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静脈麻酔薬の作用機序:
受容体と細胞内シグナル伝達機構
プロポフォール
Neuronal Action of Propofol in Relation to
Receptors, Ion Channels and Intracellular
Signaling Pathways
和歌山県立医科大学麻酔科学教室 准教授
木下 浩之
Hiroyuki Kinoshita
γ-アミノ酪酸(γ-aminobutyric acid:GABA)受容体のうちGABAA受容体は,多くの麻酔
薬の脳や神経に対する作用に関わることが明らかにされてきた.プロポフォールは GABAA受容
体β3 サブユニットに作用を及ぼすと考えられている.高濃度のプロポフォールは,シナプス内の
GABAA受容体の開口時間を延長することで一過性抑制性電流を増強し,臨床使用濃度内のプロ
ポフォールは,シナプス外GABAA受容体の感受性を増強することで持続性抑制性電流の発生を
促進する.近年,臨床使用濃度内のプロポフォールの各種細胞内伝達機構に及ぼす作用が徐々に
明らかにされてきた.
麻酔薬の中枢性作用の分子標的として,GABA受容体
大きい急速抑制性リガンド型イオンチャネルである 1).
は1980年代より注目されるようになった.本稿では,プ
GABAB受容体はメタボトロピック受容体であり,Gタン
ロポフォールの,特に神経系へ及ぼす作用機序について,
パクなどを介しカリウムチャネル開口やカルシウムチャ
受容体,イオンチャネル,細胞内伝達機構に着目して概
ネル抑制作用によりシナプス伝達を制御する 1).一方
説する.
で,GABAC 受容体は脳への分布が非常に少なくその意
義の詳細は明らかでない1).これらのGABA受容体のう
ちGABAA受容体は,多くの麻酔薬の薬理作用,とりわ
麻酔薬作用とGABA受容体総論
け,その脳や神経に対する作用の感受性に大きく関わる
ことが明らかにされてきた1∼3).
GABA受容体には,大きく分けてGABAA,GABAB お
これまでのクローニングにより,哺乳類の GABAA受
よびGABACの 3 種が存在することが知られている.い
容体は,19 種類の遺伝子でエンコードされたα1 ∼ 6( 6 種
わゆるイオノトロピック受容体であるGABAA受容体は,
,δ( 1 種類)
,ε( 1
類)
,β1 ∼ 3( 3 種類),γ1 ∼ 3( 3 種類)
中枢神経系に広く分布し,哺乳類では最も分布密度が
種類),φ( 1 種類),π( 1 種類)あるいはρ1 ∼ 3( 3 種類)
4
(2462) Feature Articles
Neuronal Action of Propofol in Relation to Receptors, Ion Channels and Intracellular Signaling Pathways
のいずれかのサブユニットが結合したヘテロ 5 量体であ
3, 4)
ることが明らかになっている
.このうちの85%以上は,
性Cl−電流は,GABAに対し高親和性で緩徐に脱感作さ
れるタイプのシナプス外 GABA A受容体により発生し,
α1β2γ2(最も多い),α2β3γ2 あるいはα3β1∼3γ2 のい
一過性後シナプス抑制性電流同様にGABA受容体阻害薬
ずれかの組み合わせであるとされている3. 4).
で抑制される(図 1 )4).その受容体親和性は周囲のシナ
脳の神経伝達システムには,興奮性,抑制性および制
プスなどから漏れ出たような低いレベルのGABAに反応
御性の 3 種類のシナプスの存在が知られており,GABA
するほど高く,シナプス外 GABAA受容体活性化に伴う
はグリシンとともに抑制性シナプスを介在する神経伝達
持続性抑制性電流は,海馬(特にCA1領域)が関与する
物質として知られている1).GABAは急速型の一過性後
記憶や視床〔特に腹側基底核(ventrobasal complex
シナプス抑制性電流を発生させることが知られている
nuclei:VB)ニューロン〕に関連した意識の抑制に大
(図 1 )1, 4).この電流発生には,飽和濃度に近い濃度の
きく関わる可能性が示唆されている4).多くの麻酔薬は,
GABAが,後シナプス終板のGABAA受容体に結合し,そ
低い GABA濃度で活性化を受けるこれらのシナプス外
の受容体を活性化してCl − コンダクタンスを発生させる
GABAA受容体の感受性を増強することで,持続性抑制
必要がある(図 1 ) .この仕組みによるGABAA受容体活
電流の発生を促進することが明らかにされており,シナ
4)
性化は,麻酔薬をはじめとする多くの GABA作動性薬剤
プス外 GABAA受容体が麻酔薬の作用部位であるとの見
の作用機序としてこれまで信じられてきた2).その後の研
方が近年の主流になっている5).
