-1- 原子力安全委員会記者ブリーフィング 日時 - 原子力規制委員会

原子力安全委員会記者ブリーフィング
日時:平成23年10月6日(木)15:19~15:44
場所:合同庁舎4号館6階643号室
参加者:班目原子力安全委員長、代谷原子力安全委員、加藤審議官、
水間総務課長、都筑管理環境課長
○NHK岡本記者
NHKの岡本と申します。大きく分けて3点伺いたいんですが、まず
1点目、今日の文科省の報告にあったプルトニウムの核種分析の結果についてなんですが、
福島第一原発からおよそ50キロ近く離れた飯舘村から今回の事故由来のプルトニウムが
検出されたということなんですが、このプルトニウム、量は非常に少ないにせよ、もとも
と質量数が非常に大きくて、かつ粒子で存在するプルトニウムがここで検出されたと言わ
れるこの経緯、あるいはメカニズムについて、どういったことが考えられるのか、教えて
ください。
○代谷原子力安全委員
それでは、私の方からお答えさせていただきたいと思います。
確かにプルトニウムというのは粒子の形で飛んでいきます。質量数が大きいというのも、
これも事実でございます。ですから、大きな粒子が飛んでいこうとすると、なかなか飛び
にくいということはございます。ただ、ほとんどの場合は、塵か何かに巻き上げられた時
にひっついて、そのまま風に流れていくというような形が非常に考えられる形ですね。
そういうことから言いますと、非常に小さな粒子であれば、変な話ですが、1粒、2粒
ついていたとしても、十分飛んでいく、そういう可能性があるということです。やはり風
がそちらの方に流れていって、ちょうど最初の、恐らくあちらの方向に、今日のお話です
と北西方向に大分あったと思うんですが、そちらの方に流れていった日、15日とか16
日でしたか、だと思うんですが、非常にたくさん放出されていた 時に、そちらの方にたま
たま流れていって、雤に打たれて下に落ちた。かなり遠いところではありますけれども、
先ほどの環境のレベルぐらいのものであれば、飛んでいった可能性があるというように考
えているところです。
○NHK岡本記者
そもそもプルトニウムがまず、原子炉の中から外に出なければいけな
いと思うんですが、ここはどういうふうに格納容器の外に漏れたと考えられるんですか。
○代谷原子力安全委員
格納容器の外に漏れていったというのは、今、燃料というのは溶
融しているというように言われています。溶融ということは、2,800℃ですか、かな
り高い温度になっていたということなので、そういうような状態になった時というのは、
小さな粒子というのはプルトニウムであっても外へ出ていくという可能性がある というこ
とでお考えいただければと思います。
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○NHK岡本記者
内部の水を注水している時の蒸気と一緒に出ていくということですか。
○代谷原子力安全委員
恐らく、出ていく時は蒸気等とも一緒に出ていくんだろうとは思
うんですが。
○NHK岡本記者
ありがとうございます。
あと、もう2点なんですが、中期的な安全確保の考え方についてで、 まず、1枚目のこ
の表のところに、左上に全体的なことが書いてあるんですが、3列目に臨界防止とありま
すが、まだ現状で、臨界する可能性というのはあるんでしょうか。例えば 、このホウ酸水
を、注水が途絶えた時とか再臨界する可能性というのは、まだ現状であるんでしょうか。
○班目原子力安全委員長
その可能性は非常に低いとは思っていますけれども、これはも
う念のため、確実にやっていただきたい。そこに核物質がある以上は、必ず気にかけてお
いていただきたいことでございます。
○代谷原子力安全委員
今ので、1点補足させていただきますと、臨界というのは、これ
は水が入っている体系で考えますと、水の温度が下がってくればくるほど臨界になりやす
いという性質がございます。これは水の密度が増えてくるということで、 減速、中性子が
エネルギーを失っていくわけですけれども、その状態として 、非常にいい状態ができやす
くなるということがございます。ですから、水の温度が冷えていった 時と、温度が高い時
というのは、臨界のなりやすさというのが違います。そういうこともあって言われている
のかなということもございます。要するに、冷温停止に向かっているということがあって。
○NHK岡本記者
代谷先生が、今、おっしゃったことというのは、逆に再臨界の可能性
は今後、高くなってくるということではないですよね。
○代谷原子力安全委員
先ほど委員長の方からお話があったように、温度が高い時と低い
時と比べれば、確率的には高くなりますが、それは事実なんですが、だからといって 、再
臨界になる確率が上がるという、再臨界になる確率が非常に低いところなので、そこが上
がるということではないというふうに考えていただければと思います。
○NHK岡本記者
