結 水路の老朽化部分の補修 伝統的農法の保全・実施 い 生き物の生息状況の把握 木柵による水路補修 会 場 平成 24 年 月 日(水) 13:00~16:30 いわて県民情報交流センター7F「アイーナホール」 内 容 盛岡市盛岡駅西通 1 丁目 7-1 ◆表彰式 ◆基調講演 日 時 「みんなで広げよう!地域の“絆” 、 守ろう!美しい農村環境」 講師:宇都宮大学農学部教授 水谷正一 氏 ◆事例発表 開 催 趣 旨 本県の農村地域では、昔から、田植えや稲刈り、水路の江さらいを共同作業で行うなど、地域で 助け合い協力し合う「結い」の心が受け継がれてきました。 しかしながら、今の農村地域においては、農業従事者の減少・高齢化や非農家との混住化の進 行により、農地・農業用水などの地域資源を農業者だけで保全管理していくことが困難になってい ます。 こうした地域資源のもと、水源の涵養、生態系の保全、良好な景観の形成等、様々な機能を維 持・増進していくため、「結い」を通じた農村コミュニティの活性化を目指し、地域住民や企業、NP Oなど多様な主体が参画して、「アドプト活動」※1や「農地・水保全管理活動」※2などの地域協働に よる保全活動を、全県で展開しています。 そこで、これまでの取組成果を関係者が共有し、更なる活動の充実・強化を図るとともに、広く県 民にも農業・農村が持つ多面的な機能やこのような結いの意義・必要性について理解を深めても らうため、「いわて結いっこシンポジウム」を開催します。 「結い」とは、労働力を対等に交換しあって田植え、稲刈りなど農の営みや住居など生活の営み を維持していくために共同作業を行うこと、又はそのための相互扶助組織のことをいう ※1「アドプト活動」とは、土地改良施設が有する多面的な機能を維持・充実させるため、地域(自 治会・団体・学校)や企業などと、施設管理者との間で「アドプト協定」を締結し、協働で施設の保 全管理を行うことをいう。 ※2「農地・水保全管理活動」とは、平成19年度から開始された「農地・水保全管理支払交付金」 を活用して、農地、農業用施設の基礎的な保全管理活動や農村環境の保全活動に地域ぐるみ で取り組むことをいう。 目 次 開催趣旨・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 ペ ー ジ 次第・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 2 ペ ー ジ 表彰式(岩手県アドプト活動モデル賞) ・・・・・・・・・・・・ ・ 3 ペ ー ジ 表彰式(岩手県農地・水・環境保全向上対策活動モデル賞) ・・・・ ・ 5 ペ ー ジ 基調講演・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 8 ペ ー ジ 事例発表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ 2 0 ペ ー ジ - 1 - 次 13:00~ 第 開会 [岩手県農地・水・環境保全向上対策地域協議会 会長 田山 清] 主催者挨拶 [岩手県農林水産部 部長 東大野 潤一] 来賓祝辞 [東北農政局整備部農地整備課 農地・水保全管理室長 佐藤 哲郎] [岩手県議会農業農村整備推進議員クラブ 会長 小田島 峰雄] [岩手県土地改良事業団体連合会 会長 及川 正和] 13:35~ 13:45~ 地域協働による農地・農業用施設の保全管理の取組状況について [岩手県農林水産部農村建設課水利整備・管理担当課長 佐々木 忍] 表彰式 ○岩手県アドプト活動モデル賞 (1)「舘迫幹線用水路環境整備委員会」、「猿ヶ石北部土地改良区」、「花巻市」 (2)「胆沢区若柳第 16 区行政区」、「胆沢平野土地改良区」、「奥州市」 <講評 岩手県農林水産部農村建設課総括課長 伊藤 千一> ○岩手県農地・水・環境保全向上対策活動モデル賞 (1)「見前町環境保全協議会」(盛岡市) (2)「藤里寿集落活動組織」(奥州市) (3)「長沼地区農地・水・環境活動組織」(北上市) (4)「農地・水・環境保全向上徳田地区活動組織」(一関市) (5)「摂待水利組合農地と水の会」(宮古市) (6)「銀杏会活動組織」(九戸村) <講評 岩手県農林水産部農村建設課総括課長 伊藤 千一> 14:20~ 14:30~ - 休 憩 - 基調講演 「みんなで広げよう!地域の“絆”、 守ろう!