¾¼½ 年 月 ¾¾ 日 開講科目名:生物物理学 担当:清野 健 ´研究室: ½ µ ¼ 講義情報 ■授業の目的 種々の生命・生体現象と現象の背後にある法則を物理原理と数理科学に基づいて探求し,対象とするシステムの 非線形性と確率的ゆらぎに焦点を当てつつ,最終的には生命現象のみならず社会・経済現象も含む複雑系の概念を論ずる. ■履修条件・受講条件 生物基礎物理学、生物物理学 を受講していることが望ましい º ■講義内容 予定されている内容は以下.ただし,受講者の興味,理解度に応じて内容を変更する. ¯ 線形性と非線形性 ¯ 非線形動力学の基礎:差分方程式 ¯ 非線形動力学の基礎:常微分方程式 ¯ 線形安定性解析 ¯ 分岐現象 ¯ リミットサイクル振動 ¯ 決定論的カオス ¯ ブラウン運動とその数理モデル ¯ フォッカー・プランク方程式 ¯ 白色雑音とランジュバン方程式 ¯ オルンスタイン¹ウーレンベック過程 ¯ ランジュバン方程式とフォッカー・プランク方程式の関係 ¯ 生体における拡散現象 ¯ 長期記憶過程 ¯ 生命現象の数理モデル ■教科書 特に指定しない。 講義時に適宜資料を配布する。 ■成績評価 期末試験。 ■講義資料 次の ÍÊÄ からこの講義のプリント ´È ØØÔ »»ÛÛÛ¿º Ô º ׺Ó× ¹Ùº º Ô» µ 形式 がダウンロード可能 ÝÓÒÓ» ½ º ½ 生物・生体システムの理解を目指して 本講義では, 「数理モデルを使って生物学的システムを理解する」という立場をとり,そのために必要な数学的な概念や分析 法について解説する.数理モデルを使ったアプローチは,次のような3つの段階からなる: ´½µ ´¾µ ´¿µ 対象とする生物学的システムを表現する数理モデルを定式化する. 数理モデルの性質を数理的手法を用いて解析する. 数理モデルから得られた結果を生物学的に解釈する. 生物学的システムは複雑であり,モデルの定式化に必要な知見が不足している場合も多い.そのような場合でも,現象の類似性 に注目することで,現象の背後にある数理的構造について考察することが可能である. ■非線形システムの普遍現象 システムを構成する要素の詳細は異なっていても,全体として共通の数理的構造を有する場合 には,共通した現象がみられる ´ µ ÓÜ ½ 参照 .生体システムのように非常に自由度の大きい系であっても,現象の本質的な側 面を記述する方程式は,比較的少数の状態変数を含んだ非線形方程式に縮約できる場合がある. ÓÜ ½ ×Ô Ö Ð Û Ú × 反応 ´ ÐÓÙ×ÓÚ¹ ÓØ Ò× Ý Ö Ø ÓÒµ と呼ばれる化学振動 ´ Ñ Ð Ç× ÐÐ Ø ÓÒµ が生み出すらせん波. ´ µ アフリカツメガエルの受精卵に発生するカルシウム波 ÂÓ Ò¸ 埸 Ä Ð Ø Ö¸ º º¸ Ò Ñ Ó¸ Ⱥ ´½ µ º ÐÐ Óк ½ ¾¸ ¿¹ ¿ .´ µ マウスの毛周期が作るらせんパターン ËÙÞ٠ƺ¸ À Ö Ø Åº¸ ÃÓÒ Ó Ëº ´¾¼¼¿µ ÈÖÓ Æ ØÐ Ë ÍË ½¼¼¸ ¼¹ º 人の皮膚にできた旋回性紅斑のらせんパターン Ï Ð¸ ʺ º¸ ÇÖÑ ÖÓ ¸ º º¸ Ë Û Ðи Àº º Ò Ï Ø ¸ źÁº¸ ´½ ¾µ Öº º ÖÑ ØÓк ½¾ ¸ ½ ¹½ ¾ 反応拡散方程式 ´Ê Ø ÓÒ¹ «Ù× ÓÒ ÕÙ Ø ÓÒµ ÜÝ 平面上の各点の状態が変数 Ù Ù´Ü Ý Øµ¸ Ú Ú ´Ü Ý Øµ で表され る場合を考える.このとき,らせん波は,次の形の反応拡散方程式の解として現れる. Ù Ø Ú Ø ここで, Ù ¸ ¾ Ú は拡散係数,Ö ¾ ܾ · ¾ Ù ´Ù Ú µ · Ù Ö¾ Ù Ú ´Ù Ú µ · Ú Ö¾ Ú Ý ¾ である.らせん波の出現は Ù ´Ù Ú µ¸ Ú ´Ù Ú µ の関数形とパラメタ に依存する. ¾ ¾ 線形性と非線形性 ´ ■線形性 ある作要素 演算子 ´µ ´µ Ä ´ Ä Ä ¦ Ä µÄ が以下の関係を満たすとき,その作要素は線形性をもつという. は定数 µ ¦Ä ´ ¸ µ つまり,線形性をもつ作要素 線形作要素 または線形演算子 は次の関係をみたす. Ä · Ä · ´ Ä は定数 µ ´½µ ´Ð Ò Ö ×Ô µ,もしくは,ベクトル空間 ´Ú ØÓÖ ×Ô µ と の元 ´あるいは,ベクトルµ,Ѹ Ò を à の元とするº ■線形空間 次の公理をみたすとき,集合 Î を体¶½ à 上の線形空間 いう.以下では, ´½µ ¸ ¸ をÎ 和の公理 ´µ · · ´ µ ´ · µ· ·´ · µ ´ µ · ¼ となるゼロベクトル ¼ がある. ´ Úµ 任意の に対して, · ´ µ ¼ となる,逆ベクトル ´¾µ がある. スカラー倍の公理 ´ µ Ñ´ · µ Ñ · Ñ ´ µ ´Ñ · Òµ Ñ · Ò ´ µ ´ÑÒµ Ñ´Ò µ ´ Úµ ½ ´½ は数の ½µ 上の公理をみたせば,関数の集合も線形空間をなす. Ò 次の同次 ´斉次µ 線形微分方程式 ■線形微分方程式の重ね合せの原理 ÒÜ ØÒ ¾ が, つの解 ܽ · Ò ½ ´Øµ Ò ½ Ü · Ò ¾ ´Øµ ØÒ ½ Ò ¾ Ü ØÒ ¾ · ¡ ¡ ¡ · ½ ´Øµ Ü ¼ ´¾µ ´Øµ¸ ܾ ´Øµ をもつならば,«¸ ¬ を定数としたその線形結合 «Ü½ ´Øµ · ¬Ü¾ ´Øµ ´¿µ も元の方程式の解となる.このことを,重ね合せの原理という. ´ µ また,非同次 非斉次 方程式 ÒÜ Ò ½ Ü Ò ¾ Ü · ´Øµ Ò ¾ ´Øµ Ò ¾ · ¡ ¡ ¡ · ½ ´Øµ Ü Ò Ò ½ Ø Ø Ø については,½ つの特殊解が見つかれば,その他の解は右辺を ¼ とした同次方程式の解を加えることでえられる. 問題 ¾º½ 次の微分作用素 Ä のの線形性を示せ. ¸ は定数とする. · Ò ½ ´Øµ ÄÜ 問題 ¾º¾ 微分方程式 ¾Ü ؾ ·¿ Ü ·¾Ü Ø ¾Ü ؾ · Ü Ø ¼ の一般解を求めよ. ¶½ 実数や複素数のように加減乗除の四則演算が定義された集合を体 ´¬ Ð µ という. ¿ · Ü ´µ ÓÜ ¾ ロジスティック方程式 生物の自己増殖過程を考える.個体数 Æ が非常に少なく,餌の供給が十分なとき,全個体数の増加率 点での,個体数 Æ ´Øµ に比例することが予想される.この場合,個体数 Æ の時間発展は比例定数を Æ Ø Æ Ø は,その時 として, ´µ Æ で記述される.ここでは, を増殖率と呼ぶ. しかし,個体数 Æ が増えすぎると餌不足や環境の変化が起こり,増殖率の低下を招くことが予想される.この効果を考 慮するために,増殖率を個体数 Æ の関数として以下のように修正する. ´Æ µ ここで, ¼ ,à は定数である.Æ Æ ½ à ¼ à のとき,個体数 Æ が à に近づくにつれ増殖率は低下する.また,Æ Ã では, 増殖率が負となり個体数の減少が起こる. ´ µ 式の を,上の ´Æ µ で置き換えると, Æ Ø ¼ ½ Æ Ã ´µ Æ ´ µ 式の微分方程式はロジスティック方程式と呼ばれている. になる. 問題 ¾º¿ ÓÜ ¾ にある微分方程式 ´ µ¸ ´ µ の一般解を求めよ. 世界の総人口の推移 ´ µ 式の一般解は, Æ ´Øµ ´µ Ƽ Ø ¾ である。具体的に Æ の時間発展を記述するためには, つの定数,Ƽ と の値を決める必要がある。 ´ µ 式を世界の人口増加のモデルとして適用してみる。表 ½ は,世界の総人口の実際のデータである.½ ¼ 年か ½ ½ ¾ になった。これ ら ½ ¼ 年の実際のデータを使い,最小 ¾ 乗法で と の値を見積もると,Ƽ ½ ¼¿ ¢ ½¼ ½¿ ¸ らの値を,´ µ 式に代入し,モデルの予測と実際の人口データとを比較した結果が図 ½ である。 ½ ¼ 年頃までは,このモデルは実際の変動を予測しているように見える。しかし,½ ¼ 年以降,実際の人口増加はモデルに 比べゆっくりとしていることがわかる。長い期間にわたって人口の変化を予測するには, ´ µ 式のモデルは単純すぎるようであ ここでは, る. カラーテレビの普及率の推移 次にロジスティック方程式 ´ µ の一般解を考える。ロジスティック方程式 ´ µ は,変数分離法で解くことができ,一般解は, Æ となる.ここで, à ½· ¼Ø ´µ ¼Ø は定数である. ロジスティック方程式は生物の自己増殖過程の単純化されたモデルとして導入されたものである.しかし,この方程式は他の システムのモデルとしても応用できることが知られている. ¾ が実際の普及率のデータであ ¼ ¼½ ¸ à ¼ ¸ ¼ ¼ ¿ 例として,日本におけるカラーテレビの普及率にロジスティック方程式を適用してみる.表 る.図 ¾ は,実際のカラーテレビの普及率とモデルを比較したグラフである.ここでは, 年 とした.全体として,ロジスティック方程式の解は,実際の変動に良くあっていることがわかる. ロジスティック方程式は,技術革新により新たに開発された製品の普及率のモデルとして,しばしば応用される.また,ロジ スティック方程式を改良した微分方程式も数多く提案されている.普及率の予測は,企業の販売戦略を立てる際の重要な情報で ある.そのような問題を考えるためのモデルとして,微分方程式は重要な役割を演じている. 表 ½:世界の総人口の推移 年 表 ´¢ ½¼¼ 万人µ ¾:日本におけるテレビの普及率の推移 年 普及率 年 普及率 ½ ¼ ¾ ½ º ½ ¼º¼¼¿ ½ ¼º ¿ ½ ¾ ½ ¼º¼½ ½ ¼º ½ ¼ ¿¼¾¿º ½¾ ½ ¼º¼ ½ ¼º ½ ¿¿¿ º ½ ¼º½¿ ½ ½ ¼ ¿ º ½ ¼ ¼º¾ ¿ ½ ¼ ¼º ¾ º¿ ¼º ¼ ¿º ½ ½ ¼º ¾¿ ½ ½ ¼º ½ ¼ ¾º¾ ½ ¾ ¼º ½½ ½ ¾ ¼º ½ ¿º ½ ¿ ¼º ½ ¿ ¼º º ½ ½ ¼º ½ ¾º¿ ¿ ½ ¼º ¼¿ ½ ½ ¼ ½ 図 人口 ¾ ½:世界の総人口の推移.実線はモデルの予測. 図 ¼º ¾ ¾:日本におけるテレビの普及率.実線はモデル. ■非線形現象とは 線形性とは考えている変数の間に比例的な関係があることであった.一方で, 非 線形性とはこのような 関係がないことであり,非線形現象では,そのような非線形の数理的構造が本質的に現象とかかわっている. ÓÜ ¾ で紹介した式 ´ µ では,個体数の変化率 Æ Ø と個体数 Æ の間に比例関係があった.この線形微分方程式の一般解は ¼ 指数関数で表される.したがって,個体数の変化は,指数関数的に爆発するか, に収束するかのどちらかである.一方で,式 ´ µ は非線形方程式であり,個体数 Æ の増加ともに非線形性が強くなる.結果として,Æ が時間とともに一定値 à に近づく. つまり,餌の供給量と個体数がバランスした平衡状態に落ち着く. ■ロジスティック写像 ロジスティック方程式 ´ µ において,Æ ´Øµ Ü Ø となる.さらに,この微分方程式を,時間ステップを ´½ ܵ Ü ¡Ø として差分化し ÜÒ·½ ´ ¼ à ܴص と変数変換すると, ÜÒ ´½ ÜÒ µ ´µ Ü Ø ÜÒ·½ ÜÒ ¡Ø ¸ ÜÒ を変数変換とすると, ´½¼µ µ がえられる 変数変換後,改めて変数を ÜÒ とした .この差分方程式はロジスティック写像と呼ばれている.ロジスティック写 ÊÓ ÖØ Å Ý により,生物の個体数の変動のモデルとして研究され,複雑かつ多様な振る舞いを示すことが明 らかにされた.この方程式は,制御変数 に依存してその振る舞いが変化する ´図 ½µ. 像は,生物学者の 問題 ¾º 式 図½ ´½¼µ について,次の条件での振舞いを調べよ.´ µ ロジスティック写像 ÜÒ·½ ÜÒ ´½ ÜÒ µ.