「知の知の知の知 」第2404号 - 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会

い~な
診療所
あまみ
中
中 央
事務局
研究所
しらさぎ
つなぐの
さくら
大阪+知的障害+地域+おもろい=創造
知の知の知の知
社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2404 号 2015.4.5 発行
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「すべてはいきていてこそ」脳性まひ女性、詩1200編
北村有樹子
朝日新聞 2015 年 4 月 5 日
筆談で気持ちを伝える堀江菜穂子さん=東京
都板橋区、川村直子撮影
寝たきりのベッドで詩を書き続ける女性がいる。東
京都板橋区の堀江菜穂子(なおこ)さん(20)。脳
性まひのため手足はほとんど動かない。わずかに動
かせる手でつむいだ詩は約1200編。筆談の文字が訴える。
「こえをだせないわたしたち
にもことばやいしがあることをしってほしい。そんざいをみとめて」
右手に握る紙粘土に挿したペンが、B6サイズのノートの上をなでるように動く。2セ
ンチほどの文字が生まれる。ボランティアの女性(42)が、支えているノートを左にず
らし、また次の1文字。
筆談も詩も同じノートに書いてきた。高校3年から
使い始め、70冊になった。
「いまのつらさもかんどうも すべてはいきていて
こそ
どん
なに
つら
いげ
んじ
つで
も
はりついていきる」
(
「いきていてこそ」
)
母の真穂(まほ)さん(57)が出産時
に危険な状態に陥り、菜穂子さんは重度の
脳性まひに。体は動かず、言葉も話せない。
居間に据えたベッドで、食事をすりつぶしてもらうなど両親の介助をうけて暮らす。
都立の特別支援学校に、母の送り迎えで小学部から通った。中学部のころ、筆談などを
練習して生活力を身につける自主グループに両親が連れていってくれた。初めはスケッチ
ブックに大きな1文字を書くのがやっとだった。
詩を書くことも、ここで覚えた。詩は、小さいころから母が読み聞かせてくれていた。
高等部のころ、周囲の人の会話の端々から、自分が何も考えていないように思われてい
ると感じた。詩をたくさん作るようになった。
「心をかいほうするためのしゅだんだった」。
口にすることができないから、
「なんども心のなかでよみつづける」という。
学校には突然亡くなる生徒もいた。昔から生と死を意識してきた。
「それがどんなにふじゆうだとしても わたしのかわりはだれもいないのだから わた
しはわたしのじんせいをどうどうといきる」(「せかいのなかで」
)
いまは民間の障害者施設に通う。そこには様々な人がいる。家族や、2歳半のころから
通ってくれるボランティアの女性の助けで、自分は筆談や詩作ができていると気づいた。
成人の日を前に、振り袖を着ることができた。障害者も着やすい和服づくりに取り組む
人たちの協力だった。そうした人らの後押しもあり、詩集をまとめる準備も始まった。「こ
んなわたしでもいきていることをわかってもらうことがなやんでいる人のなにかのたすけ
になるのではないか」
もっと詩を作り、多くの人に読んでもらいたい。社会とつながりたい。
「そのドアをあけなければ けっしてみることのできないことがある いまそのドアを
あけよう」
(
「ドアのむこう」
)
真穂さんが1枚の写真を見せてくれた。振り袖姿の菜穂子さんがうれしそうに笑ってい
た。
(北村有樹子)
◆ありがとうのし
いつもいっぱいありがとう
なかなかいえないけど
いつも心にあふれてる
いつもいえないありがとうが
