b

共形不変な電磁放射場が満たす“双対”の幾何力学構造について
On the dual structure of electromagnetic radiation field and its
physical implication
○佐久間弘文*、小嶋泉**
*(独)海洋研究開発機構横浜研究所
**
京都大学数理解析研究所
1.概要
―――――――――
量子科学における双対性とスケール
――――――――
「双対性」、「量子―古典対応」、「次元」(4次元で共形不変)
1)「双対性」 :(電場と磁場)
電磁放射場 →
幾何光学的猫像
→
→
[電磁放射場]と[XXX]
ヌル測地線
XXX:測地線(幾何的概念)の渦力学(力学的概念)→(電磁場&重力場)
Gab  Rab  Rcc g ab / 2   Tab ;(対称的: Tab  Tba )
ここに、 Rab  Rabc
c
(Geometrodynamics)
渦力学(交代的: S ab  Sba );
(もし、 Rabcd  S ab Scd なら)
Rbacd   Rabcd ;
Rabdc   Rabcd ;
Rcdab  Rabcd (自明)
Rabcd  Racdb  Radbc  0 (第一ビアンキの恒等式)(?)
a Rbcde  b Rcade  c Rabde  0 (第二ビアンキの恒等式)(?)
(先行する関連研究: Rabcd のスピノール分解、Twistor 理論)
Heuristic な流体力学モデル(HHM):
理想流体(力学)
Clebsch Parametrisation(CP)
電磁放射場
測地線の渦力学
u a ;4元速度
Aa ;4元 potential
abu b  T a
Fab P b  0
abu b  0
F
b
ab A
ab   b wu a 
b
ab A
0

*
→

S ab g bc  c  0
*
S ab   b  a 
  a  b 
ゲージ場の物理的実在の可能性(外村)
従って、共通の基本形として、 S abU  0 ;
b
→


Fab  b Aa   a Ab
  a wu b 
F
0
 a ;接ベクトル
→
det S ab   0
S01S 23  S02 S31  S03 S12  0

 

c
c
S ab  bU a   aU b   bU a  ba
U c   aU b  ab
U c   bU a   aU b
この性質は電場と磁場の直交: F01F23  F02 F31  F03 F12  0 に対応。
U a   a :Clebsch Parametrised Flow(CPF);(ここでは、2変数(  ,  )
としては、ラグランジュ的ラベルを用いる。)
まず、幾何光学的イメージに従い、光線(ヌル測地線)の接ヌルベクトルを

Cb  b ; C bCb  0

とする。スカラー
g ab a b  0 を満たすとする。
 は、massless の Klein Gordon:
S abU b  0 が成立する為には束縛条件:
C bb   0 ;が必要となり、 Lb  b  ;とすると、
直交条件
流体力学的解釈(ラグランジュラベル)
C bCb  0
C bb  0
C b Lb  0 → Lb は space-like*
C bb   0
更に、
U a   a
→
(恒等的にこの式を満たす)
S ab Scd  S ac S db  S ad Sbc  0;
S ab Scd  S ac S db  S ad Sbc  0 →
S01S 23  S02 S31  S03 S12  0
( Rabcd  Racdb  Radbc  0 (第一ビアンキの恒等式))
CPF で表現される測地線の渦力学:
1)渦の伝搬の形が電磁放射場と同型。(マックスウェルの波動方程式)
2) Sˆabcd  S ab S cd は Rabcd が満たす全ての性質を満たす。
3)エネルギー・運動量テンソルの二価表現
Tab   Fad F bd ; Tˆab  S ad S bd   0Ca C b ;(  0  Lb Lb  0 *)
4)新しい可能性としての重力エネルギーの放射の形態
bTˆab  S ad b S bd  0
電磁気学では真空中で
j d  b F bd  0 とするが、 b S bd  0 は、
 S ad b S bd  0 ;の必要充分条件ではない。→ 数学的整合性で変位電
流を導入し、電場と磁場を統一したのと同様な理由で、この新たな自由度
で電磁場と(未解決の)重力場のエネルギー伝達を結び付ける可能性を示
す。
5)(時間が許せば、“量子―古典対応”と次元に関する話題を尐し)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
2.測地線から導出される“渦力学”と電磁放射場との類似
測地線の式:
a
DU a / Dt  bc
U bU c  0 ;
DU a / Dt  U b  bU a
(1a, b)
(1a)を共変成分 U a で書き直すと、