´ としてプロットしたもの ´再帰写像µ.´ µ 分岐図. µ ¾ ¼¸ ܽ ¼ ¾º ´ µ の場合のカオス的振舞. ´ ¿ ¾¸ ܽ ¼ ¾º µ´ µ の時系列 ÜÒ を ´ÜÒ ÜÒ·½ µ ÓÜ ¿ 水漏れ蛇口のカオス 水道の蛇口からポタポタと滴り落ちる水滴落下リズムは,時に非周期的にゆらぐ。この非周期性が決定論に由来したカオスであること は,Ë Û たちの実験 ´½ µ によってはじめて示された。その後も,水漏れ蛇口 ´水滴落下系µ は¸ 身近なカオス力学系の典型例として 熱心に研究されてきた。水滴落下系の実験では¸ 通常,流量を制御パラメタとして水滴の落下時間間隔 ÌÒ が測定される ´図 ´ µµ。非 周期的な時系列がカオスであるかどうかを調べるには¸ 時間遅れ座標を用いた状態空間の再構築法に従い, ̽ ̾ Ì¿ ¡ ¡ ¡ の隣り合う 値を対にして¸ ´Ì½ ̾ µ ´Ì¾ Ì¿ µ ¡ ¡ ¡ をプロットする ´再帰写像µ 方法が一般的である。図 ´ µ´ µ は¸ 実験で得られた再帰写像である。 ÌÒ と ÌÒ·½ には明らかに決定論的な関係があり,水滴落下の非周期的振る舞いがカオスであることがわかる。 ´ µ 水漏れ蛇口の実験の概略図.ちぎれた水滴がレーザーを横切る時刻 ؽ ؾ ¡ ¡ ¡ を測定する.´ µ´ µ 落下時間間隔 ÌÒ ØÒ·½ ØÒ の時系列 ̽ ̾ ¡ ¡ ¡ ÌÒ の再帰写像º 水滴落下のリズムはカオス的振る舞いを示す. ¿ 非線形動力学の基礎 ´Ò 個µ の要素 ´個体数,化学濃度,電位などµ により記述されるシステムを考える.通常,これらの要素は時間 Ø とと ½ ¾ ¡ ¡ ¡ Òµ と表し,全変数をベクトルとして もに変化するので,Ø を独立変数とする実数値関数である.各要素を Ü ´Øµ ´ 表せば¸ ܴص Ü ´Ü½ ´Øµ ܾ ´Øµ ¡ ¡ ¡ ÜÒ ´Øµµ ´½½µ 有限個 ´Ü½ ´Øµ ܾ ´Øµ ¡ ¡ ¡ ÜÒ ´Øµµ の値の組により一つ指定され,その時間発展が常微分方程式で記述され となる.システムの状態は, る場合は,一般に, ܽ Ø ½ ´Ü½ ܾ ¡ ¡ ¡ ÜÒ Ø ½ ¡¡¡ µ ܾ Ø ¾ ´Ü½ ܾ ¡ ¡ ¡ ÜÒ Ø ½ ¡¡¡ µ Ò ´Ü½ ܾ ¡ ¡ ¡ ÜÒ Ø ½ ¡¡¡ µ ´½¾µ ºº º ÜÒ Ø の形になる. ½ ¡ ¡ ¡ は制御変数と呼ばれ,我々がシステムを制御可能な要素を表す.この方程式を,Ü を使い簡略化した形 で表すと. ´Ü Ø µ Ü Ü ¾ ÊÒ ¾Ê ¡ ´½¿µ となる. Ò 階の常微分方程式 Ý Ø ØÝ は,非線形の場合も含んで必ず式 ¾Ý ؾ ÒÝ ¡¡¡ ¼ ØÒ Ý ¾ ʽ ¡ ´½¾µ¸ ´½¿µ の形にすることができる.つまり,式 ´½ µ を ÒÝ ØÝ Ò ØÒ ¾Ý Ý Ø Ò ½ Ý ´½ µ ÒÝ ØÒ について解き, ØÒ ½ ´½ µ ½ ¾ ¡ ¡ ¡ Òµ ½ ¾ ¡ ¡ ¡ Ò ½µ ´½ µ ´½ µ ؾ ¡¡¡ とし,さらに, Ü Ð ½ Ý Ø ½ Üз½ ´Ð ´ ´½¾µ の形になる. ´減衰振動µ バネに結ばれた質点にダッシュポット¶¾ を取り付け,速度に比例する摩擦力が働くとする.摩擦係数を とすれば,式 問題 ¿º とすると,運動方程式は Ñ となる.この方程式を式 ■自励系 式 ¾Ý ´Øµ ؾ Ý ´Øµ Ý ´Øµ Ø ´½¾µ の形に変形せよ. ´½¿µ において関数 k m が時間 Ø に陽に依存していないとき,自励的といい,そのシステムを自励系という.そうで ないときは,非自励的という. ¶¾ ダッシュポットとは油のはいった円筒の中をピストンが動くようなもので、速度に比例した抵抗を与える装置. ■状態空間 ´相空間µ 式 ´½¿µ で記述されるシステムについて,Ü を Ò 次元空間の点とみなすとき,この空間をシステムの状態 空間,もしくは相空間という.さらに,制御変数 を含む空間を相制御空間ということがある. システムのダイナミクスを理解するときには,状態空間における微分方程式の漸近的な解の構造と相空間内の流れの構造を明 らかにすることが重要になる. ´Ü µ において, ■不動点 ´定常解,平衡点µ 自励系 Ü ´Ü µ ´ ´½ µ ¼ µ を満たす,定数解 Ü を不動点 もしくは,定常解,平衡点 という. ÓÜ 酵素反応のミカエリス・メンテン式 ´Å Р׹ŠÒØ Ò Ò Ø ×µ 酵素反応の反応速度について考察しよう.ある反応を起こすもとになるものを基質 ´×Ù ×Ø Ò µ といい,反応して作られるものを生 ٠ص という. ここでは,酵素 ´ ÒÞÝÑ µ が基質 Ë と結合して酵素基質複合体 Ë を形成する場合を考える.さらに,この Ë は生成物 È を生成 するか,再び と Ë に戻ると仮定する.また,生成物 È が生成されると酵素は自由状態 に戻るとする.この反応は, 成物 ´ÔÖÓ と書くことができる.ここで, ½ ¸ ¾ ¸ ¿ は反応速度を決める定数であり,この反応を微分方程式で表すと, Ë Ø È Ø となる.ここで, ¡ ½ ¿ Ë ¾ Ë Ë ¿ ´½ µ Ë ´¾¼µ は,その濃度を表す. 議論を単純化するため, Ë ½ Ë Ë の濃度が定常的であると考える.つまり,式 ´½ µ において, Ë ¾ の場合を考える.このとき,酵素 Ë ¿ ¼ Ø ¼ として, ´¾½µ の総量を · Ë ØÓØ Ð ´¾¾µ Vmax Ë ½ ¾ · ØÓØ Ð Ë ¿ ½ ØÓØ Ð Ë ¾ · ¿ ½ がえられる.これを ´½ Ë ·Ë µ に代入すると È ¿ ØÓØ Ð Ë Ø ¾· ¿ ·Ë ´¾¿µ ´¾ µ d [P] dt とすると,この式と ´¾½µ から Vmax / 2 O Km [S] ½ となる.この式をミカエリス・メンテン式 ´Å Р׹ŠÒØ Ò Ò Ø ×µ という.このとき,速度パラメタとして, ÎÑ を定義すると, Ü ¿ ØÓØ Ð Ë È Ø となる. ÃÑ ÎÑ Ü Ë ÃÑ · Ë ¾ · ½ ¿ ´¾ µ ´¾ µ ミカエリス・メンテン式 になる. Ë 比例するが, Ë ´¾ µ のグラフは上図のよう È Øが Ë に ÃÑ では,反応速度 ½ で反応速度が一定値に近づく. ÃÑ はミカエリス・メンテン定数と呼ばれる. ■安定性 微分方程式 ´½¿µ の解を Ü ´Øµ とする.この解の安定性については,以下のような定義がある. Ù ÄÝ ÔÙÒÓÚ の意味での安定性 任意の ¯ に対して Æ ´¯µ が存在し,Ø Ø¼ で ´ µ ´ µ Æ ´¯µ ٠ؼ Ú Ø¼ ´ µ であるような他の解 Ú Ø¼ が,すべての Ø Ø¼ に対して ´Øµ ڴص ¯ Ù ´Øµ は一様安定であるという.そのような Æ´¯µ が存在しなければ,ٴص は不安定であるという. を満たすとき,解 Ù ´Øµ が一様安定で,さらに ٠Рѽ ٴص ڴص Ø ¼ ´Øµ は漸近安定といわれる. であれば,Ù u(t0) v(t) δ(ε) u(t) v(t0) ε Ä ÖÒ の意味での安定性 有界安定 ´ µ Å ½ が存在し,すべての Ø に対して ´Øµ Å Ù ´Øµ は有界安定であるという. であるとき,Ù ここでは,単に安定というときは一様安定を意味することにする. ■ÄÝ ÔÙÒÓÚ の安定性定理 Ü ´Üµ の不動点を ܼ とする.Ĵܼ µ ¼ であり,ܼ のまわりの領域 ´Ü なる関数で,さらに,その領域で ´ µ Ĵܵ Ø µ ´ µ ¼と ܼ で Ä Ü ´Üµ ¡ ÖĴܵ ¼ であるような Ä Ü が存在するとき,ܼ は安定である. ´ µ この条件を満たす Ä Ü はリャプノフ関数と呼ばれる.特に, ´Üµ ¡ ÖĴܵ ¼ であるものを強リャプノフ関数といい,こ のとき不動点は漸近安定である. 問題 ¿º ÄÓØ ¹ÎÓÐØ ÖÖ 捕食者被食者系 ܽ ܾ ܽ ´ ܾ µ ܾ ´ ܽ µ について考える.ここで,ܽ は被食者の個体数,ܾ は捕食者の個体数を表し, Ĵܽ ܾ µ として,不動点 ´ µ が安定であることを示せ. ܽ ÐÒ Ü½ · ¸ ܾ は正のパラメタである.リャプノフ関数を ÐÒ Ü¾ ÓÜ ÄÓØ ¹ÎÓÐØ ÖÖ モデル 自然界の生物では個体数が増減を繰り返すことがある.例えば,日本本近海のイワシ,サンマ,サバなどの資源量が数十年の周期で優 勢劣勢を繰り返していることが報告されている.このような現象を説明するための単純化したモデルとして,ÄÓØ ¹ÎÓÐØ ÖÖ モデルが ある.このモデルでは,次のことを仮定する: ´½µ ´¾µ ´¿µ ´µ ´µ 二種の生物 ¸ がいて, は に捕食される. は一定の食糧が保たれている環境にあり,同じ出生率 ½ を保っている.´簡単のため, て考える.µ と が出会うと,一定の割合 ¾ で は のに死亡率については出生率に含め に食べられる. の出生率は,捕食した総量に比例する.この比例係数を ¿ とする. の死亡率 の個体数を ܸ は一定. の個体数を Ý とすると,このモデルは,ÄÓØ ½Ü ݼ µ を正にとると,各個体数が周期的に増減する周期解をもつ. ½ ■ポアンカレ写像と再帰写像 方程式 ¾ ÜÝ Ý ¿ ÜÝ Ü Ý で表される.この方程式は,初期値 ´Ü¼ ¹ÎÓÐØ ÖÖ ½ ¸ ¾ ½¸ ¿ ¿¸ ½º 下図のように不動点ではない解軌道と横断的に交わるように定めた局面をポアンカレ断面とい う.この断面上では解軌道は一つの点として表される.このとき,ポアンカレ断面の点の時間発展を定める写像をポアンカレ写 像という.さらに,ポアンカレ断面を軌道が再帰的に交わるように定めたとき,この断面上の写像を再帰写像という. ½¼ 分岐現象 ここでは,式 ´½¿µ の ´Ü Ø µ が,時間に陽に依存しない自励系 Ü ´Ü µ Ü ¾ ÊÒ ¾Ê ¡ ´¾ µ を考える.自励系では,状態空間(相空間)内で複数の解軌道が交差することはない. ´ µ ■分岐 制御変数の変化によって,状態空間 相空間 の位相的構造が同値ではないものと変化することを分岐 ´ ÙÖ Ø ÓÒµ という. 例として Ü ´Ü ¾ Ê Ü¾ ¾ ʵ ´¾ µ について考える.まずは,不動点(平衡状態)について考察する.不動点の条件は,Ü Ü¾ ¼ であるので, ¼ ´¾ µ の解が不動点である.不動点(解)の数については, ´µ ´µ ´ µ ¼ のとき,¼ 個, ¼ のとき,½ 個, ¼ のとき,¾ 個, と変化する.不動点の数が変化すれば状態空間の位相的構造も同値でないものに変わるので, ¼ は分岐点である(定義に よっては,解が存在しない状態からの解の出現を分岐といわないこともある) . x c O Ü Ü¾ の相制御空間における不動点の変化(実線) ܼ ´ µ の近傍のダイナミクスを調べるために, 次の段階として,不動点の安定性を考える.不動点 Ü Ü とおいて,微小変位 ÆÜ の時間発展を調べる.これを,Ü Ø ´Ü¼ ´ µ · Æܵ ܼ ´ µ · ÆÜ Ø となるので,式 ´¿½µ を解いて, となる.ここで, Ø ÆÜ Ø Ü¼ ´ µ · ÆÜ ´Ü µ に代入し,ÆÜ の時間発展を調べる. ´Ü¼ ´ µ · ÆÜ µ ¬ ´ Ü µ ¬¬ ´Ü¼ ´ µµ · Ü ¬Ü ¬¬ ´Ü µ ¬ ÆÜ Ü ¬Ü ܼ ´ µ ÆÜ ´¿¼µ ܼ ´ µ ÆÜ · Ç Æܾ ¡ ´¿½µ ÆÜ´¼µ Ø ´¿¾µ ¬ ´Ü µ ¬¬ Ü ¬Ü ´¿¿µ ½½ ܼ ´ µ とした.式 ´¿¾µ より, ¼ のとき,ØРѽ ÆÜ ¼ となるので,不動点は安定である.一方, るので,不安定であることがわかる.