1. SILENT SCAN

Step up
MRI
2014
Ⅲ 静音化技術の動向と臨床応用
1.SILENT SCAN
臨床編
─ SILENT‌SCANの使用経験と有用性
渡邉 嘉之 大阪大学大学院医学研究科放射線医学講座
従来,MRI は撮像時に大きな音を生じ
現在は矢状断での撮像となり,全脳を
実際の画像
ることが常識とされており,また近年の装
置の高性能化,シーケンスの多様化によ
6 分 18 秒,分解能 1 . 2 mm 3 で撮像可能
である。TE が短いため,磁化率効果の
り,エコープラナー法など,より大きな音
図 1 は 健 常 ボランティアにおける
影響が少ない画像となっている。図 1 に
を発する撮像も増えている。MRI 装置か
SILENT T 1 強調像,T 2 強調像,MRA
示すように,磁化率の影響の強い内頸
ら音が発生する原因は,頻繁な傾斜磁場
を示す。S I L E N T T 1 強 調 像は“3 D
動脈近位部での信号低下が認められな
の反転によるものとされている。この傾斜
gradient-echo imaging technique with
くなっている。
磁場変化を小さくした撮像法“SILENT‌
a very short, TE and low flip angles”
最近では,脳動脈瘤治療において頸
SCAN”
(GE 社製)が開発され,非常に
と言われるシーケンス であり,エコー
部の大きな動脈瘤に対し,ステントを併
小さな音で撮像が可能となっている。本
時間(TE = 0 . 016 ms)の非常に短い撮
用したコイル塞栓術が可能となっている。
1)
稿ではその臨床応用について述べ,シー
像法である。原則は矢状断でデータ収
従来,コイル塞栓後は MRA にて経過
ケンスの詳細は後述の技術編(42 頁)を
集を行い,1 mm 3 の分解能で 5 分 10 秒
フォローを行っていたが,ステント併用
参照していただきたい。
の撮像時間であり,MPR にて横断,冠
群ではステントによる信号低下のため,
状断にしても同様の分解能の画像が得
母 血 管 評 価 が 困 難 とされていた 2)。
撮像シーケンス
られる。現時点では立方体での撮像範
SILENT MRA では極端に短い TE のた
囲の設定のみとなっている。画像は通常
め, ステントの 影 響 のほとんどない
GE 社製 3 T MRI 装置「Discovery
の SE 法の T 1 強調像と比較すると,反
MRA 画像が得られ(図 3),ステント後
MR 750 w 3 . 0 T」では,T 1 強調像,T 2
転パルスを用いているため皮髄コントラ
の評価に有用と考えられる。
強調像,FLAIR,MRA にて SILENT
ストの強い画 像となる。T 2 強 調 像,
SCAN が可能である。実際にデシベル計
FLAIRは,
“PROPELLER(Periodically
を用いて測定した値(MRI ガントリから
Rotated Overlapping ParallEL Lines
SILENT‌SCAN の有用性
3 . 0 m 程度離れた地点)は表 1 の通りで
with Enhanced Reconstruction)
”と言
撮像時の MRI の騒音は患者にとって
ある。
われる radial スキャンを用いた撮像法で
不快感の一つであり,それが抑えられる
この表に示すように,T 1 強 調 像,
ある。図 2 に結節性硬化症の症例画像
ことは患者に優しい検査と言える。当院
MRA では,ほぼ環境音レベル(ほとん
を示すが,通常の FSE 法とほぼ同様の
では,特にこの検査を鎮静の必要な小児
ど音がしない)で撮像可能となっている。
コントラストとなっている。
に利用している。一緒に検査をしている
T 2 強調像,FLAIR も少しは音がするが,
SILENT MRA は,arterial spin
小児科医の印象として,検査導入時に
通 常の撮 像 法に比べれば,環 境 音+
labelling 法である FAIR 法を用いた撮像
ほとんど音がせず撮像できるため(ロー
7 db 以下であり,通常の撮像よりかなり
法となっている。SILENT T 1 強調像と
カライザーもサイレントモードで可能)
,
小さな音となっている。
同様に TE の非常に短い撮像法である。
少なめの鎮静薬で検査可能であることが
表 1 各撮像における撮像音(デシベル)
T 1 強調
T 2 強調
FLAIR
MRA
環境音
SILENT SCAN
53 . 3
59 . 6
56 . 2
53 . 0
53 . 0
通 常
82 . 7
85 . 2
80 . 1
91 . 9
53 . 0
40 INNERVISION (29・9) 2014
〈0913-8919/14/¥300/ 論文 /JCOPY〉