対談企画 v o l .1 「安 全 保 障」 Close up! 日米同盟を基 軸として 、 安 全 保 障のネットワークを強化すること 。 それが 世界 の平和と安定に つながっていく 。 簡 単な方 程 式で 解ける 問 題ではない 。 だからこそ取り組むべき価 値 がある 。 鈴木 敦夫 49歳 昭 和 6 0 年入省 防 衛政 策 局防 衛政 策 課 課 長 4 7 歳 昭 和 61年入省 防 衛政 策 局日米 防 衛 協力課 課 長 岡 真臣 ミサイル 防 衛 や 海 洋 、宇 宙 政 策とい った 新し い 分 野を 含 め、防 衛 政 策 全 般 に 日 米 防 衛 協 力 課 の 課 長として、日 米 安 全 保 障 関 係 に おける諸 問 題 につ いて 政 府 部 内 に おける調 整、米 国 政 府 携 わる。現 在 は 、安 全 保 障 の 基 本 方 針 や 防 衛 力 の 役 割 、防 衛 力 の 在り方 を 規 関 係 者との 間 で 意 見 交 換・調 整 を実 施 。具 体 的 な 問 題としては 、普 天 間 飛 行 場 移 設 を 含 む 米 軍 再 編 に係 る諸 定し、我 が 国 の 中 長 期 的 な 安 全 保 障・防 衛 政 策 であ る「防 衛 計 画 の 大 綱 」の 問 題 、在日 米 軍 駐 留 経 費 負 担(いわゆるホスト・ネーション・サ ポート)、その 他 各 種 の 分 野 に おける日 米 防 衛 策定作業に従事。 協 力を、より実 効 的 で 安 全 保 障 環 境 の 変 化 に 応じたもの にすることが 挙 げられる。 安 全保障は「国家存立の根幹」です。日本の 秩序維持」や「国際的な協調」の分野まで拡大 ら行う協力や日本周辺 地域における事態で日 すが、日米同盟を基盤としたこれからの安全保 経済大国が同盟関係にあって、同じ方向を向 トワークをさらに強化しようとしています。こう 防衛全般の土台となる考え方の立案や、アメリ していきました。日本でも、92 年に PKO 初参加 本の平和と安全に重要な影響を与える場合につ 障は、どのような形になっていくのでしょうか。 きながら国際社会の諸問題に対処するというこ した動きはアジア・太平洋地域の平和と安定 カとの協力体制強化に向けた対話など、その としてカンボジアに自衛隊を派遣しています。以 いて日米の協力のあり方が示されました。そし 岡 私たちは今、アメリカのプレゼンスを確保 とは、日米両国のみならず世界にとっても有益 に役立つと考えています。 任務は多岐に亘り、責任も重大。防衛政策の 来、 「防衛(戦う) 」以外の目的のためにも自衛 てこうした議論が、日本の国内の法整備を見直 しながら、日本の安全を維持するという選択を なことであると考えます。 岡 アジアでは、歴史的、地理的要素などの 立案と実践の両方の役割を担う鈴木と岡の2 隊をどう活用していくのか、議論が本 格化して すきっかけとなりました。 しています。そこで議論すべきことは、日米安 岡 日米安全 保障条約署名から 5 0 年以上の 違いもあって、欧州における NATO のような集 人が、今後の日本の安全保障の在り方につい いったのです。国際テロ、WMD・弾道ミサイル 鈴木 安全 保障は、国家のみならず人々の生 保関係の中で米側に対し、どんな力をどのよう 間、こうした関係を維持できているのは、お互 団安全保障機構が存在していません。そのよう て語ります。 の拡散防止、海賊対策、最近では宇宙、サイバー 活の基盤・前提です。経済活動や社会保障も、 な形で期待するのかということ。普天間基地の いがそれぞれの国益を考えた上で必要だと判断 な中で、二国間の同盟関係のみならずそういっ 遠い国の話ではない。 空間といったグローバル・コモンズの安定利用と 平和と安定なくしては正常に成り立ちません。 問題でいえば、アメリカの海兵隊が、どのよう し、選択しているからなのでしょう。今では当 たトライアングルの関係も含めて、重層的なネッ いった分野まで安全保障上の課題となっていま しかし、目まぐるしく変動する国際環境下、人々 な安全を提供してくれるのか。