平安京左京九条二坊十六町跡・御土居跡発掘調査現地説明会資料

平安京左京九条二坊十六町跡・御土居跡発掘調査現地説明会資料
き、その上に土を突き固めて地盤を改良し、建物の基礎としていました。また地業の四周には
2014年8月16日
柱穴が並んでおり、一連の建物と考えられます。井戸は現在までに6基を確認しています(井戸
公益財団法人 京都市埋蔵文化財研究所
1~6)。井戸1では一辺約90㎝の方形縦板横桟組の井戸枠が、井戸5では直径70㎝の木を刳り
調 査 地 京都市南区西九条北ノ内町6・7・8
抜いた井戸枠が残存していました。深さはいずれも0.8~1mで、基盤層となる砂礫層から湧水
調査面積 1500㎡
していたようです。井戸2・3・4は南北に並んでいますが、出土遺物から井戸2が鎌倉時代
調査期間 2014年5月21日~9月30日(予定)
初頭に廃棄された後に、井戸3・4が作られたことがわかりました。土坑1~4は土器溜まり
で、土坑1からは鎌倉時代の三足付き羽釜が4~5個体分出土しました。
はじめに
安土桃山時代から江戸時代 調査区の西側で、御土居の堀を検出しました。堀は南北方向
今回の調査地は、平安京左京九条二坊十六町跡及び安土桃山時代の御土居跡に位置します。
で、東肩のみを確認しました。西肩は調査区外に位置します。幅7m以上、深さは約0.5~0.6
本調査地周辺でこれまで行われた発掘調査では、主に平安時代前期の池や土坑・柱穴群、平
mで、南北45m分を検出しました。堀からは、木製品や土器が出土しました。
安時代後期の井戸や土坑・柱穴群、鎌倉時代の井戸・柱穴群などを検出しています。
また、本調査区の約30m南で行われた調査では、幅17.5m以上、深さ2.2mの御土居の堀を検
まとめ
出しています。堀からは、多量の木製品をはじめ土器、瓦類が出土しました。堀と土塁からな
今回の調査では、平安時代末期から鎌倉時代にかけての建物の地業や井戸、安土桃山時代か
る御土居は、外敵の襲来に備えた防塁と川の氾濫から京都の街を守る堤防として、天正19年
ら江戸時代の御土居の堀を検出しました。
(1591)に豊臣秀吉により造営されました。京都の街を囲む御土居の総長は約22.5㎞にも及び、
平安時代の平安京左京九条二坊十六町には、その様子を記した文献史料はありませんでし
今回の調査地はその南部の一画にあたります。
た。しかし、今回の調査で平安時代末期から鎌倉時代にかけて邸宅として利用されていたこと
がわかり、文献史料からは知ることの難しい本調査区周辺の状況を復元する上で新たな知見を
調査成果
得ることができました。
平安時代末期から鎌倉時代 建物やその基礎となる地業、井戸、土坑、柱穴、落ち込みなど
御土居跡は本調査区の西側に築かれており、従来想定されていた位置で実際に堀を検出する
を検出しました。地業は、調査地の中央と南端に3つ確認しました(建物1、地業1~2)。建
ことができました。
物1の地業は、南北約5.2m×東西約3.5mの範囲で地面を掘り込み、底面に拳大ほどの礫を敷
四坊
梅小路
八条二坊四町
八条二坊五町
八条二坊十二町
八条二坊十三町
八条三坊五町
八条三坊四町
八条三坊
十二町
北辺
三坊
右京
平安京
二坊
一坊
一坊
二坊
左京
平安宮
一条
二条
八条大路
九条二坊一町
九条二坊八町
九条二坊九町
九条二坊十六町
九条三坊八町
九条三坊一町
九条三坊
九町
九条三坊七町
九条三坊二町
六条
九条三坊
十町
七条
調査地
九条坊門小路
九条二坊三町
九条二坊六町
九条二坊十一町
九条二坊十四町
九条三坊六町
九条三坊三町
東京極大路
富小路
万里小路
高倉小路
東洞院大路
烏丸小路
室町小路
町尻小路
西洞院大路
油小路
堀川小路
猪隈小路
大宮大路
櫛笥小路
壬生大路
坊城小路
朱雀大路
図1 調査位置図(1:5,000)
200m
九条
西坊城小路
皇嘉門大路
西櫛笥小路
西大宮大路
西靭負小路
西堀川小路
野寺小路
道祖大路
宇多小路
馬代小路
恵止利小路
木辻大路
菖蒲小路
山小路
無差小路
西京極大路
0
九条三坊
十一町
図2 平安京条坊図
聚楽第
桂川
八条
平安京
鴨川
九条二坊十五町
居
御土
紙屋川
九条二坊十町
二条大路
押小路
三条坊門小路
姉小路
三条大路
六角小路
四条坊門小路
錦小路
四条大路
綾小路
五条坊門小路
高辻小路
五条大路
樋口小路
六条坊門小路
楊梅小路
六条大路
左女牛小路
七条坊門小路
北小路
七条大路
塩小路
八条坊門小路
梅小路
八条大路
針小路
九条坊門小路
信濃小路
九条大路
御室川
九条二坊七町
一条大路
正親町小路
土御門大路
鷹司小路
近衛大路
勘解由小路
中御門大路
春日小路
大炊御門大路
冷泉小路
堀川
五条
針小路
九条二坊二町
四条
四坊
西堀川
調査地
三条
三坊
調査地
0
図3 平安京・御土居と調査地点図
3km
Y=-22,460
Y=-22,440
Y=-22,420
X=-112,680
井戸1 土坑1
井戸2
建物2
建物3
土坑2
井戸3
土坑3
井戸5
建物1
建物4 地業
井戸6
X=-112,700
井戸4
御土居堀
土坑4
地業2
地業1
落ち込み
0
御土居堀
地業
落ち込み
X=-112,720
土坑
井戸
柱穴
図4 遺構平面図(1:200)
10 m