このような分析を線形安定性解析という. 線形安定性解析から,式 ´¾ µ については, Ô ¼ のとき,ܽ は安定であり,ܾ ¼ のとき,ØРѽ ÆÜ Ô ½ とな は不安定であることがわかる. x c>0 x2 安定 不安定 問題 º 定数 ¸ ¸ が, x x2 x1 c O x1 Ü Ü¾ Ü ´Ü µ´Ü µ´Ü µ の不動点の安定性 であるとき, の不動点の安定性を調べよ. ■線形安定性解析 ¾ 変数 Ù¸ Ú の時間発展が, ´Ù Úµ ´Ù Ú µ Ù Ú で記述されるシステムを考え,不動点の安定性を分析する. ¸ ´¿ µ ´¿ µ の少なくともどちらかが非線形な関数であれば,このシステム は非線形である. 不動点 ´Ù¼ Ú¼ µ の条件は,Ù ¼,かつ,Ú ¼ であるので, ´Ù¼ Ú¼ µ ´Ù¼ Ú¼ µ ¼ ´¿ µ ¸ ÆÚ として, である.この不動点近傍の微小なずれを ÆÙ Ù¼ · ÆÙ Ú¼ · ÆÚ Ù Ú を式 ´¿ µ ´¿ µ ´¾¾ µ¸ ´¾¾ µ に代入し,ÆÙ¸ ÆÚ について展開して ½ 次まで残すと, ÆÙ ÆÚ となる.ここで, ½½ ¾½ である.式 ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ù ¬Ù ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ù ¬Ù · ¾½ ÆÙ · ½½ ÆÙ ÆÙ ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ú ¬Ù ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ú ¬Ù ¾¾ Ù¼ Ú Ú¼ ´¿ µ¸ ´ ¼µ の解として, ¾¾ ÆÚ ½¾ Ù¼ Ú Ú¼ ´¿ µ ´ ¼µ ½¾ ÆÚ Ø ÆÚ ½½ Ø· Ù¼ Ú Ú¼ Ù¼ Ú Ú¼ ´ ½µ ´ ¾µ ´ ¿µ Ø を仮定して,代入すると, Ø Ø Ø· ¾½ ½¾ ½¾ ¾¾ Ø Ø ´ µ ´ µ となる.これらの式から を消去すると, ¾ がえられる.式 ´ µ から求められる ´ µ ´ ¾¾ µ ½¾ ¾½ ¼ ´ ½½ · ¾¾ µ · ½½ ¾¾ ½¾ ¾½ ¼ ´ µ ´ µ ½½ が一つでも正の値をもつ,もしくは実部が正であれば,不動点は不安定である.した がって,不動点が不安定になる条件は次のいずれかである: ´µ ´µ ´ ´ ½½ ¾¾ ¼ ½¾ ¾½ が正,負の実数である条件 · ½½ ¾¾ µ ¼ が正の実数を少なくとも一つもつ,もしくは実部 Ê が正となる条件 µ の値の考察 ´ µ また,安定 一様安定 となる必要十分条件は, ½½ 件は, ½½ 問題 · º ¾¾ ¼ かつ ÄÓØ ¹ÎÓÐØ ÖÖ ½½ ¾¾ ½¾ ¾½ · ¼ である. 捕食者被食者系 ¼ かつ ¾¾ ½½ ¾¾ ܽ ´ ܾ µ ܾ ´ ܽ µ ܽ ܾ について考える.ここで,ܽ は被食者の個体数,ܾ は捕食者の個体数を表し, 使って,不動点 ´ µ が安定であることを示せ. ½¾ ¾½ ¸ ¼ である.漸近安定となる必要十分条 は正のパラメタである.線形安定性解析を ■スーパークリティカル分岐とサブクリティカル分岐 減衰振動を考えた問題 ¿º において, Ý Ü Ù Ú Ý ´ µ とすれば, Ù Ú Ù Ñ Ù Ñ Ú ´ µ ´ ¼µ がえられる.このような振動現象の定性的な振る舞いを議論するために,制御変数を一つだけ含む Ù Ú について考える.減衰振動では,摩擦係数に関係する ´ ½µ ´ ¾µ Ù Ú Ù は正であるが,これを仮想的に負にとると,エネルギーが注入されるこ とになり,振動の振幅は時間とともに増加する.このまままでは, ¿ なるとエネルギーの散逸が働くように, 次の非線形項 Ù¿ を式 Ù Ú ¼ のときに振幅が発散するので,振幅がある程度大きく ´ ½µ に加え, Ù Ù¿ Ú Ù ½¿ ´ ¿µ ´ µ ´Ù Úµ 内で,ベクトル ´Ù Úµ は解軌道の進む方向 ´流れµ を表している ´下図µ.式 ´ ½µ では, ¼ のとき は内向きの渦 ´左µ, ¼ のときは外向きの渦 ´中µ がある.一方,式 ´ ¿µ では,渦が外向きから内向きに変わる境界が見られ る ´右µ. とする.状態空間 状態空間の流れ. 式 ´ ¿µ の両辺を Ø で微分し,Ù Ô Ô ¿ と変数変換すると, Ü ¾Ù ¾Ù · ؾ ¾Ü · ؾ · ¿Ù¾ ½ ܾ ¡ Ù ·Ù Ø Ü ·Ü Ø ¡ Ù Ù Ú ¿Ù¾ Ø Ø Ø Ø¾ ¼ ¼ ´ µ ´ µ はファン・デル・ポール ´Ú Ò Ö ÈÓе 方程式と呼ばれている. ¼ のとき,式 ´ ¿µ¸ ´ µ の解の振る舞いを調べる.ここでは, Ù によるエネルギーの注入と,Ù¿ によるエネルギーの散 となる.式 逸がバランスし,解は周期振動を示すと仮定する.つまり,その振動の周期を Ì とすると ٴص が成り立つと仮定する.式 ¼ Ù Ù Ø Ù Ù Ù´Ì µ Ù¾ ¾ Ù´Ì µ ¼ Ù¾ · Ù ´ ½µ では,式 ´ µ より, ´ ¾µ は, Ì ¼ Ù¾ · Ù Ù´¼µ ¡ Ø Ì ¼ ¼ Ù´¼µ Ì º Ú ´Ø · Ì µ ´ µ ´ µ Ù¾ Ù ÚÙ Ù Ù Ø Ø Ù´¼µ となることを使った 式 Ú ´Øµ ´ ¿µ に Ù をかけ,½ 周期にわたり積分すると, Ì となる.式 Ù´Ø · Ì µ Ì ¼ ¡ Ù¾ · Ù Ù¾ · Ù ¼ Ø ¼ ¡ ¡ ¡ Ì ¼ ½ ¼ Ø Ú Ú´Ì µ Ú´¼µ Ú¾ Ø ¾ Ù¾ · Ù Ú ´¼µ Ù · Ù¿ Ì Ø ¡ Ú Ø Ø ´ µ Ú Ú ´ µ Ú´Ì µ ´ ¼µ Ú´¼µ Ø ¼ ´ ½µ ´ ¾µ Ù´Ì µ Ì ¼ Ì Ù¾ · Ù ¡ Ú Ø Ø Ú ´Ì µ Ì ¼ Ù · Ù¿ ¡ Ú ¼ ´ ¿µ とあらわすことができる.元々の物理な意味では,Ú は変位を表している.したがって, 摩擦力 に対応する 微小変位 Ú の間にする仕事が, Ù · Ù¿ ¡ Ú であり,式 ´ ¿µ は,½ 周期 Ì の間に µ ¼ になることを意味している. ¡ Ù · Ù¿ が ´ 摩擦力 がする仕事が定常状態 周期振 動が実現されたとき で ½ のとき,周期振動の解を調和振動で近似的に表す.つまり,振動数を ×Ò Ú ¾ を仮定する.このとき,Ì であり,Ù Ó× Ò Ú ¾ ¾ ¼ ´ µ Ø Ø である.これらを,式 ´ ´ ¼ ¾ ¾ として, ¾µ に代入し,積分を実行すると, Ó Ó× Øµ Ø ¼ ´ µ Ó× Øµ¾ · ´ ¾ ´½ · Ó× ¾ ص · ´¿ · Ó×¾ Ø · Ó× ¾ ص ·¿ ¾ ¾ ·¿ Ø ¿ ¾ ¼ ´ µ ¼ ´ µ ¼ ´ µ Ö ¼ のときには, ¼ のみが解であるが, ¼ では,振幅が近似的に ¾ で与えられる ¿ 周期振動が出現する.線形安定性解析を使えば, ¼ では, ¼ に対応する不動点 ´Ù Úµ ´¼ ¼µ が不安定になることが示 ¼ で不動点から周期振動への分岐が起こる¶¿ .この分岐は振動の振幅が連続的に変化するので,スーパー せるので,分岐点 クリティカル ´×ÙÔ Ö Ö Ø Ðµ 分岐と呼ばれる ´下図左µ. となる.したがって, A A 㻜 㻜 μ 㻙㻜㻚㻢㻌㻌㻙㻜㻚㻠㻌㻌㻙㻜㻚㻞㻌㻌㻌㻌㻜㻌㻌㻌㻌㻌㻜㻚㻞 㻙㻜㻚㻢㻌㻌㻙㻜㻚㻠㻌㻌㻙㻜㻚㻞㻌㻌㻌㻌㻜㻌㻌㻌㻌㻌㻜㻚㻞 μ 周期軌道への収束. 一方で,振動の振幅が不連続に変化するサブクリティカル ´×Ù ´ ÖØ µ е 分岐と呼ばれる分岐がある 上図右 .このような分 岐は,高次の非線形項を含む次のようなシステムで生じる. Ù · Ù¿ Ù Ú Ù Ú ¸ ここで 式 ´ µ ´ ¼µ Ù ´ µ を導いたのと同様の方法を使えば, Ì ¼ より, がえられる.これを, について解くと, ¼ ¶¿ 線形安定性解析における固有値 ¾ ¿ ·Ù Ù¾ Ù · ¾ Ô が虚数部分をもち,パラメタ ¼ ¾ ¡ Ø ¼ ¾ ¼ ¾ を変えることにより, 分岐という. ½ ´ ½µ ¿· Ô ¾ ¼ ´ ¾µ の実部が符号を変えるような解の不安定化をホップ ´ÀÓÔ µ となるので, 場合, ´µ の実数解の個数は, ¼ ¼ が分岐点である. ¼ のとき ½ 個,´ µ ¼ ¼ のとき ´ µ 個, ¼ のとき ¿ 個である.この ■リミットサイクル振動 エネルギーの注入と散逸がある非線形系では,周期的な振動現象がみられることがある.例えば,式 ´ ¿µ¸ ´ µ では, ¼ のとき,周期振動が生じる ´下図µ.この場合,´Ù Úµ ´¼ ¼µ の任意の初期値から出発した軌道はすべ て周期解に漸近する ´下図 ´ ¸ µµ.このような性質をもつ周期振動をリミットサイクル振動と呼ぶ ´下図 ´ ¸ µµ. 式´ ¿µ¸ ´ µ の数値計算結果 ´ ´ ¸ µ リミットサイクル振動. 式 ´ µ¸ ´ ¼µ でも, の値は図中に示したµ.´ ¸ µ 初期値を青と赤の矢印で示す点に選んだ場合の軌道. ¼ のとき,リミットサイクル振動が生じる.さらに,¼ ¼ ¼ ¾¾ のときにリミットサイクル 振動する安定な解が存在するが,この領域では,安定な不動点も共存している. ´ µ¸ ´ ¼µ の数値計算結果 ´ ¼ ½µ.´ µ 初期値を青と赤の矢印で示す点に選んだ場合の軌道. ´ µ リミットサイクル振動 ´実 線µ と不動点 ´原点µ が漸近安定な解である.破線は不安定周期解であり,¾ つのアトラクタ¶ の吸引域 ´ × Òµ を分けている. 式 ¶ アトラクタ ´ ØØÖ ØÓÖµ とは状態空間内の軌道が漸近する集合のことである.アトラクタ上の軌道はアトラクタ内にとどまり続ける.アトラクタには, ½ ÓÜ ØÞÀÙ ¹南雲モデル 神経細胞 ´ニューロン¸ Ò ÙÖÓÒµ の電気的活動を定性的に記述するモデルとして, ØÞÀÙ ¹南雲モデルが知られている.このモデル は、ファン・デル・ポール方程式 ´式 ´ µµ から導かれ、 ÓÒ Ó « Ö が提案した神経モデルと似ているため、 ÓÒ Ó « Ö¹Ú Ò Ö ÈÓÐ 方程式とも呼ばれている. ØÞÀÙ ¹南雲モデルは,Ü を細胞膜電位,Ý を不応性として,次のように記述することができる. Ü Ø Ý Ø ここで, ¸ ¸ Ü´Ü µ´½ ܵ Ý · Á ÜØ ´ ¿µ Ü Ý ´ µ ¸ ¸ はパラメタ,Á ÜØ は外部から細胞膜内への入力電流を表す.このモデルは,パラメータ の条件により,神経系に 見られる興奮性や振動性を示す. 興奮性の振る舞い Á ÜØ ´ ¼ ½¸ ¼ ¸ Á¼ とし,それ以外の時刻で Á 振動性の振る舞い ´ ¼ ½¸ ÜØ ¼ ¸ ½¼¼ の場合の数値計算結果µ.ここでは,½¼¼ ¼ とした. ½¼¼¸ Á ÜØ Á¼ の場合の数値計算結果µ. 不動点,リミットサイクル,トーラス,カオスアトラクタ ´もしくは,ストレンジアトラクタµ に分けられる. ½ Ø ½½ のとき ´灰色の領域µ, 決定論的カオス 前節では,微分方程式で記述されるシステムの漸近的な振舞いとして,不動点とリミットサイクル振動を議論した.一方,微 分方程式や差分方程式など,決定論的な時間発展方程式に支配されたシステムであっても,非周期的な振舞いが見られることが ある ´ ÓÜ ¿ 参照µ.そのような非周期的振舞いの時間発展は,短期的には予測可能であるが,長期的には予測不可能で不規則な ものになる.その不規則性の起源は,量子力学のように確率的にしかシステムの状態を記述できないことではなく,また,アボ ¿ ガドロ数の自由度をもつシステムのように状態数の多さに由来するものでもない. 