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2013年欧州リウマチ学会(Annual European Congress of Rheumatology 2013) 2013年6月12∼15日 Madrid (Spain)
SAT0111
実臨床でトシリズマブが投与された
関節リウマチ患者におけるステロイド減量効果:
Spare-1試験の中間解析
DESCRIPTION OF GLUCOCORTICOID SPARING EFFECT IN RHEUMATOID ARTHRITIS (RA) PATIENTS TREATED BY
TOCILIZUMAB (TCZ) IN REAL LIFE: AN INTERIM ANALYSIS OF THE SPARE-1 STUDY
演者
A. Saraux 先生(UH, Rheumatology, Brest, France)
Q uick R eview
関節リウマチ
(RA)
治療では炎症を抑制する上でステロイドは有用だが、
プレドニゾロン換算量5mg/日以上で長期
投与すると副作用発現リスクが高まる。
そのため、
ステロイドの減量・中止は、
寛解及び低疾患活動性の達成とともに
RAの重要な治療目標である。今回、
トシリズマブを6カ月間投与することによって、RA患者の40%で、DMARDを
増量せずに、
ステロイドをプレドニゾロン換算量5mg/日以下に減量できることが示された。
実臨床においてトシリズマブのステロイド
減量効果をプロスペクティブに検討
Health Assessment Questionnaire Disablity Index
(HAQ-DI)及びRheumatoid Arthritris Impact of
本 研 究の目的は、R Aの実 臨 床でトシリズマブの
Disease(RAID)
スコアをベースライン、6カ月及び12カ月
ステロイド減量効果を検討することである。対象は中等症
後に評価した。RAIDスコアは、患者評価による痛み、機
から重症、
年齢は18歳超のRA患者で、
主治医の判断に
能障害、疲労、睡眠障害、対処能力、総合的な身体状
よりトシリズマブとステロイドを投 与した症 例とした。
態、総合的な精神状態のスコアを複合して、RAの病態
ステロイド用量はプレドニゾロン換算量で5mg/日超を
を総合的に評価する指標である。安全性については、
全
短くとも3カ月間継続した症例を採択した。
トシリズマブは
有害事象、重篤な有害事象、特定の有害事象、有害事
8mg/kgを4週毎に投与し、
ステロイド用量には特に規定
象による脱落を評価した。特定の有害事象として感染
を設けなかった。
症、心筋梗塞/急性冠症候群、脳卒中、消化管穿孔、悪
ベースライン時に患 者 背 景 及び 合 併 症を調 べ 、
性腫瘍、
アナフィラキシー/過敏症、脱髄疾患、
出血イベ
DMARD、
ステロイド、
NSAID、
トシリズマブ用量を毎月確
ント、
肝障害を評価した。
認した。
有効性の指標として、
疼痛関節数、
腫脹関節数、
赤血球沈降速度
(ESR)
、
C反応性タンパク
(CRP)
、
患者に
トシリズマブ投与により疾患活動性が低下、
ステロイド用量は経時的に低下
よる総合評価
(VAS)
、
患者による疼痛評価
(VAS)
、
医師
本研究には322例が登録されたが、7例はトシリズマブ
による総合評価(VAS)
を毎月評価し、
QOLの指標として
が投与されず、7例は採択基準を満たしていなかった。
図1
患者背景(308例)
*
年齢
(歳)
女性 例数
(%)
骨粗鬆症 例数
(%)
骨折既往 例数
(%)
骨粗鬆症治療薬使用 例数
(%)
* **
RA罹病期間
(年)
リウマトイド因子あるいは抗CP抗体陽性 例数
(%)
びらん性関節炎 例数
(%)
DMARD抵抗性 例数
(%)
RA治療歴
生物学的製剤抵抗性 例数
(%)
DAS28*
≦ 3.2、
n
(%)
3.2∼5.1、n
(%)
> 5.1、
n
(%)
ベースラインのステロイド用量
*
(プレドニゾロン換算量/日)
トシリズマブ初回投与時のステロイド用量
* **
(プレドニゾロン換算量/日)
5∼7.5mg/日、n
(%)
7.5∼10mg/日、n
(%)
> 10mg、
n
(%)
DMARD併用 例数
(%)
MTX併用 例数
(%)
*
MTX用量
(mg/週)
*
HAQ-DI
RAIDスコア*
57 ± 14
240
(78%)
88
(30%)
31/88
(37%)
74/88
(84%)
10 ± 9
8
[3 -15]
250
(82%)
238
(79%)