美しい農村環境」 [講師] 15:30~ 宇都宮大学農学部教授 水谷 正一氏 事例発表 ○胆沢区若柳第 16 区行政区(奥州市胆沢区) 千葉 誠 ○見前町環境保全協議会(盛岡市) 代表 藤原 幸行 ○摂待水利組合農地と水の会(宮古市) 代表 舘崎 [コメンテーター] 16:30 前区長 閉会 岩手大学農学部教授 広田 純一氏 [岩手県農林水産部農村整備担当技監 沼﨑 光宏] - 2 - 功 表彰式(岩手県アドプト活動モデル賞) 「岩手県アドプト活動モデル賞」とは アドプト活動は、地域住民との協働を基本とした基幹的農業水利施設等の適切な保全管 理を持続的に進めていくことを目的として、平成 15 年度から本県独自に取り組み、現在ま でに岩手県内で 171 の「アドプト協定」が締結され活動を展開しています。 こうした「アドプト活動」の中から、他の模範となる優れた活動を顕彰するとともに、 その効果・必要性を広く県民に紹介するため、「岩手県アドプト活動モデル賞」を創設し、 20 年度から表彰を行っています。 ◆ 岩手県アドプト活動モデル賞受賞団体について (1)活動団体名 ・ たてはさまかんせんよう す い ろ かんきょう せ い び い い ん か い 「舘 迫 幹線用水路 環 境 整備委員会」(花巻市東和町) 草刈りなどの管理作業のほかに、通水期間中は、1日1回の水路巡視点検を 行っている。 ・ 活動 6 年目に入り、地域のことは地域で守る意識が年々高まっている。 ・ 継続して活動することで、ゴミの投げ捨てがほとんど見られなくなった。 協定締結 花巻市及び猿ヶ石北部土地改良区と、平成 19 年3月 28 日に締結 協定施設 舘迫幹線用水路L=650m (舘迫幹線用水路:国営猿ヶ石川開拓建設事業で造成後、老朽化 に伴い、団体営ため池等整備事業で改修された幹線用水路) アドプト協定における活動内容:水路の草刈り、巡回監視 舘迫幹線用水路環境整備委員会による草刈り作業 - 3 - (2)活動団体名 い さ わ く わかやなぎだい く ぎょうせい く 「胆沢区 若 柳 第16区 行 政 区」(奥州市胆沢区) ・ 草刈りなどの管理作業に加え、生き物調査やホタルの観察会・学習会を毎年行 い、ホタルの保全活動に取り組んでいる。 ・ 水路内に木炭を設置して用水の水質浄化に取り組んでいる。 ・ ヒメイワダレ草を法面に植栽するなど、景観形成活動に取り組んでいる。 協定締結 奥州市(旧胆沢町)及び胆沢平野土地改良区と、平成 18 年2月6日 に締結 協定施設名 巾ノ下水路L=800m (巾ノ下水路:県営水田農業経営確立排水対策特別事業で改修された 幹線排水路。ホタルブロックによる生態系保全型水路を採用) アドプト協定における活動内容:草刈り、清掃活動、植栽 胆沢区若柳第16区行政区が行うホタルの保全活動 - 4 - 表彰式(岩手県農地・水・環境保全向上対策活動モデル賞) 「岩手県農地・水・環境保全向上対策活動モデル賞」とは 農地・水・環境保全向上活動は、地域共同による農地周りの水路や耕作道などの地域資 源の適切な保全管理を持続的行うことを目的として、平成19年度から第1期対策に取り組 み、平成23年度までに岩手県内で454の活動団体が「共同活動」を展開しています。 こうした「農地・水・環境保全向上活動」の中から、他の模範となる優れた活動を顕彰 するとともに、その効果・必要性を県民に広く紹介するため、「岩手県農地・水・環境保 全向上対策活動モデル賞」を創設し、今年度から表彰を行うものです。 ◆ 岩手県農地・水・環境保全向上対策活動モデル賞受賞団体について (1)活動団体名 みるまえまちかんきょうほぜんきょう ぎ か い 「見前町 環 境 保全協議会」(盛岡市) ・ シバザクラを道路法面に植栽するなど、景観形成活動に取り組んでいる。 ・ 地域住民一体となり「見前産直まつり」を開催し、消費者交流等を行っている。 ・ 特別栽培米など環境保全に向けた先進的な営農活動を実施し、地元の製麺会社との 契約取引につながっている。 シバザクラ植栽箇所の草取り作業 (2)活動団体名 見前産直まつり ふじさとことぶきしゅうらくかつどう そ し き 「藤里 寿 集 落 活動組織」(奥州市江刺区) ・ 環境保全活動として整備したビオトープ※が、地域住民の憩いの場となっている。 ・ NPO法人と連携した川遊び体験やワークショップの開催などを通じた、地域コミ ュニティの活性化を図っている。 ※ビオトープとは、生き物がありのままに生息活動する場所のこと。 ビオトープでの生態系学習 川遊びを兼ねた生態調査 - 5 - (3)活動団体名 ・ ながぬま ち く のうち みず かんきょうかつどう そ し き 「長沼地区農地・水・ 環 境 活動組織」(北上市) 遊休農地の雑木伐採や草刈りを実施し、保全管理に取り組んでいる。 ・ 「すず」とよばれる湧水を環境整備し、専門家指導のもと希少野生植物を保護するな ど環境保全活動に取り組んでいる。 ・ 子供達と水路へ稚魚放流を行っている。 水路への稚魚放流 湧水(スズ)の保全管理 (4)活動団体名 のうち みず かんきょう ほ ぜ ん こうじょう と く た ち く かつどう そ し き 「農地・水・ 環 境 保全 向 上 徳田地区活動組織」(一関市藤沢町) ・ ヒマワリの里づくりを目指し、ヒマワリ植栽活動による遊休農地の有効利用と景観形 成活動に取り組んでいる。 ・ 稲作体験水田「がんばっ田」の設置や収穫祭の開催による地域住民との交流を行って いる。 「がんばっ田」の田植え (5)活動団体名 ・ ヒマワリの花畑 せったい す い ろ くみあい の う ち みず かい 「摂待水路組合農地と水の会」(宮古市) 東日本大震災で被災した農地のガレキ撤去や水路の復旧等に自ら取り組み、早期に 営農を再開している。 ・ 遊休農地の草刈りを実施し、保全管理に取り組んでいる。 ガレキや土砂で閉塞した水路の泥上げ 震災を乗り越え米の収穫 - 6 - (6)活動団体名 ・ いちょうかいかつどう そ し き 「銀杏会活動組織」(九戸村) アヤメやハス等の植栽による遊休農地の有効利用と景観形成活動に取り組んでいる。 ・ 共同活動で排水路を整備したことにより、水田の排水性を改良し、リンドウやマコモ タケなど新たな品目の導入促進や産直への販売拡大につながっている。 アヤメの管理状況 マコモタケの栽培 《農地・水保全管理の豆知識》現地指導専門員やNPO法人の活用について ① 現地指導専門員の活用について 岩手県土地改良事業団体連合会では「現地指導専門員」 を新たに配置し、無償で活動組織の運営に関する様々な 支援を行っています。 今年度は、60の活動組織の現地指導や訪問相談を行い ました。是非ご活用ください。 現地指導の様子 <具体的な支援事例> 1.活動組織の広域化に係る支援 2.施設の補修に係る支援 4.外注工事の契約の指導 5.経理に係る指導 3.設計及び施工管理の指導 6.地域における研修会の講師 7.その他、書類確認や組織運営へのアドバイス等 ②NPO法人の活用(業務委託)について 活動組織が行う経理等の事務、設計・積算(工法選定)、発注業務、現場監理などを NPO法人に委託することも可能です。 ※委託料については、業務内容に応じて異なります。 詳しくは、市町村の農地・水保全管理支払交付金担当課又は地域協議会事務局まで ご相談ください。 - 7 - 基 調 講 演 国立大学法人 宇都宮大学農学部教授 水谷正一[みずたに まさかず] 東京都生まれ。1975年東京大学大学院農学研究科博士課程単 位取得退学。東京農工大学大学院連合農学研究科教授併任。農学 博士。 専門分野:水辺生態系の保全・計画、現代の水利と水資源の評価、 モンスーン・アジアにおける比較潅漑システム。 ・日本学術会議連携会員 ・棚田学会理事 ・日本水大賞選考委員 ・田園自然再生活動コンクール審査委員 ・農林水産省農地・水保全管理支払交付金第三者委員会委員 ・「メダカ里親の会」の活動で環境省・自然環境功労者受賞 「メダカ里親の会」は 1995 年3月に発足した民間の任意団体です。会員は 2012 年3月 時点で 34 名。発足以来 16 年間にわたって“農村に春の小川を復活させよう”を合い言葉 に、次のような活動に取り組んでおります。 ①メダカの保護・保全活動 ②水田水域の生き物の生息場やネットワークづくり ③メダカやドジョウなどの調査・研究活動 ④「田んぼまわりの生きもの」や「農」に関する啓発活動 - 8 - アジアの田んぼ、日本の田んぼ みんなで広げよう! 地域の“絆”、 守ろう!美しい農村環境 アジア 91% 2012年11月28日 宇都宮大学農学部教授 水谷 正一 世界におけるコメ生産量 (FAO, FAOSTAT Land, 2000) 1 2 山地の棚田 山地の棚田 中国雲南省元陽県 フィリピン、ルソン島北部ボントック フィリピン、ルソン島北部バナウエ 世界で最も大規模な 棚田(約1000ha) 3 4 日本の棚田 山口県向津倶半島 栃木県茂木町 ネパール、カトマンズ盆地 ヒマラヤのふもとの棚田 5 6 1 - 9 - 平野の水田 栃木県河内町 谷川の湧水 富山平野(写真提供:広瀬慎一) 長野県安曇野の湧水をつかったワサビ田 (写真提供:藤縄克己) わさび田と湧き水 7 8 水田稲作がささえる3つの価値 まず、 田んぼの経済価値とは? 