岸野友子(生物科学専攻修士 1年) - 生命環境科学研究科

マレーシア工科大学短期派遣プログラム
活動報告レポート
筑波大学大学院生命環境科学研究科生物科学専攻
博士前期課程1年 岸野 友子
<3月13日>
飛行機からマレーシアを見ると、ヤシの木のプランテーションが広がっていた。プラン
テーションという言葉は知っていたものの、こんなにも広いものなのかと目を疑った。空
港からホテルへ向かう車窓からもこうした光景は見ることができた。そして、車窓からの
景色は大都会へと変わっていき、マレーシアの二面性を見たように感じた。駅ではチケッ
トを購入する人の列でごったがえしており、日本の IC カードの便利さを感じたとともに、
マレーシアが発展途上の国であることをなんとなく感じた。
<3月14日>
世界遺産にもなっているマラッカへ向かった。自分たちだけでクアラルンプールから2
時間ほどあるマラッカへ行くのはなかなか苦労したが、苦労してでも行けて良かったと思
えた。マラッカでは植民地時代のイギリスやオランダ、中国といった様々な文化を目にす
ることができた。建物だけではなく食べ物も多様であったし、狭い空間で多くの文化を一
気に体験できる、とても魅力的で不思議な場所だった。炎天下は厳しいものだったが、そ
の分色々なお店に入って休憩をとったため、色々な食べ物を楽しむことができた。マラッ
カの伝統料理のニョニャ料理やチェンドルなど、普段口にしない味が多く面白かった。ま
た、お土産ショップでもお洒落で可愛い小物等を多く目にし、マレーシアに対してセンス
が良い国という印象を受けた。
<3月15日>
1日ジャイさんという方に案内してもらい、森林研究所とクアラセランゴールを訪れた。
森林研究所はランニングしている人が多く、とても整備された場所だった。その外観から
ジャングルは想像できなかったが、少し森の方へ向かうと、これまでに見たことのない景
色が広がっていた。日本の森林では見られないような高い木々や、大きい葉はとても魅力
的であり、聞きなれない鳥や虫の音色は心躍るものであった。木と木の間をつり橋で渡る
キャノピーウォークはスリル満点であると同時に、クアラルンプール市街地や高い木々を
上から見ることができ、とても楽しかった。その後、ジャングル内をゼインさんというガ
イドさんに案内してもらった。木々の名前や匂い、葉や実の形など、自分たちだけでは気
付けなかったことを沢山教えてもらった。生物を専攻している身としては、興味深い話ば
かりで面白かった。そして、上を見上げると葉同士が重ならないように、綺麗な網目模様
を作り上げていた。自然ってすごいな、と純粋に心の底から思えた。
森林研究所の後はクアラセランゴールに向かった。ジャイさんはクアラセランゴールに
住んでいるため、様々な体験をさせていただいた。まず、メラワティの丘にて要塞など歴
史を感じながら、沢山のサルに餌をあげた。サルがぱっと餌をとって逃げていく様子がお
かしかった。その後、ボートでマングローブを望みながら、海で採餌している鳥の群れを
見に行った。マングローブではカワウソや猿、沢山のカニや魚など多くの動物を目にする
ことができ、改めてマングローブの種の多様性を感じた。夜はマングローブに群がるホタ
ルを見ることもでき、非常に多くの自然に触れることができた1日だった。
<3月16日>
午前中マレーシア工科大学とその敷地内にあるマレーシア日本国際工科院を訪問した。
マレーシア工科大学では高いビルがすぐに目に入り、立派な大学だと感じた。また、後に
普通のことだと知ったが、大学内にモスクがあったのには驚いた。マレーシア日本国際工
科院ではマレーシアと日本の大学の提携や新しいプログラムについてお聞きし、筑波大学
を初め日本全体で国際化が進んでいることを実感した。
その後、クアラルンプール市内を散策した。マレーシアでは主にイスラム教、ヒンドゥ
ー教、仏教が信仰されているため、モスクや寺院、廟が近距離で様々なところにあった。
ほんの数時間で色々な国を旅している気分になり、わくわくが止まらなかった。そして、
異なる文化が1つの都市で共存していることを、本当にすごいことだと感じた。国立モス
クには私たちも入場することができた。そこでもらったイスラム教についての説明は、イ
スラム教の人々の考えを知るきっかけとなり、他の宗教についても興味を持つことができ
た。そして、宗教に対する理解は、良い国際関係を築く上で欠かせないと思った。クアラ
ルンプールの新名所であるクアラルンプールシティミュージアムでは、映像とクアラルン
プール市内の模型によって、マレーシアの成長ぶりを知ることができた。マレーシアが急
激な成長を遂げているのは知っていたが、私が思っていた以上で正直驚いた。マレーシア
が先進国に仲間入りするのももうすぐだろう。先進国入りに向けて、多民族の融和を願う
“1Malaysia”のスローガンを大切にしてほしい。事前学習の段階でこのスローガンは知
っていたが、クアラルンプール市内の至るところで書かれていることに感銘を受けた。
<3月17日>
食品科学が有名なプトラ大学を訪問した。マレーシア学生の案内の元、研究室を見学し
た。非常に綺麗で機材も整っていることに、マレーシアの大学が充実して進んでいること
を感じた。そして何より、学生たちが生き生きと研究していたり、学生同士がとても仲が
