第 3 回 - 情報メディア学科演習室

画像の性質と撮影パラメータ
画像処理

画像の性質を表す諸量
 画像の統計量
 画像の主観的特性に関わる量
2015年度 (第3回)

撮影パラメータ
 撮影画角
 明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ
 色彩に影響を及ぼす要因
 時系列画像
中島 克人
情報メディア学科
[email protected]
2
画像の性質を表す諸量

画像の性質を表す諸量
画像の統計量

 ヒストグラム(histogram)
 ヒストグラム(histogram)
 平均,最頻値,中央値,最小値/最大値,分散,平均

画像の統計量


画像の主観的特性に関わる量

 階調性
画素値の分布を調べるために用いる
横軸=画素値,縦軸=度数(頻度)=画素数
画素値の空間的分布は分からない(位置情報は失われる)
 濃淡ヒストグラム
 コントラスト

横軸=モノクロ画像の画素値 の場合
 ノイズ
 鮮鋭度
 解像力
図4.1
3
画像の統計量

画像の統計量
カラー画像のヒストグラム

カラー画像のヒストグラム
 多次元(2~3次元)ヒストグラム
 表色系の各軸ごとにヒストグラム
を作成することが多い

4

どの色の画素が幾つあるかは分か
らない



どの色の画素が幾つあるかを直接調べたい場合に用いる
横軸に全ての色を並べると横軸が長大となり,解析しにくいため,
表色系の各チャネルを軸とする
ただし,各チャネルの量子レベルは粗め(ビン数)は少なめにする
3次元ヒストグラムの表示は困難
25
 2次元ヒストグラム
20


図4.2
3チャネルの内の1つは無視
(もしくは固定)し,2チャンネル
間の分布を見る
例:HSVのVを無視した
→ HSヒストグラムで色目を
調べる
15
10
5
S5
S4
0
1
S3
2
3
4
S2
5
6
7
S1
8
9
2次元ヒストグラム
カラー画像とRGBチャネル別のヒストグラム
5
6
画像処理 1
画像の統計量

画像の統計量
平均(mean)

分散(variance)
 M×N:画像サイズ(画素数)
 データ
 f(i,
 f(i,
j):画素位置(i, j)の画素値
f(i, j) と平均μとの距離(差)の2乗を平均したもの
j):画素位置(i, j)の画素値
度数
平均μ


最頻値(mode)
図4.3
 ヒストグラムの最も度数の高い位置の画素値

標準偏差σ
1パス
での
求め方
中央値(median)
標準偏差大
度数
 全画素を値の大小で並べ替えて,丁度中央の画素の画素値
 (画素数が偶数の場合は,中央の2つのどちらでも良い)


最小値(minimum)/最大値(maximum)
 分散と共に,分布の広がり具合の代
 画像のコントラストを調べる手がかりの1つ
下記の表からヒストグラムを完成させよ

画素値
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
度数
0
2
4
9
5
2
4
3
1
0
8
先の表から平均値,最頻値,中央値,最大値,分散を求めよ
 平均値
 最頻値
 中央値
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
 最大値
9
10
画像の主観的特性に関わる量
先の表から平均値,最頻値,中央値,最大値,分散を求めよ

 分散

画素値
演習(ヒストグラムと統計量)
演習(ヒストグラムと統計量)

標準偏差小
表的指標
7
演習(ヒストグラムと統計量)
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
標準偏差(standard deviation)
 分散の平方根=σ(シグマ)
 最小もしくは最大の画素値

画素値
平均μ
標準偏差σ
階調性
 濃淡表現の滑らかさ
(1- )2×2+(2- )2× +(3- )2× +(4- )2×
+(5- )2× +(6- )2× +(7- )2× +(8- )2×
=
∴分散=
 画像の量子化レベル数に最も多く影響を受ける
 階調性が低いと滑らかに変化すべき部分に階段状の線が
見える
 プリンタ出力時などでは階調再現性と称する

