腰仙部神経根障害に対する 術後理学療法

特集 腰痛の理学療法とケア
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4 腰仙部神経根障害に対する術後理学療法
腰仙部神経根障害に対する
術後理学療法
T10‒11の椎間関節
腰椎移行部
T12‒L1の椎間関節
木澤清行
神戸百年記念病院 リハビリテーション部
腰仙移行部
L5‒S1の椎間関節
図1
胸腰椎移行部と腰仙椎移行部の後面図
椎間関節の関節面の向きが変化します。個体差もあるため注意が必要です。
伸展と屈曲
矢状断
Point
頚椎
(C)
1
脊椎の機能解剖と手術方法を理解しましょう。
2
個々の身体的特徴を理解して術後理学療法を実践しましょう。
胸椎
(T)
3
術前評価から術後の問題点を想定し,術後理学療法につなげましょう。
T1‒T2
T2‒T3
T3‒T4
T4‒T5
T5‒T6
T6‒T7
T7‒T8
T8‒T9
T9‒T10
T10‒T11
T11‒T12
T12‒L1
7
8
9
11
12
1
2
3
4
5
はじめに
L1‒L2
L2‒L3
L3‒L4
L4‒L5
L5‒S1
腰仙椎部の機能解剖
5° 10° 15° 20° 25°
5° 10° 15° 35° 40°
角度
高齢化社会の訪れとともに,整形外科を受診する患者は
術後の理学療法を実践するためには,脊椎の機能解剖を
年々増加しています。そのなかには,腰部脊柱管狭窄症や
理解する必要があります。ここでは一部を解説しますが,
腰椎変性すべり症,圧迫骨折などから腰仙部神経根障害を
詳細は解剖書などで理解を深める必要があります。
きたす変性疾患が多く見られます。これらの症例に対し,
上位腰椎(L1 〜 4)の椎間関節は,ほぼ垂直方向に向き,
1)
し,さまざまな靭帯による結合組織性の支持と前額面に近
とも理解しておく必要があります。
法を組合せ,除痛目的に日々診療がされています。
この関節の運動性は矢状面での運動には都合がよく水平面
います。さらに胸椎では,腰椎と異なる機能性があり,こ
本章では,腰仙部神経根障害に対する理学療法を術前か
での回旋の運動には不利となります。また,腰仙移行部
(L5
のような脊椎全体の運動性と支持性の機能解剖を理解して
ら術後にかけて解説します。
〜 S1)の椎間関節面は,通常,腰部の他の関節面に比べ
おくことは,手術方法の理解や術後理学療法を実施するう
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・ 理学療法 magazine 2015/2 Vol.2 No.2
)。一般的に腰仙
頚椎,胸椎,腰椎
これらの機能性が変性により破綻している可能性が高いこ
い椎間関節面による骨性の支持により安定性が保たれて
図1
図2
の最大可動域(文献 1,2)
角は 40 度であり腰椎前弯が増大すると前方剪断力が増加
矢状面に対して中等度もしくは強度の傾斜を示します 。
て前額面に近いとされています (
5° 10° 15°
より引用)
保存療法や手術療法などさまざまな整形外科治療と理学療
1)
側屈
(片側のみ)
前額面
0cc.‒C1
C1‒C2
C2‒C3
C3‒C4
C4‒C5
C5‒C6
C6‒C7
C7‒T1
1
2
3
4
5
6
7
1
2
3
4
5
6
10
腰椎
(L)
体幹旋回
(片側のみ)
水平面
えで大変重要になります(
図2
)。対象となる症例では,
術前評価と術前理学療法
術後の理学療法を実践するうえで身体的特徴を把握する
ための術前の評価が必要不可欠になります。一般的に疼痛,
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