経済価値: 食料の生産(主穀、副産物) を考える 環境価値: 生きもの、景観、国土保全 文化的価値: 遊び、学び、祈り 9 10 手間と時間のかかる大地の改良 経済価値を生むふたつの源泉 ふるくから拓 かれた棚田 大地の改良: 田んぼの造成、用水・排水施設、た め池、河川の改修など 労働用具の改良: スキ(鋤)・クワ(鍬)、役畜、 農業機械、ポンプなど 10年まえに 拓かれた棚田 11 12 2 - 10 - 労働用具の改良は限定的 代かき作業を終えて帰路につく、小ぶりの水牛と農夫 田んぼの経済価値の特殊性 後ろの農夫は木製の馬ぐわをかついで運ぶ 「大地の改良」が「労働用具の改良」に先行 「改良された大地(水田と水利システム)」で は維持管理が不可欠 大地の改良と維持管理のにない手は農民組 織(村落共同体) 13 14 田んぼ質問教室(1) Q1: 約2万年前、日本列島は氷河期でした。この氷 河期に、日本列島の生きものたちは、 つぎに、 田んぼの環境価値とは? A. ほとんど死んでいなくなった B. 多くが生きのこった を“生きもの”を例に考える Q2: 約2500年前に、日本で稲作が始まりました。こ のころ作られたイネは、 A. もともと日本にあった野生種 B. 中国や南洋諸島から伝わってきたイネ 15 16 田んぼ質問教室(2) 田んぼ質問教室(3) Q3: 日本ではじめにイネが植えられた田んぼは、 Q5: 田んぼのまわりの生きものが減りはじめたのは、 A.100年前の明治時代 B. 30年ほど前の、つい最近 A. 洪水をさけることができる台地の上 B. 水がつかりやすい湿地 Q4: 日本で田んぼの面積が一番広かったのは、 A.江戸時代 B.40年ほど前の1960年ころ 17 18 3 - 11 - 田んぼのまわりからいなくなった生き物 野生絶滅 (飼育のみ) トキ 絶滅危惧ⅠA (絶滅の危険性が極めて高い) 絶滅危惧ⅠB (絶滅の危険性が高い) 絶滅危惧Ⅱ (絶滅の危険が増大) ミヤコタナゴ アユモドキ イバラトミヨ雄物型 ムサシトミヨ コウノトリ ホトケドジョウ クマタカ イヌワシ スナヤツメ ギバチ メダカ 田んぼの生きもの達 オオタカ オオワシ 19 20 田んぼの生きものグループ 田んぼの食物網 栄養を与える 生産者 ツバメ 植物 寄生バチ ワシ・タカ サギ イタチ ヘビ カマキリ・クモ(益虫) トンボ カエル タガメ 消費者 分解する 食べる 分解者 腐食動物 微生物 草食動物 消費者 雑食動物 肉食動物 アリ・アブ(雑食昆虫) カエルの幼生 ドジョウ、フナ バッタ・ウンカ等 カメムシ等 (ただの虫) (害虫) 生産者 分解する 分解者 イネ 細菌・バクテリア 雑草 ザリガニ 動物プランクトン ガムシ等 (水生昆虫) 藻類・植物プランクトン イトミミズ ユスリカ 貝類 トビケラ等の昆虫 デトリタス食者 21 22 (日鷹1990,金島2006より) 分解者 植物(生産者)とデトリタス イトミミズ アオミドロ(藻類) ユスリカの幼虫 イネ デトリタス(植物や動物の遺骸)23 トビケラの幼虫 マルタニシ 24 4 - 12 - 消費者(肉食動物) 消費者(植食動物) タガメ(絶滅危惧Ⅱ類(環境省)) イネミズゾウムシ ショウリョウバッタ アシナガバチの仲間 コカマキリ 25 26 タイコウチ 消費者(雑食動物) コオイムシ(準絶滅危惧(環境省)) ゲンジボタルとその幼虫(要注目種(栃木県)) 消費者(カエル類) ドジョウ ツチガエル(絶滅危惧Ⅱ類(栃木県)) シマドジョウ トウキョウダルマガエル(準絶滅危惧種(栃木県)) (準絶滅危惧種(栃木県)) フナ (要注目種(栃木県)) (キンブナ) 27 ニホンアカガエルとその幼生(絶滅危惧Ⅱ類(栃木県)) 28 消費者(肉食動物) 消費者(肉食動物) カヤネズミ(要注目種(栃木県)) ノシメトンボ アカネトンボのヤゴ ニホンカナヘビ イトトンボの一種 コガネグモの仲間 アメリカザリガニ 29 (要注目種(栃木県)) 30 5 - 13 - 消費者(肉食動物) 消費者(肉食動物) ハシボソガラス シマヘビ(要注目種(栃木県)) 消費者(雑食動物) ヤマカガシ(準絶滅危惧種(栃木県)) アオサギ 31 ニホンマムシ(準絶滅危惧種(栃木県)) 32 冬の田んぼで休息す る渡り鳥 滋賀県余呉町 (写真提供:渡辺) 冬の田んぼで餌をとる コハクチョウ 石川県加賀市 (http:www.jawgp.org/anet/) 33 田んぼの食物網 ツバメ 寄生バチ ワシ・タカ サギ 