子どもの学習意欲に関する調査研究 《研究主題》 意欲的に学習に取り組む児童生徒の育成 -学習意欲の向上を測る質問紙の作成とその活用について- 《研究概要》 学習意欲の向上を、印象でなく、事実としてどの様にとらえたら良いか、ということが本研究 をはじめた動機である。昨年度は、学習意欲の向上をとらえるための質問紙を作成し、市内数校 の小・中学校を対象に調査を行った。その結果、授業実践に役立てるためには、質問項目を検討 する必要があることや授業に活用する方法を明確にする必要があることが問題点として残った。 そこで、今年度は、質問項目から学級や学年の子どもの学習意欲の傾向をとらえ、実践を通し授 業改善に生かすようにした。また、指導の効果は実践後の子どもの学習意欲の変容を統計的にと らえ検証するようにした。これらを通して、質問項目の精選やその活用方法を明確にし、学校現 場に指導の一助となるような資料を提供していきたい。 1 研究の目的 子どもの意欲の向上に効果的であったかを明ら 本研究は、意欲的に学習に取り組む児童生徒 かにする。これらを通し、質問項目の検討を行 を育成するために、子どもの学習意欲の変容を い、学習意欲の向上を客観的にとらえる方法を 測るための質問紙を作成し、また、それを活用 明らかにしていきたいと考える。 して授業を改善する方法を示すものである。 3 2 子どもの学習意欲の向上を測るための質問紙 主題設定の理由 本研究は、昨年度、教師が子どもの学習意欲 研究目標 を検討し、これを用いて授業改善を図る方法を がどのような方向に向かっているかをできるだ 示す。 け具体的な行動を通してとらえるための質問紙 4 を作成した(P10【資料1】参照)。そして、市 (1) 学習意欲の向上をめざした質問紙を作成し、 調査校を指定し、調査を行う。(1 年次) 内の数校を対象にサンプル調査を行い、児童生 徒の学習意欲に関する傾向を分析した。学習意 研究の視点 (2) 調査結果の集計を行い、クロス集計(学年 欲の向上を、実証的な研究としていくためには、 別、意欲の高群・低群)、検定等の統計処理を 客観的なデータによる実態の把握が不可欠であ する。(1 年次) る。そのためには、質問項目を吟味することや、 (3) 質問項目を検討する。質問紙を活用して授 学習前後の子どもの変容を統計的な処理をして 業改善に結びつけ、学習意欲の向上を測る方 指導の効果を検証するなど、学習意欲の向上を 法を示す。(2 年次) とらえる方法を明確にすることが必要となる。 そこで、今年度は、質問項目をもとに学級や 5 研究計画(2 年次) ・質問紙を用いた子どもの実態把握 学年の子どもの実態をとらえ、日頃の学習指導 ・意欲的に学習に取り組む指導事例の収集 を見直して、意欲を高めるための方策を考える。 ・質問項目の検討 次に、指導前後の子どもの変容から学習指導が、 ・質問紙を授業改善にいかす方法の明示 6 ンケート調査の分析から日常の学習指導を改善 研究内容 する視点を考えた。 (1) 学習意欲について 学習意欲には統一した定義は見られないが、 【図2】-学習指導改善の視点- 心理学用語の動機づけとほぼ同義で用いられる 学習指導改善の視点 場合が多い。学習の原動力であり、学習しよう 分析:アンケートを統計処理 考察:どのような指導が子どもの学習意欲 の向上に効果的か考える。 とする欲求と最後まで実現しようとする意志を 含んでいる。本研究では学習意欲を、 「自発的・ 継続的に子どもたちの学習行動をおこさせるも 教 学院 師 磯田貴道氏の研究を参考にすると、【図 1】のように分析できる。動機づけは、行動を 子 ど も の」とした。動機づけの概念は、早稲田大学大 質問紙法から学習意欲を高めるた めの外的要因をとらえる 学習意欲の方向性を考えた指導 ひきおこす内的要因、行動を方向づける目標設 定、行動を誘発させる外的要因により学習行動 がひきおこされ、学習結果から意欲がさらに強 まず、子どもが自己評価した質問項目をもと 化されると考えられる。 に、学習意欲に関する学級・学年の実態をとら 【図1】-動機づけと質問項目- えた。次に、日常の学習指導を見直して、意欲 の向上を図る方策を考え、学習指導改善の視点 学習者の内的要因 目標設定 学習行動 学習への必要感 誘因、魅力 <授業中> 内容への興味・関心 価値、期待 ・ノート(401,402) 自分の能力への概念 授業についての概念 ・質問、発表 環境(外的要因) (403,404,407) 過去の学習の記憶 学習方法 ・聞く (406,408) 自尊心 (302,306,307,308,312) ・工夫 (405,409) 学習形態(303,304) <授業後> 学習結果 達成感 充実感 自己評価 自己強化 教師 (301,310,311) ・復習 (410~413) 友達 (305,309) ・宿題、予習 (414,415) ・追究 (416~418) を定めて、継続した指導を実践した。