【主訴】意欲低下 【現病歴】 2年前より性格変化が出現し、1年前より意欲低下・ 傾眠傾向、認知症状出現。今回、突然歩行困難となり当院 受診。 【既往歴】幼少期:猩紅熱、:糖尿病 【生活歴】独身、東南アジアなど旅行歴なし 【入院時現症】 身体所見に異常なし, 皮疹(-) 神経学的所見:意識傾眠傾向, 会話不明瞭, MMSE19/30 錐体路症状(+), 前頭葉障害(+), 小脳失調(+), 脳神経症状(-), 感覚障害(-), 髄膜刺激症状(-) FLAIR FLAIR DWI T2WI ADCmap ・両側大脳深部白質、右側頭葉先端にT2WI/FLAIR/DWIで 淡い高信号域(ADC低下なし) ・全般性脳萎縮 ・基底核のT2WIで低信号 “成人白質脳症”の鑑別診断 神経梅毒 HIV脳症 ミトコンドリア脳症 橋本病 VitB12欠乏症 CO中毒後後遺症 薬剤性脳症 ・進行麻痺 ・CADASIL/CARASIL ・ALS-D(両側対称性の萎縮あり) ・筋緊張性ジストロフィー(左右非対称) ・前頭側頭葉変性症(左右非対称の萎縮、高信号は前頭側頭葉 に及ぶ) ・傍腫瘍症候群 神経内科疾患の画像診断;第1版:82-86 血液:TPHA(+),STS(+) 髄液:細胞数増加(リンパ球優位) TPHA(+),STS(+) 画像所見 ペニシリンG大量療法14日間施行。 MMSE19→22と改善。 スピロヘータのTreponema pallidumによる慢性感染性全身 疾患。排菌患者(第1∼第2期)との直接接触(通常は性交)によ り伝播される。 【梅毒の臨床経過】 ①1期梅毒 感染∼9週: 無症状→初期硬結・下疳、リンパ節腫大(鼠径部など) ②2期梅毒 1∼3年: リンパ行性・血行性に全身に移行。 バラ疹・扁平コンジローム →自然に吸収、潜伏梅毒。 (2/3はそのまま一生を終える) ③3期梅毒 3∼10年 骨、関節、筋肉、内臓の病変を生じる。ゴム腫、動脈瘤。 ④4期梅毒 TPが中枢神経系に進入する。(神経梅毒) 朝倉内科学;第9版:329-330 病態:慢性髄膜炎→脳血管に波及→皮質に進展 好発:30∼50才男性 分類:(1) 無症候性神経梅毒 (2)症候性神経梅毒・・・未治療患者の約5% ・髄膜血管型:脳髄膜型、脳血管型、脊髄髄膜血管型 ・実質型 脊髄癆(症候性神経梅毒の2%) 進行麻痺(症候性神経梅毒の5%) 視神経萎縮 治療:ペニシリンGを1800万∼2400万単位/日(6分割し て静注)10∼14日間投与。 内科2005:95-5;863-866 今日の治療指針2011;第3章:梅毒 正常 脳萎縮(特に前頭葉、側頭葉を主体とした) 脳炎、血管炎に関連した皮質、皮質下、側脳室周囲に非特異的 なT2WI高信号(側頭葉先端部の高信号は比較的特徴的) 髄膜の造影効果 ゴム腫:髄膜腫に類似した髄膜由来の肉芽腫性腫瘤(血管に由 来して実質内にみられることもある) 一側側頭葉内側にT2WI/FLAIRで高信号を示し、ヘルペス脳 炎・辺縁系脳炎と似ることがある(経過が鑑別) ADCは上昇することがある。 Radiology1986;158:439-442 AJNR2001;22:314-316 性格変化から進行麻痺に至った1例を経験した。 若年男性における側頭葉先端部病変を見た場合は、神経梅 毒の可能性も考慮する必要があると考えられる。
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