水田稲作がささえる3つの価値 の変質 イタチ ヘビ カマキリ・クモ(益虫) トンボ カエル タガメ 消費者 アリ・アブ(雑食昆虫) 34 カエルの幼生 ドジョウ、フナ バッタ・ウンカ等 カメムシ等 (ただの虫) (害虫) ガムシ等 (水生昆虫) ザリガニ 経済価値(食料の生産)の拡大 環境価値(生きもの、景観、国土保全)の縮小 動物プランクトン 文化的価値(遊び、学び、祈り)の縮小: 生産者 分解者 イネ 細菌・バクテリア 雑草 藻類・植物プランクトン その原因は? イトミミズ ユスリカ 貝類 トビケラ等の昆虫 デトリタス食者 35 (日鷹1990,金島2006より) 36 6 - 14 - 産業化社会(よりやすく、より多く、より早く) 産業化社会に巻き込まれた農村 モノの豊かさがもたらし影 戦略10訓(電通PRセンター、1960年代) ○もっと使わせろ ○捨てさせろ ○無駄遣いさせろ ○季節を忘れさせろ ○贈り物をさせろ ○組み合わせで買わせろ ○きっかけを投じろ ○流行遅れにさせろ ○気安く買わせろ ○混乱を作り出せ ○有用資源の廃棄・遊休化 ○農薬、化学肥料、化石エネルギーの多投入 ○非生物的廃棄物の投棄と蓄積 ○環境汚染の発生 ○水域のコンクリート化 ○人間関係の希薄化 ○自治的組織の空洞化 ○生物多様性の劣化 37 38 経済価値(効率性)の偏重 どうしたら 経済価値として、より安く(コスト削減)が目標 田んぼの環境価値・文化的価値を 再生できるのか? そのために“労働用具の改良”を指向 維持管理のための労力は“無駄”と認識 を考える 田んぼがささえる 環境価値と文化的価値がいちじるしく後退 39 40 かかわりの分断(鬼頭秀一のリンク論から) かかわりの再生(事例1):維持管理活動 (鬼頭秀一著『自然保護を問いなおす』、ちくま新書) <生業> B. 切り身の関係=かかわりの部分性 社会的・経済的 リンク 文化 風土 人間 自然 社会的・経済的リンクと文化的・宗教的リンク によるネットワークが切断され、人間が自然 との間で部分的な関係を取り結ぶあり方を 「かかわりの部分性」という(127ページ)。 <近代的生活> 文化的・宗教的 リンク 草刈り・浚渫 (社会的リンク) GW西鬼怒 V 西下ヶ橋集落 保護 文化的リンク 人間の生は自然とのかかわりの中にしかあり えず、しかも人間の自然とのかかわりの一番 基本的なかたちが「生業」のいとなみである (119ページ)。 (伝承と永続) 生態学 <生活> A. 生身の関係=かかわりの全体性 <維持管理活動> NPO法人・GW西鬼怒の事例 地域の人々が参加する維持管理活動が谷 川やドジョウ水路の環境を維持し、結果的 に様々な生きものが保全されている。 人間 かかわり の分断 (人間) 自然 ドジョウ水路 V 用水と排水 (二次的自然) (経済的リンク) 魚とり・生きもの・ 遊び 経済的リンク (文化的リンク) 収奪 近代科学技術 <稲作・田んぼの学校・遊び> <近代的産業> 41 42 7 - 15 - かかわりの再生(事例2):環境創造型稲作 <環境創造型稲作> 豊岡市・祥雲寺集落の事例 コウノトリの餌生物の確保と環境負荷を もたらさない農法を実践し、安全・安心 の米作りとコウノトリの野生生息をめざし ている。 かかわりの再生(事例3):生きものとの共生 フクロウ営巣ネットワークの活動として 里山の下草刈り、水路へのカエル転落 防止のためのフタ設置などに地域で 取り組み、同時に減・減農業による環 境負荷の低減をすすめている。 避難プール・魚道 の設置・管理 (伝承と永続) <水田稲作と里山管理> 宇都宮市・逆面集落の事例 (文化的リンク) コウノトリを育む農法 巣箱設置・ 下草刈り (伝承と永続) (文化的リンク) 減減農業 (経済的リンク) (経済的リンク) 営農組合 水田 V 逆面集落 里山・水田 V (人間) (二次的自然) (人間) (二次的自然) 育む里のフクロウ米 コウノトリの舞(米) (経済的リンク) (経済的・社会的リンク) コウノトリが棲む農村 フクロウとともにあ る集落の暮らし (文化的リンク) (社会的リンク) <ブランド米・地域づくり> <ブランド米・フクロウとともにある集落> 43 44 自然と人間の“かかわり”を再生するには? 社会的・経済的なリンク→手間をかける 生きものを大切にする農法(「ふゆ・みず・田んぼ」、「コウノトリ育 む農法」など)、棚田オーナー制度、水路清掃支援、都市・農村 交流、生産費を補償する農産物価格、etc. 