2.アルドステロン

□ II.Basic nephrology A.生理
2.アルドステロン
key words
香川大学医学部薬理学 北田研人
同 薬理学 中野大介
同 教授 西山 成
aldosterone,mineralocorticoid receptor, renal injury,Rac1,glucocorticoid
動 向
示唆されており,アルドステロン /MR 系に関す
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やア
る研究は新たな展開を迎えている.
ンジオテンシンⅡ(AII)受容体拮抗薬(ARB)
本稿では,アルドステロン /MR 系による腎障
などの AII 阻害薬は,臓器保護を目的とした高血
害作用について最近の知見を含めて概説するとと
圧治療の中心に据えられており,我が国において
もに,近年注目されているカルシウム拮抗薬の
最も用いられている薬剤である .一方,最近の
MR 阻害作用の可能性や,アルドステロン非依存
精力的な研究により,レニン・アンジオテンシン・
的な MR 活性化機構について言及したい.
1)
アルドステロン系(RAAS)の下流に存在するア
ルドステロンは AII と同様,血圧を上昇させるの
みならず,心臓,血管,腎臓などの臓器を直接的
A.アルドステロン /MR 系による腎障害
に障害する作用を有することが証明され,AII の
ラットに対してアルドステロンを慢性的に投与
みならずアルドステロンも抑制し,RAAS をトー
すると,重篤な蛋白尿を伴った糸球体の肥大,メ
タルに抑制することが,特に臓器保護やアルドス
サンギウム領域の拡大,糸球体上皮細胞の足突起
テロンブレイクスルーの観点からも重要視されて
障害,尿細管間質の線維化などが観察され,これ
いる.長らくカリウム保持性利尿薬として使用さ
らの障害は選択的 MR 拮抗薬であるエプレレノン
れてきたミネラロコルチコイド受容体(MR)拮
の同時投与によってほぼ完全に抑制される 2-4)
(図
抗薬であるスピロノラクトンに加えて,より MR
1).尿細管細胞だけでなく,糸球体メサンギウ
に選択性の高いエプレレノンが開発されたことか
ム細胞,腎間質線維芽細胞,糸球体上皮細胞など
らも,臓器障害の発症・進展におけるアルドステ
の細胞においても MR の発現が証明されているこ
ロン /MR 系抑制の重要性が提唱されている.さ
とからも,アルドステロンは尿細管以外の様々な
らに近年では,MR はアルドステロン以外の様々
腎部位に対して直接的な障害作用を有するものと
な因子によっても活性化され,臓器障害を引き起
思われる 2).実際に,病態モデル動物である脳卒
こす可能性が報告されている.このように,血中
中易発性高血圧自然発症ラット 5),食塩感受性高
アルドステロン値が低値を示す病態においても,
血圧 6) や糖尿病モデル動物 7) などで観察される
MR 拮抗薬の臓器保護効果が有効である可能性が
腎障害が,MR 拮抗薬であるスピロノラクトンや
8 Annual Review 腎臓 2011
+ 1%食塩水
糸球体細胞数
(nuclear cells/glomerulus)
コントロール
+ 1%食塩水
+ アルドステロン
*
70
+ 1%食塩水
+ アルドステロン
+ エプレレノン
60
50
40
コントロール
+ 1%食塩水 + 1%食塩水
+ 1%食塩水
+ アルドステロン + アルドステロン
+ エプレレノン
図 1 アルドステロンによる腎糸球体障害作用(文献 3 より一部改変)
アルドステロンと 1%食塩水を与えることにより,ラットは著明な糸球体肥大を呈する.この病態は
エプレレノンの投与により完全に抑制される.* p<0.05 vs コントロール群.
エプレレノンによって改善されることが報告され
考えられ,MR 拮抗薬の降圧を超えた腎保護効果
ていることからも,アルドステロンが腎障害作用
が期待される.しかしながら,現状では MR 拮抗
を有し,MR 拮抗薬が腎保護効果を発揮すること
薬は高カリウム血症に対する懸念から,糖尿病性
は間違いない.