88
(29%)
216
(70%)
5.1 ± 1.3
22
(7%)
124
(42%)
151
(51%)
12 ± 7
15 ± 25
10
[7.5 -15]
79
(26%)
137
(44%)
92
(30%)
191
(62%)
148
(78%)
17 ± 4
1.6 ± 0.7
6.2 ± 2.0
DAS28-ESRの推移
7.0
6.0
DAS28-ESR
(平均値±SD)
表1
5.0
5.1
4.0
3.5
3.0
3.1
2.9
2.8
2.7
2.8
2.0
1.0
0.0
ベースライン 1
n= 297
274
2
258
3
256
4
239
5
228
6(カ月後)
217
*平均値±SD **中央値
(25∼75パーセンタイル値)
掲載薬剤のご使用にあたっては、各薬剤の添付文書をご参照いただきますようお願いいたします。
EULAR 2013 MADRID
そのため、
安全性解析対象はトシリズマブが1回でも投与
以下となった患者は34%であり、
ステロイドを中止できた
された315例、有効性など他の評価項目の解析対象はト
患者は9%となった
(図3)
。
シリズマブが1回でも投与され、かつ採択基準を満たし
有害事象の発現率は、
全有害事象が48%、
トシリズマブ
た308例となった。
関 連の有 害 事 象が3 0%、特 定の有 害 事 象が2 9%、
308例の背景を表1に示す。年齢57歳、女性比率
トシリズマブ関連の特定の有害事象が18%で、重篤な
78%、
RA罹病期間
(平均値)
10年で、
ステロイド用量
(プレ
有 害 事 象の発 現 率はそれぞれ6%、4%、3%、2%で
ドニゾロン換算量)は>10mg/日が92例(30%)、7.5∼
あった。全有害事象の内訳は、感染症及び寄生虫症が
10mg/日が137例(44%)、5∼7.5mg/日が79例(26%)
31%、
胃腸障害が11%、血液・リンパ系障害が9%、全般
であった。
トシリズマブは117例(38%)でDMARDと併
及び注射部位反応が6%、皮膚及び皮下組織障害が
用せずに単独で投与された。
5%、代 謝 及び 栄 養 障 害 が 4%、呼 吸 器・胸 部 及び
DAS28-ESRはベースラインでは5.1±1.3であったが、
縦隔障害が3%、肝機能値異常が3%、神経障害が3%、
トシリズマブ投与開始後に低下し、6カ月後には2.8±1.5と
免疫障害が1%であった。安全性に関する新たな知見は
なった
(図1)
。DAS28-ESRが低疾患活動性以下を達成
認められなかった。
した患者、寛解を達成した患者の割合はトシリズマブ
投与2カ月後までに増加し、
その効果は6カ月後まで維持
患者の40%が
プレドニゾロン換算量5mg/日以下を達成
された
(図2)
。
また、
CDAIはベースラインの26.9±11.9から
R A 治 療では、寛 解 及び 低 疾 患 活 動 性の達 成と
6カ月後には1 2 . 2±1 0 . 0に、S D A Iは2 8 . 8±1 2 . 5から
ともに、
ステロイドの減量・中止は重要な治療目的である。
12.8±10.0に低下し、
HAQ-DI、
RAIDスコアもトシリズマブ
今回の検討から、実臨床では初めて、
トシリズマブの
投与後に改善した。
ステロイド減量・中止効果がプロスペクティブに確認され、
トシリズマブ投与開始後、
ステロイド用量は経時的に
トシリズマブの6カ月間投与によってRA患者の40%で
低下し、
6カ月後にプレドニゾロン換算量で5mg/日以下と
ステロイド用量をプレドニゾロン換算量5mg/日以下に
なった患者は40%であった。
また、
DMARD用量を増やさ
減らすことができた。
ずにステロイド用量がプレドニゾロン換算量で5mg/日
図2
DAS28-ESR寛解及び低疾患活動性達成率の推移
図3
ステロイド用量の推移
ステロイド用量(プレドニゾロン換算量)
(%)
60
寛解
低疾患活動性
49
50
49
45
38
34
30
33
35
90
46
35
80
35
26
20
30
24
50
0
7
43
ベースライン
1
2
データ欠損例は非達成とした。
3
4
5
6(カ月後)
0
n=
16
28
25
40
10
≦ 5mg/日
5∼7.5mg/日
7.5∼10mg/日
> 10mg/日
14
14
24
21
41
44
26
25
24
21
20
5
17
35
60
30
10
20
70
患者の割合
患者の割合
40
48
(%)
100
26
0
12
ベースライン 1
308
300
21
18
2
303
24
3
303
31
4
303
36
5
303
40
6(カ月後)
303