彼らを機能させ たり前のように思える日米関係ですが、このこ トワークができあがることが、アジアの地域が 世界の安定した秩 序の中で、 す。もちろん、我が国周辺の安全保障環境も厳 の価値観や利害も多様化・複 雑化する中で、 るためにはどのような兵力をどのように配置すべ とについて私たちは常に認識するとともに、日 まとまる上でも、非常に期待されるところですね。 日本の平和は成り立っている。 しくなっており、これへの対応も重要な課題です。 国民の理解を得ながら、我が国の平和と安定 きなのか。その一方で、地元住民の方々への 米間でも常にすり合わせを行っていく必要があ 鈴木 アジア・太平洋地 域での安 全 保 障 協 特に平素から防衛力をいかに活用し、我が国の を維持する仕事を進めていくこと、つまり、安 負担をどう軽減するのか。この問題は簡単な方 ると思います。 力は長らく 「対話」だけの関係でした。しかし、 日本の安全保障を維持していくために、 安全保障を高めるかが課題です。 全保障政策を企画・立案することは、ますます 程式で解が導きだされるものではありません。 最 近では、関 係 国が 部 隊を提 供して、災 害 今、何が求められていますか。 岡 東西冷戦の終結は、大きな節目でしたね。 困難かつ重要になってきています。だからこそ、 アメリカ側と議論を重ねる一方で、政府部内で 救援のための演習が実施されるまでの段階に 鈴木 アメリカ・ソ連という超大国をそれぞれ その後 94 年には、NPT(核兵器不拡散条約) 私たちはステレオタイプな思考にとらわれず、 の議論、地域住民の皆様のご理解を得るため 至っています。協力関係の強化が今後ますま の極として東西陣営が対峙していた冷戦時、世 から脱退した北朝鮮の核開発疑惑問題があり、 常にアンテナを張り巡らせる必 要があります。 の努力を積み重ねていく必要があります。また、 す予想されます。日本だけが他国を犠 牲にし 界は、この両超大国の関係次第で「滅んでしま 非常に緊張した状況にあったことを今でも覚え 柔軟な発想と想像力をもって、日本内外を取り 日米同盟関係については、新たな安全保障環 て W I N という発想では成り立ちません。お互 うかもしれない」恐怖の均衡の上に、ある意味、 ています。そんな中、日米両国が冷戦後の安 巻く安全保障環境について、誰よりも先を見据 境を踏まえつつ「深化」の必要性が説かれてい 皮肉にも「安定」していました。ところが冷戦構 全保障環境の変化にどのように対処すべきか、 える努力を怠ってはなりません。 ます。伝統的な安全保障上の課題のみならず、 鈴木 日本と同じように、この地域内には韓国、 発 想が 求められるのが、相 互依 存 関 係が 高 造の消滅に伴い、90 年のイラクのクウェート侵 真剣な議論が行われました。その結果、1978 新たな課題に両国がどのように取り組んでいく オーストラリアといった米国の同盟国が存在し 度に深まった現 在の国 際社会での安 全 保 障 攻を皮切りに、それまで抑制されていた地域紛 年の「日米防 衛協力のための指針」の見直し 戦後 5 0 年も続いている 、 べきか、真剣に考えていかねばなりません。 ています。安全保障 協力のパートナーとして、 論だと思います。日本や地域の平和と安定を 争が頻発するようになりました。かえって軍事力 作業が行われ、97 年にはその結果がとりまとめ 鈴木 アメリカとの安 保体制は、日本の安全 こうした国々とは二国間ベースでも協力を強化し 維持するためのシナリオを如何に描くか、その の使用の敷居は低くなったのです。軍事力の果 られました。そこでは、日本に対する武力攻撃 一つの選択 肢として 。 保障を考える上で、引き続き最重要な柱の一つ ていますが、日米韓、日米豪といったトライア ための知恵が、いま、私たちに求められてい たす役割も従来の「防衛」に加えて「地域内の が発生した場合のみならず、日米間で平素か になると思います。日本とアメリカという 2 つの ングルの関係も強化して、安全保障協力のネッ ます。 23 普天間基 地問題で話題にもなっていま いに、または全 体が W I N-W I N であるという 24 対談企画 v o l . 2 「 国 際 協力」 Close up! 