岩手大学SANRIKU(三陸)水産研究教育拠点形成事業 岩手県織笠川河口域における外来種 サキグロタマツメタの分布 Laguncula pulchella 岩手大学三陸水産研究センター 水圏環境部門 木下今日子 目的 織笠川河口は岩手県有数の潮干狩り場であった まとめ 織笠川河口における貝類の優占種はアサリ、 が、アサリの移植とともに持ち込まれた貝食性の巻貝 サキグロタマツメタが増殖し、潮干狩りが中止されて いた。その後、東日本大震災により干潟面積が縮小し たが、震災後にアサリが回復しつつあった。しかし、 サキグロタマツメタも確認されたことから、貝類相の 震災からの回復に影響を及ぼすことが予想された。本 研究では貝類の生息状況とサキグロタマツメタの分布 とを明らかにし、さらに本種の被食者の推定を行っ た。 サキグロタマツメタの主な被食者もアサリと推定され た。アサリの密度は減少傾向にあり、サキグロタマツ メタによる食害の影響が示唆された。サキグロタマツ メタは砂質域で多く発見されたが、冬季は礫にも出現 した。サキグロタマツメタは砂泥質を好むと言われて いるが、礫の割合が高い場所でも確認されたことか ら、本種が今後も増殖することにより、織笠川河口全 域の貝類相に影響を及ぼす可能性が示された。 調査地 調査地点の粒度組成 調査地 織笠川 礫の割合が 高い 低い 織笠川河口 方法 1 貝類の現存量調査と被食者の推定 2 サキグロタマツメタの分布調査 調査地点を3ヶ所設定し、各地点の堆積物を採泥器を用いて 1地点あたり5回掘り出した。これを目合い1 mmのふるいで ふるい、巻貝と二枚貝を回収して種を同定した。 さらに、サキグロタマツメタの被食痕のある貝殻を回収して 種を同定した。調査は2013年4月から月に1回実施した (2014年1月を除く)。 織笠川河口域に、調査区(約10,000 m2)を設定し、区画内 においてサキグロタマツメタの捜索を、1人につき1時間 行った。調査は2013年4月から月に1回、2〜6名で行った。 貝 試料の選別 被食痕の ある貝殻 被食 痕 採泥器による採集 調査の様子 結果 1 貝類の現存量調査と被食者の推定 2 サキグロタマツメタの分布調査 巻貝・二枚貝の密度変化 × 発見地点(丸数字は現存量調査で得られた個体数) 優占種はアサリ。しかし11月以降は個体数が減少 サキグロタマツメタの被食痕のある貝殻の数 2013年4月-8月 9月-12月 2014年1月-3月 サキグロタマツメタは南側に多く見られたが、 冬季には北側でも確認された 被食痕のある貝殻はアサリが98% サキグロタマツメタ(盤足目タマガイ科)殻高 約5 cm.2000年前後から宮城・福島のアサリ漁場でアサリの食害が顕在化. 繁殖期は秋から冬で,「砂茶碗」と呼ばれる卵塊を形成する.卵塊1つあたり稚貝1,000〜4,000個体が孵化する.
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