配布資料

コバルト・リッチ・クラストの開発に向けた取り組み
ー選鉱・製錬に関する基礎研究ー
平成21年2月4日
柴崎 洋志
金属資源技術部/深海底技術課
調査・研究の背景
・平成12年度以降公海上に賦存するコバルト・リッチ・クラスト調査を優先(鉱業審議会)
・洋上調査は、第2白嶺丸による調査が着実に進行。一方で開発技術(採鉱・選鉱・金属回
収)については、開発技術研究テーマの発掘が急務とされた。
産業技術総合研究所への委託研究(
(選鉱・製錬分野の技術課題)
①全体システム中で製錬の占める割合が高い
・コバルトの市場規模が小さく、価格変動が大きいため、コバルト・リッチ・クラストの開発
にはリスクが大きい→白金の回収の可能性の検討
②また、製錬技術については、コストダウンに繋がる技術開発(例えばバイオリーチングの
適応)が重要である。
(採鉱分野の技術課題)
③基盤岩混入率を低く抑えることが可能な場所でコバルト・リッチ・クラストを採鉱しなけ
ればマンガン団塊を上回る経済性を得ることは難しい
④製錬法、揚鉱管直径・稼働日数の影響、白金回収の可否など開発システムの構成要
素・因子に、不確定要素が残されていることが明らかとなった。基盤岩混入率を低く抑え
るために、微地形も含めた地形変化の小さい場所を選び出すこと等、技術開発が必要で
1
ある。
実施体制
調査テーマ
調査実施者・
共同研究者
調査内容
洋上調査の実施
委託
(深海資源開発)
南鳥島近傍の経済水域、公海上で資源ポ
テンシャル調査、基盤岩採取調査を実施
コバルト・リッチ・クラスト
中における白金の存在形態に
関する研究
共同研究
(高知大)
洋上調査等に成果を反映
共同研究
(山崎氏:AIST)
海山における微地形変化の検討
共同研究
(藤田氏:東大)
In Site リーチングの検討
コバルト・リッチ・クラストに係る
選鉱技術の検討
共同研究
(恒川氏:北大)
コバルト・リッチ・クラストと基盤岩の
分離工程を粗選と精選に分けて検討
熔錬硫化塩素浸出法の
適応性検討
委託
(住友共同企業体)
熔錬硫化塩素浸出法のCRCへの適応性確
認
バイオリーチングの
適応性検討
共同研究
(小西氏:大府大)
還元細菌を用いた有価金属の回収
コバルト・リッチ・クラストに係る
採鉱技術の検討
2
コバルト・リッチ・クラストの特徴
(以下CRCと称する。)
„産
状
„ 含有金属
と品位例
( )はマンガン団塊品位
„ 賦存水深
„ 分布海域
„ 分布域の
地形と地質
基盤岩を皮殻状に覆うアスファルト状の酸化物.
厚さは数mm∼10数cm.
Mn :24.7% (28.8%)
Cu :0.1%
(1.0%)
Ni: 0.5%
(1.3%)
Co: 0.9%
(0.3%)
Pt: 0.5-1.0ppm
800∼2,400 m
大洋の海山、海台
斜面部、平頂部.
比較的凹凸に富む.
玄武岩、石灰岩等
3
本日の成果報告会の内容(選鉱工程の検討)
粉砕
バイオリーチング
選別
選鉱工程
製錬
金属回収工程
選鉱学的な検討(北海道大学との共同研究実施)
クラスト単体
クラスト
基盤岩
粉砕
(層状)
岩 単体
4
本日の成果報告会の内容(金属回収工程検討①)
粉砕
選鉱工程
バイオリーチング
選別
製錬
金属回収工程
乾式製錬法の適応性検討
→マンガン団塊で構築した
『熔錬硫化塩素浸出法』を
ベースにした検討
(実施体制)
住友金属鉱山㈱他2社の
JVへの委託事業
銅
品
位
酸化鉱物
硫化鉱物
5
本日の成果報告会の内容(金属回収工程検討②)
粉砕
選鉱工程
バイオリーチング
選別
製錬
金属回収工程
銅
品
酸化鉱物に対するバイオ
リーチングの適応性検討
(実施体制)
大阪府立大学との共同研究
位
酸化鉱物
硫化鉱物
6
コバルト・リッチ・クラストと基盤岩の
分離に関する基礎研究
(北海道大学・恒川氏との共同研究)
7
検討項目
試料
粉砕
・選択粉砕
・ロールクラッシャ粉砕
・片刃率測定
・微粒子の選別は選別精度が良くない
→粗砕段階での選別
選別
製錬
・JIG(湿式)
粗粒 ・エアテーブル(乾式)
・磁選(乾式)
・重液選別(湿式)
微粒 ・磁選(湿式)
・浮選(湿式)