腎症に対する適応には至っていない.今後,非ス
臨床研究においても,腎障害の発症・進展に対
テロイド骨格の MR 拮抗薬の開発も含め,MR 拮
するアルドステロン /MR 系の重要性が証明され
抗薬の長期的な有効性,安全性に関するエビデン
て い る. 重 度 蛋 白 尿 を 生 じ て い る 慢 性 腎 臓 病
スの蓄積および詳細な腎保護効果メカニズムの解
(CKD)患者において,血中アルドステロン値が
明が必要である.
腎機能の低下と有意に相関することが報告されて
いる 8).興味深いことに,CKD 患者では腎組織
中 MR 発現が増加していることも示されている .
8)
また,2 型糖尿病患者や慢性腎不全患者に対して,
B.アルドステロンによる MR 活性化
血中アルドステロン濃度の増加により MR 活性
MR 拮抗薬の投与がアルブミン尿や蛋白尿を改善
化をきたし,腎障害を引き起こす病態として,原
させるということも明らかである
.このよう
発性アルドステロン症があげられる.原発性アル
に,アルドステロン /MR 系の活性化は様々な病
ドステロン症患者では蛋白尿が多く認められ,血
態における腎障害の発症・進展に直結することが
中アルドステロン濃度と蛋白尿が有意に相関する
,10)
II.Basic nephrology − A.生理 − 2.アルドステロン ことが報告されている 11).また,2 型糖尿病マウ
テンシン II 以外のアルドステロン放出因子の活性
ス,食餌肥満モデル,一酸化窒素合成酵素阻害薬
が認められるのに対して,肥満のない高血圧ラッ
投与ラットなど,様々な腎障害モデルで血中ある
トの脂肪細胞ではアルドステロン放出因子の活性
いは尿中アルドステロン値が高値を示すこともわ
を示さなかった 14).これらの実験結果から,肥
かってきている 12).
満に伴う内臓脂肪の変化の過程において,アルド
一方,CKD 発症リスクを高める要因として,
メタボリックシンドロームが重要な因子であるこ
とが最近の疫学研究で明らかとなっている
Nagase ら
14)
ステロン放出因子が増加あるいは活性化してくる
可能性が考えられる.
.
13)
は,メタボリックシンドロームラッ
トが CKD を進展させる過程において,血中アル
ドステロン値の上昇および MR 活性化が関与して
いることを報告している.また,肥満のない高血
C.アルドステロン /MR 系に対する Ca
チャネル拮抗薬の腎保護効果
ジヒドロピリジン(DHP)系 Ca チャネル拮抗
圧ラットと比べ血中アルドステロン濃度が高く,
薬(CCB)は強力な血管拡張作用による優れた
腎臓におけるアルドステロンのエフェクターであ
降圧作用を有することと副作用が少ないことから,
る serum and glucocorticoid-regulated kinase
高血圧患者に汎用されている.これまで,DHP
1(SGK1)発現の増加もみられる
系 CCB は,降圧による反射を介して交感神経を
.さらに,
14)
このモデルではアルドステロン分泌が亢進し,尿
刺激する可能性があるとされてきたが 16,17),一部
蛋白,糸球体上皮細胞障害を生じるが,これらの
の CCB はむしろこれらの作用を抑制し,降圧を
変化は MR 拮抗薬の投与によって抑制されたこと
超えた臓器保護効果を有する可能性が示唆されて
から,メタボリックシンドロームではアルドステ
いる.その作用の 1 つが CCB のアルドステロン
ロン過剰による腎臓の MR 活性化が生じており,
産生抑制作用であるが,それ以外にもアルドステ
これが腎障害に寄与している可能性が考えられ
ロン /MR 系による臓器障害に対する DHP 系 CCB
る
14)
の 有 効 性 が 報 告 さ れ た 18-20).Dietz ら 18) は,in
また,最近注目されているのが脂肪細胞から分
vitro において,DHP 系 CCB が MR に対して結合
泌されると考えられているアルドステロン放出因
活性を有し,アルドステロンと拮抗して,その作