6月と 12 月の時点での子どもの学習意欲に関する意識の 変化を分析し、指導の効果を検定や相関分析等 の統計処理を用いて確かめた。これらの過程を 通して、どの様な指導が効果的か考察し、学習 意欲の向上にかかわる質問項目を分析した。 【図3】-学習指導の成果の把握- ※備考 番号は質問項目の番号 学習意欲の測定には、観察行動による評定と 質問紙検査による測定が用いられている。本研 究では、①子どもの自己評価を通して、特定の 学習指導の成果をどう把握するか 質問紙による個別の状況把握(自己評価) 子どもの意欲がどの方向に向かっているか 活動への取り組みの傾向をとらえ、学習指導の 改善の方向性をさぐる。②学習指導の改善の効 質問紙3 外的要因 果を、学習前後の自己評価の変容を通してとら える。以上から、子どもの自己評価により学級・ 学年の学習意欲の状況を把握することにした。 外的要因は【質問紙3「教師の指導の工夫」】に より、学習行動は【質問紙4「学習意欲の現れ を示す行動(授業中・授業後)」】に関する、ア 質問紙4 学習行動 ①賞揚 ②操作活動 ③グループ学習 ④一斉学習⑤発 表 ⑥挑戦 ⑦時間 ⑧選択学習⑨友達理解 ⑩教授 ⑪賞揚 ⑫学習メディア ①ノートに書く ②マーキング ③④質問をする ⑤別の方法 ⑥集中して聞く ⑦発表する⑧考えを聞く⑨工夫して考える ⑩ノートの見直し⑪間違い直し⑫後で質問する ⑬類似の 問題を練習 ⑭宿題 ⑮予習⑯本やインターネットの活用 ⑰家の人に話す ⑱生活に役立てる 分析:事前事後の変化を統計処理 考察:どのような指導が子どもの学習意欲の向上に 効果的であったか考える。 (2) 実践例1(A小学校 ① 第5学年 問(友達)」 「質問(先生)」が、学習意欲を高め 調査結果の分析 【表1】-質問紙3の調査結果(6月調査)- 項目 平均値 平均値(小調査校) 平均値の差 項目 平均値 平均値(小調査校) 平均値の差 賞揚 4.1 4.07 0.06 操作活動 グループ学習 一斉学習 3.7 3.73 0.00 調査結果から、授業中の「賞揚」 「発表」 「質 算数) 3.4 3.66 -0.23 発表 挑戦 3.2 3.73 -0.50 3.9 3.73 0.20 4.1 4.13 0.00 時間 選択学習 友達理解 教授 賞揚 学習メディア 3.9 3.93 -0.06 4.1 4.26 -0.19 3.8 3.86 -0.06 4.3 4.23 0.04 4.0 4.44 -0.47 3.7 3.87 -0.20 実践した学級の平均値が昨年度調査した市内 る要因となっている。今後も進んで質問したり、 考えを発表したりすることを奨励していきたい。 一方、 「グループ学習」 「一斉学習」 「記録の見直 し」「類題を解く」「別の方法」が平均値と比べ て低い傾向が見られる。特に、日常の学習活動 では、 「 一つのやり方でできたら別のやり方を考 える(別の方法)」ことが不足しがちである。そ こで、これを重点に学習指導の改善を行い、子 の学校の平均値より高い項目は、 「 教師にほめら どもの学習意欲を高めていきたい。 れたとき(賞揚)」「自分の考えを発表できたと ③ 学習指導改善の視点 き(発表)」「ノートに励ましの言葉が書いてあ 「一つのやり方でできたら別のやり方を考 るとき(賞揚)」である。一方、低い項目は、 「グ える(別の方法)」ための指導の充実 ループで学習をするとき(グループ学習)」「ク ⅰ ラス全員で学習するとき(一斉学習)」「コンピ 多様な考え方を引き出せるような教材 や教具の工夫 ュータを使って学習を進めるとき(学習メディ ・いろいろな方法を試し、試行錯誤が可能な教 ア)」である。 材や教具を工夫することで、多様な考え方がで 【表2】-質問紙4の調査結果(6月調査)- きるようになると考える。 