悪性リンパ腫について:腫瘍内科部長 酒井リカ - 神奈川県立がんセンター

神奈川県立がんセンター
第5回市民公開講座 「がんを知る」
悪性リンパ腫について
2014年 1月 25日
神奈川県立がんセンター
腫瘍内科 酒井 リカ
悪性リンパ腫とは
リンパ系の組織から発生する腫瘍
ヒトの免疫系を構成するもの
免疫系は生体内で病原体やがん細胞などの
異常な細胞を認識して殺滅することにより、生
体を病気から保護する多数の機構が集積した
一大機構である。
(ウィキペディア より)
リンパ球の成り立ちとはたらき
引用図書:目で見る(図解) 悪性リンパ腫 カウンセリングブック<病態編> 吉野正 編
悪性リンパ腫の発症頻度
国立がんセンター
がん対策情報センターより
悪性リンパ腫の生存率の推移
悪性リンパ腫の発症頻度
国立がんセンター
がん対策情報センターより
診断から治療方針決定まで
診 察
問 診
▼リンパ節の増大速度、局所の疼痛の有無、
触診上の硬度などが重要
▼悪性リンパ腫のリンパ節は弾性硬で無痛
性のことが多い
B症状
○体重減少
(6ヶ月間に原因不明の10%以上)
○原因不明の38℃以上の発熱
○盗汗(寝汗)
治療方針を決定するまでの検査の実際
全身状態の評価
病期確定診断
引用図書:やさしい悪性リンパ腫外来治療の自己管理
飛内賢正 編
医薬ジャーナル
悪性リンパ腫の病理分類 (病型)
悪性リンパ腫
Malignant lymphoma[ML]
ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫
Hodgkin lymphoma
Non-Hodgkin lymphoma[NHL]
7%
B細胞性リンパ腫
65%
T/NK細胞性リンパ腫
25%
悪性リンパ腫の日本での発症割合
(Pathology International:58, 174-182, 2008)
悪性リンパ腫の病勢による分類
B細胞性リンパ腫
T/NK細胞性リンパ腫
低悪性度リンパ腫:年単位で進行
セザリー症候群
MALTリンパ腫
濾胞性リンパ腫(grade 1~3a)
中悪性度リンパ腫:月単位で進行
マントル細胞性リンパ腫
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
濾胞性リンパ腫(grade 3b)
節外性NK/T細胞性リンパ腫、鼻型
血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫
末梢性T細胞リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
高悪性度リンパ腫:週単位で進行
Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫
成人T細胞白血病/リンパ腫
バーキットリンパ腫/白血病
腸管症型T細胞リンパ腫
悪性リンパ腫の病期分類:
Ann-Arbor分類
限局期
Ⅰ期
進行期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
Ⅰ期:1つのリンパ節領域が侵されている。
Ⅱ期:横隔膜を境に上半身または下半身のみで、2ヵ所以上のリンパ節領域が侵され
ている。
Ⅲ期:横隔膜を超えて上半身、下半身両方のリンパ節領域が侵されている。
Ⅳ期:臓器を侵したり、骨髄・血中に悪性細胞が広がっている。
悪性リンパ腫の治療法の選択
悪性リンパ腫はがん薬物
療法(化学療法)が効く
ケースが多く、一定の確
立で治癒が期待できます
副作用を軽減する治
療(支持療法)が進歩
し、治療法によっては
外来での治療が可能
になりました。
一部の低悪性度リ
ンパ腫では、無治
療経過観察という
選択肢もありえます
引用図書:目で見る(図解) 悪性リンパ腫 カウンセリングブック<病態編> 吉野正 編
化学療法の流れ
化学療法の流れ
効果判定について: 寛解とは
CTやPET-CT、骨髄検査など
をおこなっても、リンパ腫が見
つからない状態
• この時点では、検査でみつからないレ
ベルでリンパ腫細胞が残存している可
能性あり。
• 適切な治療を計画に従って、必要な回
数行い、その後も経過観察が必要
化学療法の流れ
治療法の決定にあたっては、化学療法
で期待される効果と予測される副作用に
対する説明を受け、これを十分理解した
上で、患者さんご自身で治療を受けるこ
とを判断していただくことが大切です
まとめ
 悪性リンパ腫は、多様な疾患から構成される
不均質な疾患群です
 正確な組織型診断を行い、組織型や病期、全
身状態を総合的に判断して適切な治療法が選
択がされます
 治療方針の選択、治療の継続にあたっては、
患者さんご自身の十分な理解も重要です