→片刃率と粒径の関係の把握
・比重差を利用した選別
→JIG,エアテーブル
・微粉の選別
→浮選
<JIG>
<浮選>
・大量選鉱処理(5産地)
・表面改質処理
・粒径変化試験
・エアテーブルとの比較
8
最適選鉱の検討
粗粒子選別
1.0
基盤岩除去率
基盤岩除去率
η=0
クラスト回収率
基盤岩除去率
ともに高かった。
0.8
η=0.5
0.6
0.4
JIG
エアテーブル
微粒子選別
選択粉砕
0.2
浮遊選鉱
基盤岩除去率の向上
が今後の課題
磁力選鉱
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
クラスト回収率
クラスト回収率
9
比重差を利用する選別:JIG選別
高比重粒子
(ex. 岩)
低比重粒子
(ex.クラスト)
選別室
入排気口
網
水:上下に脈動
空気室
水室
石炭とズリ(同伴岩石)の選別に世界中で利用
10
クラストと岩石のJIG選別(小規模試験)
1層目
1cm/層として回収
2層目
3層目
4層目
5層目
各層(1-6層)の分析
9クラスト/岩石割合
9有用元素濃度
6層目
選別境界
11
クラストと岩石のJIG選別(小規模試験)
1層目
2層目
3層目
4層目
5層目
6層目
クラスト含有割合
1
0.8
N1
N2
N3
N4
N5
0.6
0.4
0.2
0
1 2 3 4 5 6 7
層
どの試料でも上層にクラスト,下層に岩石が濃縮
→4層目までは、そのまま金属回収工程へ
12
クラストと岩石の比重選別(小規模試験のまとめ)
Jig(小型バッチ)試験まとめ
•N1-N5: いずれの試料も選別可能(クラスト成分回収率80%で,産物の
クラスト品位80%以上→乾式製錬可能)
•0.5-1mm粒群,1-4mm粒群では,最適運転条件が異なる→Jig前に篩い
分け必要。
大型連続jig試験+乾式製錬処理の連動試験へ
13
大型連続JIG試験
装置
<試験場所,試験装置>
登別R&E:登別市富浦町223-1
装置:RETAC-JIG 50幅1槽1室型モバイルデモ機(容量
80kg鉱石)
フィード
選別室
上部産物
網
ロータリー式
産物排出機
下部産物
空気室
入排気口
水室
14
大型連続JIG試験
15
大型連続JIG試験
乾式製錬(熔錬硫化塩素浸出)に
よる処理→住鉱テクノリサーチに
て製錬試験中
結果
精鉱
クラスト
0
20
96
40
フィード
4
60
80
100
高品位のクラスト産物
を回収できた
下層に岩石が濃縮:しかし入
手試料の岩石含有率が低
かった(層厚:薄)ため,サンプ
リング困難
ずり
0
20
40
60
80
100
16
熔錬硫化塩素浸出法の適応性検討
(住友金属鉱山他JVへの委託研究)
17
マンガン団塊における最適製錬法選定経緯
18
熔錬硫化塩素浸出法のフロー図
マンガン団塊
乾式工程
乾 燥
コークス
還元熔錬
合 金
硫黄
スラグ
酸 化
還 元
スラグ
硫 化
コークス
合 金
マット
塩素
コークス
還 元
浸 出
Si-Mn
スラグ
Fe分離
Cu分離
湿式工程
Co分離
Co
加水分解
Cu
HCI
Ni
Fe203
19
コバルト・リッチ・クラストへの
熔錬硫化塩素浸出法の適応性
コバルト・リッチ・クラストの特徴:
コバルト・リッチ・クラストは、マンガン団塊と同じマンガン酸化物である
コバルト・リッチ・クラストは、コバルトの含有量が高く、白金が0.5∼1.0ppm程度
含有している
平成15年度に予察調査を実施
①熔錬硫化塩素浸出法の適用性検討
・高温高圧浸出法も検討
②製錬工程における白金の分配挙動
・白金のCRC中における存在形態
ニッケル、コバルト、銅及び鉄の分配挙動は、マンガン団塊を対象とし
た調査結果に基づき想定した分配挙動とほぼ同等であり、適用可能性
が示唆された
20
何を検討したのか?
• マンガン団塊の回収対象は、銅、ニッケルが主な対象。
コバルト・リッチ・クラストにはコバルト・白金が含まれて
いるので、高効率に回収することが必要。
(1)スラグクリーニングの導入
(2)硫化工程で白金の濃集
• 基盤岩の混入が、製錬フローにどこまで影響を及ぼす
か?
