8月 - JAIF 日本原子力産業協会

海外原子力ニュース
2010年8月号
(社)日本原子力産業協会
情報・コミュニケーション部
海外原子力ニュース
米
――
2010年8月
国 ................................................................................................................................ 1
米NRG社、STP計画への月次支出を削減 ................................................................. 1
USECの遠心分離工場建設、融資保証で改訂申請書提出 ............................................ 1
米規制委、原発のセキュリティ査察で報告..................................................................... 2
TVA、今後の経営方針で原子力に比重 ........................................................................ 2
英
国 ................................................................................................................................ 3
ホライズン社、英国の候補地でサイト固有調査実施へ ................................................... 3
カナダ ................................................................................................................................ 4
NRU炉がRI生産を再開 ............................................................................................. 4
中
国 ................................................................................................................................ 4
三門原子力発電所建設、安全注入系を設置..................................................................... 4
中国の原子炉建設計画
寧徳、咸寧、秦山で進展 .......................................................... 4
陽江1号機で建屋の丸屋根を設置................................................................................... 5
インド ................................................................................................................................ 5
ラジャスタン原発7・8号機の掘削開始 ........................................................................ 5
議会が原賠法案可決、供給業者にも賠償責任 ................................................................. 5
カザフスタン ..................................................................................................................... 6
ウラン生産量が上半期に前年比42%増 ........................................................................ 6
アルメニア ......................................................................................................................... 7