いきばをうしなってたまっている
いいたくてもいえないありがとうのかたまりが
めにみえない力になって
あなたのしあわせになったらいいのにな
=2012年10月
長野保健医療大が開学 1期生は92人
信濃毎日新聞 2015 年 4 月 5 日
医療や福祉を学ぶ四年制の「長野保健医療大学」が長野市川中島町今井原に開学し、4
日、開学式と1期生92人の入学式が行われた。高齢化の進展から、医療福祉分野で活躍
する人材の重要性が高まる中、理学療法や作業療法の専門家を育てる。
新大学は学校法人四徳(しとく)学園(北沢俊美理事長)が運営し、保健科学部リハビ
リテーション学科の1学部1学科。足腰などが弱い高齢者らの基本的な身体機能の回復方
法を学ぶ「理学療法学専攻」と、お年寄りなどが
不自由なく日常生活を送るためのサポート方法
を学ぶ「作業療法学専攻」を設けた。
開学式と入学式に出席した長野保健医療大学の1期生
開学式には新入生や来賓、保護者ら約300人
が出席。岩谷力(つとむ)学長(国立障害者リハ
ビリテーションセンター元総長、長野市出身)は
「少子高齢化は各国共通の課題になっている。
(新大学を)リハビリテーション科学の知の拠点
として発展させたい」とあいさつした。
続いて開いた入学式では、新入生代表の理学療法学専攻の押金美佳さん(18)=長野
市川中島町今井原=が「日本は世界一の長寿国で、中でも長野県は高齢化が進む。われわ
れは医療に関する高い知識を備えた人材にならなければいけない」と宣誓した。四徳学園
によると、新入生のうち88人が県内出身で、卒業後は県内の医療機関への就職を後押し
する。
同学園は2001年に四年制の長野医療技術専門学校を開学。学生の大学進学志向や教
育の質の向上を目的に、大学への改組を決めた。現在の専門学校2年生が卒業する17年
度で専門学校は廃止する。
新しい職場になじむコツ
「最初の3カ月は全力疾走で」
沼田千賀子
朝日新聞 2015 年 4 月 5 日
新年度が始まりました。新
社会人として、あるいは異動
や転職などで、新しい環境で
働き始めた人もいるでしょう。
職場に早くなじむにはどうし
たらよいでしょうか。
新人でもベテランでも、新
しい職場で働き始める時はそ
れなりに緊張し、気を使うも
の。一日も早く仕事に慣れ、
周りの人たちと打ち解けたい。
企業の社員研修に携わって
きた日本能率協会マネジメン
トセンターの入谷亨さんは、
信頼関係を築くことが大事だ
と説く。
「信頼を得られれば重
要な仕事を任され、助けてく
れる人も増える。周りの助け
に感謝してさらに信頼されれ
ば、もっと経験が積めるとい
う好循環につながります」と
話す。
上司や先輩、同僚と人間関
係を築きながら仕事を覚えて
いくのは大変だ。入谷さんは
気をつけるべきことを二つ挙
げる。
一つは、仕事の進め方や職場のルールを、その背景も含めて理解すること。たとえば入
谷さんの以前の職場では、やりかけの仕事の書類は決まった棚に収めるのがルールだった。
急に別の人が引き継ぐことになっても困らないようにするためで、勝手にやり方を変える
と大変なことになりかねない。
もう一つは、配属先が希望の部署ではなくても、そこで精いっぱい仕事をすること。「不
満を抱いたままでは職場になじめず、やる気も出ません。気持ちを切り替えましょう。必
ず誰かが見ています」
経験や実績を積んできた人はかつての手柄を忘れることだ。新しい仕事を教わる時は、
相手が後輩でも「教えて」と素直に言うことも大事だと言う。
身寄りない高齢者守れ
首長の「成年後見」申し立て急増
朝日新聞 2015 年 4 月 5 日
市区町村長による青年後見申し立て件数の推移
身寄りのない認知症のお年寄りらの財産や生活を守るた