実 行してきたことが 、 一 歩 ずつ 、 日本 の自衛 隊 にしか 出 来ないことは 、 確 実に世 界 を平和に近づけている 。 この 世 界 にまだまだたくさんある 。 河田 知宏 32歳 平成 15 年入省 運 用企 画 局事態 対処 課 防 衛 部員 2 9歳 平成 15 年入省 運 用企 画 局国際 協力課 国際 協力研究 室 防 衛 部員 宇野 茂行 海 上オペレ ーション 全 般 に 関 する企 画・立 案を主な 職 務とし、日 本 の みならず 世 界 の 安 全を 維 持 するために 多くの 課 自 衛 隊 の 国 連 平 和 維 持 活 動( 国 連 P K O )と国 際 緊 急 援 助 活 動 に 関 する企 画・立 案を主な職 務とする。これまでハイチ、 題 に 立 ち 向 かう。昨 今、国 際 情 勢 を 賑 わしたソ マリア 沖・アデン 湾 の 海 賊 対 処 につき、海 賊 対 処 法 案 の 国 会 審 議 を スーダン、ゴラン高 原(以 上 国 連 P K O)、そしてインドネシア 地 震 、チリ地 震 、パキスタン 洪 水の 国 際 緊 急 援 助 活 動などを 担 当 。また、海 賊 対 処 法 下 に おける部 隊 運 用 のあり方を検 討し、現 地 に部 隊を 派 遣 。さらに 、海 上 防 衛 に おける日 本 担 当し、被 災 地である現 地 にも赴 いた 経 験を持 つ。今 後、国 際 社 会で自 衛 隊 がどのような役 割を果 たしていくのか、その 周 辺 の軍 事 動 向 の 監 視 や、海 上自 衛 隊 の 艦 艇・航 空 機 等 の 行 動 一 般 の立 案・調 整を行う。 最 前 線 に 携わる業 務を行う。 自衛隊の運用に関して企画・立案を行う運用企 いつしかソマリア海賊の格好の餌食になってい ものの、それでも一面は土砂で埋まっていて復 求められる役割は増えてきています。でも、で を考える上で、何を優先し、自衛隊というアセッ 画局。国際社会の平和と安定をつくるために、 たのです。このまま放っておくと、世界経済に 旧にはかなりの時間がかかると思いました。8 きることはまだまだある。もっと、積極的に海 トをいかに実効的に効率よく活用すべきか。国 多くの課題に日々奔走する河田と宇野。同期入 大きな影響が出かねない。この状況を打開する 月上旬にパキスタン政府から自衛隊に支援要請 外へ出ていくべきだと私は考えています。例え 際情勢を冷静に分析しつつ、政策的側面や運 省でもある両者が、お互いの仕事を振り返り、 ために、約 30 ヶ国が海軍艦艇などを派遣しま がありましたが、同国はテロが多発している国 ば、私が携わっているソマリアには、海賊が生 用上の限界など、様々な点を考慮しつつ自衛隊 国際協力について今後の日本が在るべき姿、世 した。従来、日本では海上保安庁が出動する であり、ある程 度の安全が 確保されないと活 まれる元凶となっている内戦の鎮静化と復興へ の運用のあり方を検討すべき時期に来ていると 界との関わり方について語り合いました。 のですが、アデン湾まで距離が遠い上に、海 動できません。最初に現地に派 遣された私の の援助活動を行うため、アフリカ連合が部隊 保巡視船は攻撃を受けた際の防御が弱く、リ 役割は、パキスタン政府と交渉し、活動を立ち を派 遣していますが、自衛隊や他の先進国の れまで後方支援分野に限られており、未経験 今後、日本はどのように国 際 協力に関 スクが高い。そこでノウハウと装備が充実して 上げることでした。「どこで、何をして欲しいの 部隊が現地に赴いて活動ができるような状況に の活動領域も少なくありません。しかし、その わっていくべきでしょうか。 国際社会からの評 価は いる自衛隊の護衛艦 2 隻、哨戒機 2 機を派遣 か」「支援期間は、どの程度なのか」といった はありません。しかし、例えば自衛隊がアフリ 一方で日本には、日本人ならではの経験や工夫 宇野 災害や武力紛争後の混乱した状況下に 高まっている。 することになったのです。この数は諸外国に比 パキスタン側の要望と自衛隊ができること、自 カ諸国の軍隊を教育することにより、Capacity という武器を持っています。