(2)授業改善に向けた実践例 - 宮崎県教育庁スポーツ指導センター

(2)授業改善に向けた実践例
①
小学校
ア
体育学習の基本的な流れ
45分間の流れを確認できる資料を体育館に掲示する。活動だけでなく、「学習」として
の体育となるようにする。
イ
集団行動の徹底、準備運動の統一
各学校の体力向上に関する課題を解決するための集団行動や準備、補助・補強運動ができ
るように、学校で統一したものを児童が進んで行えるようにする。
ウ
補助・補強運動(体幹トレーニング)の工夫
毎時間、取り組む補助・補強運動を体育館に掲示し、適宜選んで取り組ませる。また運動
場では遊具等を活用し、体力向上につながるサーキットトレーニングに取り組ませる。
エ
年間指導計画の工夫・改善例の紹介
○
毎年、学校の実態や体力テストの結果等に応じて、年間指導計画の見直しが必要となる。
その際、領域によっては全学年の指導時期をそろえることで次のようなメリットがある。
①
用具準備の効率化が図れる。(跳び箱・マット・ライン等の準備)
②
他学年の様子(運動場での活動)を教室等から見ることで、場や動きの確認ができ、
オリエンテーションの効率化が図れる。
③
職員室での話題となり、発達段階に応じた指導法の工夫・改善につなげられる。
④
体育主任より職朝・終礼でポイントを簡潔に伝えたり、資料を紹介したりできる。
○
①
②
③
見直しの視点
教科書会社のダウンロードできるデータをそのまま使っていないか?
⇒
学校の規模や児童・教員の実態に合っているか。
⇒
全学年ゴール型がサッカーばかりなど偏っていないか。バランスを考慮してあるか。
教員が経験したことのないニュースポーツが多数入っており、指導しきれない。
⇒
指導できるように研修を行う。(まるわかりハンドブック・DVDの活用)
⇒
計画の再検討や変更を行う。
種目名のみで表記してあるために、正式ルールで指導していないか。
⇒
発達段階に応じた指導のため中学年は○○を基にした「易しい」ゲーム、高学年は○
○を基にした「簡易化された」ゲームとなっている。
④
2学年にわたって指導する内容が多い。それぞれの学年で指導内容の違いを明記した単元
計画も整備していく。
○
①
運動領域
動きや技能の習得に向けて確実に指導できる時間を確保する。態度、思考・判断もバラン
スよく指導する。(特定の領域に極端な時間配当とならないようにする。)
②
体つくり運動は、確実な動きの習得の面からみて単独単元として位置付ける。
③
器械運動系、陸上運動系、水泳系、ボール運動系、表現運動系は2学年いずれかの学年で
−体つくり運動
指導することも可能である。
④
器械運動(第3•4学年以降)は、鉄棒運動、跳び箱運動、マット運動をバランスよく配分
する。
⑤
陸上運動(第5•6学年以降)は、短距離走・リレー、ハードル走、走り幅跳び、走り高跳
びをバランスよく配分する。※第3・4学年からの接続
⑥
表現運動(第3•4学年以降)は、表現、リズムダンス、フォークダンスをバランスよく配
分する。(第3・4学年⇒表現・リズム
⑦
第5•6学年フォークダンス・表現)
水泳は、水中からのスタートが原則である。着衣泳は、安全への態度の育成として必要に
応じて実施する。
⑧
ボール運動への時間配当は、3つの型をバランスよく配当する。なおベースボール型は、
運動の場の確保が難しい場合は、取り扱わないこともできる。
○
保健領域
①
3・4学年は8時間程度、5・6学年は16時間程度を配当する。
②
身近な生活における健康や安全に関する基礎的な内容を重視する。
③
「体つくり運動」との関連を図り、心と体の変化に気付いたことを理解したり、保健で学
習したことを実践したりし、相互の関連を図る。
④
○
①
習得した知識を活用する学習活動を取り入れ、思考力・判断力を育成することを重視する。
その他
体育の時間の学習成果をもとに体育・健康に関する指導の充実を目指して、特別活動、学
校行事等との関連を見通しておく。運動会の準備のための体育ではなく、その成果となるよ
う留意する。
②
新体力テストについては、安易に体育の時間に割り当てない。学校行事や学校裁量の時間
としての割り当ても考慮する。特別活動での取り扱いのほか、体育の授業時数の一部として、
学習指導要領に示された内容に加えて取り扱うことは可能である。
オ
ICTの活用
言葉で説明するより、視覚的に説明した方が児童には伝わりやすい。わからない・できな
いからやりたくないとあきらめてしまう児童に、ICTの活用を通して、できない原因を探
り、効果的な練習の仕方を学ばせることによって、自分から進んで練習しようとする意欲を
高めていく。
ICTを活用することで、①説明時間の短縮、②静止画・動画、音声等の活用による「学
習内容の理解の促進」や「興味・関心の向上」、③子どもへの情報伝達や子ども同士の教え
合いなどの共同学習の効果が期待されている。
体育学習での活用場面
①
オリエンテーションでゴールイメージや学習課題の提示