子である.ヒト培養副腎皮質細胞に単離脂肪細胞
用を阻害することを証明している.また,ラット
の培養上清を添加すると,アルドステロンの分泌
にアルドステロンを投与した際にみられる
量を増加させることが見出されている
.まだ
epithelial sodium chanel(ENaC)発現の増大が,
この因子の同定には至っていないが,脂肪細胞か
ニモジピンにより抑制されることも見出しており,
ら分泌される何らかの因子が,副腎でのアルドス
DHP 系 CCB の新たな作用としての MR 拮抗作用
テロンの産生・分泌を促進していると考えられて
の可能性を報告した 18).一方,我々は,DHP 系
いる.上述した Nagase ら 14)の研究では,メタボ
CCB の一種であるアゼルニジピンによるアルド
リックシンドロームラットのアルドステロン値上
ステロン腎障害に対する保護効果を証明してい
昇の原因として,この脂肪細胞から分泌されるア
る 20).すなわち,アルドステロン慢性投与モデ
ルドステロン放出因子が関与する可能性が示され
ルにおける腎障害が,アゼルニジピンの投与によ
ている.興味深いことに,メタボリックシンドロ
って血圧の降下作用とは非依存的に抑制されるこ
ームラットでは脂肪細胞から放出されるアンジオ
とを報告した 20).また,これらの改善効果は,
.
15)
10 Annual Review 腎臓 2011
10
*
活性酸素産生量(倍)
9
8
7
6
*
*
-
-
*
5
*
4
3
2
†
†
+
-
1
0
エプレレノン
アゼルニジピン
-
-
+
-
-
+
-
-
-
+
-
-
+
-
-
+
アルドステロン パラコート メナジオン
図 2 培養メサンギウム細胞におけるアゼルニジピンの活性酸素産生抑制作用
(文献 20 より一部改変)
アゼルニジピンは,パラコートおよびメナジオンによる活性酸素産生を抑制で
きないが,アルドステロンによる活性酸素産生を有意に抑制する.*p<0.05 vs
コントロール群,†<0.05 vs アルドステロン処置群.
アルドステロンにより生じる腎臓における
ることを報告している.また,DHP 骨格を元に
NADPH オキシダーゼサブユニットの mRNA 発
した MR 拮抗薬の開発も行われており 22),新しい
現の増大および酸化ストレスの亢進に対する抑制
クラスのアルドステロン /MR 阻害薬となること
作用を伴うものであった
が期待されている.
.これらの作用が前
20)
述の DHP 系 CCB による MR 拮抗作用に基づくも
のであるかを検討する目的で,培養メサンギウム
細胞において,アルドステロンが引き起こす酸化
D.アルドステロン非依存的な MR 活性化
ストレスに対するアゼルニジピンの効果を検討し
一般的に,食塩の過剰摂取は RAAS の抑制を引
た.興味深いことに,アゼルニジピンはパラコー
き起こすため,高食塩負荷モデル動物の血中アル
トやメナジオンによる活性酸素産生に対しては無
ドステロン値は低値を示し,MR 拮抗薬による腎
効であったが,アルドステロン処置により生じる
保護効果は期待できないのではないかと考えられ
酸化ストレス亢進に対しては顕著な抑制作用を示
てきた.ところが,Dahl 食塩感受性ラットに高
した(図 2)
.このことから,アゼルニジピンの
食塩を摂取させることで観察される腎障害が MR
抗酸化作用は,DHP 環により活性酸素を直接的
拮抗薬によって顕著に改善されることが証明され
に消去したためではなく,MR を阻害した結果で
ている 23,24).これは高食塩下など血中アルドステ
ある可能性が示唆された.さらに最近,Matsui
ロン値が低値の状態であっても MR が活性化され
ら
は,培養 MRC-5 線維芽細胞において,終末
ている可能性を示唆しており,アルドステロン濃
糖化産物(AGE)処置により生じる炎症や線維
度に依存しない MR の活性化機構として興味深い
化を,ニフェジピンが MR の阻害を介して抑制す
ところである.
