19. NAFLD患者における造影超音波を用いたKupffer 細胞機能の評価と

19. NAFLD患者における造影超音波を用いたKupffer
細胞機能の評価とNAFLD 病態関連因子との関連性
筑波大学 医学医療系
志田 隆史、秋山健太郎、正田 純一
筑波大学 体育科学系
蘇 リナ
兵庫医科大学超音波センター
山平 正浩、田中 弘教、飯島 尋子
【背 景】NAFLD の 罹 患 者 は 増 加 の 一 途 に あ る。NAFLD の 一 部 は
NASH へ移行し、肝硬変や肝癌の発症に至ることより、NASH の拾い
上げのための肝病態の評価は重要である。NASH への進展に伴い、肝
病態では Kupffer 細胞機能が低下することが知られており、我々の開
発 し た NASH 自 然 発 症 マ ウ ス に お い て も、肝 病 変 進 行 に 先 行 し て
Kupffer 細胞機能の低下が認められる( Hepatology 60 : 761 A, 2014 )。
一 方、造 影 超 音 波( CEUS)に よ る Kupffer 相 の 肝 輝 度 値(以 下、
Kupffer 相輝度値)の測定が、NASH の拾い上げに有用な方法であるこ
と も 報 告 さ れ て い る( Hepatol Res 37 : 722 - 30 , 2007 )。そ こ で 今 回
は、NAFLD 症例について Kupffer 相輝度値の測定を行い、Kupffer 相
輝度値の低下と関連する NAFLD 病態関連因子を検討した。
【対象・方法】診療ガイドライン( JGH 2010 )にて NAFLD と診断し
た 102 例( M/F 67 / 35 、年齢 23 - 81 歳)と、健常人 10 名( M/F 7 / 3 、
年齢 21 - 59 歳)を対象に CEUS を施行した。Kupffer 相輝度値は、東
芝 Aplio 400 を用い、1 / 1200 量に希釈した Sonazoid の静注後 40 分の
Kupffer 相に高音圧ドプラ法で得られた画像を off-line で求めた。これ
らの輝度値について、FibroScan 502 の測定値(肝弾性度と脂肪化度)、
体重、体組成値、臨床検査値と比較検討した。
【結果】健常人と NAFLD 患者における Kupffer 相輝度値はそれぞれ
189 ± 10( mean ± SD)、133 ± 36 と NAFLD 患 者 で 有 意 に 低 下 し
ていた( P< 0 . 001 )。FibroScan 502 にて測定した弾性度( kPa)によ
る low(< 5 )、156 ± 26 ; intermediate( 5 - 10 )、128 ± 40 ; high
(> 10 )、117 ± 38 と high 群は low 群より低値であった( P< 0 . 001 )。
線維化の進展に伴い輝度が低下していた、Kupffer 相輝度値に影響を
及ぼす因子について検討したところ、単変量解析では、体重、BMI、
肝 弾 性 度 と 脂 肪 化 度、AST、ALT、γ-GT、TG、HbA 1 c、insulin、
HOMA-IR が負相関を示し、HDL-C が正相関を示した。また、重回帰
分 析( Stepwise)で は、insulin と ALT の 両 者 が 独 立 し た 交 絡 因 子 で
あった( P< 0 . 001 )。
【結語】線維化進行が疑われる NAFLD 症例では、Kupffer 相輝度値
の低下が認められ、Kupffer 細胞機能の低下が生じていると考えられ
た。また、その病態背景として、高インスリン血症と肝実質障害の存
在が重要であると考えられた。