ナノミセル型siRNA送達システムの開発

ナノミセル型siRNA送達システムの開発
ステムとしての要件を充分に満足させる事が可能である。
実施予定期間:平成 17 年度~平成 19 年度
既に、制ガン剤(アドリアマイシン、パクリタキセル)を
研 究 代 表 者:片岡 一則(東京大学大学院工学系研究科
内包した血中滞留型ナノミセル製剤が我が国(国立がんセ
マテリアル工学専攻・同医学系研究科臨床医工学部門)
ンター中央病院)において臨床試験に進むなど、実用的な
共同研究機関:(株)ジーンケア研究所
DDS として大きな注目を集めている。また,プラスミド DNA
を内包するナノミセルについては、遺伝子送達システムと
1. 共同研究の目標について
しての優れた特長が見出されており、in vivo における有
本共同研究の目標は、臨床応用へ向けた siRNA 送達システ
効な遺伝子導入と治療効果の確認が既に達成されている。
ムの開発である。高分子のナノ集積手法に基づいて創出さ
本申請課題に直接関連する siRNA デリバリーへの展開に
れたナノミセル型薬物送達キャリアを、近年のバイオテク
ついても、以下に詳述する二つの系で、ナノミセル型キャ
ノロジーの進展に基づいて発見された画期的な核酸医薬
リアを用いた有効な in vitro 遺伝子ノックダウンを確認
である siRNA の送達システムへと応用することによって、
している。
「必要な時(timing)に、必要な部位(location)で、必
a. 内核構成連鎖の精密構造設計に基づくインテリジェン
要な治療(action)」を最小限の副作用で達成する「ナノ
ト型ナノミセルキャリアの構築
治療システム」を開発する。対象疾患としては、日本国民
1 つのモノマーユニット内に塩基性度の異なる 2 つ以上の
の死亡原因の第1位であり、有効な治療法の確立が強く望
アミノ基を規則正しく配置したポリカチオンセグメント
まれている「難治ガン」治療を目標とし、動物モデルでの
をナノミセルの内核構成連鎖とするブロック共重合体を
薬効の評価と、高分子ナノテクノロジーを駆使したナノミ
設計する事によって、1)安定な siRNA 担持機能と 2)効率
セル型キャリア・デザインの行程を緊密な産学連携の元に
的な細胞質内輸送のためのエンドソーム溶解機能という
進めることによって、3年後には臨床応用可能なシステム
2つの機能を両立させたインテリジェント・ナノキャリア
を構築する。
システムの構築を行った。この様なナノミセル型キャリア
を用いて、培養細胞に対する siRNA 導入を行う事によって、
2. 共同研究計画・内容(手法も含む)について
ナノミセル型薬物送達システムは,経費受給機関代表者
従来、困難とされていた血清タンパク質共存下においても、
内在性遺伝子を含めた効率的な遺伝子ノックダウンを導
である片岡(東京大学大学院工学系研究科・同医学系研究
く事に成功した(K. Itaka,K. Kataoka, et al; J. Am. Chem.
