新ア ミノ配糖体抗生物質HBK(点 滴静注)の 腹水中移行と 腹膜炎

CHEMOTHERAPY
VOL.34 S-1
583
新 ア ミノ配糖 体抗 生物 質HBK(点
滴 静 注)の 腹 水 中移 行 と
腹膜 炎 に対 す る臨 床 効 果
田 中 承 男,小
林 雅 夫,岡
隆 宏
京都府立医科大学第二外科
戸
田
省
吾
国立奈良病院外科
藤
森
千
尋
大阪鉄道病院外科
井
岡
二
朗
近江八 幡市民病院外科
門
牧
野
弘
之
湖北総合病院外科
吉
田
隆
行
公立南丹病院外科
谷
洋
二,浜
頭
憲一郎
明石市民病院外科
栗
岡
英
明
京都第一赤十字病院外科
中
田
雅
支
健保鞍馬 ロ病院外科
李
哲
柱
愛生会 山科病院外科
内
藤
和
世
京 都府立与謝 の海病院外科
新 ア ミノ配 糖 体 抗 生 物 質HBKを
点 滴 静注 に よ り投 与 し,薬 剤 の腹 水 中 移行 と安 定 性,腹 膜 炎 に
対す る臨 床 効果 お よび 胃癌 術 後 の感 染予 防 効 果 につ い て 検討 し,次 の結論 を得 た。
(1)腹
膜 炎5例,胃
癌11例,計16例
行 を検 討 した。75mgを1時
の 術 後 にHBKを
投 与 し,そ の血 中 お よび腹 水中 移
間 で 点 滴 静 注 した場 合 の血 中 濃 度 は,点 滴終 了時 に ピ ー クに 達 し,
16例 の平 均 は3.92μg/mlで,そ
の後 漸 減 した 。
一 方 ,腹 水 中 濃 度 は 点滴 終 了2時 間 後 が ピ ー ク で,平 均 濃 度 は124μg/mlで
中HBK濃
度 の 減 少 は緩 か で,点
滴 終 了 後12時
間 で も0.71μg/mlと,血
あ った 。腹 水
中 に比 べ 高 い 濃 度 を認
め た。
(2)HBKの
ヒ ト腹 水 中 で の 安定 性 試 験 で は,い ず れ の濃 度,温 度,期
間 の 区分 で も力価 の低
下 は認 め られ な か っ た 。
(3)急
性 腹 膜 炎6例
に術 後HBK(75mg,1時
間 点 滴)を 単 独 で使 用 し,有 効 率67%の
成績
を得 た。
(4)1胃
癌 症 例 の 胃全 摘 術 後10例
と胃 亜全 摘 術後1例
にHBK単
独 の 点滴 静 注 を行 な い,そ
の
感 染 予 防 効 果 を 検討 した。 判 定 可 能 であ った5例 の うち,予 防 効 果 を示 した の は、2例(40%)の
み で,感 染 防御 能 の低 下 が 予 想 さ れ る悪性 腫 瘍 患 者 のmajor
surgery後
に はHBK単
独 で全 て の
CHEMOTHERAPY
584
MAR.