項目 平均値 平均値(小調査校) 平均値の差 項目 平均値 平均値(小調査校) 平均値の差 ノート マーク 質問(友達) 質問(先生) 別の方法 4.5 3.5 3.5 3.2 3.1 4.74 3.60 3.34 3.05 3.56 -0.27 -0.10 0.13 0.12 -0.49 発表 聞く(友達) 文章題 記録見直し 間違い直し 3.5 3.8 3.3 3.2 3.0 3.57 4.07 3.65 3.70 3.43 -0.07 -0.27 -0.35 -0.53 -0.43 聞く(先生) 3.6 4.03 -0.40 類題を解く 2.4 2.96 -0.59 実践した学級の平均値が昨年度調査した学校 の平均値より高い項目は、 「 授業中わからないこ ⅱまた、 共に学び合う場の設定 ・多様な考えを発表したり聞き合ったりするこ とで、より良い方法に気づくことが可能になる。 そのために、友達の考えを聞き合う場を設け、 自分では考えつかなかった別の考えに触れさせ ることで、別のやり方を考えることが可能にな り、学習意欲が高まると考える。 ⅲ 振り返りカードの活用 とを友達に聞く(質問(友達))」 「授業中わから ・学級の子どもは「励ましの言葉が書いてあっ ないことを先生に聞く(質問(先生))」である。 たとき」に学習意欲が高まる傾向がある。そこ 全体的に、平均値より低い項目が多いが、特に で、振り返りカードを活用し、意欲的に学習に 「一つのやり方でできたら別のやり方を考える 取り組んでいることを認め、次時につながるコ (別の方法)」「先生の話を集中して聞く(聞く メントを書き入れさせるようにしていきたい。 (先生))」 「ノートやプリントを見直す(記録の また、振り返りカードの項目に、「一つのやり 見直し)」「授業で習った問題と同じような問題 方でできたら別のやり方を考える」を加えて、 を解く(類題を解く)」にその傾向が強い。 別の方法を考えることへの意識付けを図って ② いきたい。 考察 ④ 実践例 (A小学校 第5学年 算数 「式と計算」) -多様な考え方を引き出せるように教材や教具を工夫した例- (1) 本時の目標 ・作った形を式に表したり、式から形を作ったりすることができる。 (2) 展開(5/7) 学習活動と内容 教師の支援(○) ・学習意欲を高める教師の手だて(☆) 1.学習のめあてをつかむ。 ○ 使用するブロックの形を指定する。 星型の中に三角形がいくつあるでしょうか。考えた求め方を式で表 してみましょう。 資料・教具 ・パターン ブロック 六角形 2.形作りをして式に表す。 ○作った形を式に表す方法を説明する。 台形 ☆作ったものが重ならないように、色をつけ ひし形 て記録しておくように促す。 正三角形 ☆なかなか進められない児童には、空いてい ・素材の絵 るところを埋めていけるように途中まで敷 ・プリント 1×3+3×3=12 き詰めたものを用意する。 ☆早く終わった児童には、他の作り方はない か考えるように促す。 3.他の求め方をいろいろ工夫し てみる。 6×1+1×6=12 3×2+2×2+1×2=12 ⑤ 実践後の変容と考察 「操作して学習を進める」「一つの方法を 【表3】-質問紙3・4の事前事後の比較(12 月実施)- 項目 賞揚 操作活動※グループ学習※ 一斉学習 発表 挑戦※ 考えたら別の方法を考える」「文章題を自分 なりに工夫して解く」等が有意に増加してい 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 項目 4.1 4.3 3.7 4.3 3.4 3.8 3.2 3.6 3.9 4.2 4.1 3.7 0.1 0.6 0.4 0.4 0.3 -0.4 時間 選択学習 友達理解 教授 賞揚 学習メディア 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 項目 3.9 3.7 4.1 3.8 3.7 3.9 3.8 3.9 4.3 4 -0.1 -0.2 0.2 0.1 -0.2 ノート 4 4.2 0.3 マーク 質問(友達)質問(先生)別の方法※ 聞く(先生) 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 項目 4.5 4.8 3.5 3.8 3.5 3.9 3.2 3 3.1 4.2 3.6 3.8 0.3 0.3 0.4 -0.2 1.1 0.1 発表 聞く(友達) 文章題※ 記録見直し 間違い直し 不明点を聞く※ 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 3.5 3.3 3.8 4 3.3 3.8 3.2 3 -0.2 -0.2 0.2 0.5 (※有意差がある項目) 3 3.4 3.3 2.3 0.4 -1.0 る。一つの素材から多様な考え方が導き出せ るような教材を工夫したことや、振り返りカ ードを用いて学習終了時に見直させたこと が成果につながったと考えられる。