研究機関近況 - 福岡大学

研究機関近況
分子腫瘍学センター
活動報告!
成人T細胞白血病(ATL)の細胞療法の開発
分子腫瘍学センター研究スタッフ
はじめに
福岡大学病院・講師
木
村
暢
宏
を検討し特異的 Vβ/Vα レパートリーを認識で
HTLV−1ウイルスがT細胞に感染し腫瘍化
した ATL 細胞は、これまでの化学療法では予
き た(図1)
。一 部 で Vβ/Vα の 一 方 で ATL ク
0−6。
ローンを認識できた。MRD の感度は1
0−4∼1
後不良であり治癒を望めない。近年アロ造血幹
細胞移植による寛解例の報告が散見される。ミ
2.造血幹細胞移植後の微少残存病変(mini-
ニ移植療法は一種の細胞療法である。この移植
mum residual disease, MRD)
前後の症例を材料に HTLV−1をターゲットと
MRD 解 析 結 果 は 臨 床 状 態(再 発・CyA 減
した免疫機構を解析すれば細胞療法の道を開発
量・急性 GVHD)と相関し、MRD 追跡の最良
することとなる。
の方法と思われた。ミニ移植後の完全寛解で
。
ATL クローンは1
0−4以下であった(図2、図3)
研究概要
1.T細胞抗原受容体(T-cell receptor, TCR)
3.ミニ移植療法が免疫療法であること
移植後1
4日にも数%レベルで腫瘍クローンは
遺伝子からの ATL クローン認識
我々の開発した簡略 TCR 解析法にて、症例
存在しその後消失。移植後皮膚再発例で免疫抑
図1.ATL 症例の TCR V レパートリー
―1
3―
図2.ATL ミニ移植後の MRD
図3.症例1
4の ATL クローン分子生物学的寛解
制剤 CyA 減量・中止による再発腫瘍の消失。
1
1−1
9ペプタイドが CTL のターゲットとなる
この事は、明らかにミニ移植療法が免疫療法で
事が知られている。この CTL の TCR 解析を行
あることを示す。
い、CTL がオリゴクローンでいることが判明
4.HTLV−1の tax1
1−1
9ペ プ タ イ ド 特 異 的
し、特異的プライマーを作成した。RT−PCR
HLA−A2拘束性 CTL(cytotoxic T lympho-
による検討では HTLA−A2患者の急性型、慢
cyte)の TCR 解析
性型、くすぶり型の殆どに、診断時、化学療法
した。高頻度出現の TCR クローンを sequence
TLA−A2患者では、HTLV−1のなかで tax
後にも CTL が存在した。
―1
4―
図4.HLA−A2症例における移植後末梢血中の tax11−1
9ペプタイド特異的 CTL クローンの出現
5.ミニ移植例と HLA−A2拘束性 CTL
positive acute myelogenous leukemia. Br J Hae-
急性 GVHD 発症後完全寛解(CR)となった
matol 111 (2): 570-579, 2000.
1例を経験した。この時期 tax 特異的 CTL ク
Kimura N, et al. Effect of chemotherapy and stem
ローンが増加していた。GVL(Graft versus Leu-
cell transplantation in familial hemophagocytic
kemia)効果として、tax 特異的 CTL クローン
lymphohistiocytosis analyzed by T-cell repertoire.
が働いている可能性が示唆された(図4)
。MRD
Br J Haematol 113 (3): 822-831, 2001.
と CTL の分子生物学的検討は、ミニ移植や細
Okamura J, Utsunomiya A, Tanosaki R, Uike N,
胞療法などの免疫療法・ワクチン療法の効果判
Sonoda S, Kannagi M, Tomonaga M, Harada M,
定に重要なモニターとなる。
Kimura N, et al. Allogeneic stem cell transplantation with reduced conditioning intensity as a
おわりに
novel immunotherapy and antiviral therapy for
ATL クローンの TCR からの MRD 追跡法は
有用で、臨床状態と相関した。また、MRD と
CTL の分子生物学的検討は、ミニ移植や tax ペ
プタイドパルス樹状細胞を用いたワクチン療法
の効果判定に重要なモニターとなる。今後予定
される合成ペプタイドと樹状細胞療法を臨床の
どの時期、どの症例に行うか。このミニ移植の
結果分析により、よりよい効果的な免疫療法の
開発が期待される。今後の治療戦略に大いに役
立つものと思われる。
参考文献
Nagano M, Kimura N, et al. Clonal expansion of α
β-T lymphocytes with inverted J β bias in familial
hemophagocytic lymphohistiocytosis. Blood 94
(7): 2374-2382, 1999.