あともう1点、最後に。圧力容器の下部温度で冷温停止の判断にする
というふうに、これまでも言われてきていますが、そもそも原子炉の中に、今、燃料はど
のような状況になって存在しているかも分からない中で、圧力容器の底だけで冷温停止の
判断の目安にしてしまっていいのかどうか。あるいは、格納容器の 他の場所にいろいろ温
度計を設置して、そういったところを見ていかなければいけないのではないか、そういう
ふうに素人的には思うんですが、いかがですか。
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○班目原子力安全委員長
保安院といいますか、原対本部も圧力容器の底部の温度だけで
冷温停止の判断をするとは言っていないと思います。要するに、大きくそこの温度と、そ
れからもうひとつ、放射性物質の放出がきちんと制御できているかどうか、この2つが大
きくて、更に言うならば、冷却システムがきちっと機能することまで付け加えて、冷温停
止の条件にしているというふうに理解していますので、 必ずしも、底の温度が100℃を
切ったから冷温停止だ、というふうには考えていないというふうに思っています。
あと、温度を測定がどれだけできるかというのは、これは多分、東京電力の方で相当の
検討をされていると思うんですけれども、格納容器の中でいろいろと操作するということ
は、これはほとんど事実上難しいので、なかなかいろんなところの温度を更に測るという
のは困難ではないかというふうに思っております。
○NHK岡本記者
もちろん、中が見られないので、そういうふうにもなるかもしれない
んですが、圧力容器からメルトスルーして、下に格納容器側に溶け落ちた燃料は、果たし
て水がかぶっている状況にあると推定できるんでしょうか。
○班目原子力安全委員長
今の状況から見て、圧力容器の底が大きく抜けてしまって、溶
融した燃料がどさっと格納容器に落ちているという状況では、多分 、ないだろうとは思っ
ています。しかし、ある程度の量というのは出ている。その結果としてどうなっているか
というのは、今後、できれば調べていただきたいところですけれども、 これも結構、難し
いので、一生懸命考えているところだろうというふうに思っております。
○NHK岡本記者
1点だけ。大きく底が抜けて、どさっと落ちているように考えにくい
というのは、これはどういった根拠から考えられるんですか。
○班目原子力安全委員長
まず第1に、各点の温度というのが、ある程度計測できている
こと。で、比較的、温度計というのは熱電対の原理を使っていますので、信頼性が高いも
のなので、一部、ちょっと不安定なものになっているものはありますけれども、そういう
ことから見て、原子炉圧力容器の底が、ずばっと抜けてしまって、全部落ちてしまってい
るというような状態とは、ちょっと考えにくいなというふうに思っているということです。
○NHK岡本記者
○読売新聞大山記者
分かりました。ありがとうございます。
読売新聞の大山と申します。明日、防災指針の検討ワーキンググル
ープが開かれるかと思うんですけれども、その関係で、EPZの拡大など、細野大臣もお
っしゃっていたように、今月中に大体、方針を示さなくてはいけないかと思うんですけれ
ども、明日の検討会なりで、原子力安全委員会としてのEPZの拡大の考え方、要するに、
ただ単純に距離で何キロまでというふうに広げるのか、それとも個々のサイトごとに何か
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条件設定をしてそれで広げるのか、そういったEPZ拡大の考え方というのは、明日出さ
れるんでしょうか。
○班目原子力安全委員長
EPZについては、今月中には結論を出したいと思っています
けれども、明日、そこまでいくかどうか、ちょっと今のところは返答が難しい状況です。
○都筑管理環境課長
事務的に補足させていただきます。10月中を目途に一応、結論を
出すということになっておりますが、防災指針の検討ワーキンググループの中で、今、ま
さに検討中でございます。明日につきましては、まだ先生方にお願いしているところでご
ざいまして、具体的にどのようなところになるかは、明日以降、実際に先生方の議論を踏
まえてなされるものだと思っておりますので、今の段階で、具体的にどのような検討が明
日なされるかということについては、ちょっと申し上げられないという状況でございます。
○読売新聞大山記者
何かたたき台みたいなものを、原案みたいなものを出される見通し
はあるんでしょうか。
○都筑管理環境課長
第3回、第4回と、骨子というものを出させていただいております。
それにつきましてはこれまでの議論を踏まえた中身と、それから 、それに付随する論点と
いうものは、第3回、第4回と出させていただいておりますし、明日につきましても、そ
れはお出しする予定になっております。ただ、その中に具体的に出るかどうかは、ちょっ