0  U bbU a  U b bU a   aU b    a U bU b / 2 ;
(2a)
c
bU a   bU a  ba
U c (Levi-Civita connection)
(2b)
a
測地線上の座標を x 、パラメータ s を測地線に沿った長さを表すとすると、
x a  x a (s) ; u a  dx a ( s) / ds ; ds 2  g abdx a dx b
(2c)
 dx a ( s)  dx b ( s)  g ab dx a dx b


ubu b  g ab u a u b  g ab 
 1 (2d)
2
 ds  
ds
ds



ua   a  with g ab a b    0  1 は (2a) の解となる。
(2a)は S ab  bU a   aU b   bU a   aU b  Sba を導入すると
S abU b  0
と書ける。
(2e)
次に、理想流体の基本式について見る。非相対論的流体の運動方程式は、


 va /  t    va v b /  x b   p /  x a
(3a)
 )で表す記法を用いると
または、3次元のベクトルを( ~


~
~
~  v~  T
 v~ /  t   vb v b / 2  C pT  

(3b)
ここに、 C p (定容比熱); T (絶対温度); (エントロピー密度);
v~ (速度ベクトル); ~ (渦度ベクトル)。
相対論的表現(Landau)は、 w を specific enthalpy とすると
 ab v b  T a
 ab  b wva    a wvb 
;
傾圧流体(Baroclinic fluid):
 a  0
順圧流体(Barotropic fluid):
 a  0
順圧流体
→
 
 ab wv b  0
S abU b  0
⇔
 ab  b wva    a wvb 
(4a)
(4b)
S ab  bU a   aU b
次に電磁放射場との比較を考える。
電磁場: Fab  b Aa   a Ab
ンソル
に対して、電磁放射場のエネルギー・運動量テ
Tab は、以下の形を取る。
Tab   Fad F bd  g ab F cd Fcd / 4   Fad F bd
(5a)
この場合の電磁場の諸性質を、具体的に書き下すと
~
~
E  ( F01 , F02 , F03 ) ; M  ( F23 , F31 , F12 ) として
F cd Fcd  0
⇒
F01F23  F02 F31  F03 F12  0
~
~
E M
⇒
(5b)
~ ~
EM
(5c)
ポインティングベクトル
~ ~ ~
P EM ;
P d Pd  0
(5d)
は
Fab P b  0 を満たす。
(5e)
ここで、
S abU b  0 へ戻る
S abU b  0 ⇒ det S ab   0
⇒
S01S23  S02 S31  S03S12 2  0
これは、 F01F23  F02 F31  F03 F12  0
~
(6a)
⇒
~ ~
EM
と同じ構造。
~
すなわち、 E  M は順圧流体と同じ構造。
Hugget & Tod ( An introduction to Twistor Theory)
S01S 23  S02 S31  S03 S12  0
⇒
Clebsch Parametrisation :
⇔
S ab
is simple.
U a   a
(6b)
(7a)
S ab  bU a   aU b  b  a   a b  Ca Lb  La Cb (7b)
ここに、 Ca   a ;
La   a 
次に、massless の Klein-Gordon 方程式を満たす
g ab a b  0 ;
g ab ab  0
これはヌル測地線を与える。 La   a 
として S abU
b
 を考える。
(8a, b)
を space-like な測地線の接ベクトル
を計算すると
  





S abU b  Ca Lb  La Cb  C b   LbC b Ca   CbC b La   LbC b Ca
(8c)
ここで、 Ca   a と La   a  の間に束縛条件:
LbC b  0
(9a)
を課すと、この条件の下、
S abU b  0
(9b)
となる。
(9a) ⇒
Lb は space-like。
LbC b  0
⇒
C bb   0
(10a)
CbC b  0
⇒
C bb  0
(10b)
C b は“流体”の速度ベクトルと見做せるので、上の二つの直交条件は、2変
数

と  は流体のラグランジュ的ラベル(座標)である事を示している。
LbC b  0
C bb   0 に関してのコメント。
⇒

(1)  の代わりに、  と
の任意関数
( )  f  ,  
C bb ( )  C b   f Lb   f Cb   0
(2)幾何的な意味での双対的な存在:( La ;
(11)
*
La )
x3
*
~
M
La
~
M
Ca
x1
*
La
図1:双対性
でも OK。
x2
S 23  * S 23   S31  * S31   S12  * S12   C0  Lb  * Lb   0
(12a)
S ab  * Lb   0
(12b)
2
次に電磁場のエネルギー運動量テンソル
Tab   Fad F bd  g ab F cd Fcd / 4   Fad F bd
を参考にして、 Tˆa
b
(13a)
 S ad S bd を考える。