日常の学 習でも、友達と相談したり考えを聞きあった りするなど意欲の向上に効果が見られた。 反面「難問に挑戦する(挑戦)」 「後でわか らない点を聞く(不明な点を聞く)」では効 果が認められず、これらを重点とした指導が 別に必要である。 (3) 実践例2(E小学校 ① 第3学年 算数) が考えられる。そこで、グループでの話し合い の時間を多く取り入れ、わからないことを友達 調査結果 【図4】-質問紙3の調査結果(6月調査)- 同士で相談し合う場面を多くすることを重点に、 ぜんぜんあてはまらない あまりあてはまらない どちらともいえない 少しあてはまる とてもよくあてはまる 授業改善を図りたい。また、自力解決の際、具 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 体物を使った操作活動を行い、算数的な思考へ 15 22 23 18 2 20 1 6 「授業中わからないことを友達に聞く(質問 8 5 02 2 1 3 10 1 20 (友達))」ための指導の充実 12学 習 メデ ィア 1 4 10 3 4 02 11賞 揚 8 学習指導改善の視点 10教 授 3グル ー プ 学 習 5 6 5 ③ 9友 達 理 解 0 7 0 7 8選 択 学 習 1 23 6 7時 間 2 結びつけられるような活動をしていきたい。 15 29 4一 斉 学 習 20 2操 作 活 動 10 1賞 揚 8 21 12 10 7 22 6挑 戦 9 17 5発 表 13 10 ⅰ 教師の指導の工夫に関する項目では、概ね、 学級の平均は昨年度調査校の平均値より高いが、 「グループで学習する(グループ学習)」は 10 意見交換の場の充実 ・友達と意見交換の場の充実を図るために、個々 のノートをもとにして話し合うことや、話し合 いの仕方の指導をする。これらを通して、表現 力の育成を図る。 ⅱ 学習したことを活用する場の設定 名が「どちらともいえない」と回答しており、 ・学習したことを活用していく場面を設け、操 他の項目より意識が低い傾向が見られる。 作活動を通して学習したことを使いこなし、既 【表4】-質問紙4の調査結果(6月調査)- 存の知識や技能等との関連づけを図るとともに、 項目 ノート マーク 質問(友達) 質問(先生) 別の方法 聞く(先生) 平均値 4.8 3.6 3.2 3.1 4.3 4.5 平均値(小調査校) 4.7 3.6 3.3 3.1 3.6 4.0 平均値の差 0.10 -0.01 -0.12 0.04 0.69 0.44 項目 発表 聞く(友達) 文章題 記録見直し 間違い直し 不明点を聞く 平均値 4.0 4.4 4.4 4.4 4.2 3.9 平均値(小調査校) 3.6 4.1 3.7 3.7 3.4 3.4 平均値の差 0.46 0.31 0.73 0.71 0.73 0.45 生活の中に取り入れる場を設定する。 ④ 実践後の変容と考察 【表5】-質問紙4の事前事後の比較(12 月実施)- 項目 ノート マーク※ 質問(友達)※ 質問(先生) 別の方法 聞く(先生) 先生に聞く(質問(先生))」は、調査校の平均 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 4.8 4.8 3.6 4.1 3.2 3.8 3.1 3.1 4.3 3.8 4.5 4.5 事後ー事前 0.0 0.5 0.6 0.0 -0.4 0.0 項目 発表 聞く(友達) 文章題 記録見直し 間違い直し 不明点を聞く 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 4.0 3.5 4.4 4.6 4.4 4.3 4.4 3.8 4.2 3.7 3.9 3.4 事後ー事前 -0.5 -0.5 -0.6 0.2 -0.1 -0.6 値より低いかほぼ等しい。 (※有意差がある項目) 概ね、学級の平均は昨年度調査校の平均値よ り高いが、 「 授業中わからないことを友達に聞く (質問(友達))」と「授業中わからないことを ② 考察 授業の中にコミュニケーション場面を多く取 質問紙3から「グループ学習」 「操作活動」 「教 り入れた指導を継続してきた結果、 「 わからない 授」が、質問紙4から「質問(友達)」 「質問(先 ことを友達に質問する」子どもが有意に増加し 生)」が、他の項目と比較して低い傾向が見られ ており、積極的に情報交換するなど意欲な学習 る。