科)(以下東京大学)が世界に先駆けて独創的に開発を進
Soc.; 126:13612-13613 (2004))。
めてきたものであり、親水性かつ生体適合性のポリエチレ
b. PEG-siRNA 結合体(PEG-siRNA コンジュゲート)を内包
ングリコール(PEG)鎖を含むブロック共重合体の多分子
するナノミセル・システムの構築
会合によって形成される高分子ミセルを、ナノスケールの
細胞内ミクロ環境(エンドソーム内酸性環境および細胞
輸送キャリア(ナノキャリア)として用いるシステムであ
質内還元的環境)で選択的に開裂する化学結合(エステル
る。ナノミセルは薬物を含有する内核の周囲を PEG の外殻
結合およびジスルフィド結合)を介して連結したポリエチ
が取り囲むという明確な二層構造を有しており、粒径は
レングリコール(PEG)-siRNA コンジュゲートを合成し、血
50~100nm と、天然のウィルスに類似した大きさと形態を
流中における安定性の向上と細胞内での siRNA の効率的
持った、いわば人工ウィルスとも呼ぶべき新規ナノキャリ
な機能発現を実現するための新しい分子設計を行った。
ア・システムである。このシステムは、1)抗原性,細胞毒
PEG-siRNA コンジュゲートは任意のポリカチオンと混合す
性がほとんど無く安全性に優れる、2)生理的環境下でも非
ることにより、高分子ナノミセルを形成することが可能で
常に安定である、3)細胞表面受容体などへの結合性の高い
ある。この高分子ナノミセルは、数 nM の極めて低い siRNA
リガンドやペプチドをミセル外殻へ連結することが可能
濃度においても非常に高い遺伝子ノックダウン効果を示
で、標的細胞に対する特異性を高めることが出来る、4)
すことが明らかとなった(M. Oishi,K. Itaka,K. Kataoka
外部環境に応じた薬物放出特性を実現(インテリジェント
et al; J. Am. Chem. Soc.; 127:1624-1625 (2005))。さ
性)出来るなどの特長を有しており、理想的な薬物送達シ
らに、この様な高分子ナノミセルは、PEG 末端に導入した
リガンド分子(ラクトース)を介して細胞内に取り込まれ、
性化が可能となることであり、市販の培養細胞のための
siRNA 活性が著しく増強されたことから、in vivo におけ
siRNA 導入剤により数 10nM で遺伝子の不活性化効果が確
る標的選択的 siRNA 送達システムとしての有効性が強く
認されることから、ナノミセル型 siRNA キャリアにおいて
期待される。
はより低濃度域での有効性を目標とする。また蛍光標識を
以上の様な成果を基盤として、本共同研究では、ナノミセ
利用して siRNA の取り込み量や細胞内挙動を定性的かつ
ル型 siRNA 送達システムの in vivo 治療への展開を推進す
定量的に解析し、siRNA の効率的な細胞内デリバリーのた
る。すなわち、臨床応用に向けたリードオプティマイゼー
めにキャリアに必要とされる基本特性を明確にする。
ションを目的として、共同研究機関である株式会社ジーン
(3) ガン細胞パネルを用いた制ガン siRNA 内包ナノミセ
ケア研究所(以下,ジーンケア)が開発した制ガン siRNA
ル型キャリアの増殖抑制評価試験(ジーンケア)
を用いた機能評価を行う。ガンは依然として日本国民の死
上述で設計されたナノミセル型 siRNA キャリアの種々
亡原因の第1位であり、有効な治療法の確立は我が国が解
のガン細胞の増殖に対する影響を調べる。検討の対象とな
決すべき最重要課題の一つである。ジーンケアでは、早老
るガン細胞としては、肺ガン、乳ガン、大腸ガン、前立腺
症ウエルナー症候群の原因遺伝子である WRN ヘリカーゼ
ガン、子宮ガン、肝ガン、膵臓ガン等由来のガン細胞パネ
及び、WRN ヘリカーゼが属する RecQ ヘリカーゼファミリ
ル30株以上を予定している。これより、siRNA キャリア
