、IRR が割引率より、高ければそのプロジェ IRR が高い方のプロジェクト

内部収益率 (IRR: Internal Rate of Return) Part3
IRR ルールとは、IRR と割引率とを比較して、IRR が割引率より、高ければそのプロジェ
クトを実行するということです。前回はある特定のプロジェクトについて、投資するか、
しないかを判断する基準として IRR を使いました。
今回は2つのプロジェクトの中から、投資すべきプロジェクトを選択する場合を考えてみ
ましょう。次のようなキャッシュフローのプロジェクトがあるとします。あなたは、プロ
ジェクト A とプロジェクト B のどちらを選択すればいいのでしょうか?
A
1 内部収益率
2
3
年度
4 プロジェクトA
5 プロジェクトB
6
7
B
C
0
-800
-800
1
D
E
2
250
600
F
3
500
200
G
4
200
100
H
5
250
500
300
300
I
J
IRR
26.44% <--- =IRR(B4:G4)
35.98% <--- =IRR(B5:G5)
答えを先に言ってしまえば、プロジェクト B を選ぶのが正解です。二つのプロジェクトの
うち、どちらを選択するか?IRR ルールでは、IRR が高い方のプロジェクトを選択すべき
となります。
但し、双方とも他の投資案件よりもリターンが高いこと。双方のプロジェクトのリスクが
同程度であるということが前提となっていることは覚えておいてください。
例えば、40%のリターンが見込まれる投資案件が他にあるような場合、この二つのプロジ
ェクトのうち、どちらに投資すべきか、なんていう議論はナンセンスですよね。
また、プロジェクト A は駅前ビルの買収案件。プロジェクト B は、温泉の採掘案件だと
すれば、リスクの度合いが全く違いますから、単純に IRR を比較して、プロジェクトを選
ぶことはできません。
重要だから、繰り返します。IRR を使って投資案件を選択する場合は、双方とも他の投
資案件よりもリターンが高いこと。双方のプロジェクトのリスクが同程度であるというこ
とが前提となっているんです。
(C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載
www.fmodeling.com
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投資判断の基準をまとめてみましょう。まとめてみれば、それほど難しくないことがわか
ります。
あるプロジェクトに投資する
か、しないか?
NPVルール
二つのプロジェクトのうち、どち
らを選択するか?
NPV>0であれば、プロジェクト NPV(A)>NPV(B)であれば、プロ
は実行すべき
ジェクトAを選択すべき
IRR>rであれば、プロジェクト
IRR(A)>IRR(B)であれば、プロ
IRRルール は実行すべき。rは、適切な割
ジェクトAを選択すべき
引率。
次のようなプロジェクトは実行すべきでしょうか?さっそく、NPV と IRR を計算してみま
しょう。NPV が 119.73 であるということは将来の CF の現在価値 919.73 が初期投資であ
る 800 よりも大きいことを表します。
したがって、プロジェクト A は実行すべきであるということが言えます。また、IRR ルー
ルで考えても、割引率 10%と比較して、IRR が高いことから同じことが言えます。
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A
NPVルールとIRRルール
割引率
C
D
E
10%
年
0
1
2
3
4
5
6
将来のCFの現在価値
NPV
IRR
B
プロジェクトA
-800
100
150
200
250
300
350
919.73 <--- =NPV(B3,B7:B12)
119.73 <--- =NPV($B$3,B7:B12)+B6
14.1% <--- =IRR(B6:B12)
一般的に、最初に初期投資が発生し、その後のキャッシュフローがプラスになるような通
常のプロジェクトでは NPV ルールと IRR ルールとでは同じ結論となります。
次のように二つのプロジェクトから、投資すべきプロジェクトを選ぶ場合はどうでしょう
か?NPV を比較してみるとプロジェクト B の方が大きいですよね。
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したがって、プロジェクト B を選択することになります。同じく、IRR を比較してもプロ
ジェクト B の IRR が 21.2.%ですから、プロジェクト B に投資するという判断になります。
このときにプロジェクト B の IRR がこのプロジェクトの割引率である 10%よりも高くなっ
ている必要があることに注意してください。
割引率 10%はプロジェクトに最低限必要なレートです。このレートのことをハードルレー
トと呼ぶことがあります。
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A
B
NPVルールとIRRルール(2)
割引率
C
D
E
F
10%
年
0
1
2
3
4
5
NPV
IRR
プロジェクトA プロジェクトB
-700
-700
150
300
150
300
200
250
250
150
450
100
160.76
17.1%
173.03 <--- =NPV($B$3,C7:C11)+C6
21.2% <--- =IRR(C6:C11)
それでは、割引率が 5%の場合はどうなるでしょう?このケースでは、NPV と IRR では全
く違う結果になっています。NPV ルールで考えれば、プロジェクト A が優れています。
一方で、IRR では両方とも割引率 5%と比較して高いものの、二つの IRR を比較するとプ
ロジェクト B に軍配が上がります。
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A
B
NPVルールとIRRルール(2)
割引率
D
E
F
5%
年
プロジェクトA
0
1
2
3
4
5
NPV
IRR
C
プロジェクトB
-700
150
150
200
250
450
309.94
17.1%
-700
300
300
250
150
100
275.54 <--- =NPV($B$3,C7:C11)+C6
21.2% <--- =IRR(C6:C11)
(C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載
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なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?また、こんなときはどっちのプロジェクト
を選べばいいのでしょうか?
続きは来週です!
IRRとは何かを考える
『先輩!IRR ってなんですか?』
あなたは、後輩の潤ちゃんに突然尋ねられました。
『IRR っていうのは NPV がゼロになる割引率だよ!』
潤ちゃんの顔をみるとまだ不満げです。
『そんなのファイナンスのテキスト読めば、わかりますよぉ。私がいいたいのはそうい
うことじゃなくて、そもそも IRR ってどういう意味があるんですか?っていうこと』
さすがのあなたもこのあとが続きません。
初期投資額CF0、一年後にC1のキャッシュフローがあるプロジェクトのIRRを求めてみ
ましょう!IRRとはNPVがゼロになる割引率です。
NPV = CF0 +
C1
C
= 0 これを r について求めると r = 1 − 1 に変形できます。こ
(1 + r )
CF0
のrが IRR なんですよね。実は、この式って何かに似ているのです。
例えば、あなたが、ある会社の株式を 1,000 円で購入したとします。一年後に 1,500 円
に値上がりしていたとします。配当を考慮しなければ、この株式のリターンは次のよう
に計算できます。
1,500 − 1,000 1,500
=
− 1 = 50%
1,000
1,000
r=
C1
− 1 と同じですね。株式をCF0で購入して、
CF0
一年後に株価がC1になる場合のリターンです。つまり、NPVをゼロにするような割引率
は、リターン(収益率)でもあったんです。つまり、IRRとはリターン(収益率)だっ
たんです!
『当たり前だろ!だから内部収益率って名前なんだよ!』とつっこまれそうなオチでし
た(笑)
(C)財務モデル研究会 2004 禁無断転載
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