紫草第1号 - 東京都立保谷高等学校

平成27年4月1日に保谷高校に着任しました。本校の様子を少しずつご案
内できればと思っております。
さて、新年度も2週間が過ぎ、校内の様子も徐々に落ち着いた様子を見せて
きています。まず初めに始業式と入学式で私が話したことを載せさせていただ
きます。
―4月6日( 月) ―
生徒諸君に対する印象は、「とても素直で温かみのある礼儀正しい生徒たち」
というものでした。それは、2週間経った今では、確信に変わってきています。
●始業式では次のような話をしました。
最初に、「保谷高校」は「良い高校」だと言われていますが、さて、「良い」
とは何が「良い」のでしょうかと問いかけ、考えてもらいました。私の回答は
「みなさんのことです。自信を持ってください」というものでした。
次に、保谷高校の教育目標「知性高く、人間味豊かに、心身ともに健康な人
を育成する」を確認し、これは「知・徳・体」をバランスよく伸ばしていくこ
とだという話をしました。
●上記の2点を踏まえて、次の3点を話しました。
(1)
安心して通える学校にしたい。そのために自分とは違う考えの人の立場にも
立って考えることのできる人になってほしい。このことがグローバル社会で生
きていくためにも大切なことだ。
(2)
ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領のスピーチ( 「世界で一番貧しい大統領のス
ピーチ」) の一部「貧乏な人とは、少ししかモノを持っていない人のことではな
く、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と、江戸時代の
儒学者、佐藤一斎の「言志四録」から「わかくして学べば、すなわち壮にして
なすことあり。壮にして学べばすなわち老いて衰えず、老いて学べば、すなわ
ち死して朽ちず」を引用し、一見つながりのないことを引用した私の真意を考
えてもらいました。そのうえで、学業の面では「貧乏」であってほしいという
話をしました。さらに、中学校で学んだことが、最先端の研究でも生きている
ことを話し、もし、苦手な教科があれば、中学校の教科書に戻り、中学校の教
科書を100%または、100%近くまで理解できているかどうかを確認する
こと、中学校の教科書を100%近く理解できていれば、最難関の大学入試突
破も夢ではないという話をしました。
(3)
勉強だけでなく、運動もしっかりとがんばってほしい。体力をつけ、健康で
あることが全ての基本である。無理をせず、自分自身にあった方法で頑張って
ほしいという話をしました。
―4月7日( 火) ―
●入学式の式辞の中で、新入生諸君に向けて話した部分を載せさせていただき
ます。
「さて、新入生のみなさん、皆さんは今、本校でのこれからの生活に期待を
持ち、胸を膨らませていることと思います。本校は昭和46年に設置され、昭
和47年の一期生入学以来、
『知性高く、人間味豊かに、心身ともに健康な人を
育成する』という教育目標のもと、文武ともにバランスよく個性を伸ばしてい
く教育を実践してまいりました。昭和47年に制定された校章には、開校当時
の教職員の思いが込められておりますので、ご紹介いたします。
本校の校章は『むらさき』の花びらをかたどったものです。これは古今和歌
集の『紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る』の『むらさ
き』から取られたものです。この歌の意味は『ただ一本の紫草があればこそ、
広い武蔵野じゅうに生えているすべての草がどれもみなしみじみと趣きのある、
美しく、いとおしいものに思われる』というものであり、この校章を付ける保
谷高生には、東京の高校を代表するよき生徒として、高い誇りを持って立派に
高校生活を送ってもらいたいという思いが込められています。また、紫草の花
は小さな白い花でありますが、その根が紫色の染料となっていますことから、
「むらさき」と呼ばれています。このことから、目に見えない基礎となる力を
蓄えて、美しい花を咲かせてほしいという願いも込められています。このこと
は、校歌にも表れています。
ところで、開校当時からの教職員の思いを形にするために、私から3つのこ
とをみなさんにお話します。
一つ目は、多くの人と語り合い、本を読み、自分自身の立ち位置を探してほ
しいということです。一人で考えることも大切ですが、限界が早く来てしまい
ます。限界を打破するために、先人の知恵や友人の知恵を得て、自分自身の考
えを展開してほしいと思います。今、皆さんの生きているこの世の中は激しく
変化しています。今ある職業のいくつかは違う形に変わり、今はない職業が次々
と出てくる。その中では、いままでやってきたことを踏襲するだけでは解決で
きないことがたくさん出てくることは想像に難くないことです。急流の中で流
されないように、自分の立ち位置を探し、そこに自分自身の杭を打ってほしい。
高校生には難しい要求ですが、心がけてほしいと思います。
二つ目は、個性の違いを認め合ってほしいということです。自分自身と同じ
考えの人といるのは心地よい。しかし、それだけでは新たな発見は少なくなり
ます。自分自身の杭を打てれば、自分自身を知れば、違う考えも尊重できる。
グローバル化する社会のなかで、考え方や習慣の違う人々とも協働する世の中
で活躍していくためにも、他者を尊重できる懐の深い人となれるように自分自
身を磨いて欲しいと思います。
三つ目は、自分自身を表現してほしいと思います。その表現方法は多様です。
文章で表現する人もいるし、スポーツで表現する人もいる、楽器での表現やダ
ンスでの表現もよい、演劇もあるでしょうし、中にはテストの得点で表現する
人もいるかもしれない。いろいろな表現方法があると思います。他者に認めら
れるような素敵な自己表現をしてください。
さて、もう一度校章を見てみましょう。保谷高校の校章は5枚の花びらが寄
り添いあって出来ています。一枚の花びらは両隣の花びらとしか接触できませ
んが、中心で五枚がつながっています。皆さんも一人ひとりのつながりを大切
にしてください。そして、3年後、5年後、10年後の自分自身を描いてみて
ください。
」(以下略)
これからも、少しずつではありますが、学校の様子を載せていきたいと思い
ます。
東京都立保谷高等学校長
樋口博文