次元の微分方程式系や ½ 次元の差分方程式 系など,比較的自由度の小さいシステムでも非周期的振舞いは見られ,その振舞いは決定論的カオス,もしくは単にカオスと呼 ばれる.この節では,決定論的カオスの基本的特徴,および,それに関連した普遍現象について紹介する. ÓÜ 決定論的システムの未来の予測 数学者ラプラス ´È ÖÖ ¹Ë ÑÓÒ Ä ÔÐ µ は,自然に対する認識として次のように述べている. Ì ÔÖ × ÒØ ×Ø Ø Ó Ø ×Ý×Ø Ñ Ó Ò ØÙÖ × Ú ÒØÐÝ ÓÒ× ÕÙ Ò Ó Û Ø Ø Û × Ò Ø ÔÖ Ò ÑÓÑ Òظ Ò Û ÓÒ Ú Ó Ò ÒØ ÐÐ Ò Ø Ø Ø Ú Ò Ò×Ø ÒØ ÓÑÔÖ Ò × ÐÐ Ø Ö Ð Ø ÓÒ× Ó Ø ÒØ Ø × Ó Ø × ÙÒ Ú Ö× ¸ Ø ÓÙÐ ×Ø Ø Ø Ö ×Ô Ø Ú ÔÓ× Ø ÓÒ¸ ÑÓØ ÓÒ׸ Ò Ò Ö Ð « Ø× Ó ÐÐ Ø × ÒØ Ø × Ø ÒÝ Ø Ñ Ò Ø Ô ×Ø ÓÖ ÙØÙÖ º È Ý× Ð ×ØÖÓÒÓÑݸ Ø Ö Ò Ó ÒÓÛÐ Ø Ø Ó × Ø Ö Ø ×Ø ÓÒÓÖ ØÓ Ø ÙÑ Ò Ñ Ò ¸ Ú × Ù× Ò ¸ Ð Ø ÑÔ Ö Ø¸ Ó Û Ø ×Ù Ò ÒØ ÐÐ Ò ÛÓÙÐ º Ì × ÑÔÐ ØÝ Ó Ø Ð Û Ý Û Ø Ð ×Ø Ð Ó × ÑÓÚ ¸ Ò Ø Ö Ð Ø ÓÒ× Ó Ø Ö Ñ ×× × Ò ×Ø Ò ×¸ Ô ÖÑ Ø Ò ÐÝ× × ØÓ ÓÐÐÓÛ Ø Ö ÑÓØ ÓÒ× ÙÔ ØÓ ÖØ Ò ÔÓ ÒØ Ò Ò ÓÖ Ö ØÓ Ø ÖÑ Ò Ø ×Ø Ø Ó Ø ×Ý×Ø Ñ Ó Ø × Ö Ø Ó × Ò Ô ×Ø ÓÖ ÙØÙÖ ÒØÙÖ ×¸ Ø ×ÙÆ × ÓÖ Ø Ñ Ø Ñ Ø Ò Ø Ø Ø Ö ÔÓ× Ø ÓÒ Ò Ø Ö Ú ÐÓ ØÝ Ú Ò Ý Ó × ÖÚ Ø ÓÒ ÓÖ ÒÝ ÑÓÑ ÒØ Ò Ø Ñ º Å Ò ÓÛ × Ø Ø Ú ÒØ ØÓ Ø ÔÓÛ Ö Ó Ø Ò×ØÖÙÑ ÒØ ÑÔÐÓÝ׸ Ò ØÓ Ø ×Ñ ÐÐ ÒÙÑ Ö Ó Ö Ð Ø ÓÒ× Ø Ø Ø Ñ Ö × Ò Ø× Ð ÙÐ Ø ÓÒ׺ ÙØ ÒÓÖ Ò Ó Ø « Ö ÒØ Ù× × ÒÚÓÐÚ Ò Ø ÔÖÓ Ù Ø ÓÒ Ó Ú ÒØ׸ × Û ÐÐ × Ø Ö ÓÑÔÐ Ü Øݸ Ø Ò ØÓ Ø Ö Û Ø Ø ÑÔ Ö Ø ÓÒ Ó Ò ÐÝ× ×¸ ÔÖ Ú ÒØ× ÓÙÖ Ö Ò Ø × Ñ ÖØ ÒØÝ ÓÙØ Ø Ú ×Ø Ñ ÓÖ ØÝ Ó Ô ÒÓÑ Ò º Ì Ù× Ø Ö Ö Ø Ò × Ø Ø Ö ÙÒ ÖØ Ò ÓÖ Ù׸ Ø Ò × ÑÓÖ ÓÖ Ð ×× ÔÖÓ Ð ¸ Ò Û × ØÓ ÓÑÔ Ò× Ø ÓÖ Ø ÑÔÓ×× Ð ØÝ Ó ÒÓÛ Ò Ø Ñ Ý Ø ÖÑ Ò Ò Ø Ö « Ö ÒØ Ö × Ó Ð Ð ÓÓ º ËÓ Ø Û × Ø Ø Û ÓÛ ØÓ Ø Û Ò ×× Ó Ø Ò ÓÖ ÔÖÓ Ð Øݺ ÙÑ Ò Ñ Ò ÓÒ Ó Ø ÑÓ×Ø Ð Ø Ò Ò Ò ÓÙ× Ó Ñ Ø Ñ Ø Ð Ø ÓÖ ×¸ Ø × Ò Ó ´Ä ÔÐ ¸ ½ µ 一方で,数学者ポアンカレ ´ÂÙÐ ×¹À ÒÖ ÈÓ Ò Ö µ はカオスの存在を認識し,次のように述べている. Ú ÖÝ ×Ñ ÐÐ Ù× Û × Ô × ÓÙÖ ÒÓØ Ø ÖÑ Ò × ÓÒ× Ö Ð « Ø Ø Ø Û ÒÒÓØ Ð ØÓ × ¸ Ò Ø Ò Û × Ý Ø « Ø × Ù ØÓ Ò º Á Û Ò Û Ü ØÐÝ Ø Ð Û× Ó Ò ØÙÖ Ò Ø × ØÙ Ø ÓÒ Ó Ø ÙÒ Ú Ö× Ø Ø Ò Ø Ð ÑÓÑ Òظ Û ÓÙÐ ÔÖ Ø Ü ØÐÝ Ø × ØÙ Ø ÓÒ Ó Ø Ø × Ñ ÙÒ Ú Ö× Ø ×Ù Ò ÑÓÑ Òغ ÙØ Ú Ò Ø Û Ö Ø × Ø Ø Ø Ò ØÙÖ Ð Ð Û× ÒÓ ÐÓÒ Ö ÒÝ × Ö Ø ÓÖ Ù׸ Û ÓÙÐ ×Ø ÐÐ ÓÒÐÝ ÒÓÛ Ø Ò Ø Ð × ØÙ Ø ÓÒ ÔÔÖÓÜ Ñ Ø Ðݺ Á Ø Ø Ò Ð Ù× ØÓ ÔÖ Ø Ø ×Ù Ò × ØÙ Ø ÓÒ Û Ø Ø × Ñ ÔÔÖÓÜ Ñ Ø ÓÒ¸ Ø Ø × ÐÐ Û Ö ÕÙ Ö ¸ Ò Û × ÓÙÐ × Ý Ø Ø Ø Ô ÒÓÑ ÒÓÒ Ò ÔÖ Ø ¸ Ø Ø Ø × ÓÚ ÖÒ Ý Ð Û׺ ÙØ Ø × ÒÓØ ÐÛ Ý× ×Ó Ø Ñ Ý ÔÔ Ò Ø Ø ×Ñ ÐÐ « Ö Ò × Ò Ø Ò Ø Ð ÓÒ Ø ÓÒ× ÔÖÓ Ù Ú ÖÝ Ö Ø ÓÒ × Ò Ø ¬Ò Ð Ô ÒÓÑ Ò º ×Ñ ÐÐ ÖÖÓÖ Ò Ø ÓÖÑ Ö Û ÐÐ ÔÖÓ Ù Ò ÒÓÖÑÓÙ× ÖÖÓÖ Ò Ø Ð ØØ Öº ÈÖ Ø ÓÒ ÓÑ × ÑÔÓ×× Ð ¸ Ò Û Ú Ø ÓÖØÙ ØÓÙ× Ô ÒÓÑ ÒÓÒº ´ÈÓ Ò Ö ¸ ½ ¼¿µ 問題 º ÓÜ の英文を日本語に訳せ. ■保存系と散逸系 保存系とは,摩擦の無い振動子のように全体の運動エネルギーとバネのポテンシャルエネルギーの総和が, 保存され続けるシステムのことである.一方で,全体のエネルギーに増減が生じるシステムを散逸系という. 保存系と散逸系の状態空間における特徴をみるために,ここでは例として ´Ü ݵ ´Ü Ý µ Ü Ý このシステムの解で,Ø ¼ における初期値が ܼ ¸ ݼ であるものを Ü Ü´Ü¼ ݼ ص Ý Ý ´Ü¼ ݼ ص と表すことにする. ½ ¾ 次元のシステムを考える. ´ µ ´ µ ´ µ ´ µ ¾ 次元の状態空間のある領域 の面積は Ë で求められる.初期値の集合を領域 ¼ 内にとったとき,時刻 ´ µ Ø での Ë の面積は, ¬¬ ¬¬ ´Ü´Ü¼ ݼ ص ݴܼ ´Ü¼ ݼ µ ¼ Ë ´Øµ となる 上式の ¡ は絶対値を表す .ここで, ´ ¬¬ ¬ ´Ü ݵ ¬¬ ´Ü¼ ݼ µ ¬¬ ¬ µ ´ µ Ü Ý Ü Ü¼ Ý Ü¼ Ü Ý¼ Ý Ý¼ ¬¬ ¬¬ ¬¬ ¬¬ ¬ ¬ ݼ صµ ¬¬ ܼ ݼ ´ ¼µ Ü Ý Ü Ý Ü¼ ݼ ݼ ܼ ´ ½µ ´Â Ó Òµ と呼ばれる.式 ´ ¼µ を時間 Ø で微分すると, ´Ü ݵ · ´Ü ݵ Ü Ý ¼ ¼ ´Ü¼ ݼ µ ´Ü¼ ݼ µ ¼ Ü Ý ´Ü Ý µ Ü Ý · Ü Ý ´Ü¼ ݼµ ¼ ¼ ¼ Ü Ý ´Ü ݵ Ü Ý · ¼ ¼ Ü Ý ¼ ´Ü¼ ݼ µ Ü · ÝÝ Ë ´Øµ Ü であり 上式の ¡ は行列式を表す ,これはヤコビ行列式 Ë ´Øµ Ø となる.式 ´ µ では,領域 ´ ¼ が十分小さく, Ü Ü Ý Ý · が成り立つ.この式は,状態空間内の微小領域の面積の変化を表している.したがって,Ë そうでない場合が散逸系である.散逸系の場合,Ë ¼ の集合に近づく ´下図参照µ. 式 ´ µ と同様に,Ò 次元の状態空間 ´Ü½ ´ ¿µ ´ µ ´ µ Ü Ü · Ý Ý µ が一定値とみなせることを仮定した¶ .したがって, Ë ´Øµ Ë ´Øµ に面積 ´ ¾µ ´ µ ´Øµ Ë ´Øµ ¼ であれば保存系であり, ´Øµ Ë ´Øµ ¼ であれば,状態空間内の有限の面積をもった領域が時間ととも ܾ ¡ ¡ ¡ ÜÒ µ の体積 Î の変化率は, Ò Î ´Øµ Î ´Øµ ½ Ü Ü ´ µ となる. ݸ Ý Üº このとき,Ë ´Øµ Ë ´Øµ ¼º ´ µ Ü ¼ Ü Ý¸ Ý Üº ¼ ½ Ü Ü Ý¸ Ý Üº このとき,Ë ´Øµ Ë ´Øµ ¼º このとき,Ë ´Øµ Ë ´Øµ ¼ ½ ¿Ü¾ º 初期値集合 ´赤µ の時間発展 ´紺µº Ë ´Øµ Ë ´Øµ ¶ ここでは,ܸ ¼ º ´ µ Ü ´µÜ ¿ ܸ ݸ Ý を ܼ ¸ ݼ の関数と考えており, Ü Ü Ü Ü¼ ܼ Ü であるが,ここでは,ܼ ¸ ݼ に依存しないと考えた. ½ · Ü Ý¼ ݼ Ü このとき, ´ µ は保存系の例であり,初期値の集合の面積が保存されている.一方,上図の ´ µ¸ ´ µ では,初期値の集合が,Ø ½ で,面積 ¼ の集合に引きつけられる.このように,散逸系において,Ø ¼ で軌道が近づく集合をアトラクタという.アトラク 上図の タに含まれる点から時間発展する軌道は,そのアトラクタにとどまり続ける.不動点,リミットサイクルはアトラクタの例であ ¾ り, 次元の微分方程式系でのアトラクタはこの 問題 º½¼ ¾ 種類に限られる. ハミルトン力学系の時間発展は,エネルギーに対応する物理量を表すハミルトニアン À ´À Ñ ÐØÓÒ Òµ À ´Ô½ Ô¾ ¡ ¡ ¡ ÔÒ Õ½ Õ¾ ¡ ¡ ¡ ÕÒ µ ´ µ À Õ À Ô ´ µ ¸ を使って 正準方程式 Ô Õ ´ µ により記述される.時刻 Ø でのハミルトン力学系の状態空間 相空間 の体積を Î ■¿ 次元微分方程式系のカオス ´ ¼µ ´Øµ とするとき, ÎÎ ´´Øصµ ¼ となることを示せ. カオスの特徴をまとめる前に,散逸系におけるカオスの例を紹介する.まずは,レスラー ´ÊÓ××Ð Öµ 方程式と呼ばれる ¿ 次元の微分方程式の解の振る舞いを見る. Ü ´Ý · Þ µ ½ Ý Ü· Ý Þ ½ · Þ ´Ü µ ´ ½µ ここでは, が制御変数である. º½ は式 ´ ½µ において, とした場合の数値解である.状態空間内の初期値から出発した軌道は,この図に示された アトラクタに吸引される ´ 図ではアトラクタに至るまでの過渡状態は描かれていないµ.このアトラクタは平たい帯状の構造を もっており,このアトラクタ内で非周期的な運動,すなわちカオス ´決定論的カオスµ が生じている.このアトラクタをストレ 図 ンジアトラクタ ´×ØÖ Ò ØØÖ ØÓÖµ,もしくはカオスアトラクタという. カオスの特徴として,短期的未来の振る舞いは予測可能だが長期的には予測不可能になることがある.カオスでは初期値のわ ずかな違いが未来の状態に大きな違いをもたらす初期値鋭敏性がある. ¾¼ 図 º½ レスラー方程式のストレンジアトラクタ ´ µ. 図 º¾ ポアンカレ断面. º¾ は,Þ 軸を一辺とする半平面をポアンカレ断面としてとったものである.ここでは,Þ 軸との距離を Ö とした.この断 面からアトラクタのシート状の構造が折りたたまれていく様子を見ることができる.この系の振る舞いを解析するために,´ µ のポアンカレ断面における再帰写像 ´ÖÒ ÖÒ·½ µ を描いたものが図 º¿ である.この写像は ½ 次元写像であり, ページのロジス 図 テック写像に似た山形の構造をもっている.このように再帰写像を構成することで,連続力学を離散写像を用いて解析するこ とができる.カオスの基本的なメカニズムは,軌道の引き延ばしと折りたたみにあるが,再帰写像の構造はその存在を表して いる. 図 また,制御変数 と を変化させたときの分岐図が図 º º¿ 再帰写像. である.ここでは,図 º¾ の ´ µ の断面とアトラクタの交点の Ü 座標 の関係を描いた.分岐図の構造についても,ロジスティック写像と共通の特徴をもつことがわかる.分岐図には周期倍分 岐や窓といわれる構造がみられ,Ü 方向に軌道が幅広く分布している領域でカオスが生じている. ¾½ 図 º 分岐図 ´左µ と周期解 ´右µ. ÓÜ ½¼ 水漏れ蛇口のカオス ´その ¾µ º 図 図 º ポアンカレ断面とポテンシャル曲面. 