11
図4.4
12
画像処理 2
画像の主観的特性に関わる量

コントラスト調整
 コントラスト調整
コントラスト(contrast)
 (a)から(b)にしたい
 画像の濃淡情報の分布
の広さに関する性質
 右図2~4番目の画像は
分布を1番目のように拡
げる事により,
コントラストが改善される

コントラスト
調整
画素値の最大値Imax,
最小値Iminとした時,
コントラストC を
C = Imax - Imin
Imax + Imin
と表す事もあるが,
ノイズの影響が大きい
(a)

(b)
(a)の中間輝度値を明暗方向に引き伸ばす
図4.5
Introduction to Image Processing and Analysis (CRC Press)
13
コントラスト調整
14
画像の主観的特性に関わる量

 コントラスト調整
ノイズ(雑音)(noise)
 原因
ヒストグラム解析し,ある範囲を最小・最大に引き伸ばす

画素数
原因CCDの暗電流ノイズ(熱雑音),標本化の際のノイズ(ジッタ),
量子化の際の丸め誤差(量子化ノイズ),
画像処理系の有効桁数による影響(計算誤差)など
 種類
輝度値
0(暗)
255(明)


画素数

不規則性ノイズ(random noise)
周期性ノイズ(cyclic noise)
図4.6 不規則ノイズの例
ガウス性不規則ノイズ(Gaussian random noise)
 信号対雑音比(SN比:signal
輝度値
0(暗)

255(明)
to noise ratio)
雑音の大きさ(N)に対する信号の大きさ(S)の比の常用対数
(10を底とする対数)で,単位はデシベル(dB)
 「ある範囲」をどうやって決めるか?
 明暗の両側に裾野が広がっていたり,ノイズが有るかも知れない
Introduction to Image Processing and Analysis (CRC Press)
15
画像の主観的特性に関わる量

16
画像の主観的特性に関わる量
ノイズ(雑音)(noise)

 画素値でSN比を計算する際の信号やノイズの大きさ
鮮鋭度(sharpness)
 画像を見たときの鮮鋭感を表す尺度
 鮮鋭度が高い

表4.1
エッジ付近の画素値変化が急激で,画像の細かい部分まで鮮明に
観察できる
 鮮鋭度が低い

ピントが合っていないような
印象で,画像の細かい部分
は読み取り難い
図4.7
17
理想エッジと実際の
エッジのプロファイル比較
18
画像処理 3
画像の主観的特性に関わる量

画像の主観的特性に関わる量
鮮鋭度の計測法

解像力(resolving power)
 エッジ部分の画素値変化を計測する方法
 画像上にどの程度の細かなものまで再現されるかを示す
 画像の空間周波数成分を調べる方法
 解像力テストチャートを撮影し,チャート画像上の線が識別


できる限界線密度で定義
pares/mm
振幅(変調)伝達関数
(MTF:modulation transfer
function)を測定する
 line

即ち,
濃度が正弦波状に変化する
濃度パターン(正弦波チャート)
を撮影し,正弦波周期が短く
なるにつれてコントラストが
低下する様子を計測する
白・黒を1対の線とし,
1mm当りに存在する
線対の数
 lines/mm

1対を2本の線と
数える
 位置や方向により
図4.8
異なる解像力と
なる場合も有る
正弦波チャートとMTF
図4.9
解像力テストチャートの例
19
撮影パラメータ

20
撮影画角

撮影画角
 CCDカメラ等に内蔵されるCCDのサイズ
 イメージャサイズ

 レンズ焦点距離と画角

イメージャサイズ(imager size)
光学系のサイズもこれに比例する
 1型の「1」は歴史的には撮像管の外形寸法(単位:インチ)
明るさに影響を及ぼすパラメータ
 レンズ絞り,シャッタ速度
 ガンマ補正とゲイン

