日本社会福祉学会大会第62回秋季大会(早稲田大学) 若手研究者のためのワークショップ(大会校プログラム) 研究法の違いによる研究の可能性と限界:多様なアプローチを学ぶ 2014年11月29日(土)10:00-12:00 研究関心① ~誰のための「支援」か?~ 私たちの「支援」は, 当事者のためになっているのか? ↓ 「原因」を特定し, それを取り除く「支援」は, 「問題」を解決するどころか, 「問題」を構築する. 共通テーマ: 高等教育における福祉専門職の卒後教育における課題 ナラティヴ・データを対象とした質的研究 ~テキストマイニングとナラティヴ分析~ Cf.社会構成主義 ※従来的な専門的支援の限界 (→ナラティヴ・アプローチ) 荒井浩道(2014)『ナラティヴ・ソーシャルワーク—“〈支援〉 しない支援”の方法』新泉社,1-184. 駒澤大学 荒井浩道 E-mail: [email protected] Facebook: arai.hiromichi.7 Twitter: sclwrk 1 2 研究関心③ ~ナラティヴ・データ~ 研究関心② ~何のための「研究」か?~ そもそも,“EBP”でいう, 「エビデンス(科学的根拠)」とは何か? 「PBE(実践にもとづいた科学的根拠)」 という関心から注目されるデータは? ↓ 「ナラティヴ・データ」 (“経験にもとづいた語り”のデータ) If We Want More Evidence-Based Practice, We Need More Practice-Based Evidence Green, L. A., et al., Opportunities, challenges, and lessons of international research in practice-based research networks: the case of an international study of acute otitis media. Ann Fam Med, 2004. 2(5): p. 429-433. Ex. デプスインタビュー,フォーカスグループインタビュー,参与観察 ※PBE(実践にもとづいた科学的根拠) ↓ 「研究のための研究」ではない,「実践のための研究」の必要性 ※調査対象者のリアルな経験に接近する可能性 ⇕ データが構造化されていないので,分析し難い Cf.根底にある,「実践と理論(研究)の乖離」 3 研究関心④ ~テキストマイニング~ 4 補足:テキストマイニングについて 非構造的な質的データ(ナラティヴ・データ)を構造化して, 統計的(客観的)に分析する手法 ↓ 「テキストマイニング(text mining)」 ① ソフトの種類 ・Text Mining Studio(NTTデータ数理システム) ・True Teller(野村総研) ・Word Miner(日本電子計算) ・SPSS Text Analytics for Surveys(IBM) ・KH Coder(http://khc.sourceforge.net/),他 Cf.背景にある,日本語の自然言語処理技術(NLP)の発達,電子計算機の高速化 ※質的研究の最大の欠点である研究者の恣意性を排し, 「質的エビデンス」を生み出す可能性 しかし, 質的データ(ナラティヴ・データ)の利点であるリアリティが削がれる…. (KJ法,GTAと同類のカテゴリ分析) ↓ シークエンス分析(=ナラティヴ分析)により補完 (Flick 2007=2011, Riessman 2008=2014) Flick, U. (2007) Qualitative Sozialforschung, Rowohlt.(=2011, 小田博志監訳, 山本則子・春日常・宮地尚子訳『新版 質的研究入門〈人間科学〉のための方法論』春秋社.) Riessman, C. K. (2008) Narrative Methods for the Human Sciences, Sage.(=2014,大久保功子・宮坂道夫訳『人 間科学のためのナラティヴ研究法』クオリティケア.) 5 ② 日本語自然言語解析の技術 ・形態素解析(分かち書き) →文章を品詞(名詞,動詞,形容詞,副詞)ごとに分解 ・構文解析(係り受け) →修飾(係り)/被修飾(受け)関係を分析 Cf.さらに高度な,意味解析,文脈解析…. ③ 分析方法 頻度分析,特徴分析,対応分析,クラスタ分析,評価分析,時系列分析 6 研究計画(概要) 研究計画(詳細) ①サンプリング →複数の大学の卒業生を対象に経験年数別に福祉専門職を選定 (児童・障害・高齢,初任者・経験者[5年,10年]) 共通テーマ: 「高等教育における 福祉専門職の卒後教育における課題」 ②フォーカスグループインタビュー →属性別に6-8名程度のグループを編成し,FGI(各2時間程度) 参加者への謝金準備.メイン司会者,サブ司会者,記録係等の役割 (1)失敗・成功談,(2)キャリア意識, (3) 研修ニーズ,をテーマ ICレコーダで録音し,業者に依頼して逐語録を作成(or速記) ※「課題」を明らかにする探索的研究(⇔仮説検証型) ①サンプリング ↓ ②フォーカスグループインタビュー ↓ ③テキストマイニング ↓ ④ナラティヴ分析 ③テキストマイニング →逐語録を対象にテキストマイニング (Text Mining Studio 5.0を使用) 形態素解析・構文解析を行い,非構造的な質的データを構造化 頻度分析,クラスタ分析,特徴分析,対応分析,評価分析を実施 ④ナラティヴ分析 →キーワードを原文検索し,抽出された原文をもとにナラティヴ分析 7 予測される結果 Ⅰ 8 参考;分析結果例① テキストマイニング ①頻度分析 →上位の単語として「現場」,「専門性」など,予想外の単語の抽出 ②クラスタ分析 →「支援」,「専門性」,「卒後教育」などのクラスタの生成 ③特徴分析 →領域・経験ごとの語られた単語の特徴を比較 (失敗・成功談,キャリア意識,研修ニーズ,その他) ④対応分析 →領域・経験ごとの語られた単語のマッピング (失敗・成功談,キャリア意識,研修ニーズ,その他) ⑤評価分析 →肯定的評価:「資格」,「専門性」,否定的評価:「ジレンマ」 Ⅱ ナラティヴ分析 “「現場」では,◯◯は,◯◯なんだと思います.” 9 参考;分析結果例② 荒井浩道(2012)「原子力災害における被災当事者の声の可視化—テキストマイニングによるTwitterの探索的分析」『第85回日本社会学会大会報告要旨集』(札 幌学院大学第1キャンパス),ポスターセッションNo.5. 10 本研究計画のアドバンテージと限界 テキストマイニング ↓ 質的研究と量的研究を融合する可能性 (さらに,カテゴリ分析の限界をナラティヴ分析で補足) ※しかし,テキストマイニングは発展途上の分析技術のため,限界がある ① 自然言語解析技術の未成熟 →エラーの発生(辞書機能の向上の必要性) Cf.オノマトペ,スラングへの対応 ② 再現性 →日本語解析エンジンにより生じる差異 ③ ソフト依存性 →分析アルゴリズム,分析用語がソフト依存 Cf. その他にも,予算額によるナラティヴ・データの量的確保の問題, フォーカスグループインタビューのファシリテーションの均質性 荒井浩道(2013)「認知症家族会における『共同体の物語』の可視化—テキストマイニングによるナラティヴ・データの分析をとおして」『日本認知症ケア学会誌(第14回日本 認知症ケア学会プログラム・抄録集,福岡国際会議場・福岡サンパレス)』12(1),260. 11 12
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