Tˆab   S ad S bd  Ca Ld  La Cd  C b Ld  Lb C d


  Ld Ld Ca C b    0 Ca C b

(13b)
右辺は自由粒子系のエネルギー運動量テンソル。
また、このテンソルの発散は、


bTˆab   0  C bbCa  Ca bC b  0
(14a)
一方において、


bTˆab  b S ad S bd  S ad b S bd  0
(14b)
電磁場に関するマクスウェルの理論においては、
bTab   Fad b F bd  0
(15)
(15)は、真空中に電流が存在しない条件:
がゼロとなる。しかし、
(14b)において
j d  b F bd  0 によって上式
b S bd  0 は必要充分条件ではない。
一般には
b S bd  aC d  Q d
(16a)
(ここに、 S ad C  0 ; S ad Q  0 ;
d
d
Q d は space-like なベクトル)
であるが、2変数の Clebsch Parametrisation(CP)で表される今の場合は、
b S bd  aC d
(16b)
となる事が示される。簡単な計算により、
C bb a  0 ; C d  d S ab  0
(17a, b)
( L)
( L)
 ,  
a  a ,   ; S ab
 S ab
⇒
(L )
ここに、 S ab
(17c, d)
は局所 Lorentz 系で評価された渦度の値を示す。特に、(17d)
は、
CP が適応可能な順圧流体における Lagrange の渦定理と同等な内容である。
( )
(16b)に関しては、 
 f  ,   を使い、  を再定義すると、
C bb ( )  C b   f Lb   f Cb   0
 
b S ( )
ここに
bd
 a   0    C d
    ( ) 。この再定義に対応する新しい 
  g ab a ( )b ( )  0 2
0
(11)
と異なり一定値ではないが、 C
b
(18a)
は、
(18b)
b   0 を満たすので、 bTˆab  0 は依
然として成立。
3.渦力学の諸性質:1)“偏光”、2)量子・古典対応、3)次元、4)リー
マン曲率テンソルとの関係
について
1) 偏光に対応する事実だけ述べる。以下の図1 の二組の(双対)
( La;C a )
*
と( La ; C a )を重ね合わせ円偏光を作る事ができる。より正確な表現
としては、ベクトルの方向は同じだが位相差も考慮したものを
*
*
Ca と
*
すれば、( La ; C a )と( La ; C a )。
x2
*
~
M
La
~
M
Ca
x1
*
x3
La
図1:双対性
2)量子・古典対応
上で説明した一般的表現に対して、簡単の為に平坦な空間における平面波を考
え、更に
Tˆab    Ca C b
(19)
において、密度を通常の流体の様に、単位体積における“粒子数”と形式的に
翻訳すると、一波長当たりかつ一粒子当たりのエネルギーおよび運動量は波の
振動数と波数に比例する(Einstein – de Broglie)という関係が出る。
(もちろん
古典系なので、比例定数は求められない)
3)次元について
量子力学が示す光子:+1
または
-1
のスピン
*
⇒
*
左あるいは右偏光
に対応。4次元の基底としての( La ; C a )と( La ; C a )が必要となる。
電磁場のポインティングベクトル
に対応する S ab 力学系の“ポインティ
P(as) とする。ベクトルのスピノール表現を定義する以下の式
ングベクトル”を
に
Pa
P(as) を代入して
 
2 V a
0
V 0  V 3 V 1  iV 2   P( s )

 1
V  iV 2 V 0  V 3   P1

  (s)
また、運動量・エネルギーテンソル
P(1s )   S 02 2 S 02 S12 


0  
2
P( s )   S 02 S12 S 02  
(30)
T( mAB) は、S02 2  S12 2 なので上の式(30)
と同じ形となる。
T( mAB)
 S 02 2 S 02 S12     C 0C 0   C 0C 1 