Maeda M, Otsuka T, Kimura N, et al. Induction of
MTG8 specific cytotoxic T-cell lines: MTG8 is
probably a tumour antigen that is recognized by
cytotoxic T cells in AML 1-MTG8-fused gene-
―1
5―
adult T-cell leukemia/lymphoma. Blood (in press)
研究機関近況
分子腫瘍学センター
活動報告!
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)の
表現型遺伝子解析:ケモカイン受容体発現に基づく
末梢性 T 細胞リンパ腫の再分類
分子腫瘍学センター研究スタッフ
はじめに
医学部助教授
大
島
孝
一
れ選択的に発現していることが判明している。
新 WHO 分類1)が提唱され、末梢性B細胞性
以上のことを踏まえ、Th1と Th2に関する
リンパ腫は、発生母体、分化段階を考慮して整
ケモカイン、その受容体、その他の活性化因子
理分類されているが、末梢性 T/NK 細胞性リン
をパラフィン包埋材料で染色することで、特に
パ腫は、Peripheral T-cell lymphoma, unspecified
Peripheral T-cell lymphoma, unspecified(PTCL-
(PTCL-U)の病型が示すように、まだ途上の
U)が再分類できないか検討を行った。
段階である。今回、ケモカイン受容体発現を検
免疫染色の抗体として、Th1細胞関連のケ
索することで、T/NK リンパ腫を再分類できる
モ カ イ ン 受 容 体 CXCR3,CCR5、Th2細 胞 関
可能性があるので紹介する。
連マーカー(ST2
(L)
)および活性化T細胞マー
3
4)を使用し、予後との関連
カー(OX4
0/CD1
研究概要
を 調 べ た。更 に、比 較 の た め、ATLL、ALCL、
1)頻度、予後
AILD およびリンパ芽球性リンパ腫(LBL)に
当教室の悪性リンパ腫の頻度予後を示す。
9
3
3
ついても同様のことを確認した。発現の傾向と
例を分類するとB細胞性が5
0%、T/NK 細胞性
して、AILD では、OX4
0陽性、CXCR3陽性、ST
が4
2%、ホジキンリンパ腫が4%で、予後は、
2
(L)
陰性の傾向にあり、ALCL では、OX4
0陰
ホジキンリンパ腫がよく、B細胞性リンパ腫が
性、CCR5陽性、ST2
(L)
陽性の傾向にあり、LBL
中間に位置し、T/NK 細胞性リンパ腫は不良で
では、すべてに陰性で、ATLL および PTCL-U
ある。
では、はっきりした傾向はみられなかった。
予後との関係としては、PTCL-U を Group!
2)Th1,Th2関連マーカーに基づく末梢性
(CXCR3
(+)
and/or
T細胞リンパ腫の再分類の可能性
ケモカインの受容体は、これまでに1
8種が同
CCR5
(+)
and/or
ST2
(L)
(+)
)
と Group"(CXCR3
(−)
and CCR5
(−)
and
定されており、リンパ球の再循環や生理的ホー
ST2
(L)
(−)
)
に 分 類 す る と Group!の 方 が
ミング、免疫応答におけるケモカインシステム
Group"よ り 有 意 に 予 後 が よ か っ た(P<
の重要性が明らかになっている。またT細胞の
0.