水滴カオスのストレンジアトラクタ ´上:実験,下:数値シミュレーションµ. ú à ÝÓÒÓ¸ ̺ à Ø×ÙÝ Ñ ¸ ̺ Å ×ÙÒ È Ý׺ Ä Øغ ¿¾¼¸ ¹ ¾ ´¾¼¼¿µº ■リャプノフ指数 ¸ ƺ Ù Ñ ¸ È ØÙÖ Ó Ø ÐÓÛ¹ Ñ Ò× ÓÒ Ð ×ØÖÙ ØÙÖ Ò ÓØ Ö ÔÔ Ò Ù Ø׺ リャプノフ指数は,状態空間内の近接した軌道の距離が時間とともにどの程度に変化するかを表す量であ る.リャプノフ指数を とすると,近接した ¾ つの軌道間の距離は時間 Ø の経過とともに, ´Øµ のように変化する.ここで, ´¼µ Ø ´ ¾µ ´¼µ は Ø ¼ における距離である.状態空間の次元が Æ の場合には,リャプノフ指数は Æ 個存在 し,カオスの場合は,最大のリャプノフ指数が正になる. ½ 次元写像のリャプノフ指数 ½ まずは, 次元写像 ´ÜÒ µ ÜÒ·½ ¾¾ ´ ¿µ の場合のリャプノフ指数を考える.初期値を ܼ とすると, ´ ´ ÜÒ·½ ´ ´Ü¼ µµ ¡ ¡ ¡ µµ ¡¡¡ Ò ´Ü ¼ µ ´ µ となる.このとき,ܼ を微小量 ¯¼ だけ変化させると, ¯Ò Ò ´Üµ ¬¬ ¬ ¯¼ ¯¼ ¯¼ Ò ½ Ü ¬Ü ܼ ¬ ´Üµ ¬¬ Ü ¬Ü ÜÒ ½ ¬ ´Üµ ¬¬ Ü ¬Ü ¼ ¬ ´Üµ ¬¬ Ü ¬Ü ¯¼ Ü とすると, Ò となる.ここでは,Ò ¯¼ ¬ ½ ÐÒ Ò ½ ¬¬ ¬ Ò ½ とした, ÐÑ Ò ½ を ÒÒ ¯¼ ¬ ½ Ò ½ ÐÒ ¬¬ ¬ Ò ¬ ´Ü µ ¬¬ Ü ¬ ¼ Ò ½ ¬¬ ÐÒ Ñ½ Ò½ ÐÒ ¬¬ Ò ¬ ´Üµ ¬¬ Ü ¬Ü ܼ ´ µ ´ µ ¬ ´Ü µ ¬¬ Ü ¬ ¬¬ ¬ ´Ü µ ¬¬ Ü ¬ ¼ ܽ Ü Ò ½ ¬¬ ¼ ¡¡¡ ´Ü µ ¼ となる.¯Ò の絶対値をとり, ¯Ò Ò ½ ÜÒ ¾ ¬ ´Üµ ¬¬ Ü ¬Ü ´ µ ¼ ¬ ´Ü µ ¬¬ Ü ¬ ´ µ ´ µ ´½¼¼µ ½ 次元写像のリャプノフ指数として定義する. 周期軌道のリャプノフ指数 Ò 周期軌道は, Ü£ を満たす Ü£ であり,Ü£ は Ò 個の互いに異なる値 ¬¬ ¬¬ であるので,安定な Ò 周期軌道 ´½¼½µ Ü£½ Ü£¾ ¡ ¡ ¡ Ü£Ò をもつ.このとき, £ £ ܽ·Ò ܾ·Ò となる.この Ò 周期軌道が安定である条件は, Ò ´Ü£ µ ¡ ¡ ¡ Ü£¾Ò Ò ´Ü£ µ ¬¬ Ü ¬¬ ¡ ´Ü£½ Ü£¾ Ò ½ ¬¬ ¼ ¬¬ ¡ ¡ ¡ Ü£Ò µ ¬ ´Ü£ µ ¬¬ ½ Ü ¬ ´½¼¾µ ´½¼¿µ Ü£½ Ü£¾ ¡ ¡ ¡ Ü£Ò のリャプノフ指数は, ¬ Æ ½ ¬¬ ½ ´ Ü µ ¬¬ ¬ Ð Ñ ÐÒ ¬ Ü ¬ Æ ½Æ ¼ ´Ò ½ ¬ µÆ ¬¬ ´Ü£ µ ¬¬¬ Ò ½ Ð Ñ ÐÒ ¬ Ü ¬ Æ ½Æ ¼ ¬ ¬ ½ ÐÒ Ò ½ ¬¬ ´Ü£ µ ¬¬ ¬ Ü ¬ Ò ¼ ¬ ¬ ½ ÐÒ ¬¬ Ò ´Ü£ µ ¬¬ ¼ Ò ¬ Ü ¬ ´½¼ µ ´½¼ µ ´½¼ µ ´½¼ µ となる. 問題 º½½ 次のテント写像のリャプノフ指数を求めよ. ÜÒ·½ ½ ½ ¾ ÜÒ ¾¿ ´½¼ µ 常微分方程式系のリャプノフ指数 常微分方程式で記述されるシステムの軌道については,軌道を離散化してリャプノフ指数 を計算することができる. ここでは, ´Üµ Ü のアトラクター上の軌道 Ü に対して微小変位 ´Ü ¾ ÊÒ µ ´Øµ ´Ü½ ´Øµ ܾ ´Øµ ¡ ¡ ¡ Æ Ü ´ ص ÜÒ ´Øµµ ´Æܽ ´Øµ Æܾ ´Øµ ¡ ¡ ¡ Æ Ü½ ´Øµ ½ ¼ ½ Ü ´ ´Øµµ ¾ Ü Ü½ Æ Ü¾ ´Øµ ܾ ´ ´Øµµ ¾ Ü Ü½ ºº º ܾ ºº º Ò ´Ü´Øµµ ܽ ´½½¾µ を ܾ Æ Ü´Øµ で表し,その形式解を Æ Ü´Øµ とする.ここで,行列 を満たす.行列 ¡¡¡ ¡¡¡ ºº º Ò ´Ü´Øµµ Æ ÜÒ ´Øµ 式 ´ ´Øµµ ´ ´Øµµ ½ Ü Ø ÜÔ ¼ ´Øµ は ´ ¡¡¡ ´½½¼µ ÆÜÒ ´Øµµ を考える.このとき線形近似により微小変位の時間発展は次のようになる. ¼ ´½¼ µ ´½½½µ ´ ´Øµµ ½ ¼ Æ Ü½ ´Øµ ¾ Ü ´ ´Øµµ Æ Ü¾ ´Øµ ºº º ºº º ½ Ü ÜÒ ÜÒ Ò ´Ü´Øµµ ÜÒ ½ ´½½¾µ Æ ÜÒ ´Øµ  ´Øµ Æ Ü´Øµ µ Æ Ü´¼µ ´Øµ  ´Øµ ´½½¿µ ´ØµÆÜ´¼µ ´½½ µ ´Øµ ´½½ µ ´Øµ の固有値を £ ´Øµ として,Ò 個のリャプノフ指数を Ð Ñ ½ ÐÒ £ ´Øµ Ø ´½½ µ ½Ø で定義する. 実験データからリャプノフ指数を推定する方法については, º º º 合原一幸編 池口徹,山田泰司,小室元政著: 「カオス時系列解析の基礎と応用」 産業図書 もしくは, ØØÔ »»ÛÛÛºÑÔ Ô ×¹ Ö × ÒºÑÔ º » Ø × Ò»Ì × Ò ¿º¼º½» Ò Üº ØÑÐ を参考になる. ■フラクタル カオスアトラクターの特徴として,フラクタル構造があるが,ここでは省略する. 参考文献 カオスについては, ¾ ´¾¼¼¼µ ½ ¾ ¸ Û Ö ÇØØ ¸ ´½ ¾µº ÍÒ Ú Ö× ØÝ ÈÖ ×× ´¾ 版¸ ¾¼¼¾µº 長島 弘幸 馬場 良和 カオス入門―現象の解析と数理 培風館 Ó× Ò ÝÒ Ñ Ð ËÝ×Ø Ñ׸ ÑÖ 神経細胞やそのネットワークのカオスについては, ½ 林 初男 脳とカオス,裳華房 ´¾¼¼½µº ¾ Ä ÓÒ Ð ×׸ Å Ð º Å Ý ÖÓÑ ÐÓ × ØÓ Ó׸ ÈÖ Ò ØÓÒ ÍÒ Ú Ö× ØÝ ÈÖ ×× ´½ µº 常微分方程式の数値解析 微分方程式の初期値問題を数値的に解く方法として最も広く使われているルンゲ・クッタ する. まずは,最も単純な数値解法としてオイラー について,初期条件を Ø ´ ÙÐ Öµ 法を紹介する.ここでは,微分方程式 Ü Ø Ø¼ ¸ Ü Ü ´Ø¼ · ¡Øµ をテイラー展開すると, ´ÊÙÒ ¹ÃÙØØ µ 法について解説 ´Ü ص ´½½ µ ܼ とした解の時間発展を考える.初期値から ¡Ø だけ経過した ؽ ܴؼ · ¡Øµ ܴؼ µ ½ ¡ Ø· Ø ¾ ܴؼ µ · ؼ · ¡Ø において, ´Ø¼ µ ¡Ø¾ · ¡ ¡ ¡ ¾Ü ´½½ µ ؾ ¡Ø が十分小さいとして,½ 次の項のみを考えれば, となる. ܴؼ · ¡Øµ ³ ܴؼ µ · となる.この結果から時間ステップ ´½½ µ ¡Ø だけ進めた時刻 ØÒ と ØÒ·½ の関係を ÜÒ·½ ÜÒ · ´ÜÒ ØÒ µ¡Ø として求める方法がオイラー法と呼ばれるものである.ここで,ÜÒ·½ ように,オイラー法では,Ç ´Ü¼ ؼ µ¡Ø ´¡ µ ؾ の誤差がある. Ü´ØÒ · ¡Øµ¸ ÜÒ ´½¾¼µ Ü´ØÒ µ とした.´½½ µ 式からわかる さらに,次の式を仮定し, ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ´ÜÒ · ½ ØÒ · ¡Øµ ¡Ø ¾ Ü´ØÒ · ¡Øµ ܴؼ µ · ½ ½ · ¾ ¾ ½ ´½¾½µ ´½¾¾µ ´½¾¿µ Ü´ØÒ · ¡Øµ について,¡Ø の ¾ 次までテイラー展開, Ü´ØÒ · ¡Øµ Ü´ØÒ µ · Ü´ØÒ µ ¡Ø · ½¾ Ø ´ÜÒ ØÒ µ¡Ø · ¾½ ½ Ü´ØÒ µ · ´ÜÒ ØÒ µ¡Ø · ¾ ½ Ü´ØÒ µ · ´ÜÒ ØÒ µ¡Ø · ¾ Ü´ØÒ µ · ´ØÒ µ ¡Ø¾ · ¡ ¡ ¡ ؾ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ · ¡ ¡ ¡ Ø ´ÜÒ ØÒ µ Ü´ÜÒ µ · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ · ¡ ¡ ¡ Ü Ø Ø ´ÜÒ ØÒ µ ´Ü Ø µ · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ · ¡ ¡ ¡ Ò Ò Ü Ø ¾Ü ´½¾ µ ´½¾ µ ´½¾ µ ´½¾ µ ¸ ¾ ¸ ¸ を定める. ´½¾¾µ 式を ¡Ø について ¾ 次まで展開すると, と一致するようパラメタ ½ ¾ ³ ´ÜÒ ØÒ µ · ´ÜÒ ØÒ µ · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø · ´ÜÒ ØÒ µ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ¡Ø ½· Ü Ø ´ÜÒ ØÒ µ ´Ü Ø µ ¡Ø · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ¡Ø Ò Ò Ü Ø ´ÜÒ ØÒ µ ´Ü Ø µ ¡Ø¾ · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ Ò Ò Ü Ø ¾ ´½¾ µ ´½¾ µ ´½¿¼µ ´½¾½µ 式は, Ü´ØÒ · ¡Øµ ³ ܴؼ µ · ½ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø · ¾ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø · となる.したがって, ܴؼ µ · ´ ½ · ¾ µ ´ÜÒ ´ÜÒ ØÒ µ ´Ü Ø µ ¡Ø¾ · ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ Ò Ò Ü Ø ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø¾ ´ ÜÒ ØÒ µ ´ ÜÒ ØÒ µ · ¾ ØÒ µ ¡Ø · ¾ Ü Ø ´½¿½µ ´½¿¾µ ´½¾ µ 式と ´½¿¾µ 式の比較により,パラメタの条件式 となる. ½ がえられる.この場合,未知数 呼ばれる方法では,通常 ½ · ½ ¾ 個に対し,条件式が ½¸ ¾ ¼ とし, ¾ ½¸ ½ ¾ ÜÒ·½ となる.ルンゲ・クッタ法の次数は, ½ ¾ ¾ ½ ¾ ¾ ´½¿¿µ ¿ 個しかないので,パラメタの任意性が残る.¾ 次のルンゲ・クッタ法と ½ が使われる.つまり,¾ 次のルンゲ・クッタ法は, ¾ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ½ ÜÒ · ½ ¾ ÜÒ · ¾ ØÒ · ´½¿ µ ´½¿ µ ´½¿ µ ½ ¡Ø ¡Ø ¾ ¡Ø の近似式の次数を意味する.したがって,オイラー法は ½ 次のルンゲ・クッタ法に対 応する. (a) (b) x x 数値解 Δt / 2 Δt 数値解 真の解 Δt t0 真の解 Δt t1 t2 t3 t t0 t1 t ´ µ オイラー法º ´ µ ¾ 次のルンゲ・クッタ法. 同様の議論により, 次のルンゲ・クッタ法は次のようになる. ½ ¾ ¿ ÜÒ·½ 問題 º½¾ Ü Ø ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ½ ½ ÜÒ · ½ ØÒ · ¡Ø ¡Ø ¾ ¾ ½ ½ ÜÒ · ¾ ØÒ · ¡Ø ¡Ø ¾ ¾ ´ÜÒ · ¿ ØÒ · ¡Øµ ¡Ø ÜÒ · ½ · ¾ · ¿ · ¿ ¿ ´Ü ص の数値解析のために,次の式を仮定して,¡Ø について ½ ¾ ¿ ÜÒ·½ ´ÜÒ ØÒ µ ¡Ø ´ÜÒ · ½ ½ ´ÜÒ · ¾ ¾ ´ÜÒ · ¿ ¿ ÜÒ · ½ ½ · ¾ ØÒ · ØÒ · ØÒ · ¾ ¡Øµ ¡Ø ¾ ¡Øµ ¡Ø ¿ ¡Øµ ¡Ø ¾· ¿ ¿· ½ ´½¿ µ ´½¿ µ ´½¿ µ ´½ ¼µ ´½ ½µ 次までの近似式を導く. ´½ ´½ ´½ ´½ ´½ ¾µ ¿µ µ µ µ このとき係数 ½ ¾ ¿ ½ ¾ ¿ ½ ¾ ¿ が満たす条件式を求めよ. 