め、市区町村長(首長)がやむなく家庭裁判所に「成年後
見」を申し立てた件数がこの5年で2・3倍に急増したこ
とが朝日新聞の調べで分かった。認知症高齢者の孤立化が
進んでいる実情が浮き彫りになった。
認知症などで判断力が不十分になった人に代わり、親族
や弁護士らが財産管理などを担う「成年後見制度」の申し
立て状況について、朝日新聞が全国50の家裁に聞いた。
2014年に家裁の判断が出た総数は計3万4205件で、
前年からほぼ横ばいだった。
このうち、市区町村長による「首長申し立て」の件数は
前年より11%多い5596件だった。09年は2471
件だったが、年々増え、全体に占める首長申し立ての割合
は09年の9%から16%に上がった。都道府県別では東
京(894件)や大阪(525件)が多く、首長申し立て
の比率は山形(34%)、徳島(30%)、山梨(30%)
の順に多かった。
社説:子育て新制度/保育の質確保を最優先に
神戸新聞 2015 年 4 月 4 日
新しい「子ども・子育て支援制度」が4月から始まった。市町村が「保育の必要性」を
認定し、受け皿を整備する仕組みだ。親が求職中など、自治体によっては認められにくか
ったケースも保育サービスを利用できるようになる。
受け皿拡充の中心となるのは保育所と幼稚園の機能を併せ持つ「認定こども園」や、定
員6~19人の「小規模保育」などだ。政府は2017年度までの待機児童ゼロを掲げ、
優先的に財源を回すとしている。
ただ、預け先の選択肢が広がれば利用希望も増える。これまで通り、特定の施設に希望
が集中して入所できないケースや保育士不足も懸念され、実際に待機解消につながるかは
見通せない。
施設の運営基準に対する市町の裁量がこれまで以上に認められるため、
「保育の質」にば
らつきが出ると不安を抱く保護者もいる。
市町は現場の声をすくい上げ、安心して利用できる制度へと改善を重ねなくてはならな
い。
認定こども園は、親の働き方にかかわらず通えるのが特徴で、地域の子育て支援拠点と
しての役割も期待されている。兵庫県内は前年度と比べほぼ倍増の計230園と全国最多
レベルだが、農村部を中心に「空白地帯」もあり地域差は大きい。
少子化が進む地域で、さまざまな親子が集い、悩みを相談できる場所は欠かせない。こ
ども園が幼保一体化のメリットを十分に発揮できるよう、目に見える活動を工夫し、地域
に定着させる必要がある。
用地確保が難しい都市部では、駅周辺の空きテナントなどを活用して0~2歳児向けの
小規模保育を増やす動きが活発だ。県内では神戸市など7市町計110カ所で実施される。
3歳以降の受け入れ先となる連携施設の確保が課題だろう。
英語、音楽など多彩な教育内容を売り物にする保育施設も各地で増えそうだ。親の望み
は尽きないが、幼い子どもの負担にならないよう留意したい。
家庭的保育や事業所内保育、学童保育の拡充なども盛り込まれた。
子どもが安心して、楽しく過ごせる場所かどうかが最優先である。市町は利用者が必要
なサービスを選べるよう相談窓口を充実させ、保育の質を確保する体制づくりに責任をも
って取り組んでほしい。
【主張】ハーグ条約1年 子供を守る慎重な運用を
産経新聞 2015 年 4 月 3 日
国際結婚の破綻などで、一方の親に国境を越えて無断で連れ去られた子供の扱いを定め
たハーグ条約が日本で発効して1年が経過した。
この間、外務省が受け付けた子供の返還や面会を求める申請は100件を超えた。いま
のところ大きな混乱もなく対処されている。
ただ、日本では親権制度の違いなどから加盟に慎重論を唱えた経緯があった。家庭の問
題がからみ返還の可否を決める裁判なども原則非公開で行われるため、課題がみえにくい。