1986
菌 種 を カパ ーす る の は困 雌 であ ったo
(5)HBKの
が,い
HBKは,梅
菓(株)で
投 与 後,軽
ず れ もHBKと
度 のGOT,GPTの
上 昇 が3例 に,BUNの
沢 浜 夫 博 士 らに よっ て合 成 され,明 治 製
開発 され た 新 し い ア ミ ノ配 糖 体 抗 生 物 質 で,
Dibokacin
(DKB)の
誘 導 体1-N-{(5)-4-amino-2-
hydroxybutyry1}-3',
DKBと
4'-dideoxykammycin
同 様 グ ラム陽 性 薗,グ
上 昇 が1例 に 認 め られ た
の 関係 は ない も の と思 わ れ た。
繰 り返 した。
Bで あ る1)。
ヲム陰 性 菌 に 広 く抗 菌 ス
ペ タ トルを 有 し,そ の 作 用 は殺 菌 的 で あ る。 本 剤 は ア ミ
ノ配 糖 体 抗 生 物 質 不 活 化醇 素,APH(3'),AAD(4')の
AAD(2")に
よっ て も不 活 化 を 受 け ず,Gentamicin,
Tobramycin,
Dibekacin耐
更 に翌 日夕 の 第3回 目投 与 前,2時 間 後 と,可 能 な摂 り
HBK投
与 前,投 与 開 始2時 間後 で血 液 と腹 水 の採 取を
他,
全 例 に ドレー ンが 挿 入 され て い る ため,腹 水 は ドレー
ンに接 続 した チ ュ ー ブで 採 取 ピ ンに集 め,そ の蓄積量 を
測 定 した。 腹 水 の蓄 積 は 手 術翌 日の第2回
と した。
性菌 の一 部 に 有 効 性 を示 す
と言 わ れ てい る。
HBKの
濃 度測 定 はBacmus
本 剤 の筋 注 投 与 に よ り高 い血 中濃 度 が 得 られ,良 好 な
(2)HBKの
ヒ ト腹 水 中 での 安 定性 試 験
HBK原
No.STD-2S:
末(Lot
ヒ トに筋 注 した 場 合 の 血 中 半減 期 は 約2時 間 で,投 与 後
無 薦 水 に2,000μg/mlの
24時
し,2,10,40μg/mlの
間 ま で の 尿 中 排 泄率 は約60∼70%で
あ る と言 わ
れ て い る。 また,外 科 領 域 の感 染 症 に も高 い有 効 性 と安
全 性 が報 告 され て い る2)。
1mlを
移 行 性 お よ び腹 水 中 で の 安定 性 に つ い て 検 討す る と と も
測 定 をB.subtilis ATCC
に,本 剤 の腹 膜 炎 に 対 す る臨 床 効 果 な らび に 胃全 摘 術 を
プ法 で 行 な った 。
検 討 した の で 報 告 す る。
法
血 中 お よび腹 水 中移 行
腹 膜 炎5例,限
わ ち,腹 膜 炎5例 お よび 胃癌11例
手 術 終 了 後1時 間 以 内 にHBKの
示 した ゐ す な
計16例
に つ い て,
点 滴 静 注 を 開 始 し,
与 前,投 与 開 始1時 間 後,3時
間 後,6時
え,2m1を
間 後,6時
投 与 約12時
Fig.1
Schedule
間後),投
か ら昭 和59年9月
また.ご胃全 摘 出術 を施 行 した 胃癌11例
摘 術 を 施 行 した 胃癌1例
HBKの
与 開 始2時 間後,
of sampling
局 性 腹 膜 炎1例 に 対 し。 術 後 にHBKの
点 滴 静 注 を 行 な い,そ の有 効 性 と安全 性 を 検討 した。
にHBKを
溶 解 し,原 則 と して1日 朝 夕2回,1時
目
ま でに京 都府 立医
よび そ の関 連 施設 に入 院 した汎 発性
与開
間後 に 蓄 積 量 を 計 測 の う
1, 2, 4,
残 存 力価の
を用 いた 薄層 平板 カ ッ
後 感 染 予 防効 果 につ い て検 討 した 。
採 取 し直 ち に凍 結 保 存 した 。翌 朝 の 第2回
投 与 前(第1回
6633株
間後
に 採 血 し血 清分 離 後 凍 結 保 存 した 。
また,腹 腔 内浸 出液(腹 水)に つ い て は,HBK投
間 保 存 し,HBKの
蔵庫
床的 検 討
科 大 学 第 二 外科,お
試 験 材 料採 取 ス ケジ ュー ル をFig.1に
間 後,3時
(3)臨
昭 和59年3月
I.方
濃 度 に溶 解 した のち腹 水 と混和
よび 凍結 庫(-20℃)に,0(Initial),
7, 11, 15, 20, 30, 50日
施 行 した 胃癌 症 例 に 対 す る術 後 感 染 予 防 効果 につ い で も
709μg(力 価)/mg)を
濃 度 とな る よ うに 調製 した。そ の
点 滴 静注 後 の腹 水 中 へ の
始1時
6633株 を
ス ピ ッツ管 に分 取 し,室 温(25∼27℃),冷
(5℃),お
今 回,わ れ わ れ はHBKの
HBK投
subtilisATCC
検 定 菌 とす る薄 層 平 板 カ ップ法 で行 な った。
組 織 移 行 が 認 め られ て い る。 特 に腎 へ の 移 行率 が 高 く,
(1)HBKの
目投 与 まで と
し,そ れ 以 後 の腹 水 採 取 は ドレー ンか らの スポ ッ ト採取