問題 º½¿ ÄÓØ ¹ÎÓÐØ ÖÖ 方程式 Ü Ý の数値解を 次のルンゲクッタ法を使って求めよ. ½ ½Ü ¾ Ü Ý ¿ÜÝ ½ ¸ ¾ かの値を試してみよ. ¾ Ý ½¸ ¿ ¿¸ ½ とし,初期値 ´Ü¼ ݼµ についてはいくつ 生命システムにみられるゆらぎ ここからは,生体信号時系列 ÓÜ ½ À ÓÐÓ ÖØ Ö Ø Ð × Ú Ö Ð ØÝ RR2 RR3 RR4 RR5 RR6 RR7 RR8 ECG RR1 ´ ÓÜ ½ 参照µ に見られる不規則性に対して,可能な数理的アプローチを議論する. Ò Ð× 0 1 2 3 780 5 6 7 760 0 1 2 3 RR6 RR7 RR4 RR5 RR2 700 RR3 720 RR8 740 RR1 R-Rinterval (ms) 4 Time (sec) 4 5 6 ÌÛ ÒØÝ ÓÙÖ ÓÙÖ 7 Time (sec) ¬Ò Ø ÓÒ Ó È Ý× Ð ÖØ Ö Ø Ú Ö ÖØ Ö Ø Ú Ö Ð ØÝ Ð ØÝ Ø Ú ØÝ ÄÓ ÓÑÓØÓÖ Ø Ú ØÝ Ø º ÄÓ ÓÑÓØÓÖ Ø Ú ØÝ Ø × ¬Ò Þ ÖÓ¹Ð Ú Ð Û Ø Ò ÔÖ ¬Ò Ø Ñ º ÈÓ×ØÙÖ Ð ×Û Ý Ú Ö Ì × ÓÙÒØ× Ó Ú ÒØ× Ò Û Ò Ð Ö Ø ÓÒ × Ò Ð ÖÓ×× × Ð ØÝ ÒØ Ö Ó ÔÖ ××ÙÖ ´ Óȵ Û × Ó Ø Ò Ù× Ò Ø ¾ ÓÖ ÔÐ Ø ÓÖÑ Ñ ×ÙÖ Ñ Òغ ■ゆらぎの情報論 アインシュタイン( º Ò×Ø Ò)が ½ ¼ 年に発表した論文「熱の分子論から要求される静止液体中の懸濁 粒子の運動について」では,水中に浮かんだ微粒子の運動の観測を通じて,当時,研究者の中でも懐疑的な意見のあった原子, ÊÓ ÖØ ÖÓÛÒ により,½ ¾ ¹½ ¾ 分子の実在を確かめる方法が議論されている.水中に浮かんだ微粒子の不規則な運動は, 年 ごろに初めて発見されたことからブラウン運動と呼ばれ,不規則運動する微粒子はブラウン粒子と呼ばれている. ブラウン運動の顕微鏡写真 アインシュタインの論文は,このブラウン運動の原因が,熱運動する多数の液体分子の衝突であることを理論的に予言してい る.ここでは,導出過程を省略するが,アインシュタインの論文では,次の関係式が導かれている. ½ 式 ´½ µ において, ÊÌ ÖÆ ´½ µ は拡散係数であり,ブラウン粒子の Ü 軸方向の変位 Ü ª ܴص¾ ¾Ø として求められる.ここで, ¡ は統計平均を表す.また,式 « ´Øµ ܴص Ü´¼µ を観測することで, ´½ µ ´½ µ の右辺の は液体の粘性係数,Ö はブラウン粒子の半径, Ê は気体定数,Ì は液体の温度であり,これらの値は実験的に測定することが可能である.一方,Æ はアボガドロ定数であ り,物質 ½ÑÓÐ の中に含まれている分子の個数を表す量である¶ .アインシュタインの議論では,Æ が未知数であり,理論的 な考察から分子の個数が測定可能になることが示されている. ブラウン運動においては,ブラウン粒子を動かす「もの」は,そのまわりの液体分子である.この系について時間刻みをある 程度粗く見れば,多数の水分子衝突の集積として,ブラウン粒子の確率的記述が可能になる.アインシュタインの理論では,ブ ラウン粒子の確率的な記述から,間接的にまわりの水分子に関する情報が引き出されている. 同様のアプローチが,より複雑なシステムの分析においても有効ではないだろうか.例えば,我々の心拍数の変動を長時間 測定してみれば,そこには不規則な変動が見てとれる.心臓の拍動ペースは,主に自律神経系を通じて制御されているが,薬理 遮断等の方法でその制御を断ち切れば,心拍動のリズムは非常に規則的になってしまう.このことから,通常観測される心拍数 の不規則性は,自律神経系を含むシステム全体の特性を反映していると考えられる.この場合,心拍リズムの不規則性の記述を 通じて,自律神経系などの生体制御に関する情報を抽出できる可能性がある.他の社会や経済といったシステムにおいては,不 規則性を生み出す「もの」は,ブラウン運動や心拍の例と異なっているが,その「時間発展の記述」については共通性があり, 確率的な揺動と相互作用を含む非線形非平衡系に共通する理論の枠組みが構築できる可能性がある. ¶ アボガドロ定数は, ½ 年にヨハン・ヨーゼフ・ロシュミット ´ÂÓ ÒÒ ÂÓ× ¾ ÄÓ× Ñ Øµ により見積もられている 自律神経遮断薬による迷走神経性心臓調節量の測定 プロプラノロール ´¼º¾ Ñ » µ の静脈投与によって心臓交感神経を遮断した 後,アトロピンを段階的に静脈投与すると心臓の拍動時間間隔は短くなり,ゆらぎが消失する. ÓÜ ¾ 生物系におけるブラウン運動(ランダムウォーク) イオンチャンネルを通じたイオンの移動 イオンチャンネルが開き,その結果イオンが拡散する様子の模式図. 大腸菌の遊泳パターン ´ µ ある程度粗い拡大率では,一つの細菌の運動はランダムウォークのように見える.´ µ 高い拡大率で短時間の振る舞いを観 測すると,直線的な運動が見られる. ¿¼ 確率変数 ¸ 裏が出る という ¾ つの根元事象があり,それ ½¸ 裏が出る事象には ¼ を対応させて表せば,数学的な記述 の目が出る などと事 が簡単になるだろう.また,さいころを振る試行については, ½ の目が出る ¸ ¾ の目が出る ¸ ¡ ¡ ¡ ¸ 硬貨を投げ,出る面を観測する試行を考える.この試行では, 表が出る ぞれの事象に対し確率が定められる.この場合,表が出る事象には 象を表わさず,出た目の整数値が確率的に現れると考えることもできる. これらの試行においては,硬貨やさいころといった仕掛けを無視して,特定の値が出現する確率が定められていると考えるこ とができる.このように,確率的に出現する値が変化する変数を確率変数という. ¸ µ は確率変数を 表わし,その値は試行を行なうまでは不確定である.それに対し,小文字で書かれた変数は,試行後に実現される特定の値 ´実 現値µ を表わす. 硬貨やさいころの例のように,確率変数 を連続変数という 値をとるとき, ´ と小文字の Ü の意味の違いに注意する必要がある.大文字 例えば 確率変数を扱う場合には,大文字の º が,とびとびの値しかとらないとき, を離散変数という.また, が連続した º½ 離散確率変数 確率変数 ´ がÜ が離散的で有限個の値しかとらない場合, È´ Ü は代入ではなく,試行の結果 と表わす.この場合, さいころ振りの例では, であり,È ´ ܽ µ È´ ܾ µ ¡¡¡ È´ ܵ Ü ´½ µ が Ü の値になるという状態を表わしている. ½ ܾ ¾ ¡ ¡ ¡ ܽ ½ ¾ ¡ ¡ ¡ Òµ となる確率を, µ ½ Ü である. ´½ µ 式では, のとりうる値 Ü のそれぞれに対して確率 Ô È ´ Ü µ の数値が定まる.このとき,確率は関数 ´Üµ È ´ ܵ として以下のように表わすことができる. Ô ´Ü Ü のときµ ´Üµ ´½ ¼µ ¼ ´その他の ܵ このようにして定められた関数を離散分布という.全事象の確率の和は ½ であるから, Ò ½ が成り立つ. 確率変数 ´ ´ µ の平均値 期待値 を µ ,分散を ´Ü µ ½ ´½ ½µ δ µ と書くことにする.離散確率変数 の離散分布を ´Üµ とすると, の平均値 期待値 と分散は,以下で与えられる. ´ 平均値 期待値 µ Ò Ü ½ 分散 δ µ ª ´ ½ このとき, の標準偏差 は, µ¾ Ò ´Ü ´Ü µ Ô Î ¿½ ´½ ¾µ « µ ¾ ´Ü µ ´½ ¿µ で与えられる.また, の関数 ´ µ の期待値は,次の式で求められる。 Ò ´ µ 問題 º¾ サイコロを振る試行に対応した確率変数 È´ である. ½µ ¾µ ´Ü µ ´Ü µ ´½ µ を考える.つまり, È´ ¿µ È´ µ È´ µ µ ½ È´ の平均,分散,標準偏差を求めよ. 問題 º¿ 離散確率変数 ´½µ ´¾µ ´¿µ ´µ È´ ½ , について,次のの関係式が成り立つことを示せ. º が定数のとき, · · が定数のとき,Î º Î º が互いに独立であるとき,Î · と ¾ Î ·Î º º¾ 連続確率変数 確率変数 · ¡Ü の間の値になる確率が,ある関数 ´Üµ を使って, がÜとÜ が連続的な値をとる場合を考える. È ´Ü Ü·¡Ü Ü · ¡Üµ ´µ ´½ µ µ は,Ý ´Üµ ´Üµ のグラフを考えた場合,È ´ と Ü 軸,および,¾ 直線 Ü ,Ü で囲まれた面積に対応する.また, は¸ ½ から ½ の間の値に必ずなるので, È ´ ½ ½µ ½ になる必要がある.したがって,確率密度関数 ´Üµ は, と表わされるとき,被積分関数 ´Üµ を確率密度関数と呼ぶ¶ º Ü ½ ½ Ý ´Üµ ½ Ü ´½ µ を満たす. º¿ 確率密度関数の例 ´ ガウス分布 正規分布 µ ´Üµ この関数は, と 一様分布 の 確率変数 ¾ つのパラメタをもち,Æ ´ µ ¶ ´Ü¾ ¾µ¾ ¼ ½ ´¼ Ü ½µ ¼ ´Ü ¼ ½ ܵ ´Üµ ´ µµ. のとる値が Ü 以下になる確率 È ´ ܵ を,関数 ´Üµ として表わせば, ´Üµ となる.この関数 µ ´½ µ ´ µ は,Æ ´¼ ½µ を描いたものである. が, でない確率をもつ区間で確率密度関数が定数となるものを一様分布と呼ぶ.確率変数 ¼ ½ の間に限られている場合, ´ ½ ¾ Ô ¾ と表わされる.下の図 値が, と となる 下図 ´ 統計的な応用において最も重要な例は,以下のガウス分布 正規分布 である. ´Üµ は分布関数と呼ばれる. Ü ½ ¿¾ ´ µ のとる ´½ µ ガウス分布 Æ 確率変数 ´ の確率密度関数を 平均値 期待値 ´¼ ½µ ´Üµ とすると, 一様分布 ´ µ の平均値 期待値 と分散は,以下で与えられる. µ ½ ½ Ü ´Üµ Ü ´½ µ 分散 の平均値を 上で定義された として, δ µ ª ´ ½ ½ 離散変数の場合と同じく, で与えられる.また, の標準偏差 « ´Ü µ¾ ´Üµ 一様分布 ½ ½ ´Üµ ´Üµ ´ µ Ü ½ ´¼ Ü ½µ ¼ ´Ü ¼ ½ ܵ ´Üµ ガウス分布 正規分布 ´½ ¼µ ´ µ の期待値は,次の式で求められる。 の関数 の平均値と分散を求めよ. 問題 º Ü Ô Î は, ´ µ 問題 º µ¾ ´Üµ ½ ¾ Ô ´Ü¾ ¾µ¾ の平均値と分散を求めよ. ブラウン運動とその数理モデル ここでは,一次元の直線上を動くブラウン運動の数理モデルを考える. ¿¿ ´½ ½µ º½ ランダムウォークの離散モデル ´Ö Ò ÓÑ Û Ð µ と呼ばれる確率過程を考える.直線上を動く粒子の時 ¼ で,Ü Ü¼ にある.離散的な時刻 Ø ¡Ø 刻 Ø におけるその位置を座標 Ü で表わす.初期条件として,粒子は時刻 Ø ´ ¼ ½ ¾ ¡ ¡ ¡ µ を考え,時間間隔 ¡Ø が経過するごとに,粒子は Ü が正か負の方向に距離 ¡Ü だけ移動する. 番目の変位を確率変数 ¡ で表わし,その値が ¡Ü となる確率を ブラウン運動のモデルとして,ランダムウォーク È ´¡ ¡Ü となる確率を とする ¡Üµ È ´¡ ´Ô · Õ ½µ.