色彩に影響を及ぼす要因
 照明光源の分光分布
 ホワイトバランス

時系列画像
図4.10
 フレームレート,照明の明滅とそれによるフリッカ
イメージャサイズ(単位:mm)
21
撮影画角

撮影画角
レンズ焦点距離と画角
 画角(field


焦点距離が長いほど,イメージャサイズが小さいほど,画角は狭い


画角の計算
 画角θ[rad],
of view)
画面内に撮影することのできる範囲を角度で表したもの
イメージャサイズとレンズ焦点距離で画角が決定
水平(horizontal)画角と垂直(vertical)画角がある

22
 例:レンズ:f

焦点距離f [mm], イメージャサイズD [mm]
=6mm, 1/3型CCDイメージャ:D=4.8mm
35mm換算焦点距離
 35mmフィルムカメラ時代はイメージャサイズが固定のため,
図4.11
レンズ焦点距離とイメージャサイズと画角
23
レンズ焦点距離だけで画角が求まったが,CCDイメージャの
サイズは種々あるため,「35mm換算焦点距離」という言い
方で画角を表すことが多い
24
画像処理 4
撮影画角

撮影画角

画角の異なるレンズ
演習
 焦点距離50mm(35mmフィルム
35mm換算
焦点距離
 標準レンズ
焦点距離50mm前後
(35mmフィルム換算)
 広角レンズ
 標準レンズよりも焦点距離
が短い
 遠近感が強調,深い被写界
深度
 望遠レンズ
 標準レンズよりも焦点距離
が長い
 遠くの物を拡大,浅い被写
界深度
換算)の標準レンズの水平画角
θs(度)を計算せよ

解答:θs=2 tan-1{(36/2)/50}
=2 tan-1{0.36}=39.6(度)

arctangent

演習
 焦点距離100mm(35mmフィルム
換算)の望遠レンズの水平画角
θt (度)を計算せよ
図4.12
25
逆三角関数表と角度例

図4.12
解答:θs=2 tan-1{0.18}=20.4(度)
26
撮影画角

角度例
表4.2 レンズ焦点距離と水平画角(赤字は標準レンズ相当の画角)
 tan-1{0.10}=
5.71度
7.97度
 tan-1{0.18}=10.20度
 tan-1{0.22}=12.41度
 tan-1{0.26}=14.57度
 tan-1{0.30}=16.70度
 tan-1{0.36}=19.80度
 tan-1{0.42}=22.78度
 tan-1{0.48}=25.64度
 tan-1{0.54}=28.37度
 tan-1{0.60}=30.96度
 tan-1{0.14}=
45度
22.5度
30度
30度
15度
27
28
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ


レンズ絞り(iris=虹彩)

絞り調整
 撮影レンズを通してCCDに入射する光量を調整
 撮影レンズの絞りリングを回して調整
 入射瞳径(レンズ開口径)
 目盛に
… レンズに入射可能な光束径
F値(F-number) … 画像の明るさの尺度
1.4, 2, 2.8, 4, 5.6, 8, 11,16, 22 などとある
( 2 の等比級数 → ひと目盛り小で光量が2倍)
 開放F値


撮影レンズで設定できる最小値=撮影レンズの集光性能を表す
小さいほど,暗い場所でも明るい画像を撮影できる
29
図4.14
30
画像処理 5
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ

明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ

F値と被写界深度
 銀塩フィルムが露光する時間
 被写界深度は


シャッタ速度(shutter speed)
レンズ焦点距離小 → 深い
F値小(入射瞳径大)→浅い
 CCDが光学的なエネルギーを蓄積する時間
図3.6
 1/1000,
被写界深度
 絞りの違いによる被写界深度の変化の例

1/500, 1/250, 1/125, 1/60[sec] などが有る
モーションブラー(motion blur)
 シャッタが開いている間に撮影対象が移動する,もしくは,
カメラが移動することによる画像のボケ
図4.15
被写界深度が浅い画像(左)と深い画像(右)
図4.17
31
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ

モーションブラーを起こさない条件

ガンマ補正(gamma correction)
 CRT(Cathode
計算例:

D
[m]:対象までの距離
[m/sec]:対象の水平移動速度
 f [mm]:レンズ焦点距離
 1/3型CCD(幅4.8mm)で横720画素の
画像を撮影する
 a [sec]:移動できる時間=シャッタ速度

v
Ray Tube:ブランウン管)
出力特性が非線形(ガンマ特性)
(発光輝度)=(入力電圧)γ (γ≒2.2)
 線形な出力とするために,CRTに入力する画素値を予め補
正する
図4.16
図4.18
33
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ

ゲイン(gain)

CCDから読み出したアナログ信号を電気的に増幅する処理

ノイズも同時に増幅することに注意
照明光源の分光分布
 太陽光:
連続スペクトル光源
各波長の光を連続的に含む
 水銀灯,ナトリウム灯: 限られた輝線スペクトルで構成
 白熱灯:
 ISO感度

34
色彩に影響を及ぼす要因

 ゲインを上げる(=高感度の銀塩写真フィルムを使用する)

32
明るさに影響を及ぼす撮影パラメータ
 撮像画像上で移動量が1画素幅以内
 シャッタ速度a=0.000556≒1/1798>1/2000
シャッタ速度によるモーションブラーの差
元々は写真フィルムの感度を表すが,デジカメでもこの尺度を流用
ISO50, ISO100, ISO200, ISO400, ISO800, … , ISO51200
図4.20
図4.19
ゲイン設定と画像のノイズ
35
各種光源の分光分布
36
画像処理 6
色彩に影響を及ぼす要因

色彩に影響を及ぼす要因
演色性

 太陽光下に似た色の見え方をすること
照明光による演色性の違い
 D50蛍光灯
vs. 昼白色蛍光灯 vs. LEDランプ
 白熱灯はナトリウムランプよりも演色性が高い(良い)
 演色性が高い=食卓上の食事が美味しく見える
D50蛍光灯,昼白色蛍光灯,
LED電球の発光特性
(スペクトル分布)
図4.21
各種光源下で撮影したカラーチャート画像
色彩に影響を及ぼす要因


 白熱灯:2,856K(標準光A)
完全に吸収し全てのエネルギー
を100%放射する理想
的な物体
 黒体を熱していくと,色が変化
 紫外線を含む昼光:6,500K(標準光D65)
 昼間の平均光:6,770K(標準光C)

 白い物体を白く撮影できるようにカメラ側で補正すること

 市販デジカメ:自動,もしくは,想定シーン(光源)下の補正量
から選ぶ

なるようにホワイトバランスを調整
39
40
時系列画像

 動画は時間軸方向の標本化
 標本化周波数=フレームレート(fps:frames
照明の明滅
 放電光源(蛍光灯,水銀灯,ナトリウム灯等)は明滅
per second)

30fpsのCCDカメラが多い(自由に変更できない事が多い)

 モーションブラーを抑える

自動ホワイトバランス(auto white balance)
 被写体から白いと思われる部分を見つけ,その部分が白く
図4.22
フレームレート(frame rate)

ホワイトバランスの調整
 産業用カメラ:赤(R)ゲインと青(B)を調節
時系列画像

ホワイトバランス(white balance)
 光源の色温度により,撮影対象の色彩が異なる
赤→黄→白→青白
色温度
(color temperature)
 光源を黒体輻射と考えた時の黒

光源の色温度
 外部からの光エネルギーを
体の絶対温度(K:ケルビン)に
よって表したもの
 一般的に白色(赤っぽい白,黄
色っぽい白,白,青白)の範囲に
て色を表す指標として使用
38
色彩に影響を及ぼす要因
黒体


http://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/light_bulb/color_rendition/
37
100Hz(50Hz電源値域) または 120Hz(60Hz電源値域)
フリッカ(flicker)
 高速な電子シャッタを用いて時系列画像を撮影した時に,フ
シャッタ速度(露光時間)は標本化間隔以下
撮像対象の動きの最大周波数の2倍以上のフレームレート
レームごとに明るさが異なる

フリッカ対策
 高周波点灯蛍光灯を
光源に
 露光時間を照明の明
滅周期と一致させる
図4.23
露光時間とフレームレート
41
図4.24
フリッカの発生過程
42
画像処理 7