お よび 胃亜 全
点 滴 静 注 し,そ の術
投 与 方 法 は.い ず れ も1回75mgを
生 食液 に
間か け て点滴 静
注 す る こ と と した。 な お,投 与 期 間 は最 低3日 間 と し,
腹 腔 内 投 与,腹 腔 洗 浄 液 へ の 抗生 剤 の混 入 は行 なわ なか
っ た。
腹 膜 炎 に対 す る効 果 の判 定 は,臨 床 症 状 の改 善,ド レ
ー ンか ら の分 離 菌 の消 長 等 な 勘 案 し,主 治 医 が次 の基 準
に よ り著 効,有 効,や や 有 効,無 効 の4段 階 で行 な った。
効=自 覚 的所 見 の 消 失
他覚 所 見 の正 常化 お よび
起 炎 菌 の 消失 の い ず れ もが5日
著
以内 に認 めら れた 場合。
有
効 書上 記 項 目3の うち2項 即 こ改 著あ るいは正 常
化,陰 性 化 が み られ た場 合。
やや 有 効:上 記3項
目の うち1項 目に 改善,正 常化,
陰 性化 が み られ た場 合 。
無
効:上 記3項
目の いず れ に も 改 善 が み ら れ な い
VOL.34
CHEMOTHERAPY
S-1
Table
Table, 2
1
Serum concentration
of HBK after intravenous
585
drip tinfusion of 75mg for i hour
Concentati,o/ of HBK in ascites after intravenous drip infusion of 75mg for 1 hour
CHEMOTHERAPY
586
Fig. 2
Average concentration
of HB K after
i. v, drip infusion of 75mg for 1 hour
MAR.1986
か,重 た は増 悪 した 場 合 。
II.
(1)
HBKの
戒
線
血 中 お よび 腹 水 中へ の移 行
腹 膜 炎5例 お よび 胃癌11例
濃 度 を測 定 した(Table
了 直 後 の16例
1)。 器BK75m81時
間 点滴 終
の平均 血 中 濃 度 は,3.92±1.13μg/ml
(平 均 土S.D.)で,点
μg/ml,6時
につ い て,血 情中 の総BK
滴 開 始3時 間後 で は1,37土0.40
間 後 では0.56土0.26μg/mlと
手 術 後2日 目以 降7日
漸 減 した。
目 ま で のHBK投
与 開始2時 間
後 の血 中 濃 度 は,平 均 で2日 僧2.53μg/ml,3日
2.37μ9/ml,4日
目;2.07μg/ml,5日
6目 目33.19μg/ml,7日
目13,09μg/mlで
腹 水 中 の 濃 度 は.HBK75mg1時
0.34土0.71μg/ml(平
均 土S.D.)と
Table
3
Remaining rate of antimicrobial
4
Clinical
efficacy
* Lactose decomposition (+) , Lysin decarboxylase (-)
** Lactose decomposition (-) , Lysin decarboxylase (+)
あ った。
間 点 滴終 了直 後
な り.点 滴開始3
時 間 後 に1.24土1.13μg/mlと
ピー クに連 し,6時
activity of HBK in human aacitic fluid
-:notdone
Table
目;
凶32440μg/ml,
of HBK
on peritonitis
間後
VOL.34
CHEMOTHERAPY
S-1
に は1.12±0.66μg/mlと
587
や や 減 少 したo
次 に症 例 の概 要 を 述 べ る。
腹水 中か ら の消 失 は綬 徐 で,翌 朝(点 滴終 了後12時
間),第2回
症 例1は69歳
目投 与 開 始 前 に も0,71土0.59μg/mlと,血
中濃 度0.11土0.11μg/mlに
い た(Table
の 男性 で,胃 潰 癌 穿 孔 の た め に 胃切 除
術 を施 行 した 。 術 中 の腹 腔 内漫 幽液 か らT.glabrataが
比 べ て 高 い濃 度 を維 持 して
2)。
検 出 され た が,HBK投
与 開 始4日 後 に菌 は 陰 性化 し,
臨 床 経 過 も良 好 で あ っ た ため 有 効 と判 定 した。
Fig.2にHBK点
滴 開 始12時
間 後 まで の血 中 お よび
症 例2は39歳
の男 性 で 。 虫垂 炎 に よる汎 発 性 腹膜 炎
腹水 中 の平 均 濃 度 の 推移 を示 したが,血 中 濃 度 が点 滴 絡
の
了時 ピー クに 達 し以後 漸 滅 す る の に対 し,腹 水中 濃 度 は
HBK4日
遅れ て上 昇 す る傾 向 を認 めた 。
な い が,臨 床 経 過 良 好 で有 効 と判 定 した 。
(a)
HBKの
室温 では4日
ヒ ト腹 水 中 で の安 定 性
目ま で,5℃
目 ま で,-20℃
では50日
目ま で,HBKの
れ の温 度
濃 度 区 分 で も力価 の低 下 は認 め られず,腹
(3)
1.