イラクでの復興支 ある国のことを、遠い知らない国の知らない出 べても多く、日本の決断は世界からも高く評価 衛隊の活動実施に必要な条件を擦り合わせる。 Building に貢献をすることはできます。直接部 援活動では、力で押さえつけるのではなく、地 来事ではなく、日本の平和や経済活動にも影響 まず最初に、お二人が 取り組んでいる されました。“機能する自衛隊”として活動領 そのような交渉と活動候補地の現地調査によっ 隊を派遣することは出来ないまでも、代替手段 域住民の立場に立って、彼らと協力していく活 が及ぶ関心事として認識することは重要です。 国際協力活動について教えてください。 域を広げていく、さらなる一歩となったのです。 て活動基盤がつくられ、ヘリコプター 6 機によ としてどのようなことが出来るか、今までにない 動が他国にも評価され、実際にそれを真似して 例えば、国際テロの問題がありますが、テロの 河田 私が主に取り組んでいるのは、海賊 対 宇野 インドネシア・パダン沖地震、ハイチ大 る水・医薬品・食糧などの援助物資輸送とい 柔軟な発想で、積極的に自衛隊として国際平 いる国もあるそうです。これから自衛隊の活動 温床はどこにでも発生しうるものです。こうした 処です。「この現代に海賊?」と思う方も多い 地震とその後のハイチ PKO 派遣など、「自衛 う支援を実施することができました。 和協力活動に取り組んでいくべきだと思います。 を充実していくためには、日本、自衛隊がこれ 問題に対応するため自衛隊がどこで何をするか でしょう。しかも、活動現場は日本から遠く離 隊が国際平和協力活動にどのように取り組むの 宇野 国際平和協力活動については、自衛隊 は、熟慮して判断する必要があるのですが、いざ、 れたソマリア沖・アデン湾。実はこの場所は、 か」という課題に対して、企画立案する仕事を 国際社会 への果たす責任 。 から様々な経験をしていくことが重要です。そ がどこまでやるのか、やれるのかという問題が の点においても、私も河田と同様に、積極的に 現地に行ったら困難に直面している人々により役 アジアと欧州を結ぶ重要な海上交通路であり、 私は行っています。チリ大地震、パキスタン洪 理解した上での行動が大 切 。 ありますね。日本がある活動に参加するために 世界に出ていくことによって、国際感覚を身に に立つ有意義な仕事ができるよう、自衛隊の能 世界中で年間 1.8 万隻もの商船が通航する経 水、スーダン PKO の対応では現地へ赴きもし は、その活動がどのような枠組みで実施され、 つけていくべきだと考えています。 力を上げていきたいですね。また、その活動が 済の大動脈。日本の商船も年間約 2000 隻が ました。TV でも報道されていますが、実際に 世界情 勢が日々変化するこの時 代に、 具体的に何をするのか、それが我が国の現行 河田 国際平和協力活動がますます重要になる 他国の模範となることが理想です。 通航しています。しかし、長年の内乱により統 現地の状況を目の当たりにすると、想像を超え 国際社会における自衛隊の在り方は、どのよう 法ときちんと整合がとれているのかという法的な 一方、我が国周辺には依然として北朝鮮が存 河田 日本には経済大国としての果たすべき責 治機能を失ったソマリアは、お金はないがマシ るインパクトがあります。例えばパキスタンの洪 に変わってきたのでしょうか。 問題があります。また、災害派遣に関しては自 在し、また中国が台頭しつつあることから、伝 任があると思います。それを理解し、一つひと ンガンやロケットランチャーなどの武器は巷に 水では、被害が大きく、街一帯がまるで湖に沈 河田 インド洋でのテロ対策活動やイラクにお 衛隊ほどの経験を積んでいる国はそうそうありま 統的な安全保障も日本として考えていかなけれ つ自衛隊が取り組んでいく中で、誇れる日本を あふれている状況で、付近を航行する商船は んだような状 態。私の現地滞在中に水は引い ける人道復興支援活動を皮切りに、自衛隊に せんが、武力紛争発生後の平和維持活動はこ ばなりません。国際平和協力活動と日本の防衛 世界に広めていきたいですね。 行動する日本への変化。 25 思います。 26 対談企画 vol.3 「防 衛外交」 Close up! 