¡ と ¡ ´ Ô ¡Üµ Õ µ は,互いに独立である. +Δ x 㻙Δ x t0 = 0 x0 q p t1 = Δ t x0+Δ x x0㻙Δ x ランダムウォークの遷移確率 時刻 ØÒ Ò¡Ø の粒子の全変位は, Ò Ò ¡ で与えられる. の列 ¡ ½ ¡ ¾ ¡ ¡ ¡ や, の列 ¡ ½ ½ ¾ ランダムウォークの数値例.´ ¿ ¡ ¡ ¡ を離散的な確率過程という. µÔ ¼ º ´ µÔ ¼ º x x 上記のランダムウォークで,粒子は時刻 Ø º½ 問題 ´½µ 時刻 ØÒ ´¾µ 時刻 ØÒ 解答 ¼ で,Ü ¼ にあるとする. Ò¡Ø での,粒子の位置 ÜÒ を考える.Ò 歩のうち Ö 歩は正の方向に移動したときの粒子の位置 ÜÒ を求めよ. Ò¡Ø での,粒子の位置が Ò ¡Ü となる確率を求めよ.また, Ò Ü·Ò ¡Ü Ò ¡Ü Ü Ï ´Ü Òµ Ò Ü·¾ Ò¡¡Ü Ü Ô ¾ ¡Ü Õ ¾ ¡Ü Ü である確率 Ï ´Ü Òµ を求めよ. ´¿µ ´¾µ で求めた Ï ´Ü Òµ について,Ï ´Ü Òµ と Ï ´Ü ¡Ü Ò ½µ,Ï ´Ü · ¡Ü Ò ½µ の関係式を求めよ. ´µ ¡ ¡ 解答 ´µ ¡ の 解答 ´µ ¡ µ¡ ´Ô Õµ¡Ü を求めよ. ¾ 乗平均 ¡ ¾ を求めよ. ¡ ¾ ´Ô · Õµ¡Ü¾ ¡Ü¾ の分散 解答 ´µ ´ の期待値 平均値 ´¡ ´¡ ´ ¡ の期待値 平均値 ¡ µ µ ¾ µ¾ を求めよ. ÔÕ ¡Ü と分散 ´ µ¾ を求めよ. º¾ Ê Ò ÓÑ Û Ð の連続モデル ¡Ü と ¡Ø がともに ¼ に近づいた極限を考える.この極限では,粒子は時間的にも空間的にも連続的に動くようになり, 移動距離 ´Øµ は,連続的な確率過程となる. ここでは,¡Ü と ¡Ø を ¼ に近づける際には,注意が必要である.例えば,離散の場合,時間 Ø の間に粒子が移動する距離は 次に Ø ¡Ø ¡Ü であるが, ¡Ü ¡Ø ¼ ¼ になってしまう. 離散的に考えた場合,時刻 Ø での ´Øµ の期待値と分散は,それぞれ, とすると,粒子の移動距離が ´Øµ Ú ´Øµ ´ µ¾ ¡Ü ¡Ø ´¡ ܵ¾ ÔÕØ ¡Ø Ø´Ô Õ µ ´½ ¾µ ´½ ¿µ ´Øµ が,確率過程として意味を持つためには,Ø ¼ を除くすべての有限な時刻で, この平均値と分散が有限の値をもつことが必要である ´ただし,Ô Õ の場合は,平均値が ¼ でもかまわないµ.分散が有限とな るためには,´¡Üµ¾ ¡Ø が有限である必要がある.そこで, を有限な定数として, ´¡Üµ¾ ¾ ¡Ø で与えられる.連続モデルへ移った場合に とおく.この場合,平均値は, ¾ ´Ô Õµ ¡¡ÜØ ´Ô Õµ ¡ Ü ¿ となるので,この値が Ô ¼ でない有限値になるためには,´Ô Õµ が ¡Ü と同程度の大きさにならなければならない.つまり, Õ のときの時刻 Ø で平均値が有限になるためにある定数を として, ¾ ´Ô Õµ ¡¡ÜØ ´Ô Õµ ¡ Ü ¡Ü ¾ Ô Õ ´µ となる必要がある. 問題 º½ 解答 Ô ´Øµ 上記の関係式を仮定したときの Ô と Õ を求めよ. ½· ¾ とÚ ´ となる 問題 ¡Ü ´Øµ を, ½ ¾ Ô と ¡Ü ¡Ü で表わし, ¾º¾ の解答において,¡Ü ¼¸ ¡Ø ¼ の極限をとると,それぞれ ´Øµ Ø ´Ô Õµ ¡¡ÜØ Ø Ú ´Øµ ¾ Ø ¼ のとき,Ô ½ ¾µ.標準偏差を ´Øµ¾ Õ Ô ´Øµ ¾ ´½ µ ´½ µ Ú ´Øµ で定義すれば, Ø となる. ¡Ü ¼,¡Ø ¼ の極限では,粒子は有限時間の間に無限回移動すると考えているので,中心極限定理によって, ´Øµ Ü である確率 Ï ´Ü ص は, Ù×× 分布 ´正規分布µ になる.先に求めた期待値と分散を使えば, ½ ´Ü Øص¾ Ï ´Ü ص Ô ´½ µ Ø となる. 問題 ½ の ´¿µ で求めた関係式は, Ï ´Ü Ø · ¡Øµ ÔÏ ´Ü ¡Ü ص · ÕÏ ´Ü · ¡Ü ص Ì ÝÐÓÖ 展開し,さらに ¡Ø で両辺を割ると, ¡Ü Ï ´Ü ص · ´¡Üµ¾ ¾ Ï ´Ü ص Ï ´ Ü Øµ ´ Ô Õµ Ø ¡Ø Ü ¾¡Ø ܾ という偏微分方程式が得られる.ここでは,´¡ÜµÒ ¡Ø ´Ò ¿µ の項を無視した.連続モデルに移行する際に仮定した条件 ´ µ¸ ´ µ より,この方程式は, ¾ Ï ´Ü ص Ï ´ Ü Øµ Ï ´Ü ص · ´½ µ Ø Ü Ü¾ と書くことができる.左辺の Ï を Ø について,右辺の Ï を Ü について と表わされる.この形の方程式は Ó 数と呼ばれる. ■問題 ¿ Ö¹ÈÐ Ò 方程式と呼ばれている.係数 は,流動速度 ¼ のときには,拡散方程式になる. ´ Ö Ø Ú ÐÓ Øݵ¸ は,拡散係 ´ µ が,´ µ 式の解であることを確かめよ. º¿ マルコフ連鎖 ´Å Ö ÓÚ 確率過程 Òµ Ò について, Ò の確率分布が Ò の値と Ò をマルコフ過程 ´Å Ö ÓÚ ÔÖÓ ´もしくは,マルコフ鎖µ と呼ばれる. Ò ½ がとった値だけから決まり,Ò ¾ 以前の履歴によらないとき, ××µ という.また, Ò が離散的な値もしくは状態をとるマルコフ過程はマルコフ連鎖 マルコフ連鎖を条件付き確率を使って表すと, È ´ Ò·½ Ü Ò ÜÒ Ò ½ ÜÒ ½ ¡ ¡ ¡ ½ ¿ ܽ ¼ ܼ µ È ´ Ò·½ Ü Ò ÜÒ µ ´½ µ ´ µ となる.さらに,時間的に均一なマルコフ連鎖では,確率が時刻 ステップ数 に依存しないので, È ´ Ò·½ Ü Ýµ Ò È´ Ò Ü Ýµ Ò ½ È´ ¡¡¡ ½ Ü ¼ ݵ ´½ µ が成り立つ. ■遷移確率と遷移行列 時刻 Ò で 値をとる同時確率を È ´ という値をとる確率を Ï Òが µ であらわす.このとき, とる条件付き確率を Ô ´Òµ とあらわすと, となる. ´Ñµ また,Ô ½ Ñ·½ Òが Òが ½ Òµ で表し,さらに,時刻 Ò · ½ で Ò·½ が という値をとったという条件の下で, Ò·½ が È ´ Ò·½ È´ ´Òµ を ´ µ Ï´ ¾ ¿ ¡¡¡ Ñ Ô½ ¾ ´½ ¼µ Òµ Ô ´Òµ という値をとったという条件の下で, Ò·Ñ が Ô´½ÑµÑ·½ ´Òµ をという値を µ Ò ´Òµ Ô ¾ ¿ ´Ò · ½µ ¡ ¡ ¡ Ô Ñ という ´½ ½µ Ñ·½ という値をとる確率とすると, Ñ·½ ´Ò · Ñ ½µ ´ µ ´½ ¾µ ´Ñµ となる.ここでの和は,可能なすべての経路についてとる.この確率 Ô ½ Ñ Ò を状態 ½ から状態 Ñ·½ への Ñ 次の遷移確率 と呼ぶ.また,遷移確率を要素とする行列 ȴѵ Ò を遷移確率行列 もしくは,推移確率行列 と呼ぶ. ´ µ 例えば,下の図のようなランダムウォーク Ü ½ に移る遷移確率は, Ô¼ ½ ´Òµ ¡ Ô ½ ¾ ´Ò · ½µ ¡ Ô ¾ ½ ´Ò · ¾µ ·Ô¼ ½´Òµ ¡ Ô ½ ¼ ´Ò · ½µ ¡ Ô¼ ½ ´Ò · ¾µ ·Ô¼ ½ ´Òµ ¡ Ô½ ¼ ´Ò · ½µ ¡ Ô¼ ½ ´Ò · ¾µ 0 p0 → --1 t = n+1 p--1 → --2 --1 p--1 → 0 t = n+2 --2 p--2 → --1 t = n+3 ½ ´½ ¿µ ´Òµ¸ ´Ò · ½µ¸ ´Ò · ¾µ は必要ない. t=n また,下の図のように3つの状態 µ ´¡Ü ½¸ ¡Ø ½ としたµ において,時刻 Ò で原点にあった状態が,時刻 Ò · ¿ で Ô´¿µ ¼ ½ ´Òµ となる.時間的に一様な場合は,右辺の ´ x p0 → 1 x 1 p1 → 0 x 0 p0 → --1 x --1 ¾ ¿ を確率的に移り変わる場合,遷移確率行列は, ¼ È´½µ Ô½½ Ô½¾ Ô½¿ Ô¾½ Ô¾¾ Ô¾¿ Ô¿½ Ô¿¾ Ô¿¿ ½ ´½ µ となる. p11 e1 p12 p13 p21 p22 e2 p32 p23 ¿ p31 e3 p33 ■吸収壁のあるランダムウォーク 先に考えたランダムウォークでは,各ステップの変位 の状態をとった.このとき,この ¾ つの状態の遷移確率行列は, Ô Õ Ô Õ È´½µ となる.一方,粒子の位置 ȴѵ È´½µ Ñ ¡ が ¡Ü,もしくは ¡Ü の ¾ つ Ô Õ Ô Õ ´½ µ については状態数が無限にあるため,遷移行列を有限次元で表せない. ここでは,空間幅を有限にとり,両端に吸収壁を設けたランダムウォークを考える.例えば,各ステップの移動幅を として,Ü ½とÜ ¡Ü ½ Ä に到着したら,そこから動けなくなるようにする.この場合の遷移行列は, ¼½ ¼ Õ ¼ ¼ Õ ¼ ¼ ¼º ¼º ºº ºº ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ È´½µ ¼ ¼ Ô ¼ ¼ Ô Õ ¼ ¼º Õº ºº ºº ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ Ô ¼º ºº ¼ ¼ ¼ ¡¡¡ ¡¡¡ ¡¡¡ ¼ ¼ ¼ ¼º ºº ¼ ¼ ¼½ ¼ ¼ ¼º ºº ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼º ºº ¼ ´½ µ ¡¡¡ Ô ¡¡¡ Õ ¼ Ô ¡¡¡ ¼ ¼ ½ となる. p11=1 p23=p p12=0 1 p21=q 2 p32=q p11=q p34=p 3 p43=q x 4 1 ■反射壁のあるランダムウォーク ランダムウォークにおいて,両端 Ü ¼ 次のようになる. Õ Ô ¼ ¼ Õ ¼ Ô ¼ ¼ Õ ¼ Ô ºº º ¼ ¼ ¼ È´½µ ºº º ¼ ¼ ¼ ºº º ¼ ¼ ¼ ºº º ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ºº º ¼ ¼ ¼ ¡¡¡ ¡¡¡ ¡¡¡ ¡¡¡ ¡¡¡ ¡¡¡ p23=p p12=p p21=q 2 p32=q p34=p 3 p43=q 4 x ½ Ä に反射壁 ´上図右µ を設ければ,遷移確率行列は ½ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ºº ºº ºº ´½ µ º º º ¼ Ô ¼ Õ ¼ Ô ¼ Õ Ô となる. ■オルンシュタイン¹ウーレンベック ´ÇÖÒ×Ø Ò¹Í Ð Ò では,有限区間 ¼Ä µ 過程 粒子に対し位置に依存した吸引力が働く場合を考える.ここ において粒子は整数点上を移動するとし,中央の位置 Ü して,遷移確率を Ô ·½ ½ Ä ¿ Ô ½ Ä Ä ¾ へ向かって粒子に吸引力が働くとする.そ ´½ µ ½ であるが,中央からの位置のずれに比例して, ¾ ½ ¡¡¡ ¼ ¼ ¼ で定める.Ä を偶数とするとき,中央の位置では左右に移動する確率は等しく 内側へ向かう確率が増加する.このとき,遷移行列は, ¼ È´½µ ¼ ½ ¼ ¼ ¼ ½ ¼ ½ ½ ¼ ¼ Ä Ä ¼ ½ ľ ¼ ¼ ľ ¼ ¼ Ä¿ ¼ ½ Ä¿ ºº ºº ºº ºº ºº º º º º º ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ ¼ となる. この過程について,時刻 Ò における粒子の位置 の確率分布を Ï Ï ´ Ò · ½µ ¼ ¼ ¼ ¡¡¡ ¼ ¼ ¼ ¼ ºº º ¼ ºº º ½ ¡¡¡ ¡¡¡ ¼ ºº º ½ Ľ ¼ ¼ ½ ´ Òµ とする.