→結果的には、マンガン酸化物量に対し40%以上の
基盤岩類が混入しなければ、問題なし。
21
改良型熔錬硫化塩素浸出法フロー図
(コバルト・白金を高効率に回収するための工夫)
Ca0・Si02
クラスト
コークス
還元熔錬
酸素・Si02
粗合金
スラグ
酸化脱Fe(1)
精製合金
スラググリーニング
硫黄*
Ca0
合金
硫化
マット
酸化脱Fe(2)
Ni電解尾液
スラグ
精製マット
残留合金
※酸化工程の改良
(スラグクリーニングの導入)
スラグ
※硫化工程
(残留合金の繰り返し工程)
スラグ
塩素ガス
塩素浸出
浸出液
浸出残渣
22
熔錬硫化塩素浸出法の検討(基盤岩混入試験)①
机上検討(熱力学計算・状態図検討)
玄武岩
リッチ側
クラストに基盤岩が混入するこ
とにより、スラグの組成は 方
向にシフト。
ターゲット組成
(融点最低)
基盤岩の混入率によっては、製
錬が困難になる可能性でる
試料の組成
石灰岩
リッチ側
23
熔錬硫化塩素浸出法の検討(基盤岩混入試験)②
実試料を用いた試験
・北海道大学で選鉱を実施した試料を用いた→ JIG上部産物
粗合金への分配率
Ni
Co
Cu
Fe
Mn
Pt
AD03 JIG上部産物 粗合金
98.9
>99.0
76.7
73.7
0.10
91.8
AD04 JIG上部産物 粗合金
>99.0
>98.9
91.8
77.0
0.11
97.0
AD05 JIG上部産物 粗合金
>99.0
>99.0
84.9
70.7
0.06
97.3
AD06 JIG上部産物 粗合金
>98.9
>98.9
85.2
71.2
0.07
97.6
AD07 JIG上部産物 粗合金
>98.8
>99.1
89.8
68.1
0.10
97.0
ターゲット組成
選鉱(JIG処理)したクラスト
試料の還元熔錬処理で、
ニッケル、コバルト等有価
金属はロス無く回収できた。
JIG上部産物
24
電力原単位に及ぼすスケールアップの影響
Ca0・Si02
100,000
抵抗炉
(H18FY試験)
50,000
酸素・Si02
プラズマ炉
(H19FY試験)
5,000
還元熔錬
粗合金
スラグ
精製合金
サブマージ
アーク炉
低周波炉・プ
ラズマ炉
Ca0
合金
硫化
マット
酸化脱Fe(2)
Ni電解尾液
100
スラグ
スラググリーニング
硫黄*
DC-アーク炉
1,000
500
コークス
酸化脱Fe(1)
10,000
電力原単位
(KWH/ton・
ore)
スケールアップ試験
クラスト
精製マット
スラグ
残留合金
スラグ
塩素ガス
塩素浸出
浸出液
50
0.05
500
0.5
5,000
5
50,000
50
500,000
500
出力(kW)
(MW)
浸出残渣
消費電力
スケールアップ規模
25
スケールアップ試験(プラズマ炉)
処理量を50kgにスケールアップし、熔錬硫化塩素浸出法の金属回収率等
を確認する。
粗合金
試験装置全景
スラグ
26
スケールアップ試験(プラズマ炉)
C
d
CRC
Feed
Torch Off
Torch
Viewing
Port
Off Gas
Off Gas
1500
Temp
Measurement
Crucible
Temp
Measurement
Crucible
A
A
Torch Off--Pre
Reduction
Torch Off – CRC
Mix Feed
Torch
1100
Torch On
1000
800
Torch
Feed &
View
Port
Viewing
Port
(3) Fully Melted
Off Gas
(4) Smelting
Torch
Viewing
Port
Off Gas
Off Gas
Temp “A”
Torch
Viewing
Port
Off Gas
500
Temp
Measurement
Crucible
A
Temp
Measurement
Crucible
A
A
(1) Crucible PreHeat
Regions of Video/Data
Captures (1) to (5)
Temp
Measurement
Crucible
(2) Torch On–
Initial Melting
(1)
(2)
Temp
Measurement
Crucible
(5) Torch OffSmelting
Complete & Cool
Down
A
(3)
(4)
(5)
27
生成した粗合金
36
バクテリアを利用した
コバルト・リッチ・クラストからの
有価金属の回収
(大阪府立大学・小西氏との共同研究)
37
深海底鉱物資源∼バイオリーチングの適用∼
• コバルト・リッチ・クラスト