新規炉建設計画で露と協力協定に調印............................................................................ 7
イラン ................................................................................................................................ 7
ブシェール原発燃料を搬入、年内起動へ ........................................................................ 7
エジプト ............................................................................................................................ 8
大統領、建設サイトをエル・ダバに正式決定 ................................................................. 8
オーストラリア・韓国 ....................................................................................................... 9
オーストラリア・バークリー社、スペインのウラン開発で韓国と覚書 ........................... 9
米
国
米NRG社、STP計画への月次支出を削減
東芝や東京電力とともに米テキサス州でサウステキサスプロジェクト(STP)原子力発
電所3、4号機の建設計画を進めているNRG社は8月2日、米政府による同計画への融資
保証適用が遅れていることから、同計画の月次の支出額を大幅に削減すると発表した。
これは同社の2010年の第2.4半期決算報告で明らかにされた。その中で、月額30
00万ドルだったSTP計画への貸付予約を7月1日付けで750万ドルに減額。これに続
いて、8月1日には150万ドルを超えない額に引き下げるとしたもの。ただし、この計画
のための合弁事業体(NINA社)に12%出資している東芝が支出額の負担増に応じたほ
か、他の出資者とも調整を図ることから建設計画全体に大きな影響はなく、当初日程どおり
に進めていくと強調した。
実際、同社は国際協力銀行など日本の政府系金融機関による財政支援について東芝および
東京電力を交えた正式な協議を開始したほか、完成後の原子炉からの電力購入者を確保する
手続きも加速。米原子力規制委員会(NRC)による認可手続きも遅滞なく進んでいるとし
ている。
STP建設計画は当初、地元の公営ガス・電気事業者であるCPS社とNRG社が中心と
なって進めてきたが、建設コストが初期の見積りから大幅に膨らんだのを機に、CPS社は
今年2月、参加規模を7.625%に縮小。その後、5月には東京電力がNINA社株の1
0%を引き受け、同建設プロジェクトの権益の約9%を取得すると発表したが、これには米
エネルギー省(DOE)による融資保証適用が条件となっている。
NRG社では5月中にもDOEが融資保証適用を決定すると見込んでいたが、現時点では
どのタイミングで発表されるか予測が付かないと判断。決定を待つ間、プロジェクト遂行上
さほど重要ではない業務――サイトに残っている不要施設の撤去や追加の資機材調達、ター
ビン機器設備の設計など――を一時中断し、月次の支出を抑えることにしたと説明している。
USECの遠心分離工場建設、融資保証で改訂申請書提出
米国濃縮会社(USEC)は8月3日、建設中の米国遠心分離プラント(ACP)につい
て、再び政府の融資保証プログラムに適用を申請したと発表した。昨年夏に米エネルギー省
(DOE)から最初の申請の取り下げを要請されて以来、指摘されていたいくつかの問題点
解決に取り組み、全面的に改訂した申請書を提出したもの。ACP計画への総投資額は今年
6月末で18億ドルに達しており、USECとしては、何としても政府の融資保証を獲得し
たい考えだ。
USECは2007年にオハイオ州パイクトンで年間生産量3800トンSWUのACP
建設に着手した。08年には、融資保証プログラムの燃料サイクル・フロントエンド枠に割
り当てられた20億ドルの保証を申請したが、DOEは「技術的、財政的な点で商業規模へ
の移行準備ができていない」として同申請の取り下げを要請。採用技術のさらなる研究開発
と実証のため、申請の審査を少なくとも六か月間延期することで双方は合意していた。
今回の申請書でUSECは以下の活動実績を列記。すなわち、
(1)DOEの指摘した技術