良かったりと、研究室の雰囲気の良さを感じた。私も研究を頑張ろうとモチベーションを
上げることができた。そして、プトラ大学ではパームオイルの抽出過程をたまたま見るこ
とができ、実際に私たちも実を取り出す作業を体験することができた。実は房状に大量に
なっており、一つ一つが油を多く含んでいた。プランテーションで育ったヤシの木がどの
ようになるのか、知れてとても良かった。その後、マンゴスチンの加工工場を見学しに訪
れた。そこではマンゴスチンが健康にとても良いことを学んだ。そして、マンゴスチンの
厚い皮が捨てられずに利用されているところが、とても有益で良いなと思った。工場では
粉末にする機械等を見学することができた。
<3月18日>
午前中はマレーシア国立動物園を訪れた。この動物園は昆虫類から大型哺乳類、魚類、
爬虫類、鳥類など様々な動物を一気に見ることができる優れた場所であった。ショーでは
アシカや鳥など複数種の動物が登場し、子供たちの視線を釘づけにしていた。日本でこう
いったショーはあまり見ないため、私も非常に楽しむことができた。ただ、暑さで動物た
ちもあまり活動していなかったため、今度訪れる際は夜に行ってみたいと思った。動物園
の後はバトゥ洞窟を訪れた。ここは洞窟内にあるヒンドゥー教の寺院である。洞窟までの
階段は厳しかったが、登り終えた後に目に入る大きな洞窟は圧巻だった。そして、何より
も面白かったのが洞窟探検ツアーだった。当初予定していなかったが、真っ暗の洞窟を進
むのは面白そうだったため参加した。しかし、参加してみるとこのツアーは予想をはるか
に越えて内容が豊富だった。地学的な面や生態学的な面、洞窟の保護等に関して、非常に
詳しく説明してくれた。洞窟は隔離された環境かつ、光がほとんどないため、独自の進化
が遂げられるそうだ。そのため、洞窟には貴重な種も多いのだそうで、保護する重要性を
実感した。そして、洞窟に差し込む光へ向かって、藻類の緑が続いている光景はとても美
しかった。暗い洞窟の中でも、光合成をしようとする藻類の生命力を感じた。
夜はクアラルンプール市内でたまたま見つけたミュージカル MUD を鑑賞した。このミ
ュージカルはクアラルンプールが錫によって栄えた後、いくつかの天災に見舞われたが、
人々の努力によって今日の発展に至ったという内容であった。キャストの演技や歌はもち
ろんのこと、マレーシアの伝統的な踊りも楽しみながら歴史を学ぶことができた。そして、
私たち観客も舞台に呼ばれるなど、劇場内にいる人全員で舞台を盛り上げていった。演出
や内容にとても心を打たれ、マレーシアの人のおもてなしの心に感激した。上演後の撮影
時間では、キャスト全員と「ジャパーン」と言って記念撮影をしたのが、とても良い思い
出となっている。
<3月19日>
マラヤ大学へ自分の研究紹介と水質浄化の研究について伺いに行った。英語で自分の研
究を発表することは緊張もしたが、全く分野の異なる人に自分の研究に興味を持ってもら
うことに喜びを感じた。また、1週間行動を共にした筑波大学の友人たちが、それぞれど
んなことに興味を持って研究をしているのか知れて嬉しかった。マレーシアは成長が著し
い反面、水質悪化など環境問題も深刻なようだ。マラヤ大学内にある池は残念ながらお世
辞にも綺麗とは言えず、汚水が下流へ垂れ流しになっているという状況を知って衝撃を受
けた。自然と人間が共生できる社会のしくみを作り出すために、水質浄化の研究は欠かせ
ないと思った。そして、マラヤ大学での水質浄化の研究では、マレーシアの人々の自然に
対する愛も感じることができた。その後、プトラジャヤにある博物館を訪れた。プトラジ
ャヤには世界最大の人工湿地がある。湿地での豊かな生態系などを博物館では学ぶことが
できた。博物館から眺めることができる湿地は広大で、生態系が人工湿地を作り出す前後
でどのように変化したのか知りたいと思った。そして、プトラジャヤにて多くの種の果実
を教えていただいた。コーヒーや胡椒の果実など、普段あたり前のように目にする果実が、
どのように木に生っているのか見ることができて面白かった。ゴムの木も植わっており、
私たちがよく使うゴムの成り立ちを知ることもできた。ゴムの樹脂は感動するくらいよく
伸びた。最後に、先生方の前でこのプログラムの成果報告を行い、私たちは日本へ帰国し
た。
自然がとても好きな私にとって、クアラルンプールは大都会のため、あまり面白くない
のではという思いも渡航前はあった。確かにクアラルンプールは大都会だったが、実際に
訪れてみるとその思いはすぐになくなった。少し郊外へ出れば魅力あふれる自然は沢山あ
ったし、市街地で目の当りにする混在する文化に対しての感動は測り知れない。何より、
マレーシアの人々はとても優しいと思った。複数の宗教の人が共に暮らしているため、他
人に対しての思いやりの気持ちが強いのではないだろうか。私もマレーシアの人のように、
異なる考えの人に対しての寛大な心を持ち、理解しようとする気持ちを忘れないようにし
たい。
最後に、このプログラムに参加させていただいたことに、心より感謝申し上げます。そ
して、マレーシア滞在中には多くの方々にお世話になりました。この場を借りてお礼した
いと思います。本当にありがとうございました。