2 
0 1
1 1 
S S
 02 12 S12      C C   C C 
(31)
a
従って運動量・エネルギーテンソル同様、 P( s ) のスピノール表現も何らの未定
数を含まず二値表現(ヌルベクトルは未定数を含む二値表現を持つ)を持つ。
*
*
( La ; C a )と( La ; C a )については、以下の直交関係が成立する。
*
Cb C b  0 ; Lb C b  0 ; * Lb C b  0 ; * Cb Lb  0 ; * Cb Lb  0 ;
*
Lb Lb  0
*
(32)
a
上で示した P( s ) のスピノール二値表現から作られる4つのベクトル:
(  C ,
0
  C1 , S 02 , S12 )も互いに直交するベクトルである。従って、
測地線
*
渦力学
*
( La ; C a )と( La ; C a )
⇒
(  C ,
0
  C1 , S 02 , S12 )
は4次元リーマン擬多様体の基底を与える渦表現の geometrodynamics である
と言える。
4)リーマン曲率テンソルとの関係
a
a
a
a m
a m
e
g ab  gba → Rbcd
  c db
  d cb
 cm
db  dm
cb ;Rabcd  g ae Rbcd
a
bc
 g ad  c g db   b g dc   d gbc  / 2
ここに、
Rbacd   Rabcd ;Rabdc   Rabcd ;Rcdab  Rabcd ;Rabcd  Racdb  Radbc  0
 a Rbcde   b Rcade   c Rabde   0
Sˆbacd  S ab Scd
⇒
(20a)
Sˆbacd  Sˆabcd ; Sˆabdc  Sˆabcd ; Sˆcdab  Sˆabcd ;
Sˆabcd  Sˆacdb  Sˆadbc  0 (第一ビアンキの恒等式)
(20b, c, d)
(20e)
第二ビアンキの恒等式





J abcde   a Sˆbcde  b Sˆcade  c Sˆabde






(20f)

J abcde   a Sˆbcde  b Sˆcade  c Sˆabde  Sbc a  Sca b  S abc S de
(20g)
ここで、 S
ab
の Hodge dual
*
S ab を考える。
局所 Lorentz reference frame で

*
S (abL)

 0

  S ( L)
23

  S ( L)
 31
  S ( L)
 12
*
(L )
S (abL) は S ab
で表現される。
( L)
S 23
( L)
S31
0
( L)
S 03
( L)
 S 03
( L)
S 02
0
( L)
 S 01
( L) 
S12

( L) 
 S 02

( L) 
S 01

0 
(21a)



* ab
S ( L )  b  






S
S
S
S




( L)
( L)
 S31
 2  S12
 3 
( L)
( L)
 S30
 2  S 02
 3 

( L)
( L)
( L)

31  0  S10  3  S 03 1

( L)
( L)
( L)

12  0  S 20 1  S 01  2 
( L)
23 1
( L)
23  0

( L)
( L)
( L)
 Sbc
 a  Sca
 b  S ab
 c
(21b)

S
( L)
bc  a
( L)
( L)
 Sca
 b  S ab
c   0
S
( L)
bc  a
( L)
( L)
 Sca
 b  S ab
c   0
(21c)



(7b より)
(21d)
(7b より)
(21e)

( L)
( L)
( L)
( L)
J abcde  Sbc
 a  Sca
 b  S ab
 c S de
(21f)
( L)
( L)
 ,  
S de
 S de
(21g)






J abcde   a Sˆbcde  b Sˆcade  c Sˆabde  0
(21h)
4.双対性に基づく電磁・重力エネルギーの放射モデルとしての可能性につい
て (マクスウェル方程式を導いた変位電流と似たアイディアに基づいて)
~
~
~ B
~
 E 
 0; D   ; B  0 ;
t
(22a)
~
~
~  D  ~ ~
~ ~
  H     j ; D  E ; B  H ;
 t 
(22b)


0   F   g   A   g   A
0  g   A  R A ;
 A 0
bTab  b Fad F bd   Fad b F bd  0 ;
bc
cd
b
e
d
de
c
d
e
c
d
de
e
c
d
e
d
e
e
(23)
 Rdc Ad

(24a)
(24b, c)
もう一つの可能性として、


0  g de d  e Ac  Rdc Ad ;
ここに、
b F bc   g cd  d 
(25a, b)
   e Ae 。
 d b F bd  0 → g de d  e  0
すなわち、真空中で、 b F
bc
(8a: Klein Gordon)
 0 でなく
b F bc   g cd  d   C c
(25b)
とすると、これに対応して、非定常の重力場のエネルギーが
Rab    Ca Cb ;で運ばれる可能性が生まれる。
(25c)