的、財政的課題に取り組んだ(2)ACPカスケード用の遠心機(AC100)の数を倍増
することとし、今年中に設置する(3)リード・カスケードの試験プログラムで延べ48万
遠心機・時間以上の稼働実績を達成(4)融資保証を付されて以降、ACP完成までに要す
1
る建設費を28億ドルと試算――などだ。
このように技術面では徹底的な品質保証プログラムの審査を終え、多段階カスケードを構
成する遠心機の組み立てと試験運転で実質的な経験を積んだことを強調。財政面の改善点と
してはプロジェクト・リスクを軽減する一手段として、今年5月に東芝およびバブコック&
ウィルコックス社から三段階・総額2億ドルの出資契約を取り付けたことを明記している。
08年のフロント・エンド用融資保証枠は今年5月、仏アレバ社がアイダホ州で進めてい
る遠心分離濃縮工場計画への提供がすでに決まった。しかしこの時DOEは、07会計年度
に規定した融資保証金の中から追加で20億ドルをウラン濃縮施設建設に提供できると明言。
USECが支援を受ける可能性は残っていると見られている。
米規制委、原発のセキュリティ査察で報告
米原子力規制委員会(NRC)はこのほど、原子力関連施設のセキュリティ査察に関する
2009年(暦年)年次報告書の公開版を公表し、米国内の商業用原子力発電所ではセキュ
リティ上、深刻な問題がなかったことを明らかにした。
同報告書はエネルギー政策法に基づいて議会提出用にまとめられているもので、09年版
は五回目の作成。原子力施設における模擬戦闘訓練(FOF)を含めた査察プログラムと成
果の概要を記載している。
それによると、NRCは昨年1月~12月末までに国内の商業用原子力発電所で合計17
9回のセキュリティ査察を実施。これらの結果分析により180件の知見が得られたが、こ
のうち168件(全体の94%)についてはセキュリティ上の深刻さは非常に低かった。ま
た、12件については低~中程度の深刻さだったとしている。
全査察のうち23回は、国内22の原子力発電所で行われたFOF査察。NRCの模擬敵
対部隊が原子炉炉心や使用済み燃料プールなど、発電所の安全上重要な機器設備をターゲッ
トに設定し、これらへの到達と破壊をシミュレートするプログラムで、応戦する事業者部隊
との間で実戦さながらの模擬戦闘が繰り広げられる。
事業者側には事前に査察の実施が通達されるが、これは発電所の実際のセキュリティ維持
を担当する職員と模擬戦闘に参加する職員の配置調整に十分な時間を与えるため。攻撃シナ
リオは事業者側の防衛戦略に内在する欠陥が探り出せるよう組み立てられており、ターゲッ
ト機器の模擬破壊等により、事業者側が高いレベルのセキュリティを実証できなかった場合
は、NRCチームが発電所を離れる前に適切な補償対策を施すことになっている。
09年実績では、23回中三回のFOF査察でターゲット機器が模擬破壊されるに至った
一方、合計29件の知見が得られたとしている。
TVA、今後の経営方針で原子力に比重
米国のテネシー峡谷開発公社(TVA)の理事会は8月20日、同社の今後20年間の経
営方針となる「将来ビジョン」を採択し、温室効果ガスの排出削減とエネルギー効率改善の
観点から、原子力への比重を一層高めていくことを決定した。
同社のT・キルゴア最高経営責任者によると、TVAの基本使命は変わらない一方、時代
の経過とともにエネルギー産業界に要求される事項も変化する。一層クリーンなエネルギー
社会の実現に向けて米国をリードするTVAとしては、石炭火力への依存を軽減する傍ら、
原子力発電の比重を高めて大気の質を改善。エネルギーの効率化と温室効果ガスの削減に努
めていくとしている。
2
こうしたビジョンを実行に導く「総合資源計画」については、9月中に案文を公表し、パ
ブコメに付す計画。来年春には最終決定することになる。
TVA理事会はまた、同じ日に2011会計年度の予算案を承認。ここでは、アラバマ州
北部のベルフォンテ原子力発電所サイトに新たな原子炉を建設するオプション維持のための
2億4800万ドルを計上した。
同サイトでは70年代に1、2号機が建設されていたが、電力需要の低迷に伴い88年に
作業は中止。07年には新たな許認可システムの実用性評価のため、3、4号機(各AP1
000)の建設・運転一括認可(COL)を申請したが、1、2号機の敷地の活用オプショ
ンとして、新たにAP1000を一基、建設する案も含まれている。TVAが実施した今後
の電力需要に関する調査では、2020年までに新たな発電設備が必要との結果も出ている
ことから、同社は来年にもこの件について最終判断を下す考えだ。
なお、08年1月に建設工事を再開したテネシー州のワッツバー2号機に関しては、6億
3500万ドルを計上。2013年の完成を目指して作業を進めていく。
英
国
ホライズン社、英国の候補地でサイト固有調査実施へ