引き続き子供を保護する条約の目的にかなうよう、注意深い運用を求めたい。
条約加盟国は、16歳未満の子供を一方の親が無断で国外に連れ去った場合、子供を捜
し、元の居住国に戻す義務を負う。親の国籍を問わず、どちらが養育するかなどは、元の
居住国で決められる。
この1年間の申請のうち、子供の返還を求めたものは44件で、親同士の合意に基づい
た外国への返還が3件、日本への返還は裁判所の命令などで4件実現した。その他、裁判
所での審理に入ったものもあり、そのすべてが子供の利益に結びつくのか、必ずしも楽観
はできまい。
過去、日本人の場合は外国人の夫の家庭内暴力(DV)から逃れて子供とともに帰国し
たケースも少なくなかった。別の加盟国では、条約に沿って子供を戻した後、先方に養育
能力がないことが発覚し問題化したこともある。
条約では、子供に危害などが及ぶ恐れがある場合、返還拒否が認められている。将来に
禍根を残さないよう、話し合いや裁判の調停では十分な情報と証拠に基づいて慎重に吟味
してほしい。
外務省は条約加盟に伴い、主要在外公館での邦人のDV被害者支援を強化した。子供を
連れて帰国したものの、証拠の不備などで裁判で不利になることがないようにとの配慮だ。
多くの相談が寄せられているという。
外務省が受け付けた返還と面会の申請113件の約1割は日本人同士のケースだった。
海外での勤務や居住が珍しくなくなった現在、条約の対象となるのは国際結婚の夫婦とは
限らない。
国際化が進む中、条約が適用されるケースは今後も増えよう。予想されるトラブルに備
え、国は必要かつ適切な支援の手も差し伸べてもらいたい。
社説:消費税増税1年 受益と負担の徹底論議を
西日本新聞 2015 年 04 月 04 日
5%の消費税率を8%、さらに10%に引き上げるのは何のためか。年金や医療・介護、
子育てなど社会保障を充実させるためだ。
消費税率は昨年4月に8%になった。それによって社会保障の充実が実感され、老後や
子育ての不安が薄らいだろうか。現状はむしろ増税の痛みの方が大きそうだ。
政府が進める「社会保障・税一体改革」は、なぜ必要なのか。あらためておさらいして
みたい。
社会保障費用の多くが赤字国債で賄われてきたと政府は言う。借金を続けることは将来
世代にツケを回すことでもある。きちんとした財源確保は長年の課題だった。
では、財源として何がふさわしいか。広く国民全体で負担してもらう消費税が良い、と
政府は考えた。だが、負担を求めるだけでは理解は得られない。高齢者に手厚い社会保障
の在り方を是正し、若者や子育て世代にも恩恵が及ぶような制度に変える必要がある。
受益と負担の関係をはっきりさせて国民の理解を得る。社会保障・税一体改革の狙いで
ある。
だが、消費税増税が最も公平な負担の在り方といえるか。消費税の逆進性が言われる。
結果として低所得層の負担が重くなる。
このため、与党は食料品などに軽減税率を適用し、負担を緩和しようと検討を進める。
だが、いざ実行するとなると課題が多い。
低所得層の対策はどうするか。軽減税率以外の選択肢も対象にあらためて幅広く議論す
べきだ。
人口減少と超高齢化が同時に進む。経験したことのない時代を現行制度の手直しで乗り
切れるか。支給額の減額で現行の年金制度を維持しても、もともと支給額が少ない高齢者
は生活できなくなる。
どう負担を分かち合うのが公平か。どうすれば必要最低限の保障を維持できるか。聖域
を設けず、あらゆる選択肢をまな板に載せて徹底的に論議すべきではないか。
消費税10%には反対の声も多い。消費増税やむなしと国民が納得するには全ての情報
をオープンにした議論が欠かせない。ここで政府、与党にあらためて求めたい。
読者は格差をどう感じ、どんな記事を求めているのか?