残 存 力価 を 測定 した が,い ず
水
3)。
3日 間 計375mg使
(+),Lysine
用 し た。E.coli(Lactose分
dearboxylase
解能
(-),MIC露1.56ug/ml),
解能(-),Lysine
dccarboxyla記
(+),MIC;0.78μg/ml),S.equinus(MIC;12.5ug/
腹 膜 炎 に 対す る臨 床 効 果
臨
4に 示 した。汎 発 性 腹膜 炎5例 の基 礎 疾
患 は虫垂 炎2例 お よび 胃 ・十 二 指 腸 潰 瘍 の 穿孔3例
で,
限局 性腹 膜 炎 は急 性 虫 垂 炎 に よ る もの で あ る。
これ ら6例 の臨 床 効 果 は有 効4例,や
有 効 率 は66.7%で
Table
の女 性 。 虫 垂 炎 に よ る汎発 性 腹 膜 炎 の
E.coli(Lactose分
汎 発 性腹 膜 炎 お よび 限局 性 腹 膜 炎 に対 す るHBKの
効1例 で
用 し,薗 検 索 は 行 なわ れ てい
ため 虫 垂 切 除 術 お よび腹 腔 ドレナ ー ジを 施 行,RBKを
臨床的検討
床成 績 をTabLe
間 計525mg使
症 例3は17歳
で は30日
中で は極 め て安 定 であ った(Table
膨 幽 で,虫 垂 切 除 術 と腹 腔 ドレナ ー ジを 施 行 した。
5
Clinical
検 出 され た が,
菌 はHBKの
間 のみ で他 剤 に
投与 に よ り消 失せず,3日
変 更 した もの の 白血 球数 の減 少 をみ た た めや や 有 効 と判
定 した 。
症例4は33歳
や 有 効1例,無
あった。
efficacy
ml),B.fragilis(MIC;>100μg/ml)が
の 男 性,十 二 指 腸 潰 瘍 穿孔 に よ る汎 発
性 腹膜 炎 で,広 範 囲 胃切 除 術 を施 行 し,術 中C. albicans
を 検 出 した。HBK4日
of HBK
on prophylactic
use
to totally
間 計525mg投
gastrectomized
patients
与 後 に はP
588
CHEMOTHERAPY
MAK.1986
VOL.34
CHEMOTHERAPY
S-1
acnes(MIC
50μg/m1)を 検 出 して お り無 効 と判 定 した。
症 例5は58歳
の女 性 で,虫 垂 炎 に よ る限局 性腹 膜 炎
に対 し虫垂 切 除 術 と腹 腔 ドレナ ー ジを 施 行 。HBK単
で9日 間 計1,350mg投
独
与 した 。術 中Klebsiellaを 検 出。
投与 後 の菌 の消 長 は 不 明 であ るが,臨 床 経過 は 良婦 で有
効 と判 定 した。
男性 。十 二 指 腸 潰癌 穿孔 に よ る汎 発 性
腹膜 炎 で 広 範 囲 胃切 除 術 を 施 行 し,HBKを
貝間計2,325mg投
単 独 で16
与 した。 術 中 の菌 検 索 は 行 な わ れ
ず,投 与 中一 時 ドレー ンか らS.epidermidis(MIC;0.2
μg/ml)が 検 出 され たが,す
ぐに消 失 し
臨 床 経過 も極
の術 後 感 染 に対 して予 防 的 投 与 を 行 な っ た
5に 示 した。10例
に 胃全 摘 術 が,1例
に
幽門側 胃亜 全 摘 術 が 施 行 され て お り,そ の 内訳 は.男 性
8例,女
性3例
aureus(0.39),E.faecalis(25)を
で,平 均 年 齢 は60.7歳
検 出 した 。HBKの
短 期 間 の 使用 例 であ り臨 床 効果 は 判定 出来 な か った 。
男 性,胃 全摘 兼 脾 合 併 切 除 を施 行 し
た 。HBKを3日
間 計450mg投
与後 他 剤 に 変 更 した 。
手 術 時 腹腔 洗 源 液 か らは,K。pneumonias(1.56),B.