究により,急速型の一過性後シナプス抑制性電流とは異
麻酔薬が GABAA受容体のどの部位に作用するかにつ
なる持続性抑制性電流の存在が脳の様々な部位(小脳,
いては,麻酔薬間,特に,吸入麻酔薬と静脈麻酔薬の間
海馬,新皮質など)で明らかにされた.この持続性抑制
で違いがあることが明らかになっている.すなわち,イソ
αおよびβサブユニットの
フルランなど吸入麻酔薬は,
膜貫通ドメイン(Transmembrane domain:TM)2 およ
び 3 に作用するのに対し,プロポフォールを含む静脈麻
酔薬はβサブユニットの TM2 および TM3に作用するも
のの,αサブユニットには影響しないとされている(詳
細は後述)6).
プロポフォールとGABAA受容体
GABA
シナプス内
一過性抑制性後
シナプス電流
GABAA受容体
阻害薬
シナプス外
1. プロポフォールの臨床使用濃度
プロポフォールとGABAA受容体について言及する前
に,プロポフォールの臨床使用濃度について触れておく.
麻酔薬
持続性
抑制性電流
プロポフォール麻酔導入量をヒトに静脈内投与した際の
最高血漿中濃度はおよそ 30μM,ヒトで脳波上バースト
サプレッションを得られる血漿中濃度はおよそ 60μMと
報告されている7∼9).一方で,プロポフォールのタンパク
図 1 シナプス内およびシナプス外GABAA受容体の活性
化(文献 4 より引用・改変)
活動電位に伴い遊離された GABAは,シナプス間隙に至
り後シナプス膜状でシナプス内 GABAA受容体を活性化し,
一過性抑制性後シナプス電流が発生する.一方で,シナ
プス外 GABA A受容体は,低濃度の GABAで活性化を受
けて持続性抑制性電流を発生する.この持続性電流は,
GABAA受容体阻害薬で抑制される.
結合率は97∼98%と報告されていることから9),パッチ
クランプ法をはじめとする多くの in vitro 実験の結果を
解釈する時に用いられるplasma-free concentrationを考
慮したプロポフォールの臨床使用濃度は,およそ 1μM
と考えてよい10).これを参考にして以下を読み進めてい
ただきたい.
Anesthesia 21 Century Vol.13 No.1-39 2011 (2463) 5
2. シナプス内GABAA受容体に及ぼす作用
床使用濃度を超える高濃度のプロポフォールは,シナプ
ス内の GABAA受容体の開口時間を延長することで一過
8.4μM以上のプロポフォールは,ウシのクロム親和性
−
細胞で GABA適用により発生した一過性抑制性Cl 電流
性抑制性電流を増強するものと考えられる.
を濃度依存性に増強した(図 2 )11).この論文は,おそら
3. シナプス外GABAA受容体に及ぼす作用
くプロポフォールの作用機序研究初期の最もエポックメ
イキングな論文の 1 つである.しかしながら,先に述べ
ラット海馬スライス標本でのCA1 領域の錐体細胞に対
たようにその研究で用いられたプロポフォール濃度が大
するパッチクランプ法を用いた電気生理実験で,臨床使
きく臨床濃度を上回っており,研究結果の臨床的意義に
用濃度内のプロポフォールは,GABAA受容体阻害薬で
ついては疑問がある.