とまだ、今の段階では申し上げられません。
○時事通信社松田記者
時事通信、松田と申します。先ほど、プルトニウムの微粒子の塵
について浮遊という件で、代谷先生に念のためでお願いしたいんですが、ということは、
空気中を舞っていた時期に、一般の人が吸入したかもしれないということを考えられてい
らっしゃると思うんですね。一般の人が、要するに量的な感覚の問題として、それで安心
してよろしいかどうか。要するに、今、検出されているぐらいの量であればというような
ことについての、一応、一般向けに、これはどういうものであるかということをお願いし
たいと思います。
○代谷原子力安全委員
これ、どれだけ飛んでいたかというのは本当に分からないところで
すよね。この沈着量、ここで沈着しているものということについて、どの程度の、これ50
年間の実効線量というのが、先ほどの資料の中に書かれていたと思いますね。あの程度の量
が飛んでいて、地上に落ちたというような形で、舞い上がりが10 -6 なんですけれども、
あったとしても0.027mSv、いろいろなことを含めてということですね。そういうよ
うな0.何mSv、そういうようなことから言って、それほど大きく、そちらの方は50年
間というのはプルトニウムですから、ずっとあるわけですね。そういうことを仮定した 、こ
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れ、飛んでいる時間というのは、風がそこを向いている時間なので、それよりはるかに少な
いわけですね。
そういうことを考えると、やはりあったとしてもこのぐらい、mSvぐらい、最高あった
としてもその程度ではないかというようには思っております。これ、具体的にどういう状況
であったかというのは、今、分かっているわけではありませんので、実は数字的に言うのは
無理があるかと思うんですけれども、健康に影響が出る程度の量が飛んでいっている という
ことではないというように思っております。
○NPJ日隅記者
NPJの日隅といいますけれども、3つです。
ひとつ目は、現在、政府が行っているいろいろな放射線防護について、ICRPの要求
している住民への情報提供、あるいは住民参加、意思決定過程における住民参加、こうい
う手続が踏まれているというふうに考えられるのかどうか、ちょっと不十分なところがあ
るのではないかというような点について、どのようにお考えなのかということです。例え
ば、先日、緊急時避難準備区域の解除なんかがあったりして、そういう時に住民の方から
は、先に除染をしてから、我々を戻してほしいというような言い方もあったりする 中で、
除染等も含む放射線防護について、そういう不安が出るというのは、ICRPの要求する
さっき言った情報提供、例えば、この集団でどの程度の方に健康被害が出ると想定される
かということも含めた情報提供をされていない、というのがひとつの原因ではないかと思
うので、そこについて安全委員会として、どうお考えかということがまずひとつです。
2つ目は、健康被害に関することなんですけれども、最近でも大手新聞社が出している
刊行物に、年間100mSvまで健康被害がないんだというようなことが、これは9月中
に発行された本なんですけれども、書かれているんですね。それはやはり科学的に は間違
っている知見なんだと思うんですけれども、そういうものが出てきた ひとつの原因として
は、安全委員会の方から4月11日に出された文章の中に似たような表記があって、その
後、安全委員会の方では訂正はされているんですけれども、そういうことも原因だと思い
ますので、そこら辺についてきちんと、より正確な 情報を提供するように、安全委員会側
としても、政府等に対して広報をもう少しきちんとやってはどうかというようなことで、
先ほどの住民への情報提供の中に含まれるのかもしれませんけれども、何か見解というか、
前向きに何かされることは考えられないのかということ。
もうひとつは、冷温停止の関連なんですけれども、中がなかなか分からないので難しい
というのは本当によく分かるんですが、ひとつの方法として、これまでに抽出した水の量
と、それから崩壊熱の関係から、一定程度、現在の燃料の、燃料がどうなっているか 分か
らないので、いろんな想定をしなければいけないのかもしれませんけれども、いろんな想
定の中で、現在の燃料が一体どれぐらいになり得るのかという幅を持たせたシミュレーシ
ョンは、もしかしたらできるのではないかと思うんです けれども、そういうシミュレーシ
ョンの結果と、現在、出てきている数値との比較等をすることというのは、一定程度、現
状の把握ということでは役に立つかと思うんですけれども、 それが何かまだされていない
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ように思いますので、その辺について、是非、安全委員会の方からも、そういうことはす