英国で新規原子炉の建設を計画しているホライズン・ニュークリア社は8月2日、ウェー
ルズ地方北部のウィルファ建設候補地で準備調査を行うため、仏アレバ社、およびウェスチ
ングハウス(WH)社が率いる企業連合(NPDUK社)の両方と契約を結んだ。
同建設計画で候補となっている欧州加圧水型炉(EPR)、あるいはAP1000を採用し
た場合の、サイト固有の発電所設計について調査するのが目的で、年末までの期間に実施す
る計画だ。ホライズン社はドイツのRWE社とE・ON社による合弁事業体だが、この作業
と並行して原子炉設計に関する競争入札に関しても年末までに結果を出す考え。候補の原子
炉設計それぞれについて準備調査を実施しておくことにより、2020年の完成を目指す同
計画での認可手続きが円滑に進むと期待している。
現在英国では、政府の保健安全執行部(HSE)がEPRとAP1000の二設計につい
て、事前設計認可の一種である包括的設計審査(GDA)を実施中。EPRに関しては計装
制御(I&C)系の安全性について、AP1000では遮へい建屋による安全系の防護性能
について問題提起するなど、アレバ社とWH社双方に対して追加の実証文書提出を要求して
いるが、来年夏までには正式認証前の手続きを完了すると見られている。
今回の契約締結について、アレバ社およびNPDUK社は一様に歓迎。アレバ社は、ホラ
イズン社がグローセスターシャー地方に用地確保したオールドベリーでもEPRの納入が見
込めるとし、ホライズン社の本拠地であるグローセスターにプロジェクト事務所を開所した。
WH社を筆頭にショー・グループ、東芝などで構成されるNPDUK社は、AP1000が
すでに中国でスケジュールどおり順調に建設中である点を強調。建設工期と予算の部分を武
器にアピールしていきたいと述べた。
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カナダ
NRU炉がRI生産を再開
カナダ原子力公社(AECL)のチョークリバー研究所内にあるNRU炉は8月17日、
約15か月間の修理作業を終えて運転に復帰、同時にモリブデン99を含む医療用放射性同
位体(RI)の生産も再開した。
運開後50年以上が経過した同炉は、昨年5月に容器底部から重水漏れが検出された。溶
接に特殊な技術を要したため、修理作業は数回にわたり延長。専門の外部アドバイザーから
助言を得つつ作業にあたり、今後も信頼性の高い運転が可能になったとしている。
同炉の運転サイクルは5日間の計画停止を含めて28日間。計画停止では通常の保守点検
作業を実施する。ただし、運転再開直後は約2日間、停止し、運転再開用に装着した特殊機
器の取り外しと復帰後試験を実施。この間もRI生産は継続することになる。
また、来春には計画停止期間を延長、通常よりも広範囲な保守点検を行う予定である。
中
国
三門原子力発電所建設、安全注入系を設置
中国国家核電技術公司(SNPTC)は8月6日、浙江省で建設中の三門原子力発電所で
1号機の安全注入タンクを設置したと発表した。世界で初のAP1000となる同炉の建設
計画も、いよいよ主要機器の本格的な設置段階に入った。
AP1000の受動型安全システムでは、ポンプなどの外部動力を使わずに重力などの自
然の法則を利用。設置された炭素鋼製の安全注入タンクはステンレス鋼で内張りされており、
重さは38トン、球形で56立方㍍の容積がある。内部にはホウ酸溶液のほかに高圧の窒素
ガスが駆動源として蓄えられ、冷却系の圧力が安全注入系の圧力を下回った場合に空気圧に
よってバルブが開き、ホウ酸水を炉心に注入する仕組みだ。
SNPTCは新世代の原子炉技術開発のために設立された機関で、AP1000のような
第三世代原子炉の技術習得に加えて、圧力容器や格納容器、機器モジュールなどの国内生産
を目指している。三門発電所の二基のほかに、山東省の海陽発電所でもAP1000を建設
中で、いずれは同設計をベースに大型化したCAP1400を設計、建設、運転する計画と
なっている。
中国の原子炉建設計画
寧徳、咸寧、秦山で進展
中国の新規原子力発電所プロジェクトが各地で目覚ましい進展を見せている。
08年11月から福建省で始まった寧徳原子力発電所2号機(108.7万kW)の建設
計画で、8月8日に原子炉建屋のドーム屋根が設置された。これにより、同炉の建設も土木
工事段階のピークを迎えた。同サイトでは仏国の技術をベースに国産化を進めているPWR
(CPR1000)を二基建設中。1、2号機の初臨界はそれぞれ、2012年と13年に
予定されている。
8月7日には中国第一重型機械集団公司(CFHI)が、内陸部初のAP1000建設サ
イトとなる湖北省咸寧原子力発電所用に圧力容器の鍛造を8月4日に開始したと発表した。
CFHIは重機械の鍛造や構成機器製造を専門とする企業。国家発展改革委員会から10