・
まるわかりハンドブックDVDの視聴により、場づくりや指導の工夫に役立てるこ
とができる。
・ 各技能に関して「正しい動き」を 動画で提示し、これから学習する運動のイメージ
形成に役立てる。
②
用具・場・ルールの説明
・
③
オリエンテーションにおいてプレゼンテーションを活用する。
模範・ポイント・練習方法の提示
・
「正しい動き」だけの提示ではなく、その動きをうまく遂行するために必要な「技
術的ポイント」や「練習方法」などもあわせて提示すると効果的である。
④
作戦での活用
・
⑤
作戦ボードとして、動きの確認などに活用する。
学習状況のフィードバック
・
学習者の動きを遅延再生・提示することにより、模範と自分の動きの違いを客観的
に分析・把握することが容易になる。(スロー・反転・書き込み・2画面比較アプリ)
⑥
準備運動、補助・補強運動、整理運動等で音楽の活用
・
⑦
音楽の活用でシステム化、効率化を図る。
学習成果の記録、ルール、場や学んでいる姿をサーバーへ
・
学年毎、領域毎に保存、管理し学校全体で体育のポートフォリオとする。
・
子どもたちの学びの姿を「見える化」し、次年度の授業実践に活用する。
・
事後研究会はカメラ・タブレットの映像を見ながら具体的に進める。
・
小体連のホームページやサーバーで学びの姿・場や用具を画像で保存・共有する。
カ
課題である種目への取組(握力・ボール投げ)
握力を高めるために、鉄棒遊び・鉄棒運動の学習をさらに充実させるために、重点技を示
した系統表を作成し、学年で指導すべき内容を明確化する。
1年
2年
3年
ボール投げの紹介は平成25年度版を参照
4年
5年
6年
②
中学校
ア
・
補助・補強運動(体幹トレーニング)の実践例【日南市立北郷小中学校】
コーディネーショントレーニング
状況を目や耳などの五感で察知し、そ
れを頭で判断し、具体的に筋肉を動かす
といった一連の過程をスムーズに行う能
力を高めるトレーニングである。専門的
な技術を覚えるのに当たっての、前提と
しての動きづくりとして効果的である。
・
体幹トレーニング
体幹は、力を出すための軸になる部分で
ある。体幹を鍛え、筋力のバランスをよく
したり姿勢をよくしたりして、動きの向上
を図るようにする。
家庭でも取り組めるように、資料を全員
に配付した。
・
ストレッチ
筋肉を良好な状態にする目的でその筋肉
を引っ張って伸ばす。筋肉の柔軟性を高め
関節可動域を広げるようにする。特に股関
節や肩甲骨周りを中心に、ストレッチを実
施した。
イ
課題である種目への取組(握力・ボール投げ)
バドミントンの授業にお
いて、遠くへシャトルを打つ
(遠くへ投げる)ことを意識
させるために、バケツの上に
傘を設置した。目標物を狙わ
せることで、楽しみながらラ
ケットをしっかりと振るこ
とができた。(本単元で毎時
間実施)
昼休みに道具の借用と体育館を開
放し、バドミントンを楽しめるように
する。日常的にバドミントンを実施さ
せ、楽しみながら投動作に近いラケッ
ト競技に親しむ環境を提供すること
にした。
ウ
体つくり運動の実践例【宮崎大学教育文化学部附属中学校】
年度はじめに実施する新体力テストの結果を踏まえ、秋季休業を前後する形で「体つくり運
動」の単元を実践する。
業者から返却される個人カードをもとに体力の自己分析を行い、自分の体力の改善点を記入
する。
1年次、2年次、3年次の記録
を記入して、全国平均との比較を
します。学年が上がるにつれて、
記録の向上は見られるか、様々な
視点から記録を振り返ります。
このレーダーチャートに得点を
点にして記し、その点を線で結び
ます。できるだけ大きな正八角形
に近いとバランスのよい優れた体
力をもっているということになり
ます。自分の落ち込んでいる項目
を再確認することができます。
2時間目以降は、体ほぐしの運動をメインにした活動から、時間が経過する毎に体力を高め
る運動をメインにした活動に移行していく。その中で、
「体の柔らかさを高めるための運動」
「巧
みな動きを高めるための運動」
「力強い動きを高めるための運動」
「動きを持続する能力を高め
るための運動」の実践内容を紹介しながら、個人で高めたい体力の「運動プログラム」を組み
立てる。そして、その「運動プログラム」を実践したり、修正したりしながら、秋季休業中や
日常生活の中に取り入れていくように促していく。
【運動プログラムの実践の様子】
フラフープを使って、柔軟
性を高める動きをしていま
す。逆さ感覚も体感するので、
巧みな動きを高めることにも
つながります。ペアと協力し
ながら、お互いの体への気付
きにもつながります。
バスケットボールを脚では
さんで、腹筋運動をしていま
す。腕は伸ばして、砂の入っ
たペットボトルを持っている
生徒もいました。慣れてきた
ら、メディシンボールなど重
さを変えてもいいです。
ソフトテニスのボールを握
って握力の強化をしていま