るべきだということで言っていただければと思うんですけれども、その辺についてどうお
考えか。その3点です。
○班目原子力安全委員長
まず、最初の点ですけれども、緊急時避難準備区域の解除に当
たっては、地元自治体と原子力災害対策本部との間でしっかりとしたやりとりがあったと
いうふうに、我々は思っております。これから住民の方がどういうふうに帰還されるかと
いうことについては、各地元の市町村の判断も尊重して行われると。これはインフラの整
備その他いろんなことがありますので、そういうことも含めてやられるということですの
で、是非、その過程において、おっしゃられるような住民の方への説明等もしっかりやっ
ていただければというふうに思っているところです。
それから、2番目の100mSvの話ですけれども、 これ正確な言い方をすると、10
0mSv以上では確率的な影響も、ある程度疫学的にちゃんと調べることがで きるけれど
も、100mSv以下になると、疫学的にははっきりとした、有意な差が出てこないとい
うのが正しい言い方です。しかしながら、ICRPなどでは、100mSv以下でも、L
NTと言っていますけれども、閾値なしの線形だという仮定においてやっている。こうい
う話というのがやっぱり非常に難しい、なかなか理解されにくいということから、ややも
すると簡単に、どうも100mSv以下は影響ないんだと、何か言いがちなんだと思うん
ですけれども、その辺はなるべく省略せずに、しっかりとした説明をしていただくように
お願いしたいと思っていますし、原子力安全委員会の方からも、なるべくその辺は正確な
情報発信に努めたいと思っております。
それから、最後の冷温停止と絡んでの炉内の状況の話なんですけれども、これにつきま
しては、特に久木田委員辺りが、原子力安全・保安院に対して、是非、炉内の状況がどう
なっているかということについて、シミュレーションなんかも含めて、しっかりと分析し
てほしいと言っているところです。それに対する原子力安全・保安院の 方からの答えがま
だ返ってきていない状況です。この辺りも、是非、これから、原子力安全委員会と原子力
安全・保安院とで、もうちょっと議論をしていきたいと思っているところです。
以上です。
○NPJ日隅記者
1点だけ、一番最初にお答えいただいた部分なんですけれども、これ
はICRPの勧告書がなかなか専門的な用語なんかが多用されていて、非常に 分かりにく
いというのがありまして、恐らくあれを自治体に、読んであのとおりやれと 言っても、多
分、難しいんだと思うので、もし可能であれば、こういうことなんですよと。何かチェル
ノブイリの後には、こういうふうにするべきだというようなガイドブックみたいなのも少
し出たようなことも言われているみたいですので、そういう何か、例えば、地元でこんな
委員会を作るといったらどうかみたいな、安全委員会として、よりICRPの勧告を実現
できるような形で、何かアドバイスを是非、していただくことを検討していただきたいと
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思いますので、よろしくお願いします。
○班目原子力安全委員長
ありがとうございます。特に、これから除染等の作業も進むこ
とですし、安全委員会の方としては、原子力災害対策本部に対して、いろんな意味での専
門家というのを派遣するように要請しているところでございますので、その中でできるだ
けの対処をしていただきたいと思っているところでございます。
○毎日新聞岡田記者
毎日新聞の岡田です。最後の、原子力安全委員会専門委員の任命に
ついてなんですけれども、これは新任の方の任命の理由というのはどういう理由なんでし
ょうか。
○班目原子力安全委員長
緊急時助言委員でしたっけ、正式な名前は。緊急技術助言組織
の委員に、是非、なっていただきたいということから、この方に専門委員 等としての発令
をさせていただくということにしたということでございます。
○都筑管理環境課長
すみません、事務局の方から補足させていただきますけれども、原
子力安全研究開発機構の原子力緊急時支援・研修センターということで、これはいわゆる
NEATということで、原子力防災のさまざまな訓練を行っているところの機関の長とい
うことでございます。したがって、原子力の防災に関しての知見があるということで、 是
非、お願いしたいということで入っております。以前は、この同じセンター長でありまし
た金盛さんがなっていましたが、お辞めになられまして、その後任ということでお願いを
しているところでございます。
○加藤審議官
だから、補足しますと、防災専門部会の構成員にもなっていただくわけで
すね。
○都筑管理環境課長
そうです。防災専門部会の構成員にもなっています。
以
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上