4
0万kW級PWRの機器メーカーに指定され、ウェスチングハウス(WH)社や韓国・斗山
重工からの技術移転を受けて、中国のAP1000用機器製造に力を入れているという。
咸寧発電所計画については今年2月、国営新華社を含む複数の中国メディアが、江西省の
彭澤計画および湖南省の桃花江計画とともにWH社製AP1000の採用が決定し、初期設
計を実施すると報じていた。圧力容器の鍛造開始は中国広東核電集団有限公司(CGNPC)
も8月10日付けで公表していることから、今後、第三世代炉の技術開発専門機関である中
国国家核電技術公司(SNPTC)が中心となって計画を進めていくと見られている。
なお、浙江省では、秦山原子力発電所二期工事の3号機が8月1日付けで中国東部の送電
網に接続された。これは中国核工業集団公司が発表したもので、すでに7月13日に初臨界
を達成していた。同炉は中国が自主開発した60万kW級PWRであるCNP600で、来
年にも定格出力で営業運転を開始する。
陽江1号機で建屋の丸屋根を設置
中国広東核電集団有限公司(CGNPC)は8月30日、広東省の陽江原子力発電所建設
サイトで、1号機用原子炉建屋に重さ146トンのドーム屋根を設置した。
同発電所の建設計画は2008年11月、中国の第11次五か年計画における重要なエネ
ルギー建設プロジェクトと認定され、翌12月から土木建設工事が始まった。仏国のPWR
技術をベースに国産化を進めている100万kW級CPR1000を合計六基建設する計画
で、すでにこれらのすべてが着工済みだ。
1、2号機の工期は56か月、3~6号機は54か月を予定していることから、2013
年に1号機を完成させたあと、17年までに六基すべてが完成することになっている。
インド
ラジャスタン原発7・8号機の掘削開始
インド原子力発電公社(NPCIL)は8月19日、インド中央部のラジャスタン原子力
発電所サイトで、70万kWの加圧重水炉(PHWR)となる7、8号機(RAPP)の基
礎掘削を開始した。
同国政府は昨年10月、四基の70万kW級PHWR、すなわちRAPP7、8号機およ
びカクラパー原子力発電所3、4号機(KAPP)の建設計画に対して行政許可と財政認可
を発給。KAPP3、4号機についてはすでに掘削工事が完了しており、コンクリート打設
の許可が下りるのを待っている段階だ。
RAPP7、8のコンクリート打設は、掘削工事完了後、今年の12月に実施する計画。
両機の完成コストは1232億ルピー(約2217億円)と試算し、営業運転の開始時期は
それぞれ、2016年6月と12月を予定している。
インドでは現在、19基・456万kWが稼働中であるほか、カイガ4号機(PHWR、
22万kW)とクダンクラム1、2号機(各ロシア型PWR、100万kW)の建設工事が
最終段階に入っている。
議会が原賠法案可決、供給業者にも賠償責任
インド議会では8月25日、下院が賠償金額の上限を150億ルピーに引き上げるなどの
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条項を盛り込んだ原子力損害賠償に関する民事責任法案を可決、これに続き30日には上院
も同法案を可決した。
原賠法は、透明性と予見可能性の高い賠償責任体制下で諸外国の原子力企業がインドの原
子力市場に参入するには不可欠の条件。しかし現在、欧米諸国の関連法がすべて、原子力事
業者に対してのみ賠償措置を義務付けているのに対し、インドの法案は原子炉機器供給業者
も賠償責任を問われる可能性がある。このため、諸外国がインド市場への参入に二の足を踏
むことも考えられ、手放しに歓迎とは言い難い状況だ。
同法案の修正を勧告したのは議会の科学技術・環境・森林常任委員会。インド国民の利益
を最大限に反映したものとなるよう、関係閣僚だけでなく一般からの意見も聴取して審査し
た。その結果、原案の第六条で50億ルピーと明記されていた事業者の賠償上限は150億
ルピーに引き上げられた。
カザフスタン
ウラン生産量が上半期に前年比42%増
カザフスタンの国営資源企業であるカザトムプロム社は8月9日、今年6月末までの上半
期のウラン生産量が前年同期比42%増の8452トンとなったことを明らかにした。下半
期の改訂計画ではさらに9770トンを生産するとしており、今年の年間生産量は合計1万
8222トンに達する見通しだ。
同国は昨年実績(速報値で1万3900トン)で初めて、カナダを抜いて世界第一位とな
った。ウラン市場調査会社のUXCによると、同国はウラン精鉱(U3O8)換算の生産量
でも10年前に年間500万ポンド以下だったのが現在は4000万ポンドを超えるなど、
前例のないペースで事業規模を拡大中。今年は年末までに世界の三分の一以上生産すること
が目標と伝えているが、市場価格への影響も大きいため、拡大路線をどこまで継続していく