す。腕を伸ばしながらやるこ
とで、なお一層の負荷をかけ
ることができます。回数を決
めたり、時間を決めたりして
実践しています。
跳び箱の上につま先立ちで
足を置き、腕立て伏せを行っ
ています。腕の幅を変えたり
しながら様々な部位を鍛えて
います。ペアの人が背中に重
りを乗せ、さらに負荷をかけ
ている生徒もいました。
エ
体力向上プランの紹介(小林市立西小林中学校)
具体的な取組
(1)
学校における取組
ア
教科(保健体育)における取組(省略)
イ
ア以外の学校生活全体を通しての取組(一部省略)
○
体力アップカードを活用した日常指導を行っている。
体力アップカードには、
「朝食を食べているか」
「自立登下校ができているか」
「トレ
ーニングを4種目行っているか」の自己評価欄を設け、体力向上への意識の高揚を
図っている。また、第1回と第2回の体力テストの分析を一人一人行わせ、自分の
体力の特徴を把握させたり、今後どのような運動をしていくとよいかを考えさせた
りしている。夏休みには、体力テストの結果から各自のトレーニングを実践させた。
②
高等学校
50分間の授業の中で、いかに主運動の時間を確保しながら体力を向上させられるかを研究
し、取り組んできた。その取組の一つとして、音楽を使ったウォ−ミングアップや、サ−キッ
トトレ−ニングを授業の始まりに行ってきた。そこから、主運動につながる動きを取り入れた
ウォーミングアップの改善を高体連の各支部では研究をしている。そんな中、最近では、トレ
−ニングの中に体幹を鍛えるトレ−ニングを取り入れている学校も多くなっている。
(1)新体力テストの結果から
体育の授業における体力向上の取組は、総合的に体力を高めること(サ−キットトレ−ニン
グ、音楽を使ったウォ−ミングアップ)に着眼しており、新体力テストの分析により体力の課
題を見つけ補助・補強運動の中で総合的に体力を高めることが重要である。平成26年度の全
国と県平均との比較により、課題である『握力』と『ボール投げ』について、筋力や投力を高
めるための運動を紹介したい。
(2)握力強化への取組
平成 25 年度の体力・運動能力調査報告書によると、握力は、ピークに達する年齢が遅く、男
性 30 歳∼34 歳 女性 40 歳∼44 歳でピークを迎えることが報告されている。この高校時代に握
力をはじめ生涯にわたって運動に親しむ資質や能力を身に付けておくことが今後に影響するの
で大事である。
【体育授業の中で・・・】
○授業の中で積極的に、鉄棒を使用する。
○綱があれば、綱上りなどを行わせる。
○アップのランニングでただ走るのではなく(ソフト)テニスボールなどを握りリズムを取
りながらジョグを行わせる。
○サッカーの授業の中で、(ソフト)テニスボールを握らせて試合などを行わせる。
握力強化のためサーキットにハンドグリップを使用
(ドリブル(手前)、シュート(中央奥)、ハンドリング(右奥))
※握力強化のため、ハンドリングでボールつまみ上げを実施
【日常生活の中で・・・】
○清掃時に「ぞうきん絞り」の実践
(3)
投げる動きを身に付けるための取組
ボール投げの取組として「 リ ボ ン エ ク サ サ イ ズ 」を紹介
○投力向上には、まず正しいフォームの上に、強い力が加わらなければならない。
(体の使い方・力の伝え方をマスターする必要あり)→※習得した知識を活用する筋力を高め
る必要がある。
○力を効率よく伝えるために関節を支点とし、体全体を使う時の力の強弱いわゆるリズム感を
養う必要がある。
A
ボール投げ振り
ねらい・・『てこ』の運動で関節の上手な動かし方を自然に習得
①↑
②↑
③↑
④↑
① 肩→ ② 肘 → ③ 手首 → ④ 指 の順に、力が遅れて伝わるようにする。
①
1つ関節を経るごとにスピードを増幅させていく
②
ボールを離す瞬間に最大の力を集結させることをイメージ
※
リボンが長いので肘を高い位置に保つことを心がけられる
ようになる。
③
手首のスナップを利かせ、リボンを強く振り下ろす。
④
膝を使い上体に強弱のリズムをつけていく。
※
腕の末端ほど関節を遅らせて動かしムチのように使えるとよい。
※
力を最後の指先まで伝えることができるようになる。
腕が身体の後方から前方へ振り出される(肘や手首のしなやかな動きを身に付ける)
B
※
その他にも、手首を回す「スパイラル振り」(ねらい…手首の巧みさ)もある。
※
逆の手にも持って、両方バランスよくやる方がよい。
※
リボンを長くすればするほど体全体を使うことになり難易度が上がる。
片手8の字振り
ねらい…下半身と腕の連動・
※
上体のローリング感を身に付け
リボンの8の字トレーニング
※
下半身を使いながら体をひねり、体幹部を意識して行う。
※
リボンを下から斜め上へ振る動きは、腰と膝のバネを使って体をひねりながら
行うので、体の中心から末端への力の伝達やリズム感を習得できる。
※
関節の可動範囲を広げる効果にも期待できる。両手でも実践してみるとよい。