、①有効期間はいつまでか、②処理方法は何か、③処 理できる廃棄物の種類はいつか、④処理できる廃棄物の種類は何か、⑤どんな処理施設を 持っているのか、⑤特別な許可条件(搬入時間の制限等)があるか、などの点です。 上記のうち、変更許可が可能なのは、②処理方法と③廃棄物の種類です。変更許可申請 は、通常は、事業活動を拡大するため、処理方法と処理する廃棄物の種類を加えることが 多いです。処理方法の追加は、通常は処理施設も追加されることが多いです。たとえば、 廃プラの焼却を行っていた会社が、破砕もする、ということになれば、焼却施設に加えて 処理施設も追加することになるでしょう。一方、廃棄物の種類を追加する場合には、施設 はそのままで、廃棄物だけ追加する、ということもよくあります。たとえば、今まで廃プ ラだけを焼却していたが、同じ焼却施設で紙や廃油を追加して焼却する、というような場 合です。処理方法を追加する場合も、廃棄物の種類を追加する場合も、これによって、環 境負荷が発生する可能性が高いため、審査は新規許可と同じようい慎重に行われます。住 民同意を求めている自治体では同意を取り直す、協定書を結んでいる場合には協定書を変 更して結び直す、などの手続きが必要とされます。廃棄物処理業者にとっては、種類を追 加するだけで、大変な手間がかかる、という悩みがあるようです。また、排出者にとって も、自分の出す廃棄物がどの種類なのか、廃棄物が混合していて分別が困難な場合、どの 種類の廃棄物して委託すればよいのか、分かりにくいという悩みがあるようです。 また、廃棄物処理業の許可書をみると、色々な種類の許可があります。例えば、一般廃 一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン 平成 27(’15)年 4 月 第 77 号 3 ※無断転載禁止 棄物の収集運搬業許可では、事業系一般廃棄物という限定や、家庭から一時的に多量に排 出されるごみという限定がついたものがあります。木くずという種類のうち、剪定枝に限 る、公園ごみに限るなどという許可もあります。一般廃棄物は、市町村の処理計画に合わ せて許可を与えるので、どんな限定をしてもよい、という考え方もあるでしょう。産業廃 棄物でも、汚泥(無機性のものに限る)、廃プラ(容器として使用されているものに限る)、 廃油(助燃材として使用するものに限る)など、廃棄物の種類について限定付のものもあ ります。これは、許可を申請する際に、予定している搬入物や処理方法を考えて限定をし たものでしょう。 しかし、あまり廃棄物の種類を細分化すると、せっかくある施設を有効に使って適正処 理を推進することができなくなってしまいます。その意味では、当初から、その施設で適 正に処理できる廃棄物については、幅広く許可を与える、変更についてもその変更による 環境影響の大きさに応じて、柔軟な審査をするというような対応も今後は必要ではないか と思います。 製造業では、大気や水に出すものについて規制、すなわち排出規制をしていて、製造工 程に投入するものの種類は規制していません。しかし、廃棄物処理法では、工程に投入す るものを規制しているという特徴があります。リサイクル、すなわち実質的には再生品を 作っている場合でも、廃棄物の種類を自由に変えられないのは制約になっているかもしれ ません。現在ある施設を有効利用するという観点から考えれば、将来的には、廃棄物の種 類をもう少し大枠で規制して、環境負荷は排出規制で行うという選択肢も、今後はありう るかもしれません。 BUNさんと泉先生の廃棄物処理法逐条解説 一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会メールマガジン 平成 27(’15)年 4 月 第 77 号 4 バックナンバーはこちらから ※無断転載禁止
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