これまでの指導で、具体物を用いること、 態度が見られた。 グループでの話し合いの場をもつこと、時間を かけわかるまで教えることに課題があったこと 反面、改善点を意識した指導が中心となり、 他の項目の平均が下がる傾向がある。 (4) 実践例3(G中学校 ① 第2学年 数学) 調査結果の分析 する機会を多くもたせたい。また、授業中に友 【表6】-質問紙3の調査結果(6月調査)- 項目 平均値 平均値(中調査校) 平均値の差 項目 平均値 平均値(中調査校) 平均値の差 苦手意識があるため、生徒に自分の考えを発表 達や教師の話を注意深く聞くことができていな 賞揚 操作活動 グループ学習 一斉学習 発表 挑戦 いので、発表者の考えを尊重し、話を真剣に聞 3.0 3.3 -0.22 2.9 3.0 -0.13 2.9 3.0 -0.17 2.5 2.8 -0.28 2.8 3.1 -0.26 く態度を身につける必要がある。 時間 選択学習 友達理解 教授 賞揚 学習メディア 3.0 3.3 -0.30 3.3 3.5 -0.20 3.3 3.6 -0.29 3.1 3.3 -0.20 3.7 3.6 0.10 2.8 3.0 -0.17 3.1 3.3 -0.21 以上から、グループ学習など意見交換を活発 にする場作りや、多様な考えをもつことができ るような教材・教具の工夫を重点に授業の改善 を図りたい。 ③ 12 項目中 11 項目で、20%以上の生徒が「あ 学習指導改善の視点 考えを発表できる場を設定する まりあてはまらない」「ぜんぜんあてはまらな ・授業中、グループ(ペアを含む)での話し合 い」と回答している。特に、 「わかることは発表 いや操作を行う場をできるだけ多く設けて、自 する(発表)」は、約半数の生徒が発表に対して 分の考えやアイディアを自由に言い合える場 消極的である。また、全項目にわたって「どち をつくる。以下に留意して指導する。 らともいえない」という回答が多く、特に、 「操 ⅰ 自分から発表する気持ちを育てる 作活動して学習を進める(操作活動)」「クラス ・自ら考えることを促すために、テキストは書 全員で学習する(一斉学習)」にこの割合が高い。 き込み式にして、解答はすぐ見えるところに示 「コンピュータを用いた授業(学習メディア)」 さない。また、自分の考えを記録できるように のみが、昨年度の調査校の平均値とほぼ等しい。 する。 【表7】-質問紙4の調査結果(6月調査)- ・自分で気づくように操作活動を取り入れる。 別の方法 聞く(先生) 2.2 3.6 2.5 3.9 -0.3 -0.3 間違い直し 不明点を聞く 2.6 2.8 2.8 3.2 -0.2 -0.3 ・自分の考えで進められるように、既習内容が 全項目で昨年度の調査校の平均値を下回って ・ 「根拠を指摘する→筋道をたてる→仮定から結 項目 平均値 平均値(中調査校) 平均値の差 項目 平均値 平均値(中調査校) 平均値の差 ノート マーク 質問(友達) 質問(先生) 4.7 4.0 3.6 2.8 4.7 4.1 3.7 2.9 0.0 -0.2 -0.1 -0.1 発表 聞く(友達) 文章題 記録見直し 2.3 3.0 2.5 2.7 2.5 3.3 2.7 3.1 -0.2 -0.4 -0.2 -0.3 確認でき、見通しを持つことができるヒントを 吹き出しで提示する。 ・自分の考えを説明する場を多く設け、話し合 い活動を活発にする。 ⅱ 説明する力をつける いる。特に、 「一つのやり方でできたら別のやり 論を導く」の順で説明させる。 方を考える(別の方法)」「先生の話を集中して ・証明の初期の学習では、口頭で説明する時間 聞く(聞く(先生))」 「友達の意見や考えを聞く をとり推論の進め方が習得できるようにする。 (聞く(友達))」 「 ノートやプリントを見直す(記 ・友達の説明を参考に、より簡潔でわかりやす 録の見直し)」「わからないことを友達や先生に い説明を考えさせる。 聞く(不明点を聞く)」は平均値との差が大きい。 ・理解を深めることができるように、学習した ② ことを振り返る時間を設ける。 考察 発表する意欲がやや乏しく、発表することに ④ 実践例 (G中学校 第2学年 数学 図形の合同) -考えを発表できる場の設定の工夫- (1)本時の目標 ○三角形の合同条件を使って、2つの三角形が合同であることを説明することができる。 (表現・処理) (2)展開 学 学習過程 導 展 入 開 ⑤ 活 動 と 内 容 指導上の留意点(○)意欲を高める手だて(☆) 1 前時を振り返る。 ○合同条件を確認する。 