抑制される持続性抑制性Cl − 電流を濃度依存性に発生さ
せることが明らかにされた(図 3 )5).持続性抑制性電流
マウスの海馬ニューロンで,GABA( 1 mM)は抑制
性後シナプス電流を発生させ,プロポフォール(10μM)
は低い GABA濃度で活性化を受けるシナプス外 GABAA
同時適用は,GABAへの曝露中止後の抑制性電流の持続
受容体活性化に伴うことが知られており,プロポフォー
を促進した(図 2 )12).一過性抑制性電流は,後シナプ
ルは,シナプス外 GABAA受容体の感受性を増強するこ
ス終板のGABAA受容体活性化により発生するので,臨
とで,持続性抑制性電流の発生を促進するものと考えら
(B)
GABA
対照
エタノールに溶解した
プロポフォール
20ms
イントラリピッドに溶解した
プロポフォール
プロポフォール
1nA
(A)
500ms
1,500
300
時間(ms)
対照に対する抑制性電流(%)
2,000
1,000
500
*
200
100
0
0
1
10
100
対照
プロポフォール
プロポフォール濃度(μM)
洗浄後
対照
図 2 一過性抑制性電流(シナプス内GABAA受容体活性化)に及ぼすプロポフォールの作用
(A)ウシのクロム親和性細胞で,高濃度のプロポフォールはGABA(100μM)適用により発生した一過性抑制性電流を濃度依存
性に増大させた(グラフは濃度反応曲線,縦軸は抑制性電流,横軸はプロポフォール濃度を示す)
.(文献 11より引用・改変)
(B)マウスの海馬ニューロンで,GABA(1mM)適用は500msec 持続する抑制性後シナプス電流を発生させ,プロポフォール
(10μM)同時適用は,GABAへの曝露中止後の抑制性電流の持続を促進した(下のグラフは抑制性電流持続の遷延時間を示す).
*:P<0.01 対照に比し有意(文献 12より引用・改変)
6
(2464) Feature Articles
Neuronal Action of Propofol in Relation to Receptors, Ion Channels and Intracellular Signaling Pathways
れる(図 1 )4).実際に,大まかな比較では,持続性抑制
た(図 4 )14).動物種によっては,ヒトに対する投与量
性電流は一過性抑制性後シナプス電流に比べ,抑制性電
よりもかなり大量でないとプロポフォール投与に伴うい
5)
流として 7 倍も強力であるとされている .
わゆる麻酔作用が発現しないが,これらの研究結果は,
GABAA受容体β3サブユニットTM2(N265M)の変異が,
4. GABAA受容体におけるプロポフォール作用部位
プロポフォールの麻酔薬としての作用に影響を及ぼすこ
すでに述べたが,吸入麻酔薬と静脈麻酔薬の間で麻酔
とを明らかにした点できわめて重要な知見であると考え
薬が GABAA受容体のどの部位に作用するかには違いが
られる.さらに,最近の報告で,GABAA受容体β2 サブ
6)
ある .これまでの研究により,プロポフォールを含む
ユニット内の荷電残基E153Kおよび K196Eの塩基架橋の
静脈麻酔薬はβサブユニットの TM2 および TM3 に作用
形成が,プロポフォールによるGABAA受容体活性化に
するものの,αサブユニットには影響しない6).これに
必要であることが示唆されている 15).これについては,
ついては,詳細に検討が進み,ラットGABAA受容体β3
遺伝子改変動物を用いた今後の in vivo 研究が待たれる
サブユニットの TM2(N265M)および TM3(M286W)
ところである.
