平 成 19年 3月 29日 07-26号 カレント・トピックス 独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 金 属 資 源 情 報 センター 電 話 :044-520-8590 FAX:044-520-8750 マダガスカル初の大型鉱山開発案件となる日加韓企業による Ambatovy ニッケル・コバルト・プロジェクトの現況 <ロ ン ド ン 事 務 所 高 橋 健 一 報告> e-mail: [email protected] はじめに これまで長い間、目立った鉱業生産活動がほとんどなかったマダガスカルにおいて、同 国 で は 初 と な り 、世 界 的 に 見 て も 有 数 の 大 規 模 ニ ッ ケ ル・コ バ ル ト 鉱 山 が 、2010 年 に 誕 生 する予定である。 Ambatovy ニ ッ ケ ル・コ バ ル ト・プ ロ ジ ェ ク ト は 、日 本 の 住 友 商 事 も 資 本 参 加 し 、日 本 企 業 が 参 加 す る 初 の ア フ リ カ 地 域 に お け る ニ ッ ケ ル 鉱 山 開 発 案 件 で あ る こ と に 加 え て 、日 本 カ ナ ダ -韓 国 企 業 に よ る 国 際 的 な 共 同 プ ロ ジ ェ ク ト に も な っ て お り 、多 く の 点 で 非 常 に 注 目 されるプロジェクトである。 同プロジェクトは、現在、プロジェクト・ファイナンス及びマダガスカル政府による各 種 許 認 可 手 続 き が 進 行 し て お り 、2007 年 の 鉱 山 建 設 開 始 に 向 け て 順 調 に 進 展 し て い る こ と もあり、今回、同プロジェクトについて紹介する。 1.Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト の 概 要 (1) 位 置 Ambatovy 鉱 山 サ イ ト は 、 マ ダ ガ ス カ ル の 首 都 ア ン タ ナ ナ リ ボ の 東 方 約 80km の 標 高 約 900m の 中 央 高 地 帯 に 位 置 す る 。 ま た 、 マ ダ ガ ス カ ル 島 東 岸 に 位 置 す る 同 国 第 2 の 都 市 で あ り 、主 要 港 で も あ る Toamasina か ら は 265km の ロ ー ド ア ク セ ス と な る 。ア ン タ ナ ナ リ ボ - Toamasina 間 は 幹 線 道 路 及 び 鉄 道 で 結 ば れ 、途 中 、鉱 山 サ イ ト の 南 側 近 傍 を 通 過 し て い ることから、鉱山サイトへのアクセスは良好と言える。 一 方 、鉱 石 処 理・精 練 プ ラ ン ト は 、Toamasina 港 の 近 傍 に 建 設 さ れ る 予 定 と な り 、鉱 山 サ イ ト と プ ラ ン ト・サ イ ト は 、ス ラ リ ー 化 し た 鉱 石 を 輸 送 す る た め の 約 220km の パ イ プ ラ インで結ばれる。 (2) 地 質 ・ 鉱 床 概 要 Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト は 、 Gabbro-Syenite Complex 内 の 、 約 3km 離 れ た 2 つ の 大 規 模 な 風 化 し た 超 塩 基 性 岩 か ら 生 成 さ れ た 2 つ の ラ テ ラ イ ト 鉱 床 (Ambatovy 鉱 床 、 Analamay 鉱 床 )で 構 成 さ れ る 。Ambatovy 鉱 床 は 約 3km×2.4km、Analamay 鉱 床 は 約 4km×2.8km の 広 い 範 囲 に 胚 胎 し て お り 、 鉱 床 の 層 厚 は 平 均 約 40m、 最 大 約 100m と 、 他 の ラ テ ラ イ ト ・ ニ ッケル鉱床と比較して、極めて厚い点が特徴となる。 Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト 位 置 図 出 典 : Dynatec 社 ホ ー ム ペ ー ジ (3) Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト の 経 緯 1) 鉱 床 発 見 か ら Phelps Dodge 社 に よ る 探 鉱 (1960~ 1990 年 代 ) Ambatovy 鉱 床 は 、 1960 年 の マ ダ ガ ス カ ル 地 質 調 査 所 に よ る 広 域 地 質 調 査 に よ っ て 、 発見された。 そ の 後 、 Phelps Dodge 社 が 子 会 社 を 通 じ 、 1995 年 5 月 に プ ロ ジ ェ ク ト の 探 鉱 権 を 獲 得 し 、 以 降 1990 年 代 に お い て 、 総 掘 進 長 22,000m の ボ ー リ ン グ を 始 め 、 選 鉱 テ ス ト 、 環境影響アセスメント、経済性評価等の広範囲な調査を実施した。 2) Phelps Dodge 社 か ら カ ナ ダ Dynatec 社 へ の 権 益 移 転 (2003 年 ~ 2005 年 前 半 ) 2003 年 8 月 、Phelps Dodge 社 は Ambatovy ラ テ ラ イ ト・ニ ッ ケ ル 鉱 床 の 開 発 を 進 め る た め 、鉱 山 サ ー ビ ス 及 び 湿 式 製 錬 技 術・プ ロ セ ス プ ロ バ イ ダ ー 業 務 を 主 要 事 業 と す る カ ナ ダ の Dynatec 社 と 、開 発 費 用 の 負 担 と Dynatec 社 が 持 つ 湿 式 製 錬 技 術 の 商 業 ベ ー ス で の ラ イ セ ン ス 供 与 を 条 件 に 、 Dynatec 社 が プ ロ ジ ェ ク ト 権 益 53%を 獲 得 す る 内 容 の JV 契約に合意した。 2004 年 9 月 、正 式 に Dynatec 社 は 、権 益 53%を 獲 得 し 、プ ロ ジ ェ ク ト の 実 質 的 な 主 導 会 社 と な っ た 。さ ら に 2005 年 2 月 、Dynatec 社 は 、自 社 株 式 他 と 引 き 換 え に 、Phelps Dodge 社 か ら プ ロ ジ ェ ク ト の 残 り の 権 益 を 獲 得 し 、 プ ロ ジ ェ ク ト 権 益 100%を 所 有 す る に 至 っ た。 2005 年 2 月 、 Dynatec 社 は 、 最 初 の プ ロ ジ ェ ク ト の FS 結 果 を 発 表 し た (2006 年 に 一 部 更 新 )。 そ の 結 果 、 年 間 生 産 能 力 は ニ ッ ケ ル 約 6 万 t、 コ バ ル ト 約 5.6 千 t の 他 、 プ ロ ジ ェ ク ト ラ イ フ は 27 年 (マ イ ニ ン グ ラ イ フ 20.5 年 、 貯 鉱 処 理 6.5 年 )と 算 定 さ れ た 。 3) Implats 社 及 び 住 友 商 事 の 参 入 ~ Implats 社 の 撤 退 (2005 年 後 半 ) 2005 年 5 月 、Dynatec 社 は 、プ ラ チ ナ 生 産 世 界 第 2 位 で あ る Impala Platinum Holdings 社 (以 下 、 「Implats 社 」)と 、 同 年 8 月 に は 日 本 の 住 友 商 事 と 、 2 社 が プ ロ ジ ェ ク ト へ 資 本 参 加 す る こ と で 、 そ れ ぞ れ 合 意 。 最 終 的 に 三 者 間 で の 株 主 間 協 定 が 、 同 年 10 月 に 合 意 さ れ た 。