国と国との 交 渉は 、 きれい 事では 済まされない 。 1 0 0 回の 会 議を 行うよりも 、 1 回でも現 地に向かうこと 。 松尾 友彦 39歳 平成 9 年入省 防 衛政 策 局防 衛計画課 業 務 計画第1班 長 33歳 平成 1 3 年入省 防 衛政 策 局国際 政 策 課 防 衛 部員 松浦 紀光 陸 上 自 衛 隊 に 関 する 装 備 品 の 予算 編 成 、防 衛 力 の 整 備を職 務とする。陸 上 自 衛 隊 が 翌 年 度 に 購 入す 2 0 0 9 年 8 月、アメリカに 次 いで 2 か 国 目となる、日豪 A C S A(アクサ = 物 品 役 務 相 互 提 供 協 定 )を 締 結 すべくプ ロジェ る 戦 車や 大 砲 、航 空 機 やミサイルなど、装 備 品 に 関 する 概 算 要 求 の 責 任を担う。また 今 年 は 防 衛 計 画 クト の 立 ち上げ に 携 わる。2 0 1 0 年 5月には日 豪 外 務 防 衛 閣 僚 協 議(2+2)に お いて日 豪 A C S A は 署 名され 、臨 時 国 の 大 綱を見 直し、5 年ごとの 中 期 防 衛 力 整 備 計 画を 策 定 する年でもあるため、陸 上自 衛 隊 の 今 後 の 体 会 に A C S Aを実 施 するため の 法 律 案を提 出 。また、オーストラリア・韓 国との 防 衛 協 力、日 米 豪 防 衛 協 力、インドネシ 制 につ いて毎日のように 陸 幕 ( 陸 上 幕 僚 監 部 )と相 談し、内 局 内 の 会 議 に 出 席してい る。 ア 等 東 南 アジ ア 諸 国との 二 国 間 防 衛 交 流・協 力、班 内 の 総 括 業 務 など、職 務 は多 岐 にわたる。 北 朝 鮮 の 核 問 題 や 中 国 軍 の 近 代 化 をはじ 起きる原 因を元から絶 つ”という国 際 環 境 行うパシフィック・パートナーシップの実 施 相手国の軍縮を狙った発言や、爆弾を規制す 冷戦期のように軍事力のみで達成されるもの め、東アジア情 勢が緊 迫している中、日本 の改善という動きが見られるようになりまし など、アジア・太平洋地 域への我が国の関 る代わりに新兵器を売りつけようといった各国 ではなく、例えば交渉や会合によって他の国々 の安 全を確保するためには、自衛隊の体制 た。また、その 一方 で、アメリカの 世 界に 与を確保する活動も強化していますね。 間の動きが本当によく見えるのです。だからそ と世界の安全に関する取り決めを結ぶことで、 を整 備するだけではその役 割を果たすこと 対する影 響力が、以前に比べて相対的に落 松尾 そうですね。さらに、そうやって自衛 う簡単に会議は進行しません。国と国との関係 達 成されていくものだと思います。これは、 はできない。日夜、国際 環 境の改善という ちているという現実問題もあります。我が国 隊が海外に出て、面と向かって様々な国と共 は、きれい事では済まされない。安全保障は、 軍事力を行使する戦争や紛争を回避する上で テーマに向き合い、現 場で奮闘する人がい の平和と安定を確保するためには、今後も日 に活 動することで、関係を深めていることも その国家の存立に直結しているという現実があ 重要な手段であるとともに、我が国で言えば、 る。じっくりと胸の内を話すのは初めてだと 米同盟は不可欠ですが、日米同盟だけでは、 とても良いことだと思います。 ります。だから、単に友好増進の観点ではなく、 厳しい財政事情の折、防 衛関係費も大幅に の軍隊に対 するキャパシティ・ビルディング いう両者。日本が 取るべき防 衛外交につい 防 衛力を補 完しきれない状 況になりつつあ 松浦 会議室で 10 0 回議論を行うよりも、1 その国の死活的利益や軍事力の程度など、他 増やすことが困難な中、防衛外交のような方 支 援を行うとか。現在の安 全 保障上の脅威 て語り合いました。 る。例を挙げると、中国にどう対応するのか 度でも現 地に向かう。国 内ではなくて、海 国のリアルな状況を私たちは把握する必要があ 法で地 域の安 全を図ることもまた重要です。 は多 様 化しており、テロ、紛 争、災 害、こ という問題があります。 