遺伝子の変異は,同様にプロポフォール( 1μM)によ
るGABA誘発性 Cl − 電流の増強を完全に抑制することが
プロポフォールとGABA以外の受容体,
チャネル
明らかになった(図 4 )13).これらの研究結果は,プロポ
フォールが GABAA受容体β3サブユニットに及ぼす作用
には,TM特異性がないことを示唆している.さらに,こ
培養ラット海馬ニューロンで,プロポフォール(1∼
れらの遺伝子変異のうち,GABAA受容体β3 サブユニッ
10μM)は,N-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-D-
トTM2(N265M)のみの変異している遺伝子改変マウ
aspartic acid:NMDA)受容体を介するextracellular
スでは,侵害刺激からの逃避反射の 1 つである屈筋反
signal-regulated プロテインキナーゼ(ERKs)リン酸化
射,および,反応の鈍さを示す立ち直り反射が,プロポ
を有意に抑制した 16).ERKsリン酸化はNMDA受容体を
フォール静注により強く抑制されることが明らかになっ
介するシナプス可塑性や記憶に重要な役割を果たしてい
プロポフォール
1μM
500pA
抑制性電流(pA)
-200
5μM
2min
0
500pA
BIC 10μM
PROP 5μM
-100
0.01
0.1
1
10
プロポフォール濃度(μM)
2min
図 3 持続性抑制性電流(シナプス外GABAA受容体活性化)に及ぼすプロポフォールの作用(文献 5 より引用・改変)
臨床使用濃度内のプロポフォール(prop)は,シナプス外GABAA受容体活性化によると考えられる持続性抑制性電流を濃度依
存性に発生させた(右のグラフは濃度反応曲線,縦軸は抑制性電流,横軸はプロポフォール濃度を示す)
.また,これらの電流
は,GABAA受容体阻害薬ビククリン(bicuculline:BIC)で抑制された.
Anesthesia 21 Century Vol.13 No.1-39 2011 (2465) 7
ると考えられるので,これらの研究結果は,臨床使用濃度
およびラット脳ナトリウムチャネルを抑制することが明
のプロポフォールが記憶に及ぼす作用の細胞内機序を示
らかにされている18, 19).カプサイシンや熱は,感覚神経
唆している可能性がある16).一方,高濃度プロポフォー
の transient receptor potential vanilloid(TRPV)サブ
ル(10μM以上)は,GABAA受容体に対する作用と同様
タイプ-1 受容体を刺激するが,カプサイシンを曝露し続
に,グリシンによるグリシン受容体活性化を促進するこ
けるとTRPV-1 受容体の脱感作を引き起こすことが知ら
11)
とが知られている .しかし,グリシン受容体はプロポ
れている.高濃度プロポフォール(10μM)は,マウス
フォールの麻酔作用には関与していないと思われる17).
脊髄後根神経節感覚ニューロンで,カプサイシンによる
また,高濃度プロポフォール(10μM以上)は,ラッ
脱感作からTRPV-1受容体活性を回復,保護することが
ト視索上核ニューロンの電位依存性カルシウムチャネル
α2β3γ2
α2β3(N265M)γ2
3μM GABA 3μM
1μM PROP GABA
30μM
30μM GABA
1μM PROP
30μM
3μM
GABA
GABA
1000pA
1000pA
GABA
α2β3(M286W)γ2
5sec
5sec
5sec
正常マウス
正常マウス
β(N265M)
遺伝子改変マウス
3
β(N265M)
遺伝子改変マウス
3
20
10
屈筋反射
15
10
**
5
***
反射消失時間(min)
立ち直り反射
反射消失時間(min)
3μM GABA 3μM
1μM PROP GABA
1000pA
3μM
GABA
判明した20).
8
6
4
2
**
0
0
10
20
30
40
プロポフォール(mg/Kg)
10
20
30
40
プロポフォール(mg/Kg)
図 4 GABAA受容体β3サブユニット変異がプロポフォールの作用に及ぼす影響
(上)ラットGABAA受容体β3サブユニットの膜貫通ドメイン 2(TM2:N265M)および 3(TM3:M286W)遺伝子の変異は,同様
にプロポフォール(1μM)によるGABA 誘発性 Cl− 電流の増強を完全に抑制した.