ーに対する siRNA が、ガン細胞特異的にアポトーシスを誘
の有効濃度域を種々の培養細胞に対して明らかにし、担ガ
導し死滅させる事実を見出した。これはヒト RecQ ヘリカ
ンマウスによる制ガン効果の検討に用いるガン細胞と
ーゼファミリーが制ガンの優れた標的であることを証明
siRNA キャリアの組み合わせを決定する。またガン細胞種
すると同時に、ガン細胞特異的にアポトーシスを誘導する
の違いによる適切なデリバリーキャリア設計を行うため
siRNA そのものが、制ガンの優れたシーズであることを示
に、デリバリー効率が低いガン細胞種を同定する。
す(株式会社ジーンケア研究所、特許出願中)。本共同研
(4) 担ガンマウスを用いた制ガン siRNA 内包ナノミセル
究では,ナノミセル型 siRNA キャリアの in vivo 送達シス
型キャリアの制ガン効果評価試験(東京大学、ジーンケア)
テムとしての機能評価を、担ガンモデルマウスを使った動
ガン細胞パネルを用いた実験により決定された、ガン細
物実験により行う。具体的な研究計画としては,以下の通
胞とナノミセル型 siRNA キャリアの組み合わせを用いて、
りである。
in vivo での制ガン効果を検討する。ヌードマウスにヒト
(1) ナノミセル型 siRNA キャリアの設計と in vitro 機能
ガン細胞を皮下移植し、生着を確認した後に RecQ ヘリカ
評価(東京大学)
ーゼファミリー遺伝子に対する siRNA を内包したナノミ
標的となる種々のガン細胞に対して、siRNA の遺伝子ノッ
セル型キャリアを投与し、腫瘍サイズ,腫瘍体積,体重の
クダウン効果が最も効率よく得られる高分子構造の検討
測定を行う。また腫瘍部分におけるアポトーシスの誘導を
を行う。高分子構造、高分子鎖長、および siRNA との混合
検証する。既存の制ガン剤であるシスプラチンやドキソル
荷電比のわずかな違いで、形成されるキャリアの物性、生
ビシン等と比較して、有効投与量や投与回数の低減、なら
物学的機能は大きく変化することが想定されるため、ナノ
びに副作用の軽減を指標として有効性を検証する。また、
ミセルの物性評価並びに in vitro 機能評価を通じて、
生体内イメージング装置(IVIS、東京大学に設置済み)と
siRNA キャリアとして最適の構造を絞り込んで行く。また、
ルシフェラーゼを安定発現するガン細胞株の組み合わせ
in vitro 無血管腫瘍モデルである培養ガンスフェロイド
を用いる事によって、転移ガン治療への有用性についても
を用いて、腫瘍縮小効果の時間依存性並びにナノキャリア
検討を行う。
のガン組織内浸透性を詳細に評価し、最適ナノキャリアサ
(5) siRNA キャリアの毒性・薬理・薬物動態試験(ジーン
イズと siRNA 放出特性の関係を明らかとしていく。
ケア)
(2) 制ガン siRNA を内包したナノミセル型キャリアの in
厚生労働省の定めるプロトコルにより行う。毒性が極めて
vitro 活性評価(東京大学、ジーンケア)
低く、血中において10時間以上の滞留能をもつことを指
RecQ ヘリカーゼファミリー遺伝子に対する siRNA を内
標にしたナノキャリアシステムの最適化を行う。
包したナノミセル型 siRNA キャリアの in vitro での薬理
(6) 臨床試験(ジーンケア)
活性を、詳細に検討する。ナノミセル型 siRNA キャリアの
厚生労働省の定めるプロトコルにより行う。制ガン siRNA
基本的なコンセプトは、in vivo で治療分子を患部に効率
内包ナノミセル型キャリアについては、一種類以上のガン
的かつ選択的にデリバリーすることで薬効を改善するこ
種において制ガン作用を確認する。また本研究課題は、最
とであるが、siRNA 分子の安定化,細胞内取り込みの改善
終的には大手製薬企業と一定の契約を結び、これに基づい
および細胞内環境に応答した siRNA 分子の放出により、in
て臨床応用に向けたガン治療薬の開発を行うことを前提