0
0
0
1)
。
系統、成熟段階、機能的分化などにしたがって
3)ケモカイン、ケモカイン受容体、サイトカ
多くのサブセットに分類されるが、それぞれの
イン DNA マイクロアレイによる末梢性T細胞
サブセットにおいて特定のケモカイン受容体が
性リンパ腫の分類
我々は、約7
0種類のケモカイン、ケモカイン
選択的に発現していることが明らかとなってい
る。た と え ば、Th1細 胞 は CCR5、CXCR3を、
受容体、サイトカインの乗った DNA マイクロ
Th2細胞は CCR3、CCR4、CCR8などをそれぞ
アレイを使用し、末梢性T細胞、特に PTCL-U
―1
6―
を予後に関して再分類できないか、検索をして
おわりに
きた。一部であるが、再分類でき可能性があり、
今後は、DNA マイクロアレイを使用し臨床
ここで紹介したい。数例ずつではあるが、AILD,
状態、治療効果を含めた悪性リンパ腫の分類が
ALCL, ATLL, NK リンパ腫、PTCL-U をこれら
提唱されるものと思われる。
のマイクロアレイに載せたところ、AILD, ALCL,
ATLL, NK リンパ腫は集団化する傾向にあり、
参考文献
PTCL-U は、ATLL, ALCL, AILD の中に数例ず
1)Ohshima K Suzumiya J, and Kikuchi M.The
つ紛れ込むことこが分かった。そのことより、
World Health Organization classification of ma-
PTCL-U は ATLL,ALCL,AILD に 近 い ケ モ カ イ
lignant lymphoma: incidence and clinical progno-
ン及びその受容体の発現をもつ可能性を考え、
sis in HTLV-1-endenmic area of Fukuoka. Pathol
遺伝子の絞込み、および免疫染色に的した抗体
Int 52:1-12 (2002)
を 検 索 し た と こ ろ、ATLL は CCR4に、ALCL
2)Tsuchiya T, Ohshima K, Karube K, Yamaguchi
は CCR3に、NK リ ン パ 腫 は MIG に、AILD は
T, Suefuji H, Hamasaki M, Kawasaki C, Suzu-
CXCR3もしくは BLC によく染色されることが
miya J, Tomonaga M, Kikuchi M. Th 1, Th 2 and
分かった。また、PTCL-U1
3
4例を免疫染色した
activated T-cell marker, and clinical prognosis in
と こ ろ、CCR4陽 性 群(ATLL 型)
、CCR3陽 性
peripheral T-cell lymphoma, unspecified. Com-
群(ALCL 型)、CXCR4/BLC 陽性群(AILD 型)
parison with AILD, ALCL, lymphoblastic lym-
の3群に分けら、それらの3群は、ATLL, ALCL,
phoma and ATLL.. Blood 103, 236-241 (2004)
AILD と相関する予後曲線をとることが分かっ
3)Ohshima K, Karube K, Kawano R Tsuchiya T,
てきた。(図1)
Suefuji H, Yamaguchi T, Suzumiya J, Kikuchi M.
Classification of distinct subtypes of peripheral Tcell
lymphoma
unspecified,
identified
by
chemokine and chemokine receptor expression.
Analysis of prognosis. Int J Oncol 25: 605-613
(2004)
図1、ケモカイン,受容体 DNA マイクロアレイによ
る末梢性T細胞(PTCL-U)の分類。非特異的
末梢性 T 細胞性リンパ腫(PTCL-U)は、CCR
4陽 性 群(ATLL 型)、CCR3陽 性 群(ALCL 型)
、
CXCR4/BLC 陽性群(AILD 型)の3群 に 分 か
れ、それらの3群は、ATLL, ALCL, AILD と相
関する予後曲線をとる。
―1
7―
研究機関近況
資源循環・環境制御システム研究所
制御型低強度材料としての焼却灰の適用に関する研究
資源循環・環境制御システム研究所
工学部助教授
1.はじめに
添
田
政
司
検討した。
一般廃棄物を焼却処理に伴い発生する焼却灰
は、年々増加傾向にあり、焼却灰中には重金属
2.実験概要
が含まれているため、その処理・処分に規制が
2.
1
使用材料
かけられている。また、廃棄物の埋立処分に対
結合材として普通ポルトランドセメント(密
する環境保全の面から埋立地の建設や確保が非
度:3.
1
6&/$、略号:C)
、混和材として高
常に困難な状況になっている。このため、埋立
炉スラグ微粉末(密度:2.
9
1&/$、比表面積
地の延命化対策と廃棄物の有効利用の観点から、 3
9
5
0#/&、略号:BS)
、細骨材として海砂お
埋立廃棄物の中で大きな割合を占めている焼却
よび焼却灰A、B(略号:S)を使用した。焼
灰の再利用化を図る必要がある。
却灰A、Bはそれぞれ加工を全くしない未加工
そこで本研究では、米国の ACI2
2
9委員会で
のもの(以下:未加工A、未加工B)と粉砕加
「材齢2
8日の圧縮強度が8.
