卒業生の声はこちらから - 生命環境科学研究科

天野(佐藤) 千恵
ウィーン大学 陸水学・生物海洋学部 微生物海洋学分野
ポストドクトラル研究員、日本学術振興会海外特別研究員
2008 筑波大学 第二学群生物資源学類卒業
2010 筑波大学大学院
生命環境科学研究科博士前期課程修了
修士(農学)
2013 筑波大学大学院 生命環境科学研究科博士後期課程修了 博士(生物科学)
2010-2013 日本学術振興会特別研究員
2013-2014 東洋大学 生命科学部助教
2014 より現職
研究内容
現在私は、深海高圧環境下の微生物活性や、その周りの微生物生態系・物質循環について研究してい
ます。一見して分からないけれど、人間が日々刻々と歳をとるように、海水も刻一刻と変化しています。
高分子が低分子に、溶存態の物質が気体に etc.物質の存在形態が変わっていくのです。その変化に大き
く関わっているのがバクテリアやアーキアなどの微生物で、この非常に小さく膨大な数の単細胞生物の
代謝の営みが、海全体の物質循環を動かしています。全海洋の平均水深は 3690 m、深海と呼ばれるのは
200 m 以深なので、海のほとんどは深海ということになります。10 m 潜るごとに 1 気圧増加する中で、
実は、圧力環境下での現場微生物の代謝速度がどの程度なのかはほとんど分かっていません。実環境を
見てこそ、海洋物質循環や地球システムの真実に近づけるのだと私は考えています。
筑波大学・大学院時代
私は、博士後期課程を修了するまでの 9 年間をつくばで過ごしました。入学当時は、こんなに長い間
つくばに居ることになるとは夢にも思っておらず、
「修士を取ったら、企業で働こう」と漠然と考えてい
ました。学部時代はワンダーフォーゲルクラブに所属し、授業はほどほどに、山や沢を踏破する方に何
十倍も楽しみを覚え、そちらに夢中でした。そんな私が大きく変わり、勉学や研究に目覚めたきっかけ
は、博士前・後期課程を通して指導にあたってくれた内海真生先生に出会ったことだと思います。
大学院に進んだらどんな研究をしようかと悩んでいた折、内海先生が「研究船に乗ってみますか?」
と一言。そして私は夏休みの一ヶ月半を北太平洋上で過ごすことになりました。研究船では、昼夜を問
わず 24 時間体制のサンプリングが続きます。
この生活は鼻血が出る程ハードでした。
しかしそれ以上に、
フィールドで考える楽しさを知りました。深い深い海の、その未知の部分の大きさを肌で感じ、少しで
も海洋微生物が何をやっているかを解明したい、知りたいという好奇心が膨らんでいきました。その後
は、なだれ式に海洋微生物学の世界に入っていきました。
海外を視野に入れて
<筑波大の国際性>
筑波大は留学生が多く、生物資源学類ではタイでの異文化交流も実施していました。外国人と慣れ親
しむ機会が多かったことは宝で、高校まで受験英語以外使わなかった私を(実際、英語は苦手科目でし
た)
、成長させる環境でした。育った環境が違う人からの意見は私にとって大きな刺激となりました。
<研究面>
海洋は、
(あたりまえですが)全球的に広がっていて、海洋研究というのは、国境なく多くの知見を交
換することで前進するのだと疑いなく思っています。グローバルな視点で、一研究者として、自分の足
で立ちたいという気持ちが強く、研究を続けると決めた時から外に出たいと思っていました。
さいごに
今もまだ精進中の身ではありますが、海外にいて思うことがあります。それは、世界中どこに居ても、
確かな目というのは同じということです。渡欧してから、客観的で、経験に基づいた確かな判断力を持
った人に何人も会うことになりましたが、その方々が語る内容は何も突飛なものではありません。筑波
や国内で出会った尊敬する方々と話をしたときの印象と同じです。そのような力を育てることが、芯の
ある自分を作ることになるのだと思います。生命環境科学研究科で学び、日々研究に励んでいるみなさ
んには、国内外問わず様々な人と触れ合い、自分を成長させ、新たなフィールドにどんどん挑戦してい
ってほしいと思います。
北大西洋航海の集合写真と船内実験室での作業
所属研究室がある建物内でクジラの骨格標本と一緒に