Ô Ô ½ Ï ´ ½ Òµ · Õ ·½ Ï ´ が成り立つ. 次に,この過程の連続的な極限を考える.時間刻みを Ï ´Ü Ø · ¡Øµ ¡¡¡ ´½ µ Ä ¼ Ô ¸ Ô ½ ·½ Õ と表せば, · ½ Òµ ´½ ¼µ ¡Ø¸ 変位幅を ¡Ü として,式 ´½ ¼µ を書き換えると, Ô´Ü ¡Üµ Ï ´Ü ¡Ü ص · Õ ´Ü · ¡Üµ Ï ´Ü · ¡Ü ص ´½ ½µ となる.ここでは,吸引の中心位置を原点に取り, ½ · ¡Ü Ü ½ ¡Ü Ü Õ ´Üµ ¾ Ä ¾ Ä とする.この式は,¾º¾ 節の議論と同様に,Õ ´Üµ Դܵ が ¡Ü 程度の大きさになる要請から導かれ, ¾¡Ü Ü Õ ´Üµ Դܵ Դܵ Ä となる.左辺を ¡Ø¸ 右辺を ¡Ü について展開すると, ¨ © ´¡Üµ¾ Ï ´Ü ص ¡Ü Õ ´Üµ Դܵ Ï ´Ü ص · Ø ¡Ø Ü ¾¡Ø となる.ここで, と置くと,式 ´¡Üµ¾ ¾¡Ø ´½ µ は, となる.この方程式は Ó Ö¹ÈÐ Ò ンベック ´ÇÖÒ×Ø Ò¹Í Ð Ò Ï ´ Ü Øµ Ø ¬ Ü © Ü Ï ´Ü ص · ´½ ¿µ ´½ µ ´½ µ ¬ Ä ¨ ´Ü ص ܾ ¾Ï ´½ ¾µ ´Ü ص ܾ ¾Ï ´½ µ 方程式の一例である.この方程式により記述される確率過程をオルンシュタイン¹ウーレ µ 過程という. ½¼ 白色雑音とランジュバン ´Ä Ò Ú Òµ 方程式 ½ ここでは, 次元のブラウン運動においてブラウン粒子が従う運動方程式について考える.ブラウン粒子の運動量 Ñ Ú ´Øµ を Դص とし,ブラウン粒子が動くときに受ける摩擦力を Ô とする.さらに,ブラウン粒子が多数の水分子から受ける揺動力を ʴص であらわす.ʴص はブラウン粒子が受けるランダムな力を表している.その他の外力は働かないとすると,ブラウン粒子 の運動方程式は Դص Ø Ô´Øµ · ʴص ¿ ´½ µ となる. ʴص については,次の性質を仮定する. ʴص ʴص ʴؼ µ ´Ô´¼µµ Ê´×µ ¼ ¾ Æ ´Ø ؼ µ ¼ ´½ µ ´½ µ ´½ ¼µ ¼ であり, ´Ô´¼µµ は Ô´¼µ の任意の関数である.また,ƴܵ は,デルタ関数である.上記の仮定は,水分子の平 ½ µ ことから, Û ¼ という理想化を行ったとい 均衝突時間間隔が Û ¸ ブラウン粒子の緩和時間 ½ より十分短い ´ Û うことに対応する.´½ µ 式の左辺は,自己相関関数 ´もしくは自己共分散関数µ とよばれる統計量で,これがデルタ関数にな ここで,× るということは,異なる時刻においてランダム力に全く相関がないことを意味している.このような性質をもつランダムな変動 ´½ µ 式のように白色雑音を含む微分方程式をランジュバン方程式と呼ぶ.そして,´½ µ 式は前節で は白色雑音と呼ばれる. ÇÖÒ×Ø Ò¹Í Ð Ò 過程のランジュバン方程式となっている.ただし,ブラウン粒子の位置ではなく,速度についての ÇÖÒ×Ø Ò¹Í Ð Ò 過程である. まずは,´½ µ 式の解を考える.´½ µ 式におて,ʴص ¼ のときの解は, Դص Դص ´½ ½µ 扱った Ø ½ Դص Դص Դص である.定数変化法 ´ µ Ø· Ø ¼ ´ µ ¼ としたµ ´ ¼ は定数 ¦ ´½ µ 式の解として, ´Øµ Ø Ô¼ ¦ ´½ ¾µ ´½ ¿µ を Ø の関数に変形 に従い, Դص とした ¡ ´½ µ 式に代入し,未知の関数 ´Øµ の微分方程式を導くと, ¨ © ´ ص Ø ´Øµ Ø · ʴص Ø ´Øµ Ø Ê´Øµ ´½ µ を仮定する.これを, Ø ´½ µ ´½ µ ´½ µ 式を時刻 ¼ から Ø まで形式的に積分すると, ´Øµ Ø ¼ × Ê´×µ × · Ô¼ ´Ô¼ は定数µ ´½ µ ´½ µ 式の解は, となるので, Դص Ø ¼ × Ê´×µ Ô¼ Ø · Ø ¼ × · Ô¼ Ø ´Ø ×µ Ê´×µ × ´½ µ ´½ µ となる. ´½ µ 式の両辺の期待値をとると, Դص Ø Ô´Øµ Ø となるので, Դص · ʴص Դص Դص Ô¼ Ø ¼ ´¾¼¼µ ´¾¼½µ ´¾¼¾µ ´½ µ 式より,Դܵ の分散は である.さらに, ´Ô´Øµ Դص µ ¾ ¶ Ø ´Ø ×µ Ê´×µ × ¼ Ø Ø ¾Ø ¼ ¾Ø ´×½ ·×¾ µ ¼ Ø Ø ¼ ¼ ¾ ¾Ø Ø ¾×¾ となる. 時間が十分経過 ´Ø ¨ ´¾¼¿µ ×½ ×¾ ´¾¼ µ Æ ´×½ ×¾ µ ×½ ×¾ ´¾¼ µ ´¾¼ µ ×¾ Ø ¾×¾ ¾ ¾Ø ¾ ¾Ø ¨ ¾Ø · Ê´×½ µÊ´×¾ µ ´×½ ·×¾ µ ¾ ¼ ¾ ´¾¼ µ ×¾ ¼ © ½ © ½ ¾Ø ´¾¼ µ ´¾¼ µ ¼µ した定常状態を考えれば,´¾¼¾µ´¾¼ µ 式は, Դص ¼ ª ¾« Դص ´¾½¼µ ´¾½½µ となる.一方で,熱平衡状態においては,エネルギー等分配則 ½ Ñ ªÚ¾ « ½ ¾ ¾ ´¾½¾µ Ì が成り立つことが期待できる.ここで,Ñ はブラウン粒子の質量であり, ½ ´Ñڴصµ¾ Ñ Ì ´µ ´¾½½µ 式と比較すれば, であるので, Ñ Ì ª ´¾½¾µ 式より はボルツマン定数である.つまり, Դص¾ « Ñ Ì ´¾½¿µ ´¾½ µ がえられる.これはアインシュタインの関係式と呼ばれており,ブラウン粒子に働くランダム力の大きさと摩擦係数の関係を与 えている.ブラウン粒子の速度が速くなれば,運動エネルギーも大きくなるが,エネルギーの散逸も大きくなり,それは水分子 の熱運動へと変換されていく.視点を変えれば,水分子の熱運動がブラウン粒子にエネルギーを与え,ブラウン粒子を駆動して いるのである.アインシュタインの関係式 ´¾½ µ は,ブラウン粒子と水分子間のこのようなエネルギーのやり取りのバランスを 表しているのである. ½ ½½ ランジュバン方程式とフォッカ―・プランク方程式の関係 一次元系において,ランジュバン方程式の一般形は次のようにあらわされる. ܴص ここで,Ê ´Ü´Øµµ · ´Ü´Øµµ ʴص ´¾½ µ ¼ ¾ Æ´Ø Ø¼ µ ¼ ´ ´¼µµ Ê´×µ ´¾½ µ ´¾½ µ ´¾½ µ ´Øµ はランダム力を表し, ʴص ʴص ʴؼ µ ´Ü´¼µµ Ê´×µ を仮定する. ´ ´Øµµ が定数のときは, ´Øµ を相加過程,もしくは加法過程と呼び, 過程,もしくは乗法過程と呼ぶ. ´¾½ µ 式で記述される ´Øµ の確率分布 Ï ´Ü ص È ´ ´Øµ Ï ´Ü ص ´Üµ Ï ´Ü ص · Ø Ü ´¾½ µ 式について, となる. Ï ´Ü ص Ø ´Üµ は, となる.ここで, ܾ ¨ ´Üµ¾ Ï ´Ü ص © ´¾½ µ ´¾¾¼µ ´µ ´µ¾ Ü Ü¼ ´¾¾½µ は規格化定数である.つまり, ½ ½ を満たすように ¾ ¼ ½ ´Üµ ÜÔ Ï¼ ´Üµ ´ ´Øµµ が ´Øµ の関数のときは相乗 ܵ を記述するフォッカプランク方程式は, このとき, となる定常解 ϼ ¼ ϼ ´Üµ Ü ½ ´¾¾¾µ を決める. ´¾½ µ 式から ´¾½ µ の導出についての参考書: ½ ¾ 問題 ½½º½ ¸ ¸ ¸ ´ 戸田 盛和 斎藤 信彦 久保 亮五 橋爪 夏樹 統計物理学 岩波書店 宗像 豊哲 物理統計学 ´ 基礎と応用 朝倉書店 ¸½ µº ¸ ¾¼½½µº 拡散現象のモデルとして次のランジュバン方程式を考える. ܴص ここで,Ú¼ は定数であり,Ê Ú¼ · ʴص ´Øµ は ´¾½ µ¹´¾½ µ 式の条件を満たすとする.次の問いに答えよ. ´½µ ܴص ¸ および, ´Ü´Øµ ܴص µ¾ を求めよ. ´¾µ ´¾¾¿µ 式に対応するフォッカー・プランク方程式を求めよ ´´¾½ µ 式を公式として使ってよいµ. ¾ ´¾¾¿µ ½¾ 細胞内の拡散現象 ヒトのように ½Ñ を超える大きさに成長する動物では,血液を循環させることで,すべての組織へ必要な物質を効率的に輸送 する機構をもっている.このような血液循環おいて,肺から全身へと酸素を運搬はヘモグロビンがその役割を担っている.肺に おいて空気中から取り込まれた酸素は,肺組織中で ½¼¼ Ñ の有効距離にわたって拡散できる.この有効距離は,酸素の自由拡 散と組織中の細胞による酸素消費速度から決められる.肺においては,精密な毛細血管網が各肺胞を取り囲んでいるため,肺胞 表面から毛細血管中のヘモグロビンへの酸素の輸送は拡散のみで十分である.また,心臓のポンプ機能により組織中の毛細血管 へ運ばれたヘモグロビンから,各細胞への酸素の輸送は再び拡散によって行われる. ■能動輸送 細胞が ÌÈ´ ÒÓ× Ò ØÖ Ô Ó×Ô Ø ,アデノシン三リン酸µ のエネルギーを利用して物質を濃度勾配に逆らって 輸送すること. ■受動輸送 媒質中の物質の濃度差を駆動力とする輸送である.輸送方向は高濃度側から低濃度側へ生じ,輸送速度は濃度勾配 に比例する. ½¾º½ 拡散時間 拡散係数 は,「長さ ¾ 時間」の次元をもっている.したがって,ある粒子が距離 Ä にわたって拡散するのにかかる典型的 な時間 Ø を Ø Ä¾ ´¾¾ µ と見積もることができる. 問題 ½¾º½ ク質が距離 室温における水中の球場タンパク質の典型的な拡散係数の値を ½¼¼ Ñ ¾ × とする.このとき,球場タンパ ½¼¼ Ñ,および ½ Ñ にわたって拡散するのにかかる時間を見積もれ. ¿ 線形安定性解析 ´線形代数の応用µ 付録 例として、次の微分方程式で記述されるシステムの不動点の安定性を考える. ´Ù Úµ ´Ù Ú µ Ù Ú ここでは,不動点を ´¾¾ µ ´¾¾ µ ´Ù¼ Ú¼ µ とする.この不動点近傍の微小なずれを ÆÙ¸ ÆÚ として, Ù Ù¼ · ÆÙ Ú Ú¼ · ÆÚ ´¾¾ µ ´¾¾ µ ¸ ÆÚ について展開して ½ 次まで残すと, ÆÙ ½½ ÆÙ · ½¾ ÆÚ ÆÚ ¾½ ÆÙ · ¾¾ ÆÚ と表し,上の微分方程式を ÆÙ となる.ここで, ½½ ¾½ ´¾¾ µ¸ ´¾¿¼µ を係数行列 ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ù ¬Ù ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ù ¬Ù ´¾¾ µ ´¾¿¼µ ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ú ¬Ù ¬ ´Ù Úµ ¬¬ Ú ¬Ù ½¾ Ù¼ Ú Ú¼ ¾¾ Ù¼ Ú Ú¼ ´¾¿½µ Ù¼ Ú Ú¼ ´¾¿¾µ Ù¼ Ú Ú¼ である. を使って表すと, ½½ ½¾ ¾½ ¾¾ ÆÙ ÆÚ Ø ´¾¿¿µ ÆÙ ÆÚ ´¾¿ µ となる. 行列 はある変換行列 È を使って と変形できる.ここで, ½ ¸ ¾は È ½ È ½ ¼ ¼ ´¾¿ µ ¾ ´ µ の固有値である.ただし,固有値が縮退している 重解になる 場合は, È ½ È である.さらに,ベクトル Ü ½ ¼ ½ ´¾¿ µ ½ È ½ ÆÙ ÆÚ ´¾¿ µ Ü Ü ´¾¿ µ ´¾¿ µ は, を定義すると, Ø となる. ´¾¿ µ の場合の ´¾¿ µ の解は, ܽ ܾ Ü と求められる.ここで, ½ ¸ ¾ は定数である.また, Ü である.これらを, に代入することで,解を求められる. ¾¿ ½ ¾ ½Ø ´¾¿ µ ¾Ø の場合の解は, ´ ½· ܽ ܾ µ ¾Ø ¾ ÆÙ ÆÚ ÈÜ ½Ø ½Ø ´¾ ¼µ ´¾ ½µ
© Copyright 2024 ExpyDoc