3N/"以下になる
工したもの(以下:粉砕A、粉砕B)の2種類
ように制御されたセメント系スラリー材料」と
を用いた。なお、粉砕加工は、風力式粉砕装置
定義されている制御型低強度材料(CLSM)に
を用いた。混和剤として高性能 AE 減水剤(ポ
着目した。この材料の主な特徴は流動性および
リカルボン酸系、略号:SP)および起泡剤(略
自己充てん性を有しており打設が容易で施工の
号:FF)を使用した。また、細骨材の代替材
省力化が可能である。また、自己硬化性を持ち、
として、JIS!種フライアッシュ(細粉、略号:
施工後の沈下が少ない等が挙げられる。この材
FA)および JIS 規格外のフライアッシュ(原粉、
料の特性を生かし、焼却灰の有効利用を目的と
略号 NFA)を使用した。
して、制御型低強度材料として焼却灰を利用し、
石炭灰を代替材として用いた場合のフレッシュ
2.
2
性状および圧縮強度などの基礎的性状について
表−1
種
類
石炭灰
基本(海砂) 無混和
海砂
細粉(FA)
未加工A 細粉(FA)
焼 未加工B 細粉(FA)
却
灰 粉砕A 細粉(FA)
粉砕B 細粉(FA)
表−1に配合の一例を示す。水結合材比は全
配合の一例
BS 置換率 W/B 空気量 FA 置換率
(%) (%) (%) (%)
0
9
0
9
0
9
0
9
0
9
0
7
0 3
0±2
7
0
7
0
70 3
0±2
7
0
70
配合
−
50
50
5
0
5
0
50
―1
8―
単位量('/%)
SP
FF
B
W
S
FA (B×%)
(B×%)
C BS
21
23
03 0 10
1
6 −
1.
5
0.
7
5
19
73
0 25
1 52
7 49
1 1.
2
0.
75
19
7 30 2
5
1 368 4
91 1.
5
0.
7
5
19
7 30 2
51 3
6
2 49
1 1.
5
0.
75
197 3
02
51 4
46 4
91 1.
5
0.
75
1
97 3
0 25
14
32 4
9
1 1.
2
0.
7
5
図−2
図−1
BS 置換率の流動性(海砂)
配合選定のフロー
配合とも7
0%とした。目標空気量は、流動性が
増加し、材料分離や圧縮強度の増加を抑制させ
図−3 FA 置換率検討の流動性(未加工A)
るため、目標空気量を起泡剤を使用して、3
0±
2%に設定した。配合選定のフローを図−1に
て行った。塩化物イオン量測定は、JCI−SC4
示す。
の「硬化コンクリート中に含まれる塩分の分析
方法」の硝酸銀滴定法により行った。
2.
3
練混ぜ方法
練混ぜは方法は、練り鉢に普通セメント、高
炉スラグ微粉末、フライアッシュを投入し、低
3.実験結果および考察
3.
1
速で空練り3
0秒間行い、所定の水と混和剤を3
0
結合材の検討
図−2に混和剤一定、細骨材に海砂を使用し
秒間で投入し、高速で3分間練混ぜる。その後、
た場合の BS 置換率の流動性を示す。高炉スラ
細骨材を3
0秒間で投入し所定の空気量が得られ
グ微粉末の置換率が増加すると、流動性も増加
るまで高速で練混ぜを行った。
する傾向にある。この要因として、高炉スラグ
微粉末を用いると、セメントよりも密度が小さ
2.
4
試験方法
いため、粉体としての容積が増加すること、セ
スランプフロー試験は、JIS
R5
2
0
1で規定さ
メントよりも比表面積が大きいことが考えられ
れているフローコーンに試料を詰め、引き上げ
る。この結果から、最も流動性が得られた、置
後打撃を与えない状態でモルタル試料の直径を
換率9
0%を本実験での結合材に設定した。
測定した。また、同時に停止時間を測定した。
空気量試験は、JIS
A1
1
1
6に準じて重量法によ
り行った。圧縮強度試験は、JIS
3.