fragilis(>100)を
検 出 して い る が,そ の 後 の 菌 検索 は
症 例13は,59才
女 性 で,胃 全 摘 術 施 行。HBKは
後3日 間 単 剤 で 使用,そ
癌 症 例 に 射す る術 後感 染予 防 効 果
成績 をTable
で は,K,pneumoniae(0.78),E.cloaoae(0,78),S.
な く効 果 不 明 と判 定 した。
めて 良好 で有 効 と判 定 した 。
胃癌11例
間 計375mg使
用 後他 剤 に変 更 され て い る。 使 用 中 ドレ
ー ンか らS.mutansを
検 出 し,使 用 中2回
目の 菌 培 養
症 例12は,64才
症 例6は,42歳
2.胃
589
であ り,4例
に
脾合 併 切除 が 施 行 され て い た。
の後CMX49/日
日間計2400mg投
与 した 。 手 術 終 了 時 と投 与 中 の ドレ
ー ンか らの 菌培 養は い つ れ も陰 性 で あ り,臨 床 経 過 鳳 良
好 であ る もの の 効果 判 定 不 明 とした 。
症 例14は,73才
間 計450mg使
男性,胃 全 摘 術施 行,HBKを4日
用,そ の後LMOX,AMKに
変 更 した 。
手 術 終 了 時はE.faecalis(50),C.albicansが
以下 に症 例 の概 要 を述 べ る
た が,HBK投
症 例7は,56才
ず 順 調 に 経過 し てい た 。 と ころが 術 後7日
男 性,幽 門 側 胃亜 全 摘 術 を 施 行 した 。
手術 終 了時 の 腹 腔 洗 漁 液 か らE.faecalis(50)を
した が,HBK6日
間 計825mg投
検出
与 終 了 時 に は ドレー
ンの菌培 養 は陰 性 と 参 った 。臨 床 経 過 は 良 好 で有 効 と判
定 した。
男性.胃
を施 行 した 。HBKは
全 摘 兼 膵 体 尾,脾
単 剤 で5日 間 計750mg投
閉腹 時腹 腔i洗灘 水 か らは,E.lentumが
り,HBK投
合 併 切除
与 した 。
検 出 され て お
与 終 了 時 に はE.coli(1.56).E.faecalis
(50),B.fragilis(>100)と
菌 交 代 が み られ,排 液 の性
状も膿 性 とな り,発 熱 もみ られ た ためCFX,AB-PCに
日間 計450mg使
術 後3
用 。 閉 腹 時 の腹 腔 洗 浄 水 か らE.coli
(0.78),S.sunguis(6.25),B.faagilis(>100)が
れ,HBK投
行Enterobacterを
検 出 した。 合 併 症 のた め 本 症 例 の
臨 床 効 果 につ い て は不 明 と判 定 した。
女性,胃 全 摘 兼脾 膵 体尾 合 併 切 除施
行 。HBK5日
間 計675mg使
midis(0.1)検
出,投 与終 了時S,sunguis-II(50)検
用 。 手 術終 了時S.epider-
発 熱 と ドレー ンか ら膿 性 の 分 泌 物 を 認 め,X線
出。
検査によ
り食道 空 腸 吻 合 部 の 縫 合不 全 を み と め た た め,CFX,
AMKに
変 更 した 。 した が っ て単 独 投 与 に よる感 染 予 防
症 例16は,60才
男性 で 胃全 摘 術 施 行 。HBKは
目食 道 空 腸吻
合 部 に 縫 合不 全 を み とめ た ため,排 膿 ドレナ ー ジ術 を施
効果 は 不 明で あ った 。
変更 し無 効 と判 定 した 。
症 例9は,62才
検出され
与 終 了 時 の ドレー ンか らは 菌 は検 出 され
症 例15は,69才
症 例8は,39才
術
と併用 で16
検出 さ
与 終 了 時 の ドレー ンか らはS.pyogenes(25)
男性,胃 全 摘 術施 行 。HBKは
で5日 間 計675mg使
い 。C.albicansが
検 出 され た が,HBK使
用 に よ り菌
は 消失 し,臨 床 経 過 も良 好 で有 効 と判 定 した。
症 例17は,54才
女 性,胃 全 摘 術施 行 。HBKは8日