栃木県の農地・水で取り組んでいる 「田んぼまわりの生きもの調査」の意味 文化的なリンク→学ぶ、遊ぶ を考える 田んぼの生きもの調査、田んぼの学校(食農教育・環境教育)、 魚とり、野草や木の実の採食、田んぼや里山を舞台とした芸術 活動、ホタル鑑賞会、水田魚道、etc. 宗教的なリンク→祈る 農耕儀礼(五穀豊穣、虫除け)、そば祭り、鮎祭り、水神、龍神、 キーは地域資源の利活用 カッパ伝説、灯籠流し、 etc. 45 46 Ⅰ.田んぼまわりの生きもの調査 導入の背景 (先駆的事例) 「非農家や子どもたちが参加する 生きもの調査の取組みと成果」 農村自然環境整備事業 西鬼怒川地区 どじょう水路、井桁沈床工、保全地 の整備 など <グラウンドワーク西鬼怒> 維持 管理 が ● ● 一体となった活動 等を 巻き込んだ活動 農地・水・環境保全向上対策の導入にあたり 田んぼまわりの生きもの調査を対策導入の要件化 水谷正一(宇都宮大学)、南斎好伸(栃木県農政部)、小堀忠則(栃木県農政部) ●地域の人々が自分たちの住む“ 『水土の知』 第80号、平成24年1月号、11-14. 小特集 「農業農村工学分野における戦略的アウトリーチ活動」 ”に対して“ ”を向けながら、農村 環境をもう一度見つめ直し、環境への理解を深めるとともに保全活動に参加する きっかけづくりとして、 47 する。(全国唯一、栃木県独自) 48 8 - 16 - Ⅱ.栃木県における農地・水・環境 保全向上対策の取組み状況 35,000 30,000 取 25,000 20,000 組 15,000 面 10,000 積 5,000 (ha) 0 266組織 草地 畑 水田 組織数 H19 32 2,532 19,155 266 371組織 375組織 378組織 H20 32 3,574 26,162 371 H21 32 3,603 26,434 375 H22 32 3,620 26,515 378 Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み 1.手引きの作成と活用 800 700 600 500 400 300 200 100 0 全活動組織へ配布 (手引きの内容) ●調査の主旨 ●調査準備(計画、参加者募集など) ●調査実施(調査方法、報告書作成) ●周辺環境の調べ方(流速や水質など) ●登録アドバイザーの紹介 ●生きもの同定シート(別冊) 49 50 Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み 2.アドバイザーの確保 民間企業, 19人, 4.3% (組織数) 300 242 250 247 259 自然監視員, 学校教諭 19人, 4.3% (小・中・高校) , 21人, 4.8% 200 150 100 大学, 3人, 0.7% 他の組織, 8人, 1.8% 行政職員, 28人, 6.4% 100 水産試験場 なかがわ水遊 園, 29人, 6.6% 50 0 H19 H20 H21 H22 (活動組織における 年度別アドバイザーの利用状況) 環境NPO等, 168人, 38.2% 地元の 有識者, 66人, 15.0% 水土里ネット, 79人, 18.0% (H22アドバイザーの利用状況) 51 52 Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み 3. 活動のステップアップの促進 3. 活動のステップアップの促進 (年度別参加者の推移) (1)導入期の取組み 25,000 7,917 20,000 ●生きものへの関心を高める ●地域の生きものの状況を知る ●地域の人の交流を深める 7,692 15,000 10,000 5,000 2,068 2,321 1,167 6,139 8,713 3,061 13,492 8,517 2,932 11,112 子供 非構成員 構成員 0 H19 具体的な取組 ●多くの参加者の確保 ●多様なフィールドでの調査 ●お年寄りとの話し合いなど 地域コミュニケーションの充実 啓発期 充実期 H20 53 H22 (調査場所の変化) ため 池 土手 2.2% 19.7 水路 % 田 57.1 21.0 % % 平成19年度 発展期 H21 ため 池 2.1%土手 25.1 % その 他 6.3% 田 25.0 % 水路 41.4 % 平成22年度 54 9 - 17 - Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み 3.