こ の 協 定 に よ り 、各 社 の プ ロ ジ ェ ク ト 権 益 は 、Dynatec 社 及 び Implats 社 が 各 37.5%、 住 友 商 事 が 25%と な り 、 新 規 2 社 の 参 入 条 件 は 、 参 入 後 の 各 権 益 分 の 資 金 負 担 に 加 え 、Implats 社 は 南 ア の 自 社 精 錬 所 拡 張 に よ り プ ロ ジ ェ ク ト 中 間 製 品 か ら の 地 金 生 産 を 実 施 。住 友 商 事 は 、主 に Dynatec 社 に 対 す る 債 務 保 証 を 始 め と す る 資 金 的 サ ポ ー ト を 条 件 に 、 プ ロ ジ ェ ク ト 生 産 開 始 か ら 15 年 間 に お け る 、 生 産 ニ ッ ケ ル 地 金 の う ち 3 万 t/年 の 購 入 権 を 獲 得 し た 。こ の 2 社 の 参 入 に よ り 、Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト は 、鉱 山 ・ 中 間 製 品 精 製 プ ロ セ ス プ ラ ン ト 操 業 が Dynatec 社 、地 金 生 産 が Implats 社 、地 金 販 売 が 住 友 商 事 と 、役 割 分 担 化 さ れ る こ と と な り 、事 業 化 に 向 け て 大 き く 前 進 す る こ と と な っ た。 し か し な が ら 、 2005 年 12 月 、 Implats 社 が 、 本 業 で あ る プ ラ チ ナ グ ル ー プ メ タ ル 事 業 へ の 注 力 等 社 内 事 情 に よ り 、 プ ロ ジ ェ ク ト か ら の 撤 退 を 表 明 。 2006 年 1 月 、 最 終 的 に Implats 社 が 違 約 金 を 支 払 い 撤 退 、そ の 後 の プ ロ ジ ェ ク ト 権 益 比 率 は 、Dynatec 社 75%、 住 友 商 事 25%と な っ た 。 4) 韓 国 企 業 コ ン ソ ー シ ア ム の 参 入 ~ 現 在 (2006 年 ) 2006 年 10 月 、 韓 国 国 営 企 業 で あ る Korea Resources 社 (以 下 「Kores 社 」)を 中 心 と す る 同 国 企 業 コ ン ソ ー シ ア ム と 、カ ナ ダ の 鉱 山 エ ン ジ ニ ア リ ン グ 企 業 で あ る SNC-Lavalin 社 の プ ロ ジ ェ ク ト へ の 参 入 が 合 意 さ れ 、 韓 国 コ ン ソ ー シ ア ム は 権 益 27.5%を 取 得 し 、 SNC-Lavalin 社 は プ ロ ジ ェ ク ト ・ フ ァ イ ナ ン ス 完 了 後 に 5%を 取 得 (そ れ 以 前 は Dynatec 社 が 保 持 )す る こ と と な っ た 。韓 国 側 は 、Kores 社 の 傘 下 に 、Daewoo International 社 、 Keangnam Enterprises 社 、STX 社 の 3 社 が 参 画 し て い る 。こ れ に よ り 、プ ロ ジ ェ ク ト の 既 権 益 者 で あ る Dynatec 社 (加 )の 権 益 は 40%に 、 住 友 商 事 が 27.5%に 変 更 さ れ る こ と と な っ た 。韓 国 コ ン ソ ー シ ア ム は 、こ の 参 入 に よ り 、プ ロ ジ ェ ク ト か ら の ニ ッ ケ ル 地 金 生 産 量 の 残 り の 3 万 t/年 (生 産 量 の 50%)の 購 入 権 を 獲 得 し た 。 (4) Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト の 開 発 計 画 2005 年 2 月 に 最 初 の FS 結 果 を 発 表 。2006 年 5 月 に 、主 に ニ ッ ケ ル 価 格 の 上 昇 等 に よ る 経 済 性 の 見 直 し を 図 る た め 、当 初 の FS が 更 新 さ れ た 。