が 検出 され てい る。3日 間 の使 用 で他 剤 に 変 吏 され 細 菌
間 計1125mg使
学 的効果 は菌 交 代 とな っ て お り,HBK投
た が,使 用 中Scumus検
与 中は 発 熱,
単剤
用 。 そ の後 抗 生剤 は 使 用 して い な
用 。 手 術 終 了 時 の 菌培 養 は 陰 性 で あ っ
出,38℃
台の発熱
白血 球
白血 球 増 多 な く臨 床 経過 は 良好 で あ る もの の 効 果 判 定不
増 多,腹 膜 炎症 状続 き他 剤 に 変 更 した 。 本 症 例 は無 効 と
能 と考 え られ た 。
判 定 した 。
症 例10は,57才
男性 で,胃 全 摘 と脾 摘 を 施 行 。HBK
は4日 間 計525mg投
与 した。 閉 腹 時 の 腹 腔 洗源 水か ら
Sepidemi4is(0.1)を
検 出 した が,投
(1.56),Saureus(0.78)を
CMZ,TOBに
与 中 にE.coli
検 出 した 。5日
変 更 して い る 。HBKの
目か らは
使 用 中 は 発熱 あ
り,白 血 球 増 多 は 軽 減 せず 無 効 と判 定 した 。
症 例11は,60才
男 性,胃 全摘 術 施 行 。HBKは3日
以 上 に 述 べ たHBK投
与 例16例
の うち,副 作 用 と考
え られ る 自,他 覚 症 状 は1例 に もみ られ な か っ た。
また,HBK投
与 前 後 の 検 査 値 をTable6に
が,GOT,GPTの
軽 度 上 昇 が3例(No.9,11,17)に
示 した
み
られ た もの の,本 剤 と の関 係 は 認 め ら れ な か っ た。 な
お.1例(No.17)にBUNの
上 昇 がみ られ た が 。 血 清
ク レア チ ニ ン値 に は 異 常 は な く,DICを
併発 してい る
CHEMOTHERAPY
590
考
1986
一般 に悪性腫瘍の患者 におい ては特に細胞性免疫の低
た め,本 剤 に よ る もの とは 断定 で き なか った 。
III.
MAR.
察
下 が報告 されてお り,感 染防御能 も 低下 してい る8)。
こ
日常 しば しば 遭 遇 す る重 篤 な 外科 的 感 染 症 の一 つ と し
て;汎 発 性 腹 膜 炎 が あ る。 本 疾 患 は,消 化 管 の穿 孔,炎
れ らの患者の免疫不全 と術後感染症が どの ように関与 し
てい るか については,種 々の因子が複雑に影響 しでい る
症 や術 後 縫 合 不 全 な ど に よ り発 症す る が,新
ため解析が難 しいが,胃 癌術後に合併症 を起 さず,か つ
しい 抗生 剤
の 出現,術 後 の栄 養,循 環,呼 吸管 理 の進 歩 に よ って,
そ の予 後 も著 し く改 善 され た 。 しか し,ひ とた び 感 染 の
防 御 に失 敗す ると,シ
害(multiple
organ
ョッ クや敗 血症,複 数 臓 器 機 能 陣
failure)で 死 亡す る例 も決 して 少 な
くな い。
手術時 に制癌剤を使用 しなか った症例 と,術 後縫合不全
か ら限局性腹膜炎を合併 した症例お よび細菌性 ショック
を伴 う敗血症に発展 した症例 につい て免疫学的 パラメー
ターの変動を検討 した ところ,後 者において細胞性免疫
能 の低下が認め られ たとされてい る7)。
腹 膜 炎 の 治 療 は病 巣 に対 す る手 術,parenteral
mentation,エ
all-
ン ド トキ シ ン シ ョッ クに射 す る 処 置 も重
要 であ ろ うが,化 学 療 法 は中 心 とな るぺ き最 も重 要 な 治
療 法 であ る こ とに現 在 も変 わ りはな い 。 しか しな が ら;
外科 領 域 にお け る感 染症 はそ の起 炎菌 と薬 剤 に対 す る感
受 性 が大 き く変 速 して お り,こ れ に 対 して十 分 な 対 策 を
胃癌におけ る,広 範囲な リンパ節郭清を伴 ら胃全摘お
よび脾,膵 体尾 部の合併切除は,消 化 器外料における一