多田敏男、末崎毅 平井恵美、疋田多揚(さわあき) 編集委員・沢路毅彦
朝日新聞 2015 年 4 月 5 日
フォーラム面は、読者のみ
なさんの議論の広場です。記
者も加わって、ともに考え、
新しい記事につなげます。初
回のテーマは「格差」。朝日新
聞デジタルのアンケートには
多くの回答が集まったほか、
電子メールや手紙でたくさん
の意見もいただきました。読
者は格差をどう感じ、どんな
記事を求めているのか。記者
が取材しました。
■「貧困が進学左右、心配」
「貧困のために能力が閉じ
ら れ て い る 若者 も い るの で
は」
福岡市の中川原進一郎さん(67)の手紙は、「教育格差」を心配する内容でした。3月
下旬、自宅近くで妻の順子さん(64)とともに話をききました。印象に残ったのは「奨
学金」の大切さについてです。
中川原さんが高校生だった1960年代、大学進学者はまだ少数でした。「勉強が好きだ
ったので、奨学金をもらって東京の私立大に進学した。大学院まで進み、希望の企業にも
就職できた」と感謝しています。
奨学金は1件が無償、2件は無利子で無理なく返済できたそうです。
「無償の奨学金をも
っと充実させて、子どもたちの将来の選択肢を増やして欲しい」と考えています。
無償の奨学金の対象者が増えているのかや、返済できなくなった場合の対応策などを記
事で取り上げて欲しいそうです。
順子さんは、自分のまわりで教育格差が目に見えて広がっているとは思いませんが、不
安もあります。
「裕福な家庭では小さいころから塾に通えて、いい大学にも行きやすい。一
方で、お金がないことで、進学の意欲を失ってしまう子どももいます。差が広がり続ける
とどうなってしまうんでしょうか」
大阪府河内長野市の元小学校長、熱川英明さん(65)もメールで「教育格差が次の代
へと負の連鎖になっていくことを懸念する」と指摘。電話で話をきくと、「入試は誰にでも
機会が均等に与えられているように見えるが、塾通いなどができる安定した家庭でないと
有名大の受験は厳しいと感じる」
。進学したいのに、家庭の事情で就職せざるを得ない子ど
もを見ると「複雑な気持ちになる」と話してくれました。(多田敏男、末崎毅)
■「無年金者の増加招く」
「福祉業界のことをもっと取り上げて欲しい」。大阪府の40代女性は、そんな思いでメ
ールを送ってくれました。連絡すると「私でお役に立てるのなら」と快く取材に応じてく
れました。
数年前から、福祉施設でパートとして働いています。障害者の就労を支援する仕事で、
やりがいを感じているそうです。
でも、他の業界に比べて給料が安く、慢性的に人手が不足している現場を見て、
「世間は
私たちのボランティア精神に頼りすぎている」。女性の時給850円は1年目の人と同じ。
若手社員たちは休憩も取らず、遅い時間まで働きづめです。
春闘による賃上げのニュースも遠い世界の話。福祉業界の待遇を改善するには、福祉施
設の役割や従業員の大変さを、もっと理解してもらうことが必要だと考えています。
徳島県松茂町の元高校教諭、三原茂雄さん(72)は「非正規やパート労働者の増加は、
やがて無年金者の増加を招く」との意見をメールで送ってくれました。
お会いすると、
「すぐに社員のクビを切る社会になってしまった。年収格差も大きい。こ
れでは社会も不安定になる」と言います。競争すれば、能力によって必ず差は出る。だか
らこそ「恵まれた人が富を分かち合う社会になってほしい」。
世代間格差について聞いてみました。3月に連載した「教えて 格差問題」で「若い人
ほど受け取る社会保障費で損をする」との試算を取り上げたところ、高齢の方から「戦後
の厳しい生活のなかで、親にも仕送りしてきた努力を理解していない」という感想が寄せ
られたからです。
三原さんは「年金が減らされても仕方ない」との考えで、理由をこう説明しました。「国
の借金が積み上がり、若者に十分なお金を回さない政治を肯定してきたのは私たちだ」(平
井恵美、疋田多揚(さわあき)
)
■「ある程度の格差は仕方ない」
格差を全くなくすことはできないし、なくすべきでもないと思っています。よりよい暮
らしを求めて努力した結果、ある程度の格差が生じるのは仕方がないことです。格差がな
い社会は、報われない社会。きっと活力が失われてしまいます。ただ、親の格差が次の世
代に引き継がれ、格差が固定化されることには大反対です。親に経済力がないために、子