21)
II.Basic nephrology − A.生理 − 2.アルドステロン 11
血中アルドステロン以外の MR を活性化させる
(部分)アンタゴニストとして働いている.これ
因子の 1 つとして,局所で産生されるアルドステ
に関して我々は,アルドステロン非存在下(副腎
ロンが考えられる.実際に,局所アルドステロン
摘出)において,グルココルチコイドを投与した
産生の可能性を示す論文も報告されているが
ラットの腎障害に比べ,MR 拮抗薬を投与したラ
,
25)
腎臓でアルドステロンやその合成酵素は検出され
ットの腎障害が著明に改善していることを見出し
ないという報告も多く,いまだ一定の見解が得ら
ており,グルココルチコイドが MR を介して腎障
れていない.
害を引き起こす可能性を示した(米国心臓財団
また,MR に対するアルドステロン以外の生理
High Blood Pressure Council Meeting 2009 に
的リガンドとしてグルココルチコイドがあげられ
て発表).一方,ミネラロコルチコイド依存性高
る.ヒトにおける主たるグルココルチコイドであ
血圧モデルでは,血圧の上昇および心・腎の障害
るコルチゾールは MR に対して結合活性を示す.
が生じることが知られているが,これらのモデル
MR がアルドステロンよりもはるかに高濃度のコ
において,ミネラロコルチコイド投与の中断によ
ルチゾールにさらされているにもかかわらず,ア
り血圧は速やかに降下するが,心・腎の線維化お
ルドステロンに対する選択性を保持しているのは,
よび炎症性変化は投与中止 4 週間後まで残存し,
上皮細胞の MR 発現組織において 11β-hydoroxy
この線維化や炎症の持続は投与中止後からエプレ
dehydrogenase(11β-HSD)が発現しているた
レノンを投与することによって著明に抑制される
めである.コルチゾールとコルチゾンの代謝をつ
ことが報告されている 27).このことから,ミネ
か さ ど る 酵 素 で あ る 11β-HSD に は 1 型
ラロコルチコイド投与中止後においても MR の活
(11β-HSD1)と 2 型(11β-HSD2)が存在するが,
性化が持続しており,線維化や炎症性変化をもた
11β-HSD2 は MR に結合可能なコルチゾールを
らしている可能性が考えられている.Funder
MR に結合できないコルチゾンへと変換すること
ら 27) はこの受容体活性化の一因子としてグルコ
で,グルココルチコイドが MR を活性化するのを
コルチコイドをあげているが,その活性化メカニ
防いでいる.この 11β-HSD2 活性が低下するよ
ズムや作用メカニズムに関しては不明な点が多く
うな病態では,血中グルココルチコイドが MR を
残されている.特に,MR は,生理的条件下では
活性化しうるようになる.しかしながら,甘草な
大部分がグルココルチコイドに占有され,アルド
どの副作用による 11β-HSD2 阻害下では,高血
ステロンによる受容体活性化を抑制しているとさ
圧や低カリウム血症などのアルドステロン症様症
れている.しかしながら,血中アルドステロン低
状がみられるものの
値の状態にて,何故それが活性化因子へと転じる
,腎障害は報告されてお
26)
らず,コルチゾールが遠位尿細管〜集合管など,
かは未解明のままである.生理的条件下,病的条
通常 11β-HSD2 により保護されている上皮細胞
件下のいずれにおいても,グルココルチコイドな
に作用することで腎障害を起こす可能性は不明で
どのリガンドは常に MR と結合していることから,
ある.一方,非上皮細胞における MR 活性化調節
病的条件下では MR 側に何らかの変化が生じ,そ
にグルココルチコイドが関与している可能性も提
れが原因となり MR が活性化される可能性は考え
唱されている
られる.今後の詳細な検討によってこれらのメカ
.非上皮細胞には 11βHSD2 の
27,28)
発現が少ないと考えられている.そのため,非上
ニズムが解明されることを期待したい.