つ のmajor surgeryで あ り,複 雑な細菌叢を有す る消化
管 を吻合す る準無菌 手術で は,術 後感染予防に果たす抗
生剤 の役割は極 めて大 きい。
立 てね ばな らな い 。一 般 に消 化 器 外 科 領 域 で は病 巣 か ら
今回,わ れわれ は胃癌 の全摘例10例,胃 亜全摘1例
の術後感染予防にHBKを
単独 で使用 した。本剤の使用
複数 菌 が 検 出 され る こ とが 多 く,起 炎菌 の 決 定 が 困 難
期間が3日 間 と短期 間であ ったために感染予防効果が不
で,今 日polymicrobial
る。 これ らの症 例 に対 して は,広 い 抗菌 ス ペ ク トル と強
明とな った症例6例 を除 くと,有 効であうた症例は5例
の うち2例 に とどま り,必 ず しも満足 な成績 とは言い難
い殺 菌 力 を有 す る抗生 剤 で,し か も有 効 な濃 度 が 速 か に
い。 これ らの症例には他剤 との併用に より優れた感染予
腹 腔 内 へ移 行 す る も のを 使用 す る のが 理 想的 であ ろ う。
防効果が得 られ るものと思われた。
infectionと して 問題 とな って い
今 回,わ れ わ れ は新 し い ア ミノ配 糖 体 抗生 物 質HBK
の 点 滴 静注 後 の体 液 内 移 行 を検 討 した 。
血 中 濃 度 はHBK75mgを
手 術 直 後 に1時 間 で投 与 し
九 場 合,点 滴終 了 時 た平均3.92μg/mlと
しか しなが ら本剤 は見るべ き副作用 もな く,す みやか
に腹水中へ移行 し,有 効濃度を長 く維持す ることから,
汎発性腹膜炎に対 して有用な薬剤 と考えられた。
ピー クに違 し,
そ の 後漸 減 し た。 こ の値 は,非 手 術 例 に対 す る投 与 の 場
文
1)
KONDO,
S.,
MAEDA
&
合 と比 べや や 低 い 傾 向 であ っ た が,こ れ は 出血,輸 血,
B
濃 度 は点 滴 終 了後2時 間 で 平
均1.24μg/mlと
ピー クに達 し,そ の減 少 は緩 か で,点
滴 終 了 後12時
間 で も血 中 に 此 べ 高 濃 度 に 保 たれ て い
た 。 ま た 術後7日
目 ま で のHBKの
2)
3)
31:
4)
5)
とれ らの 成 績 を 裏 づけ る よ うに,本 剤 を汎 発 性 腹膜 炎
無 効1例(有
得た。
に,1回75mg1日
効 率66.7%)と
や 有 効1例,
ほ ぼ満 足す べ き臨 床 成 績 を
B
412∼415,
6)
.感
7)
J.
1973
第31回
日本 化 字
ChemotHerapy
複 膜 炎 の 化 学 療 法,
133∼144,
谷村
active
bacteria.
32:
特 にSulbenici-
腹 水 移 行 に つ い て 。Jap.
弘:
J.
Antibiotics
1978
腹 膜 炎 の 化 学 療 法 (II) 一特 にCeftizoよる 臨 床 効 果 に つ い て 。Chemotherapy
533∼541,
1980
谷村
弘:
腹 膜 炎 の 化 学 療 法 (N)
cinの
腹水 中移 行 と そ の 臨 床 的効 果 に つい て。
Chemotherapy
れ な か った 。
点 滴静 注 した と こ ろ,有 効4例,や
1-N-
1984
弘:
llinの
ろ,い ず れ の濃 度,温 度,1期 間 で も力 価 の低 下 は 認 め ら
1∼2回
谷村
28:
腹 水 中 にお け る安 定 性 を検 討 した とこ
26:
256∼260,
ximeに
の 計5例
K.
of
4'-dideoxykanamycin
新 薬 シ ン ポ ジ ウ ムII。HBK,
は腹 膜 炎 の治 癒 傾 向 が進
展 して も腹 水 中移 行 はそ れ ほ ど減 少 しなか った とい う成
局 性 腹 旗 炎1例
YAMAMOTO,
Syntheses
療 法 学 会 西 日本 支 部 総 会,
績 と一 致 して い た8∼5)。
5例,限
H.