2 説明の方法を考える。 ○説明の大切さを理解させ、 ・今日は、合同を相手に分かるように説明す 説明に関心をもたせる。 ることであることをとらえる。 ○説明では必要なことがらを 2つの三角形が合同であることを説明しよう 省略しないことを確認する。 3 ○三角形の合同条件に必要な テキストを見て説明の仕方を考える。 ・問題文を読み、辺や角に印をつけ、なぜ合 要素をすべて言わないと正し 同なのか考える。 くないことを確認する。 ・枠に自分の考えを書く。 ☆フラッシュカードで説明の 4 流れを示し、生徒に説明を考え 友達の説明をきく。 ・前後半に分け、事前に決めた相手に説明す させる。 る。説明した相手のテキストに説明が正しい ☆説明するためには何が必要 か判断し、感想を書く。 であったかを振り返らせる。 5 まとめ 習 説明を振り返る。 ・合同条件の何を使って説明したか考える。 ○三角形の合同条件に必要な 6 等しい辺や角をすべて言う。 本時のまとめと次時の予告をする。 実践後の変容と考察 【表8】-質問紙3・4の事前事後の比較(12 月実施)- 事項 賞揚 操作活動 グループ学習 一斉学習 発表 挑戦 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 事項 3 3.2 2.9 3 2.8 3.1 2.9 3 2.5 2.9 2.8 2.8 0.2 0.1 0.3 0.1 0.3 -0.1 時間 選択学習 友達理解 教授 賞揚 学習メディア 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 事項 3 3.2 3.3 3.4 3.1 3.2 3.3 3.6 3.1 3.4 3.7 3.8 0.2 0.2 0.1 0.3 0.3 0.1 ノート マーク 質問(友達)質問(先生)別の方法※ 聞く(先生) 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 事項 4.7 4.5 -0.2 発表 4 4.1 3.6 3.7 2.8 2.8 2.2 2.6 3.6 3.6 0.1 0.1 -0.1 0.4 0.0 聞く(友達)※ 文章題※ 記録見直し 間違い直し不明点を聞く 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 事前 事後 平均値 事後-事前 2.3 2.3 0.0 3 3.5 2.5 2.9 2.7 3 2.6 2.6 2.8 2.9 0.5 0.4 0.3 0.0 0.1 (※有意差がある項目) 生徒に、人間関係づくりが苦手な面が見ら れるので、仲の良い生徒同士でグループをつ くり、ペアで学習に取り組ませた。安心して 意見交換ができ、質問したり、教え合ったり するなど生徒同士がかかわり合って学習を 進めることができた。今後も継続していく必 要がある。また、多様な考えを認め合うこと を通して、進んで発表することの大切さに気 づく生徒も見られるようになった。グループ 活動を取り入れた成果と考えられる。今後も 生徒の実態に応じた題材の提示や意見を発 表しやすい環境作りに工夫が必要である。 7 ○【表 10】では、「別の方法」などにプラスの 研究のまとめ 有意差が見られるが、マイナスの傾向があるも (1) 学習意欲を測る質問紙の活用 実践後に同じ質問項目で自己評価をして、各 のとして、「記録の見直し」「不明な点を聞く」 項目の事後と事前の差を学校ごとにまとめたも 「予習」などがある。D校のように、インター のが【表9・表 10】である。また、【表 11】は ネットを活用した学習に力を入れ「事前調査」 A校の質問紙3の事後と事前の差、授業改善の に良い結果を生んでいる例もあるが、この質問 視点、質問紙4との相関を整理した表である。 紙は質問項目やその内容に課題を残した。 