vitro での siRNA の薬効が大幅に改善される可能性がある。
としているため、知的所有権の形成についても東京大学と
siRNA の最大の特徴は、極めて効率的な標的遺伝子の不活
連携して積極的に進める。
3. 共同研究の必要性について
企業の国際的活躍へとつながることが期待される。さらに
siRNA による遺伝子ノックダウンは、「PCR 以来の画期
は、大学とベンチャー企業から生まれた独創性高い成果が
的技術」といわれ、その疾患治療への応用は強く実現が求
高付加価値製品として実用化されるというプロセスを通
められているものである。
本共同研究で用いる RecQ-siRNA
じて、起業マインドに溢れた若い研究人材が育成されると
はガン細胞を効率よくアポトーシスに導く画期的医薬品
いう点も大きな波及効果として位置づけられる。
候補であり、医薬品に極めて望ましい性質を兼ね備えた夢
の治療薬となる可能性を秘めている。
5. 共同研究により期待される成果及びその活用方法につ
一方、臨床への siRNA の応用には、安全かつ効率的なデリ
いて
バリーシステムの確立が非常に重要となる。標的とする細
本共同研究は、総合科学技術会議においても重点研究項目
胞へのみ確実に siRNA を送り届けるターゲティングのみ
に挙げられている「ナノ DDS(ドラッグデリバリーシステ
ならず、適切な時期に適切な遺伝子を発現させる、または
ム)開発」の最前線に位置するものであり、その成果は広
抑制するという、状況に応じた空間的・時間的機能制御の
くナノバイオ産業の推進と国際競争力の強化に資するも
可能なシステムが望まれる。そのための siRNA デリバリー
のと考えられる。医薬品開発において圧倒的優位にある米
システムの開発は、対象疾患の治療に最適な siRNA を設計
国においても、ナノテクノロジー国家戦略において、将来
するバイオテクノロジーと、その様にして設計された
を見据えた研究目標の一つに「標的治療を可能とする遺伝
siRNA を標的部位・細胞に輸送するナノキャリアを構築す
子や薬物デリバリー」を掲げ、積極的な取組みを行ってい
るためのナノテクノロジーという両先端分野の高度な次
る。我が国は、ナノテクノロジー・材料技術で米国をはじ
元での融合が不可欠であり、両分野で高い実績を有する研
めとする先進各国に対する優位性を有しており、本申請が
究機関(東京大学とジーンケア研究所)の緊密な連携の元
目指す様なナノテクノロジーを活用した革新的な担体材
での共同研究が必要となる。
料の開発を集中的に実施することによって、ナノバイオ産
業分野における国際競争力の強化を図ることが出来る。ま
4. 共同研究の社会・経済の発展等に対する波及効果につ
た,
本共同研究から生み出される知的財産は、様々な siRNA
いて
に基づく治療へも活用されることが期待され、社会的・経
本共同研究が目標とする臨床応用可能なナノミセル型
済的に大きな効果をもたらすことが確信される。
siRNA 送達システムの実現は、核酸医薬を用いた革新的ガ
ン治療領域を確立するキーテクノロジーであり、多くの難
6. 生命倫理・安全面への配慮について
治ガン治療を通じて高い社会的貢献をもたらすことが期
動物実験は、国の「動物の保護および管理に関する法律」
待される。さらに、本研究成果はガンの他、C 型肝炎など
などに従い、動物愛護の観点に十分配慮して行う。東京大
の感染症、循環器疾患、遺伝子疾患などの難治性疾患に対
学での当該動物実験は東京大学動物実施マニュアルと NIH
する有効かつ副作用のない治療法を提供するものであり、
ガイドラインに則って行われ、動物愛護の立場から必要最
我が国の医療・福祉水準の向上に計り知れない貢献をもた
小限に留める。また、本研究の実験内容が含まれる動物実
らすと同時に、ナノテクノロジーと高度医療との融合に基
験計画書は、東京大学動物実験専門委員会に承認済みであ
づく「ナノ医療」という新領域創成をも促すものである。