かは未知数だ。
カザフでは上半期に、新たに次のような施設が稼働を開始した。すなわち、カメコ社との
合弁事業であるインカイJVの産業コンビナートや、ウラニウム・ワン社との合弁事業であ
るカラタウJVの原位置抽出法パイロット生産施設など。このような背景による生産量拡大
で、同社の収益は前年同期から58%アップし、1056億8700万テンゲ(約615億
円)に到達した。純益も前年度から64%増の194億1400万テンゲ(約113億円)
に拡大したとしている。
上半期はまた、ウルバ冶金工場(UMP)で再転換した二酸化ウラン粉末を、日本の原子
燃料工業が正式に認証。これは07年に両社が住友商事とともに調印した協力意向確認書に
基づくもので、これによりUMPの技術能力が確認された。
今年3月には日本とカザフスタンの政府が原子力協力協定を締結し、発効待ちの段階にあ
ることから、UMPは今後、日本の原発用燃料集合体の実質的な製造に向けてプロジェクト
を開始する。
6
アルメニア
新規炉建設計画で露と協力協定に調印
ロシアの原子力総合企業であるロスアトム社は8月20日、アルメニアの新たな原子力発
電所建設計画でロシアが協力するため、二国間協定に調印したと発表した。
これはロシアのD・メドベージェフ大統領がアルメニアを公式訪問した際、両国間のその
他の協力文書とともに結ばれたもの。署名はロスアトム社のS・キリエンコ総裁とアルメニ
ア・エネルギー・天然資源省のA・モブシッシャン大臣が行った。
この協定により、ロシアはアルメニアに運転寿命60年の100万kW級PWRであるV
VER1000(一基以上)と新燃料を供給する。両国の合弁事業体として設立される「Z
AOメザモールエネルゴアトム社」は、総合請負業者となるロスアトム社傘下のアトムスト
ロイエクスポルト(ASE)社とともに発電所を建設。同発電所を所有・運転することにな
る。
キリエンコ総裁の説明によると、ロシア側は同発電所建設費の20%以上を出資。ZAO
社としては少なくとも40%の建設費を保証し、残りの60%は外部から投資を募る。また、
アルメニア側は新原発の発電電力をZAO社から20年にわたって購入し、ロシア側の投資
額を返却するのが条件だ。ロシアは同様の「建設・所有・運転」方式をトルコのアックユ原
子力発電所建設計画でも適用しており、今後もこの方式で国外の建設計画で資金調達を支援
しつつ、市場を拡大していく方針と見られている。
アルメニアではかつて、メザモール原子力発電所で出力40.8万kWのVVER440
が二基稼働していたが、1988年の大地震の影響で、翌年、両機とも閉鎖された。その後、
95年に2号機のみが運転を再開し、同国の総電力需要の45%を賄っている。同炉が20
16年に閉鎖予定であることから、代替電源の確保が必要となっている。
イラン
ブシェール原発燃料を搬入、年内起動へ
ロシアの原子力総合企業であるロスアトム社は8月21日、国際原子力機関(IAEA)
の査察官による監視の下で、イランのブシェール原子力発電所建屋内に初装荷燃料を搬入し
たと発表した。同炉では昨年2月末にダミー燃料を使った通水試験など起動準備段階に入っ
ていたが、ウラン濃縮施設建設を巡る核兵器開発疑惑などにより、ロシアが2007に納入
した新燃料はIAEAが封印していた。イランはすでに同炉からの使用済み燃料をロシアに
返還することを約束。米国務省も今月17日、同発電所は平和利用目的であり濃縮活動とは
無関係との考えを表明したことなどから、同炉の起動につながったと見られている。同炉は
今後、年末までに発電段階に入る計画だが、イラン側では同炉への十分な燃料供給を将来的
に確保していくためにも、国内の濃縮施設開発は継続する方針だ。
同発電所の建設は1974年に独シーメンス社が開始。しかし、80年のイラン革命に続
く米国の機器禁輸措置に合わせ、同社は契約をキャンセルしている。イランは92年にロシ
ア政府と原子力平和利用協定に調印した後、95年~98年にかけてロスアトム社傘下のア
トムストロイエクスポルト(ASE)社と、100万kWの同発電所をターンキーで完成さ
せる契約を締結した。36年に及んだ同プロジェクトの経費は45億ドルに上ったとしてい
7
る。
163体の燃料集合体の搬入記念式典にはイラン原子力庁(AEOI)のA・サレヒ長官
やロスアトム社のS・キリエンコ総裁が出席。ブシェール発電所ですべてのシステムの試験
段階が完了し、実質的な起動に向けた作業が開始されたことから、原子力平和利用における
両国の協力関係も新たな段階に入ったと宣言している。
また、現地の政府系通信によると両国は同日、三種類の了解覚書(MOU)に調印してお
り、同発電所の安全操業を期するための合弁事業体設立などで合意。サレヒ長官は新たに十
のウラン濃縮工場建設に適したサイト探しを実施中であると述べ、大統領命令が出され次第、