皮細胞の MR にはグルココルチコイドが結合して
近年,Shibata ら 29)は,低分子量 G 蛋白質であ
おり,生理的条件下ではアルドステロンに対して
る Rac1 がアルドステロン非依存的に MR を活性
12 Annual Review 腎臓 2011
化し,腎障害を引き起こすことを見出した.培養
病性腎症に対する MR 拮抗薬の腎保護効果が証明
HEK23 細胞に恒常活性型 Rac1 を遺伝子導入す
されていることから,糖尿病下の腎障害の発症・
ると MR の核移行および MR の転写活性が増強さ
進展過程の一部には,アルドステロンのみならず
れる
高グルコースによる MR 活性化も関与しているか
.また,培養糸球体上皮細胞においても
2)
Rac1 が MR を活性化させることを明らかにして
もしれない.
.さらに,この Rac1 による MR 活性化が
上記のように MR は複雑なメカニズムにより活
実際の腎障害に寄与するかどうかについても検討
性化されるが,いずれの場合においても MR 拮抗
が行われている.Rac1 依存性腎障害モデルであ
薬が腎障害を抑制できることから,血中アルドス
る RhoGDIα欠損マウスでは,アルブミン尿,糸
テロン濃度のみでは MR 拮抗薬の効果を推測する
球体上皮細胞障害,糸球体硬化などの腎病変が観
ことは困難である.MR 活性化メカニズムのさら
察され,これらの障害は Rac1 特異的阻害薬およ
なる解明や,臓器 MR 活性化の診断法の開発など,
び MR 拮抗薬によって抑制されることが示されて
今後の研究の展開が期待される.
いる
いる
2)
.これらの実験結果より,アルドステロ
2)
ンを介さずに Rac1 が直接 MR を活性化し腎障害
むすび
を引き起こすことが証明された.今後は,Rac1/
アルドステロン /MR 系の腎障害への関与につ
MR 系がどのような臨床病態に関与しているのか
いて,最近の知見を述べた.臨床研究においては,
が特定され,Rac1 が CKD の新たな治療標的とな
ることが期待されている.
アルドステロンはメサンギウム細胞において,
mitogen-activated protein(MAP) キ ナ ー ゼ,
Rho キナーゼ,SGK1,NADPH オキシダーゼを
介して細胞増殖を引き起こすことが報告されてい
.我々は最近,メサンギウム細胞を高濃
BMK1
β-actin
2,30-32)
度グルコース下にて培養することで,アルドステ
ロン非依存的な MR の活性化を介して細胞増殖が
生じることを明らかにしている 33).メサンギウ
ム細胞を高濃度グルコース含有培地で培養すると,
big MAP キ ナ ー ゼ 1(BMK1) の 活 性 化,[3H]thymidine 取り込み増加が認められ,これらの反
応は MR 拮抗薬および MR に対する RNA 干渉に
BMK1 phosphorylation(fold)
る
pBMK1
より抑制される(図 3) .BMK1 の活性化は短
33)
時間で生じること,培養液ではアルドステロン濃
度上昇が見られなかったことから,高濃度グルコ
ース処置はアルドステロンの産生増加を介さずに
MR を活性化するのではないかと考えられた.実
際の病態において,高グルコースによる MR 活性
化が腎障害を生じるかは明らかではないが,糖尿
3
*
2
1
0
Con
HG
Con
HG
MR RNA 干渉
図3
培養メサンギウム細胞における高濃度グルコ
ースによる BMK1 活性化作用(文献 33 より
一部改変)
高濃度グルコース処置により,BMK1 の活性化が生
じるが,この反応は MR に対する RNA 干渉によって
抑制される.* p<0.05 vs コントロール群.Con; コ
ントロール群,HG; 高濃度グルコース処置群
II.Basic nephrology − A.生理 − 2.アルドステロン 13
高血圧や糖尿病に伴う腎障害患者に対する MR 拮
抗薬の腎保護効果の報告がされているものの,高
カリウム血症などが懸念されて,腎症への適応は
承認されるに至っていない.今後の詳細な検討に
よって,MR によって生じる腎障害の病態生理な
らびに MR 拮抗薬の有効性および安全性のエビデ
ンスが蓄積され,腎保護薬としての新しい治療展
開が期待される.
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