「評価・仮説・介入・検証型」 ポジショニングのプロセス

特集 褥瘡の予防と治療に関わるポイント
6 褥瘡の予防・悪化防止を目指したポジショニング技術
重力
まずピローを置いてみる
よくわからないので少し変えて置いてみる
何が良いかだんだん分からなくなる
の重さ
重力に対して
押し返す力
プロとして姿勢管理に携わるうえで果たすべき説明責任が果たせず,
チームでの課題・
目的の共有も出来ません。結果,
対象者の問題はなかなか解決しないという状況におち
いります。
圧が集中している状態
仙骨の支持面には骨盤の重さに加えて大腿部の重さが集まり,
足部支持面には足部の重さに加えて下腿の重さが加わる
図 4 「まず置いてみる」型ポジショニング
〜ありがちなよくない例〜
現状を把握する
問題点の抽出
仮説をたてる
目的の明確化・優先順位付
目標設定
効果判定 有効or無効or有害のいずれか
介入の継続・中止の判断
より発展的な改善計画の策定
図5
ポジショニングピローを置くその前に
圧が分配されている状態
仙骨の支持面には骨盤の重さが,
大腿後面には大腿部の重さ,
下腿後面には下腿の重さ,
足部支持面には足部の重さがのっている。
ピローの存在により,
それぞれの部位にはそれぞれ支持面をつくることができ,
圧は分配され局所にかかる外力は小さくコントロールできている。
〜仮説と効果判定〜
る技術ですので,多職種間で課題の共有,目的の共有がで
きてはじめてチームでの協業に発展し対象者に役に立つこ
とができます(睡眠時の臥位姿勢を理学療法士は提案でき
圧の分配
骨盤の重さ
重力に対して
押し返す力
介入内容の決定
見込まれる効果を予測・共有
効果判定のモニタリングポイントの共有
※特に効果判定は多職種
(チーム内)
での共有が重要,
理学療法士は24時間モニタリングできない。
さらにポジショニングは生活のある活動の中で展開され
図7
ピロー
大腿部の重さ
効果判定
圧の集中
大腿部の重さは
ピローへ
下腿部の重さは
ピローへ
下腿の重さ
介入
図6
重力
現在の臥位姿勢
臥位を支えている環境
褥瘡リスクの見積もり
褥瘡悪化要因の特定
褥瘡以外の安全・快適に影響を与える因子
足部の重さ
仮説をたてる
骨盤
の重さ
+
大腿部
目的不明確のため
効果判定ができない・
・
・
セラピストの主観のみで
判断するしかない。
足部
+
下腿
セラピストの主観で良さそうなので
「漫然と続ける」
or
セラピストの主観で効果がなさそうなので
「中断」
大腿部の重さは
仙骨の支持面へ
下腿部の重さは
足部支持面へ
目的が明確でない介入
も発展しません。
「評価・仮説・介入・検証型」
ポジショニングのプロセス
について特に重要なポイントに絞って解説をします。
①評価:
「外力」と「臥位を支える環境」の評価
1)外力をとらえる
1)−1:静的な力(重力)
身体には常に上から下へ向かって重力が加わっていま
す。
身体の一部はベッドと接触し支持面を形成しています。
ても,実際に介入しモニタリングを行うのは看護師やケア
理学療法士がポジショニング技術を展開して,対象者・
ワーカーです)
。
ご家族,専門職のチームメンバーに役に立つためには,
「評
理学療法士が褥瘡予防および悪化防止に役に立つため
重みを移すため,支持面が小さい場合そこに圧力は集中し
理学療法士の主観で介入している場合,ピローの置き方
価・仮説・介入・検証」型ポジショニングのプロセスを理
に,最も重要なことは,身体に加わっている外力(重力・
ます。
(
をベッドサイドの写真でいくら示しても,
課題・目的がチー
解し実践することが重要です(
動的な力・張力)をとらえることです。
ピローがあるなど,身体の各部位にそれぞれ支持面が存
ムで共有されていないため多職種協業にはいつまでたって
ここからは 4 つのプロセスで,褥瘡予防および悪化防止
36
・ 理学療法 magazine 2015/3 Vol.2 No.3
図5
)
。
ベッドと接触していない身体部位の重さは近隣の支持面へ
図6
)。
在する場合には,圧は分配されます。(
図7
)
理学療法 magazine 2015/3 Vol.2 No.3 ・
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