どもの学力や才能がつぶされる状況はよくない。=福岡県・男性(51)
■「地方は東京にない特色を」
私大の2年生です。出身地の新潟と東京の地域格差を感じていて、3月に格差問題のシ
ンポジウムに参加しました。東京にあって地元にないものはたくさんあります。それが人々
を東京に集中させ、地方の過疎を進める要因だと思います。地元で就職して地域に貢献し
たい思いもありますが、東京は大企業が多く、どちらで就職するか決めていません。地方
はもっと東京にない特色を打ち出すことが大切だと思います。=東京都・20歳男性
■「地方でできる仕事が少ない」
福島県内で除染作業をしていました。地方は雇用状況が厳しいという「教えて 格差問
題」を読み、除染の現場でも同じことを感じ、メールしました。仲間の出身地で目立った
のは、青森や秋田など仕事が少なく賃金も低い地域。地方は家賃や食費が安く、福島もい
まは作業員が全国から集まって飲食店などがにぎわっています。でも、働き先が将来もあ
るのか。地方をどう元気にするのかも記事にして欲しい。=福島県・50代男性
■資産・雇用・教育に関心
朝日新聞デジタルのフォーラムページで、「あなたが強く感じている格差は?」という問
いかけをしました。期間は3月18日から31日。1519もの回答を頂きました。
最も回答が多かったのは、
「資産格差」です。「資産は子や孫に引き継がれる」など、格
差が相続によって固定化しているという指摘や、貧困が目立つという意見がありました。
「雇用格差」では、正社員と非正規雇用の格差を解消するため、「同一労働同一賃金」を
実現するべきだという意見が多くありました。大企業と中小企業の格差を指摘する方もい
ました。
「教育格差」では、格差が固定化する最大の理由が教育を受ける機会の差にあるという
指摘が目立ちました。若い世代からは、奨学金の負担に触れた意見がありました。
10歳未満から30代の若い年代で見ると、最も多かったのが「教育格差」で「世代間
格差」は2番目。
「格差はやむをえない」は全体の約6%でした。
「底辺層のレベルが上がるなら、格差が
拡大してもいい」という意見がありました。
■アンケートの意見から(要旨)
【資産格差】
「高所得者や資産家を優遇した結果が現在の格差」(60代男性) 「豊富な
資産を持つ人々にとって有利な世の中になっている気がする」(20代女性)
【雇用格差】
「チャンスと評価が正社員と契約社員、パート、アルバイトで違うこと」(5
0代男性) 「正社員のやっていた仕事を引き継いで半分以下の賃金で働いている人がほ
とんどではないか」
(30代女性)
【教育格差】
「貧困の連鎖を作り出しているのは教育だ」(20代女性) 「大学の学費の
高さとひとり親世帯の貧困は深刻」
(20代男性)
【世代間格差】
「少子化のせいで若い世代が損をし続ける社会になっている。少子化を食い
止めようと政府が努力をすべきだ」
(10代男性)
【地域格差】
「大都市に人口、企業が集中し、地方都市は生活しづらい」
(60代男性)
【男女格差】
「家庭にいちど入ってしまうと、社会に復帰することが難しい」(50代女性)
【格差はやむをえない】
「努力によって差は生じる」
(60代男性)「ある程度の格差はやむ
をえないが、最低限の生活レベルの保障は国民の権利」(50代男性)
「日本の格差は『格差』というほどのものではない」(50代女性)【その他の格差】
「健康格差。思いがけず病気になり、仕事をセーブし収入も減少しました」
(50代女性)
「結婚格差。未婚か既婚。離婚した人は負け組のような」(40代女性)
アンケートの結果や読者のみなさんの意見には、勉強したくても教育の機会に恵まれな
い子どもが増えていることを心配する声が多くありました。資産や収入の格差が広がって
いることや、貧しい人にチャンスを与えるはずの「奨学金」が本来の役割を果たしていな
いことが背景にあるようです。非正規の雇用のあり方についてもたくさんの指摘がありま
した。みなさんの視点を記事に生かそうと、取材を始めました。
(編集委員・沢路毅彦)
月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も
大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行