(文献13より引用・改変)
(下)GABAA受容体β3サブユニットTM2(N265M)のみ変異している遺伝子改変マウスでは,侵害刺激からの逃避反射の一つで
ある屈筋反射,および,反応の鈍さを示す立ち直り反射が,プロポフォール静脈内投与により有意に抑制された.**:P<0.01,
***:P<0.001(文献 14より引用・改変)
8
(2466) Feature Articles
Neuronal Action of Propofol in Relation to Receptors, Ion Channels and Intracellular Signaling Pathways
高濃度のプロポフォールがこれらの受容体や各種チャ
ゼ活性化を増幅した20, 25).この研究ではさらに,プロポ
ネルに及ぼす作用は,臨床使用濃度内では発生しない可
フォールがプロテインキナーゼCεのC1Bと呼ばれるサ
能性が高いが,以上の研究結果は,濃度を選択すればプ
ブドメインに結合し,本キナーゼを活性化させることも
ロポフォールを薬理学的ツールの 1 つとして使用できる
明らかにしている25).
可能性を示唆するものである.
すでに述べたが,プロポフォール(1∼10μM)は,海
馬ニューロンで,NMDA受容体を介するERKsリン酸化
を有意に抑制することも明らかになっている16).
プロポフォールと(神経)細胞内伝達機構
以上のプロポフォールに関する研究結果のうち,Arc
発現に及ぼす作用は in vivoでの効果ではあるが,プロポ
近年,プロポフォールが各種細胞内カスケードに作用
を及ぼすことが指摘されるようになった.
フォール血中濃度がヒトでの臨床に即しているかは明ら
かでなく,グルタミン酸トランスポータに対する作用は
両側の扁桃体基底外側複合体にGABA受容体阻害薬ビ
臨床使用濃度をはるかに超えている.これに対して,プ
ククリンを投与したラットでは,プロポフォール(25mg/
ロテインキナーゼ CのεサブタイプやNMDA受容体を介
kg)腹腔内投与による健忘作用を消失させると同時に,
するERKsに対する作用は,臨床使用濃度内で発生して
Arc(activity-regulated cytoskeletal protein)の海馬で
おり,特に,プロポフォールがGABAA受容体β3サブユ
21)
.扁桃体基底外側複合体の
ニットに及ぼす作用やシナプス外GABAA受容体に及ぼ
GABA受容体活性は,記憶の抑制に関与することがすで
す作用における細胞内機序として,その関与の有無につ
に明らかにされており22),また,Arcはシナプス可塑性
いての研究が待たれるところである.
の発現を有意に抑制した
を制御し長期記憶の構築に役割を果たしていることが示
唆されている23).したがって,これらの研究結果は,プ
ロポフォールが,扁桃体のGABAA受容体活性化を介し
まとめ
てArc発現を増大させ,結果として健忘作用を発揮する
可能性を示唆するものである.
ここまで,麻酔薬の作用機序におけるGABAA受容体
高濃度のプロポフォール(30μM以上)は,ラットのグ
の役割,特に,静脈麻酔薬プロポフォールの作用機序に
ルタミン酸トランスポータEAAT-3(excitatory amino
ついて述べてきた.今までの研究成果の多くは,in vitro
acid transporter-3;グリアやニューロンの細胞膜に存在
研究によるものである.遺伝子改変動物など遺伝子操作
し,生理的環境下ではグルタミン酸を細胞外から細胞内
を用いたin vivo 研究により,臨床使用濃度内のプロポ
へ運搬する働きがある)の作用を増強することが示され
フォールの麻酔作用と受容体の特異的な部位の関わりを
ている24).プロテインキナーゼ Cεのみを発現させたs f 9
さらに明らかにしていくことが今後期待される.それら
細胞で,プロポフォール(0.1μMオーダーから)適用は,
の研究が積み重なることで,プロポフォールの麻酔作用
それ自体が本キナーゼ活性を増大させるとともに,プロテ
の細胞内機序の理解が深まり,臨床麻酔の質の向上に寄
インキナーゼ C 活性薬であるホルボールエステル(ジア
与するものと考えられる.
シルグリセロールと同様の作用を持つ)による本キナー
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