数理解析学 A・数理解析基礎講義 A 補足プリント No.2 (2015.4.21 配布)

数理解析学 A・数理解析基礎講義 A 補足プリント No.2 (2015.4.21 配布)
プリントは http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/~takimoto/H27SuurikaisekiA.html にも置いてあります.
今日の講義で証明できなかった Lp (Ω) の完備性について証明を述べておきます.
定義. Ω ⊂ RN を可測集合,1 ≤ p < ∞ とする.
Ω 上の C-値可測関数 f (x) が p 乗可積分 であるとは,
∫
|f (x)|p dx < ∞
Ω
を満たすことをいう.また,Ω 乗の p 乗可積分関数全体を Lp (Ω) と書く.
(∫
) p1
p
p
さらに,f ∈ L (Ω) に対し,kf kp =
|f (x)| dx
と定義する.
Ω
注意. ほとんどいたるところ一致する関数は同じと思う(そうでないと k · kp はノルムになら
ない!).
(
)
定理. Lp (Ω), k · kp は Banach 空間である.
[証明] k · kp が Lp (Ω) 上の norm であることは講義中に(ほぼ)示したので,Lp (Ω) が
k · kp に関して完備であること,即ち k · kp に関する Lp (Ω) の Cauchy 列が必ず Lp (Ω) 内
に極限をもつことを示す.
p
{fm }∞
m=1 ⊂ L (Ω) を Cauchy 列とする.目標は
目標:∃f ∈ Lp (Ω) s.t. lim kfm − f kp = 0
m→∞
を示すことであるが,まずは次の Claim を示す.
{
}∞
p
Claim. ∃ fmk k=1 ⊂ {fm }∞
m=1 , ∃f ∈ L (Ω) s.t. lim kfmk − f kp = 0.
k→∞
(即ち,{fm }∞
m=1
の部分列をうまく取れば
Lp -norm
で収束する)
[Claim の証明] {fm } は Lp (Ω) の Cauchy 列であるので,
∃m1 ∈ N s.t. i, j ≥ m1 =⇒ kfi − fj kp <
1
2
が成立する.次に,
1
22
が成立する.このとき,m2 > m1 と取ることができる.同様にして各 k ∈ N に対して
∃m2 ∈ N s.t. i, j ≥ m2 =⇒ kfi − fj kp <
∃mk ∈ N s.t. i, j ≥ mk =⇒ kfi − fj kp <
1
2k
が成立し,自然数列 {mk }∞
k=1 は狭義単調増加に取ることができる.
次に,gk (x) = |fm1 (x)| +
k−1
∑
fm
i+1
(x) − fmi (x) とおく.このとき gk ∈ Lp (Ω) であり
i=1
kgk kp ≤ kfm1 kp +
k−1
∑
kfmi+1 − fmi kp (∵ Minkowski の不等式)
i=1
k−1
∑
1
< kfm1 kp +
< kfm1 kp + 1
2i
i=1
∫
(
)p
gk (x)p dx < kfm1 kp + 1 (∀k ∈ N) を得る.
が成立する.従って
Ω
一方,gk (x) ≥ 0 かつ gk+1 (x) ≥ gk (x) が成立するので,値 ∞ を許せば lim gk (x) = g(x) が
k→∞
存在し,単調収束定理より
∫
∫
p
g(x) dx =
∫
lim gk (x) dx = lim
Ω k→∞
Ω
が成立する.故に g ∈
得る.
Lp (Ω)
(
)p
gk (x)p dx ≤ kfm1 kp + 1 < ∞
p
k→∞ Ω
であり,補足プリント 1 の命題 A(3) より g(x) < ∞ a.e.x ∈ Ω を
これより,fmk (x) = fm1 (x) +
k−1
∑
(
)
fmi+1 (x) − fmi (x) とみて k → ∞ とすると,右辺の無限級
i=1
数はほとんどいたるところ絶対収束している.従って lim fmk (x) がほとんどいたるところ(有限
k→∞
値として)存在することが分かるので,その極限値を f (x) と定める.
最後に f ∈ Lp (Ω) と lim kfmk − f kp = 0 を示す.任意の k ∈ N に対して
k→∞
|fmk (x)| ≤ |fm1 (x)| +
k−1
∑
fm (x) − fm (x) = gk (x) ≤ g(x)
i+1
i
(a.e.x ∈ Ω)
i=1
であるから,k → ∞ として |f (x)| ≤ g(x) a.e.x ∈ Ω を得る.g ∈ Lp (Ω) であったので補足プリン
ト No.1 の命題 A(4) より f ∈ Lp (Ω) を得る.次に
∞
∞
∑(
) ∑
fm (x)−fm (x) ≤ g(x) (∀k ∈ N, a.e. x ∈ Ω)
|f (x)−fmk (x)| = fmi+1 (x) − fmi (x) ≤
i+1
i
i=k
i=k
故に |f (x) − fmk (x)|p ≤ |g(x)|p (∀k ∈ N, a.e. x ∈ Ω) であり g は Ω 上で可積分であるから,
Lebesgue の収束定理より
∫
∫
lim |f (x) − fmk (x)|p dx = 0.
lim kfmk − f kp = lim
|f (x) − fmk (x)|p dx =
k→∞ Ω
k→∞
Ω k→∞
[Claim の証明終わり]
最後に目標を示す.任意に ε > 0 を取る.{fm } が Lp (Ω) の Cauchy 列であるので
ε
∃M 0 ∈ N s.t. `, m ≥ M 0 =⇒ kf` − fm kp <
2
が成立する.また Claim より
∃K ∈ N s.t. k ≥ K =⇒ kfmk − f kp <
ε
2
が成立する.従って M := max{M 0 , mK } とおくと,m ≥ M ならば
ε ε
kfm − f kp ≤ kfm − fmK kp + kfmK − f kp < + = ε
2 2
であるので, lim kfm − f kp = 0 が示された.
m→∞
注意. 証明をよく見ると,部分列 {fmk }∞
k=1 は f にほとんどいたるところ収束しているので,次
の定理も証明されたことになっています.
p
p
定理. {fm }∞
m=1 ⊂ L (Ω), f ∈ L (Ω) とする.いま,
lim kfm − f kp = 0
n→∞
∞
が成り立つならば,ある
{fm }∞
m=1 の部分列){fmk }k=1 が存在して f にほとんどいたるところ収
(
束する i.e. lim fmk (x) = f (x) a.e. x ∈ Ω .
k→∞