酸化鉱物
• マンガン団塊
• 海底熱水鉱床
硫化鉱物
38
深海底マンガン酸化物の製錬法に求められる条件
• 常温、常圧で処理できること
• 水分(海水)を含んだまま処理できること
• 浸出試薬が安価なこと
• エネルギー消費が少ないこと
• 有用金属の浸出率が高いこと
• 装置に耐食性の材料を用いる必要のないこと
• 試薬の毒性が低く、環境汚染のないこと
(甲賀哲義、エネルギー・資源, vol. 17, pp. 64-72, 1996)。
39
金属 の 浸 出 率 (% 金属 の 浸 出 率 (%)
)
硫黄酸化微生物によるマンガン団塊の浸出
‰
A. ferrooxidans
(30°C)
好気性バクテリアの酸化力
を利用する
硫黄酸化微生物によるバ
イオリーチング では、
●
□
◇
A. brierleyi
(65°C)
▲
▽
○
: Cu
: Zn
: Ni
: Co
: Mn
: Fe
初期浸出条件 :
溶液pH 2, 粒子径 25-44 μm,
硫黄添加量 20 g /l,
ノジュール添加量 1.0 g/l,
時 間 (day) 細菌接種量 1×107 cells/cm3
・ 浸出処理が非常に遅い
・ 銅、亜鉛などの硫化鉱物が
対象である
・ 酸性条件下(pH 1 ∼ 3)での
操作となる
・ 酸化鉱を直接的に浸出でき
ない
40
クラストのバイオリーチング微生物
“ Fe(III)−還元細菌 Shewanella algae “
∼ 河川、汽水域の底泥などの嫌気的環境に生息∼
ギ酸塩
CO2
酸 化化
酸
電子供与体
胞
電子受容体
Fe3+
電
電 子
子
還元 元
還
菌
細細
胞増殖
細 胞
Fe2+
41
鉄 (III)還元細菌によるクラストの浸出機構
浸出剤の
クエン酸鉄 (II)
還元剤として
再生作用
還
還
元
元
細
細
菌
菌
(30℃、中性溶液)
浸出作用
酸化鉱物
クラスト
バイオ還元
クエン酸鉄 (III)
• 還元細菌の生産する鉄(II) が 還元力をもち、クラストを浸出する
• クラストの浸出で生成する鉄(III)を、バイオ還元して再生する
42
鉄(III)還元細菌によるクラストのバイオリーチング試験
Metal leached (%)
1001
bioleaching
バイオ浸出
30ºC
pH 7
0.8
80
Ni
Co
Mn
還元細菌
+
Na-クエン酸
(35 mM)
W0/V = 5.0 kg/m3
60
0.6
Fe
40
0.4
Co
Ni
20
0.2
00
Fe
0
1
2
3
4
Time (h)
Mn
chemical
化学浸出
leaching
5
6
無菌
+
Na-クエン酸
(35 mM)
7
43
クラストのバイオリーチングにおける 白金の挙動
‰
ケース(1) : 浸出液に、Pt がほぼ100%溶解
‰
ケース(2) : 浸出残渣に、Pt が濃縮 (30倍濃縮)
●
Co :0.5 wt %
Ni : 0.4 wt %
酸化物
酸化物
Co 浸出率 :100 %
還元細菌
Pt 浸出率 : 100 %
Ni
24 時間
●
Pt :0.7 ppm
浸 出 液
Fe(II) /Fe(III)溶液
Pt の 濃 縮 度 : 30倍
浸 出 残 渣
初期試料の 1 / 30
Pt :21 ppm
現
行
の
分
離
法
現
行
の
製
錬
法
44
新技術の特長・従来のバイオ浸出技術との比較
‰
‰
従来は銅、亜鉛などベースメタルの硫化鉱物に限られ
ていたが、 還元細菌の適用 によって酸化鉱物が処
理できるようになった。
しかも、コバルト等のレアメタルの浸出が可能になった。
‰
従来のバイオ浸出法の問題点であった処理速度を、
大幅に向上させることに成功した。
‰
本技術の適用により、クラスト中の白金を濃縮・回収で
きる可能性が高くなった。
45
全体フローの構築
ケース①
ケース②
ケース③
採鉱
採鉱
採鉱
粉砕
粉砕
粉砕
選鉱(粗選)
選鉱(粗選)
熔錬硫化塩素浸出法
選鉱(粗選)
選鉱(精選)
バイオリーチング
選鉱(精選)
熔錬硫化塩素浸出法OR
バイオリーチング
熔錬硫化塩素浸出法OR
バイオリーチング
ケース④
採鉱
粉砕
熔錬硫化塩素浸出法OR
バイオリーチング
46
日本南方海域の鉄・マンガンクラスト
フィリピン海プレート
太平洋プレート
8cm
15cm
コバルト 0.1∼0.8%(平均0.2%)
ニッケル 0.1∼0.7%(平均0.2%)
白金は、0.5ppm以下の含有量
REEが濃集している傾向あり
バイオリーチング
コバルト 0.3∼0.9 (平均0.6%)
ニッケル 0.4∼0.8 (平均0.6%)
白金を0.5∼1.0ppm程度含有
熔練硫化塩素浸出法
47