UMEZAWA:
kanamycin-resistant
Antibiotics
薬 剤 に お け る術後 の腹 水 中 移 行 は腹 膜 炎 の回 復 と反 比 例
また,HBKの
H.
and-3',
against
腹 水 中 濃度 はほ ぼ 一
定 の値 を保 も て お り,こ れ は ペ ニシ リン系 や セ フ ェム系
して 低 下 す るが,netilmicinで
献
IINUMA,
{(S)-4-amino-2-hydroxybutyryl}-kanamycin
輸 液 等 の影 響 に よ る も の と考 え られ た 。
一 方 ,腹 水 中 のHBKの
K.
酒 井 克 治,
29:
森本
健:
染 。 臨 床 外 科 39:
346∼357,
一特 にNetilmi-
1981
悪 性腫 瘍 患者 の免 疫不 全 と
319∼324,
1984
相川直樹. 中田宗彦, 今村弘之, 石引 久弥,阿 部
令彦: 腫瘍 と感染-外 科 よ り。最新医 学: 881∼
884, 1982
VOL.34
CHEMOTHERAPY
S-1
591
PENETRATION
INTO ASCITES AND CLINICAL EFFICACY
FOR PERITONITIS
OF HBK, A NEW AMINOGLYCOSIDE
(I. V. DRIP INFUSION)
TSUGFOTANAKA,MASAO
KOBAYASHI
and TAKAHIRO
PICA
The 2nd Department of Surgery, Kyoto Prefectural University 9f Medicine
SHOGO TODA
Department
Department
of Surgery,
Nara National
CHIHIRO FUJIMORI
of Surgery, Osaka National
Railway Hospital
JIRO IOKA
of Surgery, Omi-hachiman
Department
Hospital
City Hospital
HIROYUKI MAKINO
Department
of Surgery,
Kohoku
General Hospital
TAKAYUKI YOSHIDA
of Surgery, Public Nantan
Department
Hospital
YOJI KADOTANI, KENICHIROHAMAGASHIRA
Department of Surgery, Akashi Municipal Hospital
Department
HIDEAKI KURIOKA
of Surgery,
Kyoto First Red Cross Hospital
Department
MASASHI NAKATA
of Surgery, Kuramaguchi
Hospital
TETCHU
Department
of Surgery,
Aiseikai-Yamashina
Hospital
KAZUYO NArro
Department
of Surgery,
Kyoto Prefectural
Yosanoumi
Hospital
HBK, a new aminoglycoside was administered as drip infusion intraveneously to determine its penetration into ascites, stability in ascites and clinical efficacy for peritonitis. In addition its prophylactic
effect for infections after operation for gastric cancer was evaluated.
(1) HBK was used for prophylaxis of postoperative infections in a total of 16 cases including 5
cases of peritonitis and 11 cases of gastric cancer.
Following an i. v. drip infusion of HBK at 75 mg per dose for 1 hour, serum concentration of
HBK reached its peak at completion of the drip infusion, the maximal concentration being 3.92 peml
on an average. Then, the concentration decreased gradually.
On the other hand, the drug concentration in ascites achieved its peak at 2 hours after completion
of drip infusion, with a mean concentration of 1. 24 pg/ml. The concentration of HBK in ascites
decreased gradually and even at 12 hours after completion of drip infusion 0. 71pgIml of the drug,
which was higher than the serum concentration, was still detected.
(2) Stability test on HBK in ascites revealed no loss on potency at any concentrations, temperatures or period.
(3) Six cases of acute paritonitis were treated with HBK (at 75 mg per dose for 1 hour intraveneously) with an efficacy rate of 67%.
(4) HBK was administered by drip infusion intraveneously in 10 cases after total gastrectomy and
592
CHEMOTHERAPY
MAR
1986
1 case after subtotal gastrectomy for gastric cancer, and its prophylactic effect on postoperative infections was assessed.
Out of 5 assessable cases, prophylactic effect was observed only in 2 cases (40%).
It was considered
difficult to obtain prophylactic effect for all postoperatve infections caused by various species of orga,nisms by use of HBK alone after major surgery in patients with malignancy, who reduced host defense for infections.
(5)
Following administration
of HBK, slight elevation of GOT, GPT was observed in 2 cases and
elevation of BUN in 1 case.
However, it was considered that none of them were drug-related.