る。
一方、経済面からの波及効果としては、夢の新薬として各
方面から期待されている siRNA の実用化を通じて、ナノバ
イオを基調とする新医療産業の発展を先導し、かつ、その
様な産業活動の中核となる我が国発のバイオベンチャー
7. 実施体制
氏名
◎○片岡
所属機関・職名
一則
東京大学・教授
提案課題における役割
経費受給期間代表者、siRNA キャリア設計・合成責
任者
○
西山
伸宏
東京大学・講師
siRNA キャリア機能評価責任者
山崎
裕一
東京大学・准教授
siRNA キャリア設計・合成参画者
長田
健介
東京大学・講師
siRNA キャリア設計・合成参画者
Lee Yan
東京大学・特任教員
siRNA キャリア設計・合成参画者
○
古市
泰宏
(株)ジーンケア研究所・代表取締役会長
共同研究機関代表者、制ガン活性評価責任者
○
二見
和伸
(株)ジーンケア研究所・研究員
siRNA 検出系、配列スクリーニング責任者
制ガン活性試験参画者
平井
美和
(株)ジーンケア研究所・研究員
制ガン活性試験参画者
8. 各年度の計画と実績
いては、ナノミセルの希釈に対する安定性が重要であると
a.平成 17 年度
考えられ、siRNA の活性のみならずナノミセルの安定性を
・計画
十分に考慮したキャリア設計を行う。また、ラクトースリ
PEG-ポリカチオンブロック共重合体の合成および siRNA
ガンドに加え、種々のガン細胞に対する標的化を実現する
コンジュゲートの合成を行い、siRNA 内包ナノミセルを調
ために、多くのガン細胞で過剰発現が認められる葉酸や環
製する。調製したナノミセルの物性評価ならびに生体内投
状 RGD リガンドを導入したナノミセル型 siRNA キャリアの
与を視野に入れた安定性試験を行う。また、ナノミセルの
構築を行う。さらに、ナノミセル型 siRNA キャリアの体内
in vitro における機能発現をレポーター遺伝子を用いた
動態を蛍光および放射性同位体でラベルした siRNA を用
アッセイならびに RecQ を標的にした siRNA による細胞増
いて行う。同時に、in vivo イメージングシステムを用い
殖阻害実験により検討する。さらには、表面にラクトース
た制ガン活性の評価系確立とルシフェラーゼ発現細胞を
分子を導入した siRNA 内包ナノミセルを開発し、ラクトー
用いた制ガン活性を進める予定である。
スに対する受容体を発現する肝ガン細胞に対する有効性
・実績
を確認する。
・実績
PEG-ポリカチオンブロック共重合体から形成されるナ
ノミセルに関しては、その構造安定性を高めるために、側
PEG-ポリカチオンブロック共重合体から形成されるナ
鎖にカチオン性イミノ基とチオール基を導入し、内核がジ
ノミセルに関しては、物性評価を通じてナノ粒子形成のた
スルフィド結合により安定化されたsiRNAナノミセルを構
めのナノミセル調製条件を確立した。一方、PEG-siRNA コ
築した(平成17年度に開発された架橋ミセルにはカチオン
ンジュゲートにより形成されるナノミセルの構造最適化
性イミノ基が導入されていない)。この架橋型ナノミセル
を行い、低濃度で高い siRNA 活性が得られることを確認し
は、非架橋型と比較してsiRNA活性が100倍以上に高まるこ
た。PEG-siRNA コンジュゲート型ナノミセルについては、
とが確認された。リガンドの導入に関しては、モデルとし
in vitro 無血管腫瘍モデルとして培養ガンスフェロイド
て蛍光標識DNAを内包した環状RGD装着型ナノミセルを構
に対する siRNA の活性評価を行ったところ、RecQ を標的
築した。環状RGD装着型ナノミセルは、環状RGD非装着型と
にした siRNA を用いることにより、有意なスフェロイドの
比較して、迅速に細胞内に取り込まれ、異なる細胞内動態
増殖抑制活性が得られることを確認した。
一方、
汎用 siRNA
を示すことが明らかとなった。