こ れ ら の 結 果 、世 界 で も 最 大 級 の 、 かつ、低操業コストのニッケル開発プロジェクトであることが確認された。 こ れ ま で に 発 表 さ れ た FS 結 果 に よ る 鉱 床 の 評 価 、 及 び プ ロ ジ ェ ク ト の 開 発 計 画 の 概 要 は以下のとおりである。 ・ 鉱 量 (Mineral Reserves): 鉱量区分 品位 百万 t ニ ッ ケ ル (%) コ バ ル ト (%) 推 定 鉱 量 (Probable Reserves) 80.9 0.99 0.097 確 定 鉱 量 (Proven Reserves) 44.1 1.12 0.102 計 125.0 1.04 0.099 追加低品位鉱量 39.4 0.69 0.064 カ ナ ダ 証 券 法 NI 43-101 基 準 に よ る ・ 年 間 生 産 量 (当 初 10 年 間 ): ニ ッ ケ ル 地 金 : 59,079t、 コ バ ル ト 地 金 : 5,315t(他 、 硫 安 : 190 千 t を 生 産 ) ※ 参 考 : 日 本 の ニ ッ ケ ル 地 金 輸 入 量 52 千 t(2004 年 ) ・ プ ロ ジ ェ ク ト ラ イ フ : 27 年 ・鉱石採掘: Ambatovy 鉱 床 、Analamay 鉱 床 の 2 箇 所 に お い て 露 天 採 掘 を 行 い 、採 掘 さ れ た 鉱 石 は 、 鉱 山 サ イ ト で ス ラ リ ー 化 さ れ 、総 延 長 約 220km の パ イ プ ラ イ ン を 通 じ 、Toamasina 港 近 傍の製錬プラントに供給される。 ・製錬処理: Toamasina 港 近 傍 の 処 理 プ ラ ン ト に お い て 、 ス ラ リ ー 化 さ れ た 鉱 石 は 、 湿 式 製 錬 法 (Pressure Acid Leaching: PAL 法 )に よ り 処 理 さ れ 、 最 終 製 品 と し て ニ ッ ケ ル 地 金 (ブ リ ケ ッ ト 。 LME ク ラ ス 1 グ レ ー ド )及 び コ バ ル ト 地 金 を 生 産 。 ・ 初 期 投 資 額 : 25 億 US$ ・ 操 業 コ ス ト : 0.77US$/lb(生 産 開 始 後 3 年 ~ 12 年 ) ・ プ ロ ジ ェ ク ト の IRR 及 び NPV: 3 つのケースで作成されており、それぞれ以下のとおりとなっている。 25 年 平 均 金 属 価 格 ベ ー ス (Ni: 4.52US$/lb、Co: 19.93US$/lb) ベース・ケース (Ni: 4.00US$/lb、Co: 10.00US$/lb) 2006 年 4 月 価 格 ベ ー ス (Ni: 8.25US$/lb、Co: 15.60US$/lb) IRR NPV(10%) 税引後 キャッシュフロー 16.6% 1,278 百 万 US$ 548 百 万 US$ 11.4% 249 百 万 US$ 386 百 万 US$ 25.3% 3,394 百 万 US$ 887 百 万 US$ な お 、Dynatec 社 の 資 料 に は 、今 後 開 発 予 定 の 主 要 大 規 模 ニ ッ ケ ル 鉱 山 と の 比 較 が 掲 載されているが、参考として紹介する。 ニッケル 年生産規模 コバルト 年生産規模 生産開始予定 Ambatovy 6万 t 5,600t 2010 年 Goro(ニ ュ ー カ レ ド ニ ア ) 6万 t 4,650t 2010 年 Koniambo(ニ ュ ー カ レ ド ニ ア ) 6万 t N/A 2010 年 Voisey’s Bay(カ ナ ダ ) 5万 t 2,300t 2006 年 Ravensthorpe(豪 ) 5万 t 1,400t 2008 年 プロジェクト (5) 資 本 構 成 、 各 社 の 担 当 等 本 プ ロ ジ ェ ク ト は 、非 鉄 大 手 で は な い 企 業 、国 際 的 な 共 同 資 本 に よ る 開 発 案 件 と し て も 特徴付けられるが、その資本構成及び各社の主な担当は以下のとおりである。 ・ Dynatec 社 (カ ナ ダ ): 権 益 40% 本 鉱 山 の オ ペ レ ー タ ー 会 社 と な る 。同 社 は 、特 に ニ ッ ケ ル 湿 式 製 練 技 術 に お い て 、豊 富な知識、経験を持つエンジニアリング・鉱山会社である。 ・ 住 友 商 事 (日 本 ): 27.5% プ ロ ジ ェ ク ト の 総 括 的 な 管 理 、マ ー ケ テ ィ ン グ 、財 務 な ど 担 当 。ま た 、生 産 ニ ッ ケ ル 地 金 の う ち 半 数 の 3 万 t/年 の 購 入 権 を 保 有 (15 年 間 )。 ・ Kores 社 グ ル ー プ : 27.5% プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 担 当 及 び 権 益 は 住 友 商 事 と 同 様 。Kores 社 は 韓 国 政 府 出 資 の 海 外 資 源 開 発 に 係 る 国 営 企 業 (政 府 出 資 98.8%、 韓 国 開 発 銀 行 1.2%)で あ る 。 ・ SNC-Lavalin 社 : 5%(プ ロ ジ ェ ク ト ・ フ ァ イ ナ ン ス 完 了 後 取 得 ) 鉱 山 ・ プ ラ ン ト 建 設 の 設 計 ・ 資 機 材 調 達 (EPCM : Engineering, Procurement Construction and Management)の 請 負 契 約 者 と し て 、 鉱 山 操 業 の 実 業 を 担 当 す る 。 同 社 は 、 EPCM 契 約 に よ る 鉱 山 操 業 に お い て 、 多 く の 実 績 を 持 つ (Voisey 's Bay ニ ッ ケ ル ・ プ ロ ジ ェ ク ト 他 )エ ン ジ ニ ア リ ン グ 企 業 で あ る 。 2. マ ダ ガ ス カ ル 鉱 業 事 情 、 政 府 に よ る 支 援 等 これまでマダガスカルの資源ポテンシャルは注目されつつも、鉱業生産活動は、個人ベ ースの小規模採掘を除いては、国営企業によるクロム鉄鉱鉱石の生産が 1 か所で行われて いるのみであり、外国資本による大規模鉱山の開発、生産活動には至っていなかった。 こ の 要 因 は 、他 の ア フ リ カ 諸 国 と 同 様 、法 律 、税 制 面 に お け る 投 資 環 境 の 未 整 備 に 加 え 、 近 年 ま で 、 過 去 1950 年 代 ~ 70 年 代 前 半 に 実 施 さ れ た 、 地 質 学 と い う よ り は 、 む し ろ 岩 石 学的見地から作成された地質図が存在するのみで、最新技術に基づく地質情報が不足して いることが大きく影響していると考えられていた。 こ れ ら を 改 善 し 、 地 下 資 源 開 発 を 主 軸 と し た 同 国 の 経 済 開 発 を 進 め る た め 、 1999 年 ~ 2002 年 に 、世 界 銀 行 他 の 支 援 に よ り 、投 資 環 境 を 改 善 す べ く 、鉱 業 分 野 に お け る 新 た な 法・ 税 制 の 整 備 な ど を テ ー マ と し た Mining Sector Reform Project(PRSM)が 実 施 さ れ 、さ ら に 、 そ の 第 2 フ ェ ー ズ・プ ロ ジ ェ ク ト と し て 、Project of Governance of Mining Resources(PGRM) が 2003 年 ~ 2008 年 の 期 間 に 実 施 さ れ て い る 。 PGRM に お い て は 、 鉱 業 分 野 で の ガ バ ナ ン ス 及び透明性の確保、小規模採掘者の支援、民間投資の促進、最新理論・技術に基づく資源 ポテンシャルの再評価などに焦点が絞られている。 