活動のステップアップの促進 (2)充実期の取組み ●生きものを増やす ●地域の環境全般に目を向ける ●地域外との交流も深める 平成22年度 生きものマップ作成 114組織 具体的な取組 ●生きものマップの作成 ●身近な生きもの16種を指標種 ●学校教育との連携(環境学習) 55 56 IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 Ⅲ.生きもの調査促進に向けた取組み 3.活動のステップアップの促進 (3)発展期の取組み ●環境保全活動の積極的展開 ●環境に配慮した農業生産の拡大 ●環境資源を活用した地域振興 1.生きもの調査参加者の意識の変化 活動組織数 0 機械除草部分の拡大 生きものだまり、魚だまり 土水路の確保、管理 水田魚道 水路内の隠れ場確保 水田内の避難場所… 冬期・夏期湛水 中干し延期 両生類の移動経路の確保 その他 50 15 12 8 4 4 2 2 33 25 100 「対策導入前後の田んぼまわりの環境への関心度」 81 0% H19~H22 水田魚道設置 46組織 対策導入前 2%9% 40% 60% 80% 66% 現在 (水田魚道) 22% 38% ほぼ全員が関心を持っていた/持った 少しの人しかいなかった/いない 無回答 (魚だまり) IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 7% 1% 0% 54% 半分くらいの人が関心を持っていた/持った 関心を持っている人はいなかった/いない IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 1. 生きもの調査参加者の意識の変化 1. 生きもの調査参加者の意識の変化 「生きもの調査を契機とした人々の変化」 「生きもの調査を契機とした活動内容の変化」 0% 10%20%30%40%50%60%70%80%90%100% 子供たちが生きものを意識するようになった 62% 51% 地域のまとまりが充実した 34% 高齢者の活躍の場が出来た 地域外からの参加者もあり、幅広い交流が… 新たな活動への取組が開始された 情報発信などに積極的に取り組む意欲が… 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 除草剤使用の抑制 生きもの図鑑・マップの作成 生きもの情報の発信(広報紙掲載など) 減農薬・無農薬農業 生きもの観察会の企画・実施 畦畔や法面へのカバープランツの植栽 生きもの生息場の整備(営巣場の設置など) 農耕儀礼の復活(どんど焼きなど) 水田魚道の設置 ビオトープの設置 テビの設置 90% 生きものに関する共通認識が醸成された 1% H22農地・水・保全向上対策 中間年評価より(活動組織向けアンケート) 58 57 世代を超えた幅広い交流が出来た 100% (69ヶ所) 具体的な取組 ●エコアップ活動 ・生態系保全活動 ・普及啓発活動 ●農産物の生きものブランド化 20% 21% 19% 13% 10% H22農地・水・保全向上対策 中間年評価より(活動組織向けアンケート) 59 43% 37% 27% 27% 27% 19% 18% 13% 13% 12% 3% H22農地・水・保全向上対策 中間年評価より(活動組織向けアンケート) 60 10 - 18 - IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 1.生きもの調査参加者の意識の変化 2.県民の農村環境などへの関心について 活動組織「生きもの調査に対する自己評価」 生きもの調査をやって 良かったですか やらなくても 良かった 1% どちら でもない 5% 生きもの調査の事前 準備は大変でしたか 生きもの調査は 簡単でしたか 無回答 5% 無回答 12% 大変では なかった 11% どちら でもない 25% やって良かった 89% 事前準備 などが 大変だった 52% 無回答 17% 難しかった 17% 農村と聞いて何を思い浮かべますか 生きもの調査を またやりたいですか もうやり たくない 2% 調査は 簡単だった 29% 0% 無回答 13% どちら でもない 22% またやりたい 63% どちらでもない 37% H22農地・水・保全向上対策 中間年評価より(活動組織向けアンケート) 61 20% 30% 地域の交流会・お祭り 花の植栽 農業体験 25% 水路・土手の草刈り 17% 歴史的な用水路などの見学会 10% 9% 水路の泥上げ 農道・水路の補修 その他 無回答 50% 43% 40% 40% 36% 35% 生きものを守るための活動 参加したくない 40% 27% 25% 60% 60% 54% 44% 80% 74% 100% 経済価値 環境価値 文化的価値 62 生きものへの“まなざし”から農薬の手控えへ お年寄り世代、親世代、子ども世代の“つながり”が地域の 活性化へ 環境劣化の“気づき”から保全活動へ 農村における活動で、機会があれば参加しても 良いと思う活動はどれですか(複数回答可) 10% 40% V. 