導入試薬であるオリゴフェクタミンを用いた場合には、
PEG-siRNAコンジュゲートとポリカチオンから形成され
siRNA の導入によるスフェロイドの増殖抑制活性が確認さ
るナノミセルに関しては、前年度までにHuH-7細胞からな
れなかった。
るスフェロイドに対するRecQ標的siRNA内包ナノミセルの
b.平成 18 年度
高い抗腫瘍活性が確認されたために、本年度は、HuH-7を
・計画
皮下に移植したマウスを用いてin vivoにおける制ガン活
平成 17 年度に得られた結果より、さらに優れた siRNA
性を評価したが、有意な治療効果は得られなかった。そこ
活性を実現するために、ナノミセル型キャリアの構造最適
で、32Pで標識したsiRNAを用いて体内動態評価を行ったと
化を行う。とりわけ全身投与による siRNA デリバリーにお
ころ、血中濃度および組織への集積においてナノミセルと
PEG-siRNAコンジュゲート単独との間に明確な差は認めら
が認められたために、本年度は種々のガン細胞を用いてス
れなかった。この結果は、PEG-siRNAコンジュゲート型ナ
フェロイドの調製を試みたが、siRNAの活性評価が可能な
ノミセルは、血中における安定性に乏しく、速やかに
スフェロイドを構築することができなかった。これは、ス
PEG-siRNAコンジュゲートへと解離していることを示唆し
フェロイドの構築が細胞種に依存することによるものと
ているものと考えられる。本システムについては、平成19
考えられる。
年度以降に、ミセル構造を安定化させるための分子設計を
c.平成 19 年度
行っていく予定である。一方、in vivoイメージングシス
・計画
テムによる制ガン活性評価については、ルシフェラーゼ発
平成 17、18 年度に得られた成果を基盤として、最適化
現がん細胞を作成し、in vitroで有効に機能することを確
されたナノミセル型 siRNA キャリアに環境応答機能と標
認した。本手法は、ナノミセルの機能評価に活用する予定
的認識機能を導入し、さらなるインテリジェント化を図る。
である。
ナノミセル型 siRNA キャリアの機能評価は、担ガンマウス
さらに本年度は、RecQL1を標的とするsiRNA配列の最適
を用いた動物実験により行い、体内動態と制ガン活性の両
化を行った。この選抜した配列を用いて、ガン細胞パネル
方において優れたナノミセルを開発する。さらに、ナノミ
で活性評価を行った。一方、平成17年度の成果報告書に記
セル型 siRNA キャリアの安全性についても検討を行う予
載したように、HuH-7細胞からなるスフェロイドに対して
定である。
PEG-siRNAコンジュゲート型ナノミセルの高いsiRNA活性
9. 年次計画
共同研究の実施機関
1年度目
2年度目
3年度目
ブロック共重 合体お
よび siRNA コンジュゲ
ートの合成
ブロック共重 合体お
よび siRNA コンジュゲ
ートの合成
ブロック共重合体お
よび siRNA コンジュゲ
ートの合成とナノミ
セルの構築
15 (百万円)
15 (百万円)
ナノミセルの 物性評
価
ナノミセルの in vitro
機能評価
7 (百万円)
6 (百万円)
ナノミセルの in vitro
機能評価
イメージング 装置に
よる siRNA 活性評価
16 (百万円)
3 (百万円)
東京大学
10 (百万円)
ナノミセルの体内動
態評価
15 (百万円)
担ガンマウスによる
制ガン活性評価
5 (百万円)
担ガンマウス による
制ガン活性評価
15 (百万円)
株式会社ジーンケア研究所
ナノミセルの毒性,薬
理,薬物動態試験
ナノミセルの毒性,薬
理,薬物動態試験
siRNA 検出法の開発
担ガンマウス による
制ガン活性評価
担ガンマウスによる
制ガン活性評価
新規制癌標的 分子同
定
ガン細胞パネ ルを用
いたキャリア封入
siRNA の活性試験
ガン細胞パネルを用
いたキャリア封入
siRNA の活性試験
配列スクリーニング