2
A1
1
0
8に準じ
―1
9―
細骨材の検討
図−3に未加工Aを使用した場合の細骨材に
対する FA 置換率検討の流動性を示す。フライ
類にわらずいずれも SP 添加率が増加するとス
アッシュを細骨材の代替材として使用すると、
ランプフロー値は大きくなるが、スランプフ
フライアッシュの置換率が5
0%までは流動性は
ロー値3
0
0!以上になると材料分離が生じた。
増加するが、置換率8
0%では大きく流動性が低
この材料分離は、焼却灰の種類に関わらず SP
下した。この要因として、結合材としての高炉
添加率2%を超えると生じた。このことから、
スラグ微粉末の置換率が9
0%、細骨材の代替材
本実験での目標スランプフロー値の上限値を
としてのフライアッシュの置換率が8
0%と粉体
3
0
0!とし、下限値については流動性が得られ
量が著しく多いため、流動性の低下を示したも
る範囲が2
5
0!以上必要となるため、その平均
のと思われる。この結果から、本実験での細骨
的な値として2
8
0±2
0!に設定した。
材の代替材としてのフライアッシュ置換率は流
動性が得られた5
0%を設定値とした。
図−5に各種焼却灰を用いた場合の流動性を
示す。焼却灰の種類に関わらずいずれもスラン
プフロー値の増加に伴い、流動停止時間も増加
3.
3
目標スランプフロー、流動停止時間の
した。スランプフロー値が3
0
0!以上では材料
設定
分離が確認されているため、流動停止時間はば
図−4に各種焼却灰を用いた場合の SP 添加
らつきがが見られる。そのため、本実験での目
率とスランプフロー値の関係を示す。なお、黒
標流動停止時間を2
6∼5
5秒の範囲に設定した。
塗りは材料分離が生じたもの示す。焼却灰の種
3.
4
最適制御型低強度材料の検討
図−6に最適制御型低強度材料の圧縮強度を
示す。焼却灰の種類に関わらずいずれも材齢の
経過と共に強度は増加した。また、目標最大圧
縮強度8.
3N/"を満足する結果が得られた。
海砂と比較すると、いずれの場合も圧縮強度は
低下した。この要因として、焼却灰は高い吸水
率を有しており、粒度分布が悪いことや粒子が
不均一であることから強度が低下したと考えら
図−4
各種焼却灰を用いた場合の SP 添加率とス
ランプフロー値の関係
図−5
各種焼却灰を用いた場合の流動性
図−6
―2
0―
最適 CLSM の圧縮強度
表−2
塩化物イオン量
Cl−量※ モルタル中の Cl−量
(%)
("/!)
規格値 コンクリート示方書 0.
04
0.
30
焼却灰A
0.
31
−
焼却灰
焼却灰B
0.
07
−
海砂
−
0.
09
未加工A
−
0.
68
−
0.
66
モルタル 焼 粉砕A
却
未加工B
−
0
.
17
灰
粉砕B
−
0.
20
種
類
※NaCl 換算値
れる。また、焼却灰AとBを比較すると、若干
水洗処理を施した焼却灰Bの強度増加が見られ
た。未加工と粉砕を比較すると、粉砕した焼却
灰が粒度分布が良く、細粒分が多いため、モル
タルが緻密化し強度が増加した。細粉と原粉を
比較すると、両者に顕著な差は確認できなかっ
た。
表−2に塩化物イオン量の測定結果を示す。
焼却灰Aおよび水洗処理を施した焼却灰B共に、
細骨材中の塩化物イオン許容量を満足できな
かった。また、焼却灰A、Bを混入したモルタ
ルにおいては、水洗処理を施した焼却灰Bにつ
いては、塩化物イオン量の規定値を満足した。
4.まとめ
埋立地の延命化対策と廃棄物の有効利用の観
点から、埋立廃棄物の中で大きな割合を占めて
いる焼却灰は制御型低強度材料として有効利用
が期待できる。
―2
1―
研究機関近況
高機能物質研究所
界面活性剤と水がつくる中間相
高機能物質研究所
理学部教授
井
上
亨
界面活性剤は両親媒性化合物であり、ひとつ
ビック相は薬物運搬体としての利用が期待され
の分子の中に親水性の部分と疎水性(親油性)
ている。図1に示すような相図上の中間相領域
の部分の両方を併せもっている。親水性の部分
は第三の物質を添加することによっても影響を
は水に対する親和性が強く、水分子と接触しよ
受ける。言い換えれば、添加物は中間相の存在
うとする傾向が強い。一方、疎水性の部分は炭
領域をコントロールすることができ、これは中
化水素のような油に対する親和性が強く、水分
間相の実用的応用にとって好都合な点である。
子との接触を嫌う。このような分子が水中にお