「生きもの調査(栃木県)」のまとめ 2.県民の農村環境などへの関心について ゴミ拾いなどの清掃活動 2% 3% 0% 20% H22農地・水・保全向上対策 中間年評価より(一般県民向けアンケート) IV.アンケートでみる生きもの調査を 通じた地域の変化 0% 食料の生産 きれいな水や空気 美しい風景 魚やカエルなどの生きもの うるおい・やすらぎ お祭りや伝統文化 退屈・つまらない その他 無回答 環境 環境 文化 環境・文化 経済・文化・環境 経済・環境 文化 経済・環境 経済 「生きもの調査」は、水田稲作が支える三つの価値を再確 認する機会となった。 農地・水の活動は、「改良された大地」に不可欠な維持管理 を再生するキッカケとなった。 地域住民の活動への参加は、維持管理のあらたな担い手 が育つ可能性を示した。 1% 2% 5% 63 64 11 - 19 - 事 例 発 表 国立大学法人 岩手大学農学部教授 広田 純一[ひろた じゅんいち] 東京都生まれ。1983年東京大学農学系研究科農業工学 専攻博士課程修了。農学博士。 専門分野:農村計画学、地域計画学 ・東日本大震災復興構想会議検討部会 専門委員 ・岩手県東日本大震災津波復興委員会総合企画専門委員会 委員 ・岩手県農地・水・環境保全向上対策検討委員会委員長 ・NPO法人 いわて地域づくり支援センター理事長 い さ わ く わかやなぎ だ い 1 6 く ぎょうせい く ■ ち ば 胆沢区 若 柳 第16区 行 政 区(奥州市胆沢区) 前区長 千葉 【協定施設:巾ノ下水路 まこと 誠 L=800m、構成員:73 世帯】 水路の草刈り活動だけではなく、 “ホタルの保全活動”を子供達と一緒に行うことで、地域 全体で巾ノ下水路のホタルを守って行こうという意識が高まっている。 みるまえまちかんきょうほぜんきょう ぎ か い ■ 見 前 町 環 境 保 全 協 議会(盛岡市) 会長 ふじわら 藤原 さちゆき 幸行 【活動面積 77.6ha、組織構成員:個人 106 名・18 団体】 都市と農村の混住化が進んでいる地区であるが、地域で生産される農産物を「見前産直ま つり」で販売するなど消費者や非農家との交流を積極的に展開している。 せったい す い り くみあい の う ち ■ みず かい 摂 待 水利 組 合 農地と水 の会 (宮古市) 代表 たてざき 舘崎 いさお 功 【活動面積 13.1ha、組織構成員:個人 152 名・5団体】 東日本大震災津波で被災したが、地域一丸となって農地のガレキ処理や水路の復旧等を実 施し、被災地の中でも最も早く営農を再開し、地域農業の復興を進めている。 - 20 - メモ - 21 - ~おたまガエルの紹介~ 農地・水・環境保全向上対策は、農家や地域の皆さんが水路や農道 をはじめ、岩手の美しい農村風景を守る活動を支援するものです。 県内各地でこの対策が展開されていますが、各地で行われている 活動を統一的に、かつ、県民の皆さんに親しみやすく広報するため に、イメージキャラクターを岩手県農地・水・環境保全向上対策地域協議 おたまガエル(先生) 会が制定しました。 なお、イメージキャラクター「おたまガエル」は、オタマジャクシがカエルに成長する途 中の姿を模したもので、 「おたまガエル」が安心して(笑って)暮らせる“生き物にもやさし い環境づくり”の推進と、オタマジャクシがカエルに成長するように“地域も活性化(成長) すること”との願いを込めたものです。 おたまガエル(田植) おたまガエル(収穫) おたまガエル おたまガエル(目が回る) - 22 - 主催:岩手県、岩手県農地・水・環境保全向上対策地域協議会 【お問い合わせ先】岩手県農地・水・環境保全向上対策地域協議会事務局 (岩手県土地改良事業団体連合会内) 〒020-0866 岩手県盛岡市本宮 2-10-1 TEL 019-631-3207 FAX 019-631-3260
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