【表9】-質問紙3 各校の質問項目別(事後-事前)- 【表 11】-質問紙3の事後-事前、授業改善の視点、質問紙4との相関(A校)- 番号 項目 A 0.1 0.6 302 操作活動 303 グループ学習 0.4 0.4 304 一斉学習 305 発表 0.3 -0.4 306 挑戦 307 時間 -0.1 -0.2 308 選択学習 309 友達理解 0.2 0.1 310 教授 311 賞揚 -0.2 312 学習メディア 0.3 301 賞揚 B C D E F G 0.2 0.8 0.1 0.5 0.6 0.0 -0.1 -0.4 0.1 0.1 -0.3 -0.3 -0.2 0.4 0.2 -0.3 -0.4 -0.3 0.1 0.2 -0.3 0.0 -0.3 0.1 0.2 0.4 0.2 0.2 0.2 0.1 0.0 0.0 0.1 0.2 0.2 0.3 -0.2 -0.1 -0.2 -0.1 0.1 -0.2 -0.2 0.0 -0.2 -0.4 -0.3 -0.6 0.3 0.5 0.5 0.1 0.0 0.1 0.0 -0.1 0.1 0.0 0.3 0.2 0.2 0.1 0.3 0.1 0.3 -0.1 0.2 0.2 0.1 0.3 0.3 0.1 【表 10】-質問紙4 各校の質問項目別(事後-事前)- 項目 A B C D E F G 401 ノート 402 マーク 0.3 0.3 0.4 -0.2 1.1 0.1 -0.2 0.2 0.5 -0.2 0.4 -1.0 -0.1 0.0 -0.5 -0.5 0.0 0.2 0.1 -0.4 0.2 -0.4 0.6 0.7 0.1 0.3 0.3 -0.6 -0.5 -0.5 -0.5 0.2 -0.6 -0.4 -0.3 -0.1 -0.2 0.0 0.1 -0.3 0.1 0.0 -0.1 0.2 -0.5 -0.9 -0.6 -0.5 -1.0 0.1 -0.8 -0.3 -0.7 -0.1 0.2 0.4 0.4 0.3 -0.1 0.0 0.1 0.1 0.1 0.2 0.4 0.2 0.1 0.2 0.1 0.8 0.4 0.5 0.0 0.5 0.6 0.0 -0.4 0.0 -0.6 0.2 -0.1 -0.6 -0.5 -0.5 -0.2 0.1 -0.3 -0.5 -0.5 -0.3 0.1 0.0 0.1 0.2 0.4 -0.1 0.5 0.3 0.3 -0.2 -0.2 -0.1 -0.2 0.0 0.0 0.2 0.0 0.1 -0.2 0.1 0.1 -0.1 0.4 0.0 0.0 0.5 0.4 0.3 0.0 0.1 0.1 0.1 0.1 0.2 0.0 0.1 403 質問(友達) 404 質問(先生) 405 別の方法 406 聞く(先生) 407 発表 408 聞く(友達) 409 文章題 410 記録見直し 411 間違い直し 412 不明点を聞く 413 類題を解く 414 宿題 415 予習 416 事前調査 417 家庭会話 418 生活に利用 ( 着色欄は有意差がある) 授業改善の視点 差 ①多様な考え方 を引き出せるよ 操作活動 うな教具や教材 グループ学習 の工夫 ②わからないこ 一斉学習 とを聞いたり、 互いの考え方を 発表 発表したり、聞 き合ったりする 挑戦 場を設ける。 時間 ③振り返りカー 選択学習 ドの活用 ○学習活動で意 友達理解 欲的に活動して 教授 いた事を認め、 コメントを書き 賞揚 入れる。 0.1 質問紙3の項目 賞揚 学習メディア 0.6 0.4 0.4 聞く(友達) マーク、質問(先生)、聞く(先生) 聞く(友達)、事前調査、家庭学習 0.3 発表 -0.4 別の方法 -0.1 -0.2 0.2 マーク、聞く(友達) 0.1 質問(先生)、聞く(先生)、聞く(友達) -0.2 0.3 ( 着色欄は有意差がある) ○【表 11】から、質問紙3の「一斉指導」に質 問紙4に関係がある項目が多く見られる。また、 事後と事前の有意な差のある項目は、授業改善 の視点との関連が深い。 (2) 学習意欲の向上を量的にとらえる方法 変化の様子を直接測定することが難しい問題 は、以下の手順で測定することが可能である。 ① 調査テーマの設定 どんな事柄を明らかにするのか明確にする。 ○【表9】から、事後-事前にプラスの有意差 が見られる項目は、 「操作活動」 「グループ学習」 相関がある質問紙4の項目 ② 質問項目の設定と調査票の作成 「一斉指導」 「 発表」である。これらの項目では、 子どもの変化の様子を直接測定することが困 教材教具の工夫やコミュニケーションの場の充 難な問題は、測定できるものに置き換える必要 実などを改善の視点として取り組むことにより、 がある。学習意欲の向上を量的にとらえるため、 比較的短期間で当該項目の変容が見られた。一 授業中と授業後の場面に分けて、それぞれの場 方、マイナス傾向のものに「難問に挑戦する(挑 面でどのような行動をとったときに「意欲的で 戦)」 「 コース別学習をする(選択学習)」があり、 ある」と判断するのか、具体的な子どもの行動 これらの機会の不足が原因とてあげられている。 を示す設問を設定する。