本研究では両親媒性物質と水の混合系の中間相
かれると、親水性部分と疎水性部分の相反する
領域に及ぼす添加物効果を種々のタイプの添加
要請の両方を満たすために疎水部は水から離れ、
物を用いて系統的に調べ、一定の規則性を知る
かつ、親水部は水に接するような形に分子が集
とともにその効果のメカニズムを探ることを目
る。こうして界面活性剤と水の混合系では界面
的とした。
活性剤分子が自発的に集ってある規則的な構造
両親媒性物質としては非イオン性界面活性剤
をもった分子集合体が形成される、すなわち、
C12E7を用いた。添加物は親水性添加物と疎水
界面活性剤分子の自己組織化が起こる。
性添加物の2つのグループに大別され、前者と
この分子集合体の形、言い換えれば分子の集
して無機塩類2、3)、糖類などのポリオール、およ
り方は界面活性剤分子の幾何学的な形のみなら
ず混合系の組成(すなわち、界面活性剤の濃度)
や温度に強く依存し、多様な形態の分子集合体
が出現することになる。たとえば、代表的な非
イオン性界面活性剤のヘプタエチレングリコー
ルドデシルエーテル(C12E7)と水の混合系で
は、図1の相図に示したようにラメラ相(Lα
相)
、キュービック相(V1相)
、ヘキサゴナル相
(H1相)の3つの中間相が出現し1)、それぞれ
の相で界面活性剤分子は図2に示したような集
合形態をとっている。なお、これらの相は固相
と液相の中間的な性格をもつことから中間相と
総称される。
両親媒性物質と水の混合系に出現するこのよ
うな中間相の実用的な応用としては、たとえば
ヘキサゴナル相は多孔性無機材質を調製するた
めの鋳型として利用されており、またキュー
―2
2―
図1
C12E7と水の混合系の相図
層と介在する水溶液層からできているとみなし、
液相は界面活性剤、水、添加物の3成分混合系
とみなす。また、混合系はすべて正則溶液とし
て取り扱う。以上の仮定に基づき、2つの相の
自由エネルギーを組成の関数として表す。極大
温度のところでは同じ組成の中間相と液相が平
図2
3つの中間相で形成される分子集合体の模式図
衡に共存するので、これらの自由エネルギーは
び尿素を、また後者として長鎖アルコールを使
等しく、この関係より極大温度に対する表式が
用し、これらの添加物が C12E7/H2O 混合系の Lα
得られる。図3の曲線はこの表式に従って計算
相領域および H1相領域に及ぼす影響について
したもので、実測値をよく再現している。中間
検討した。ここではポリオールと尿素について
相領域に対する添加物効果は、添加物のタイプ
得られた結果を紹介する。
に依存して多様な現れ方をする。この振る舞い
図1の相図からわかるように、Lα 相領域と
は、上記の熱力学モデルによれば界面活性剤と
H1相領域には azeotropic point に相当する極大温
水、界面活性剤と添加物、および水と添加物の
度が存在する。ポリオールや尿素の添加によっ
3種の分子間相互作用と界面活性剤分子のパッ
て、これらの中間相領域には温度軸に沿った変
キングパラメータに対する添加物効果の点から
化が現れるが、極大温度に対応する組成はあま
理解される。
り変化しない。そこで、この極大温度に着目し、
添加物濃度と各相の極大温度の関係を調べたと
参考文献
ころ、図3に示す結果が得られた。ポリオール
1)T. Inoue, M. Matsuda, Y. Nibu, Y. Misono, M.
の添加により Lα 相および H1相の極大温度は低
下する、すなわち、ポリオールはこれらの中間
Suzuki, Langmuir, 17 (2001) 1833-1840.
2)L. Q. Zheng, H. Minamikawa, K. Harada, T.
相領域を低温側に縮小させる効果をもつ。一方、
Inoue, G. G. Chernik, Langmuir, 19 (2003) 10487
尿素はポリオールとは逆に H1相領域を高温側
-10494.
に拡大する効果をもつが、Lα 相に対する効果
3)T. Inoue, Y. Yokoyama, L. Q. Zheng, J. Colloid
は小さい。
Interface Sci., 274 (2004) 349-353.
添加物の存在下における相転移温度のこのよ
うな振る舞いを次のようなモデルにより解釈し
た。すなわち、中間相は界面活性剤の分子集合
図3
中間相の極大温度に対する親水性添加物の影響
―2
3―