肝臓X受容体(LXRs)αおよびβは脂質代謝と炎症の制御を行うオキシ

肝臓 X 受容体(LXRs)αおよびβは脂質代謝と炎症の制御を行うオキシステロール活性化核内受容体である。LXR
の薬理学的活性化により、マクロファージからコレステロール流出を促進し、泡沫細胞の形成を防ぐことができ
るため、アテローム性動脈硬化の治療に期待される。しかしながら、LXR アゴニストの開発は、LXRα活性化
による脂肪肝等の副作用のため制限されている。したがって、肝臓外組織に特異的に作用する LXRα活性化剤
あるいは LXRβ特異的活性化剤を代わりに使うことが提案されている。しかし、これらのアゴニストが非選択
的アゴニストに有するアテローム形成抑制能を維持しているかについては不明である。そこで、筆者らは、ヒト
マクロファージでのコレステロール流出制御における LXRαおよび LXRβの寄与について調べた。ヒト初代培
養マクロファージにおいて、LXRαと LXRβの発現は、LXRα/βアゴニストである TO901317 と GW3965 の
存在に関わらず、低分子干渉 RNA(siRNA) によって抑制された。LXRβのノックダウンでは、ABCA1 と ABCG1
等の LXR 標的遺伝子の発現に影響は見られず、コレステロール流出にも影響を与えなかった。対照的に、LXR
αのノックダウンでは、LXR アゴニストによる LXR 標的遺伝子の反応を減少させ、ApoA-Ⅰ、HDL2、内在性
ApoE へのコレステロール流出を抑制した。重要なことに、LXRαのシングルノックダウンと LXRα/βダブル
ノックダウンの間に差は見られなかった。
以上の結果から、LXRαの発現が障害される場合、LXRβの活性化のみで、ヒト初代培養マクロファージにおけ
るコレステロール流出能の維持ができないことが実証された。
マウスの研究と対照的に、ヒトでは、LXRαレベルはマクロファージのコレステロール流出を制限する因子とな
り得るであろう。