こ れ ら の 産 業 構 造 改 革 プ ロ ジ ェ ク ト の 下 、 1999 年 の 新 鉱 業 法 の 制 定 (2005 年 一 部 改 正 ) 以 降 、 特 に 、 2002 年 に 誕 生 し た 現 Ravalomanana 大 統 領 政 権 下 に お い て 、 外 国 資 本 の 導 入 に よ る 地 下 資 源 開 発 促 進 政 策 が 積 極 的 に 実 行 さ れ て き た 。 最 も 重 要 な も の の 一 つ は 2002 年 の 大 規 模 鉱 業 法 (LGIM)の 制 定 で あ る 。こ れ は 、1999 年 の 新 鉱 業 法 の 制 定 に よ り 基 本 的 な 法の枠組みは整備されたものの、他の国に比べ税制等の魅力が乏しいとされ、これを改善 し、法・税制面での優遇を拡大した内容を含んだ法律である。また、地質情報不足の解消 策として、最新の技術による空中物理探査や、衛星画像解析によるデータ取得、デジタル 化等の整備とともに、最新の地質学理論に基づく同国地質の再評価が進められ、一般に提 供が開始されている。 以上、鉱業分野における大規模投資による開発促進政策が進展し、投資家にとっても魅 力 的 な 環 境 に な っ て お り 、 2005 年 に は Rio Tinto 社 (現 地 JV 会 社 : QMM)が 約 6 億 $を 投 資 し て 重 砂 鉱 床 プ ロ ジ ェ ク ト に 着 手 、そ の 後 、本 Ambatovy ニ ッ ケ ル プ ロ ジ ェ ク ト の 開 発 開 始 と 、 大 型 プ ロ ジ ェ ク ト が 続 く こ と に な っ た 。 最 近 で は 、 カ ナ ダ Alcan 社 に よ る ボ ー キ サ イ ト・プ ロ ジ ェ ク ト 、カ ナ ダ Pan African Mining 社 の 金 プ ロ ジ ェ ク ト の 他 、ウ ラ ン 、白 金 族 、 鉄鉱石、石炭、ダイヤモンド等の貴石など、幅広い鉱物資源を対象とした探鉱活動が活発 化してきている。また、石油・天然ガス部門においても、外国資本導入政策が進められて お り 、 オ フ シ ョ ア を 中 心 に 、 Exxon Mobil 社 を 始 め と す る 外 国 企 業 が 、 国 営 会 社 OMNIS と の 生 産 分 与 契 約 (PSA)を ベ ー ス と し 、 探 鉱 活 動 を 活 発 化 し て い る 。 Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト は 、以 上 の よ う な マ ダ ガ ス カ ル の 政 策 、投 資 環 境 の 下 、大 規 模 鉱 業法に基づくプロジェクトとして位置付けられ、各種直接・間接税の減免措置、為替制限 の撤廃、輸出入関税の減免措置、法律的位置の確保などの政府からの優遇及び保障を受け られることとなる。 3. Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト 今後の予定 2006 年 10 月 の Kores グ ル ー プ 参 入 後 、 プ ロ ジ ェ ク ト は 、 開 発 に 向 け て 大 き く 進 展 し て おり、現在は、鉱山建設に向けてのプロジェクト・ファイナンスの交渉・手続きが進行し ている。 プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 借 入 金 額 は 、 総 所 要 額 29 億 US$(初 期 投 資 額 25 億 US$+ 借 入 コ ス ト )の う ち 、 50%~ 60%に 当 た る 17 億 US$以 上 と し 、 プ ロ ジ ェ ク ト へ の 融 資 団 に は 、 参 加 企 業の本拠地となる各国の対外投資に係る公的金融機関である、日本の国際協力銀行、韓国 輸出入銀行、カナダ輸出金融公社の他、アフリカ開発案件として、同じく公的金融機関で ある欧州投資銀行及びアフリカ開発銀行が参加しており、この点においても、国際共同プ ロ ジ ェ ク ト の 色 彩 が 強 く 出 て い る と 言 え よ う 。 