来年3月にはそのうちの一か所で着工する可能性を明らかにした。
同長官はまた、独自の濃縮工場開発活動は、ロシアと結んだブシェール発電所向け燃料供
給協定とは矛盾しないとの見解を提示。同発電所の運転寿命が40年~60年であることか
ら、ロシアが約束を厳守したとしても不足分を補う方法が必要だ。すべての燃料を国内生産
したいわけではなく、IAEAによる燃料提供も要請しているが、提供条件がイランの希望
と一致していないため、今後も必要な限り国内での濃縮を継続するとの意向を表明している。
エジプト
大統領、建設サイトをエル・ダバに正式決定
エジプトのH・ムバラク大統領は8月25日、地中海に面した西部のエル・ダバを同国初
の原子力発電所建設サイトとして正式決定するとともに、今年末までに国際入札の準備を整
えるなど、2019年の完成を目指した同建設計画の開始を指示した。同国は人口増加に伴
う電力需要拡大への対処や生活水準の向上を目指して、原子力の導入を検討していたが、チ
ェルノブイリ事故後に一時中断。同プログラムへの着手を07年10月に正式に公表して以
来、計画はようやく本格的な動きを見せ始めた。
エジプトは20年以上前から第一陣の商業用原子力発電所としてエル・ダバに100万k
W級PWRを二基建設する計画を掲げていたが、最終的なサイトの選択に当たっては様々な
議論があった。07年11月に国際原子力機関(IAEA)が派遣した専門家は、エル・ダ
バが原子炉の設置に最も適すると評価。また、昨年夏には電力エネルギー省が、エル・ダバ
を含む複数の候補地の中で同地がベストな選択となり得るか否かの詳細な調査を実施した。
これら複数の調査結果に基づき、同地は観光事業への影響を考慮しても理想的なサイトとの
結論に達したとしている。
今回の決定は、電力エネルギー大臣や財務大臣、貿易産業大臣を含む関係閣僚らとの2時
間半におよんだ会合の中で大統領が下した。この会合の中で大統領は、年末までに踏むべき
手順として、入札準備のほかに次のような点が重要だと指摘した。すなわち、3月に議会が
承認した原子力および放射線関連活動の規制法に基づき、電力省とは独立の立場で原子力発
電所の建設や操業、および高いレベルの安全基準遵守を監視するための原子力安全当局を設
置すること、原子力関係人材の養成プログラムをIAEAなどとの協力により迅速かつ効率
的に進めること――などだ。
同会合ではまた、財務大臣が原子力発電所建設費の資金調達に関していくつかのオプショ
ンを提示。国が全額負担するのか、その他との混合方式とするのかなどについて、大統領は
今後、定期会合を開いて検討するとしている。建設費は100万kW級原子炉一基あたりで
8
15億~40億ドルと試算したと見られている。
国際入札の手配については、政府が昨年6月、豪州のウォーリー・パーソンズ社に同建設
計画のコンサルティングを依頼していることから、同社が行うことになると電力エネルギー
相が明言。今後の業務は二段階に分かれるとしており、建設サイトの選定後は、原子炉設計
の仕様や技術的および財政的な評価に3年半をかける。これに続く第二段階では、建設サイ
トでのその後の業務や試運転、および国内送電網への接続などで5年半を想定している。
同相はまた、原子力発電所での平和利用目的に限定したウラン鉱石の生産について、同国
の核燃料当局が仏国やロシア、中国の専門家の支援を得て、経済性評価のための現地調査を
マルサ・アラムその他の鉱山で実施する計画を明らかにしている。
オーストラリア・韓国
オーストラリア・バークリー社、スペインのウラン開発で韓国と覚書
豪州のウラン探鉱開発企業であるバークリー・リソーシズ社は、スペイン西部で進めてい
るサラマンカ・ウラン鉱山開発プロジェクトで韓国電力(KEPCO)から財務支援を受け
るため、同社と拘束力のない了解覚書(MOU)を締結したことが8月10日、明らかにな
った。サラマンカ鉱山はアグイラ、アラメダ、ヴィヤールおよびレトルティージョなど、ス
ペイン政府所有の四鉱区で構成されるが、バークリー社はその権益の90%以上を取得する
権利を持つ。昨年、18か月かけて行った実行可能性調査によると、U3O8換算で合計7
000万ポンド以上の有望な鉱床が確認されたという。
この鉱山を2012年末までに操業可能とするため、バークリー社はKEPCOに35%
の権益を提供するのと引き替えに7000万ドルの投資を受ける。一方、KEPCOは同社
の取締役会に代表者を送り込むほか、同鉱山で産出されるU3O8の35%を標準価格で購
入することが可能となる。
KEPCOは韓国で20基の原子炉を操業するとともに、現在新たに六基を建設中。同社
の長期的なウラン燃料確保戦略とバークリー社の鉱山開発戦略の双方に利益がもたらされる
計画だ。
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