このとき学習意欲が高 質問紙3を用いると、児童の学習意欲の方向性 まると児童にどのような姿が見られるようにな をとらえた指導を行うことが可能である。 るのか考えることが大切である。 ③ 学習意欲の向上を質問紙により測り、授業改 事前調査 サンプル調査の場合は、標本数を決める。 善を図る方法を示したものが、【図5】である。 ④ 調査票の活用 この流れをもとに、質問紙を作成し授業改善を ⅰ 授業改善の視点 図ることで客観的なデータをもとにした研究を 調査結果から、学級や学年の「学習意欲の 現れ」の傾向を捉え、日常の学習指導の良い 進めることが可能になる。 【図5】-質問紙の作成と活用の流れ- 点、改善の必要がある点を把握する。 学習意欲の向上を測る質問紙の作成と活用の流れ t 授 定 改 後 業 態 善 相 調 実 分 析 点 成 改善の視点を見直し、効果があった要素と なかった要素を分析する。 【研究組織】 ○ 通年講師 ○ 研究協力員 ○ 千葉市立幸町第四小学校 校長 山本照道 千葉市立新宿小学校 教諭 井上美子 千葉市立都小学校 教諭 吉田英明 千葉市立検見川小学校 教諭 桑原恵美 千葉市立長作小学校 教諭 富谷 千葉市立瑞穂小学校 教諭 石田信之 千葉市立さつきが丘中学校 教諭 千葉市立真砂第一中学校 教諭 佐久間 泰 伊藤達也 所内担当 教育研究部門 新村実治 古屋直樹(担当) 宮葉清子 反町京子 【参考文献・引用文献等】 ・ 下山 剛 『学習意欲の見方・導き方』 ・ 下山 剛 『学習意欲と学習指導』 ・ 北尾倫彦 『学習意欲の育て方A~Z』 ・ 坂元 『学習意欲を開発する授業技術 ・ 三浦省五 昮 (1985) (1995) (1997) 基礎理論』(1983) 『英語教師のための教育データ分析入門』 (2004) 千葉市教育センター 研究紀要第 15号 ○ テーマ:子どもの学習意欲に関する調査研究 ○ 研究対象:小学校、中学校 ○ 研究領域:教育調査 ○ 分類番号:J1-01 ○ 研究内容のキーワード:学習意欲、学習動機、外的要因、内的要因、質問紙法、 意欲の方向性、事前事後の変容 稔 察 関 査 践 視 握 考察 の ⅲ 把 の有意差を調べ、授業改善の効果を捉える。 考 検 事 授 実 査 業 調 ン 前 イ 事 ザ 作 デ 定 の の 設 票 票 の 査 査 マ 調 調 ー 検定を用いて、指導前と指導後の調査結果 テ 効果の分析 査 ⅱ 調 点化する。 ・ どの様な力をつけるのか、改善の視点を焦 【資料1】-アンケート調査項目- <質問紙3 教師の指導の工夫> 301 賞揚:ほめられる 302 操作活動:操作活動して学習を進める 303 グループ学習:グループで話し合う 304 一斉学習:クラス全員で学習する 305 発表:発表する 306 挑戦:難問に挑戦する 307 時間:考える時間がある 308 選択学習:コース別学習をする 309 1 とてもよくあてはまる 友達理解:自分と別の考えがわかる 2 少しあてはまる 310 教授:わかるまで教えてくれる 3 どちらともいえない 311 賞揚:励ましの言葉がノートにある 4 あまりあてはまらない 312 学習メディア:CP を使った授業 5 ぜんぜんあてはまらない <質問紙4 学習意欲の現れを示す行動(授業中・授業後)> (授業中) 401 ノート:黒板に書かれたことはノートに書く 402 マーク:大事なところは印をつける 403 質問(友達):授業中、わからないことを友達に聞く 404 質問(先生):授業中、わからないことを先生に聞く 405 別の方法:別のやり方を考える 406 聴取(先生):先生の話を集中して聞く 407 発表:わかることは発表する 408 聞く(友達):友だちの意見や考えを聞く 409 文章題:文章問題を自分なりに工夫して考える (授業後) 410 記録の見直し:ノートやプリントを見直す 411 間違い直し:間違えた問題をもう一度やる 412 不明点を聞く:後でわからないことを友達や家の人、先生に聞く 413 類題を解く:授業で習った問題と同じような問題を解く 414 宿題:宿題はやる 1 いつもしている 415 予習:予習をする 2 ときどきしている 416 事前調査:本やインターネットで調べる 3 どちらともいえない 4 あまりしていない 5 ぜんぜんしていない 417 家庭会話:学んだことを家の人に話す 418 ※ 生活に利用活用:学んだことを生活の中で使う アンケート用紙は、センターホームページで公開しています。ご活用ください。
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