2006 年 12 月 に フ ァ イ ナ ン ス の 基 本 事 項 は 合意されている。 一 方 、 政 府 許 認 可 事 項 と し て 、 2006 年 12 月 、 マ ダ ガ ス カ ル 政 府 に よ り 、 開 発 計 画 に 関 する環境アセスメントが承認されている。 以 降 、今 後 の ス ケ ジ ュ ー ル は 、2007 年 第 1 四 半 期 中 に 、本 鉱 山 開 発 に 係 る 優 遇 税 制 措 置 、 法 的 安 定 性 の 確 保 な ど を 内 容 と し た 、 マ ダ ガ ス カ ル 政 府 か ら の 大 規 模 鉱 業 法 (LGIM : Madagascar's Loi sur les Grands Investissements Minieres)に 基 づ く 正 式 認 定 書 の 受 領 が 、2007 年 第 2 四 半 期 中 に 、最 終 的 な フ ァ イ ナ ン ス 契 約 へ の 署 名 が 予 定 さ れ 、そ の 後 、2007 年 半 ば か ら の 鉱 山 建 設 開 始 が 計 画 さ れ て い る 。 建 設 予 定 期 間 は 32 か 月 、 2010 年 第 1 四 半 期に完了し、以後、生産に移行する計画である。 おわりに Ambatovy プ ロ ジ ェ ク ト は 、特 に 昨 今 の ニ ッ ケ ル 市 場 価 格 が 高 騰 し て い る 状 況 下 で 、大 規 模プロジェクトであるという点で、十分に重要な位置付けとなるものであるが、加えて、 非 鉄 業 界 に お い て 、 特 に ニ ッ ケ ル 業 界 は 、 昨 今 の M&A の 中 心 舞 台 と な り 、 一 層 の 寡 占 化 が 進む中、本プロジェクトが大手、既存企業ではなく、かつ、日本、カナダ、韓国企業によ る国際的な共同資 本によるものである点においても、ニッケル業界の中では特殊なものとして捉えることが でき、この点、非常に興味深いプロジェクトである。 さらに、日本企業による新規鉱山開発案件の投資対象としては、近年疎遠であったアフ リ カ 地 域 に お い て 、今 回 の 日 本 企 業 の 資 本 参 加 は 、非 常 に 意 義 の あ る も の で あ る と 同 時 に 、 これまで鉱業生産活動がほとんど皆無であった、マダガスカルにおける初の大規模鉱山開 発案件であるということも、同国における探鉱・鉱山開発への投資の活性化に繋り得る重 要な位置付けのプロジェクトであると言え、今後の開発・生産動向が注目される。 (参 考 資 料 等 ) ・ Dynatec Corporation 資 料 ホ ー ム ペ ー ジ : www.dynatec.ca/home/index.php 他 ・ 住 友 商 事 (株 )ニ ュ ー ス リ リ ー ス 他 ・ Mining Journal 誌 ” Madagascar” A Mining Journal Supplement 、 他 おことわり:本 レポートの内 容 は、必 ずしも独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 としての見 解 を示 すもので はありません。正 確 な情 報 をお届 けするよう最 大 限 の努 力 を行 ってはおりますが、本 レポートの内 容 に誤 りのある可 能 性 もあります。本 レポートに基 づきとられた行 動 の帰 結 につき、独 立 行 政 法 人 石 油 天 然 ガス・金 属 鉱 物 資 源 機 構 及 びレポ ート執 筆 者 は何 らの責 めを負 いかねます。
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