外での外 交を重ねることが、日本 の安 全 保 るのです。 また、会 議の場だけではなく、国 際交流が れらを適切にマネージすることが我が国の平 松尾 近隣国である日本にとって、中国の軍 障に大きな効果をもたらしていると思います。 松 浦 自国の安 全 保 障が関わっているわけ 広がっている中で、活動の支援も必要になっ 和と独 立を確保することに不 可欠になってい ですから、悠長に構えられる状況ではないん てきていますね。いま、世界が大きく変わって ます。平素から相手国、地 域に自衛隊の能 ですよね。日豪 ACSA においても、私たち きている。世界の平和と安定のために自衛隊 力を活用し、キャパシティ・ビルディング支 一対一よりも 、一対多数。 世界の平和のために、 事力近代化は懸 念すべき問題ですね。戦闘 問題を共有する。 機や軍艦の数、最新式のミサイル開発などに 国家存立に関わる安全保障。 見られるように、とにかく成長スピードが速い。 防衛外交は、 が起案した「2010 年 5 月に署名し、秋に法 の力を必要とされているのなら、それは我が 援を行い、支援対象国の能力を向上すること 世界情 勢が緊 迫している中、日本は 彼らの成長スピードを考えると、日本が同じよ 案を提出する」とのスケジュールには、様々 国としても提供しなければいけない。 により脅威を予防するということが重要です。 どのような外交手段をとっているのですか。 うな規模の防衛力を持つことはほぼ不可能で な所が懐 疑的であり、そこまで急がなくても 松浦 そうですね。今後はますます同盟関係・ 対話や協力により、多国間とのネットワーク 松浦 これまでは信 頼 関 係を基にした対 話 す。一対一で向き合うことは、やはり避けたい。 防 衛外交の現 場とは、どんな雰囲気 いいじゃないかという反応をされた時期もあり 防衛協力はネットワーク化されて、集団的に を構築する外交力。それを磨きあげることが、 と、軍備の 縮 小を軸にした、牽 制し合うよ 対話がこじれたとき、どちらも引けない状 態 なのですか。また、それに携わる職 員には ました。しかし、海外における自衛隊の活動 対応していくことになるでしょう。ただ、日本 テロ、紛争、災害を未然に防ぐことにつなが うな防衛外交が主流でした。ところが現在、 が生まれてしまいますから。日本の防 衛力を 何が求められるのですか。 の拡大や中国への懸 念を考えると、自衛 隊 の場 合、いくら武器を持っていても、武器を ると思います。 テロや 海 賊 問 題といった 例に見られるよう 補完する意味でも、諸国間との関係を強化す 松 尾 防衛に関する会議では、まさに国と国 が活動しやすい基盤を早急に整えることが必 譲ることはできません。その意味で、自衛隊 松 尾 そのためには、世界的な視 野が必 要 に、世界 各 国は様々な問 題を抱えるように ることはとても有効な手段だと思います。 のエゴがぶつかり合って、本音が見えてきます。 要でした。本当に必 要な政 策と思えば、周 が有するソフト面での能力を積極的・組織的 でしょう。そして現実を見つめ、プロジェクト なっています。その結 果、各 国の国 防当局 松浦 実際、Like-Minded Countries(オー 私はクラスター爆弾の規制条約を定める国際 囲に迎合しないで、強い意志を持ってプロジェ にいかに活用するかが大切だと思います。例 を進める意志や知恵が必要となります。防衛 が互いに安 全 保 障について意 見交 換するだ ストラリア・韓 国)との防 衛 協力をはじめ、 会議に 1 年間で 7 回ほど参加し、日本の条約 クトを遂行することが大事ですね。 えば、災害救 援や海賊 対処に関する自衛隊 外交は、とにかく知力を尽くさなくてはできな けでなく、お互いに協力し、“紛争やテロが 東南アジアの国々に医療支援や文化活動を への対応について交渉しましたが、そこでは、 松尾 そもそも防衛や安全保障というのは、 の経験・知見を活用し、東南アジアの国々 い任務です。 27 きれい事では済まされない。 28
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