線形代数学Ⅱ 演習問題 4 2014 年度後期 工学部 1 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。 (ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。 (ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。 (ⅲ) 提出期限は 12/12 (金) の講義時 とします。 問題 4-1. (数ベクトルの 1 次独立性) 4 次元数ベクトル 3 −1 a1 = , 2 3 −5 0 a2 = , −3 8 1 −1 a3 = , 0 −3 1 2 a4 = , 3 −6 0 0 a5 = 1 4 を考える。以下の数ベクトルの組について、それぞれ線形独立性を判定しなさい。線形従属である場 合には、非自明な 1 次関係式を 1 つ求めなさい。 (1) a1 , a2 , a3 (3) a1 , a2 , a3 , a5 (2) a1 , a3 , a4 (4) a2 , a3 , a4 , a5 問題 4-2. (部分ベクトル空間) 以下の集合が R3 の部分ベクトル空間であるかどうかを判定しなさい。部分ベクトル空間である場 合にはその基底を求め、部分ベクトル空間でない場合にはその理由を述べなさい。 (1) (3) x 3 2 2 2 y ∈ R x +y +z = 1 z x 3 x y ∈ R y = e , z = 0 z (2) (4) 1 x 3 y ∈ R z 3x − 4y + z = 0, −5x − 2y + 7z = 0 x 3 y ∈ R z x = 3s − t, y = 4t, (s, t ∈ R) z = −s + 2t 問題 4-3. (基底の変換と線形変換の行列表示) R3 上の基底 1 B 0 = b1 = 0 , −1 −2 3 に関する行列表示が A0 = −2 3 −2 2 −2 b2 = −1 , 2 −3 3 −2 2 b3 = 5 −3 で与えられるような線形変換 f : R3 → R3 を考える。 B0 以下の基底 B1 , B2 について、 (i) 基底 B0 から基底 Bi への基底の変換行列 Pi (ii) 基底 Bi に関する線形変換 f の行列表示 Ai をそれぞれ求めなさい。 1 0 0 (1) B1 = e1 = 0 , e2 = 1 , e3 = 0 1 0 0 1 10 −5 (2) B2 = p1 = 1 , p2 = 13 , p3 = −6 −1 −12 6 問題 4-4. (平面ベクトルの鏡映変換)∗ a を実数とする。xy 平面上の直線 ℓ : y = ax に関する折り返しによって定義される R2 上の線形 変換 fℓ : R2 → R2 を、直線 ℓ に関する 鏡映変換 と呼ぶ。鏡映変換 fℓ について、以下の設問に答 えなさい。 1 π (1) ベクトル a = を原点を中心に だけ回転して得られる平面ベクトル b の成分表示を 2 a 求めなさい。 (2) ベクトルの組 a, b が R2 の基底をなすことを証明しなさい。 (3) fℓ (a), fℓ (b) を求めなさい。また、この結果を用いて、基底 { a, b } に関する fℓ の行列表示 を求めなさい。 1 0 (4) 基底 { a, b } から R2 の標準基底 e1 = , e2 = への基底の変換行列を求め 0 1 なさい。また、この結果を用いて鏡映変換 fℓ に付随する行列 Aℓ (即ち標準基底 { e1 , e2 } に 関する fℓ の行列表示) を求めなさい。 [ヒント] ベクトル a は 直線 ℓ に乗っている ベクトルです。その点さえおさえれば、(3) は図を描 けば簡単に分かる筈。 2 【略解】 問題 4-1. (1) 3 −1 (a1 a2 a3 ) = 2 3 −5 1 1 0 −1 行基本変形 0 −−−−−−−→ 0 −3 0 8 −3 0 0 0 1 0 1 0 0 0 より rank (a1 a2 a3 ) = 3 なので、a1 , a2 , a3 は 線形独立である 。 (2) 3 −1 (a1 a3 a4 ) = 2 3 1 1 1 −1 2 行基本変形 0 −−−−−−−→ 0 0 3 0 −3 −6 0 0 1 0 0 1 0 0 より rank (a1 a3 a4 ) = 3 なので、a1 , a3 , a4 は 線形独立である 。 (3) 3 −5 1 0 1 −1 0 −1 0 0 行基本変形 (a1 a2 a3 a5 ) = −−−−−−−→ 2 −3 0 1 0 3 8 −3 4 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 より rank (a1 a2 a3 a5 ) = 4 なので、a1 , a2 , a3 , a5 は 線形独立である 。 (4) −5 1 1 0 1 0 −1 2 0 0 行基本変形 (a2 a3 a4 a5 ) = −−−−−−−→ −3 0 0 3 1 8 −3 −6 4 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 より rank (a2 a3 a4 a5 ) = 4 なので、a2 , a3 , a4 , a5 は 線形独立である 。 【解説】 線形独立性の判定の問題。線形従属なものも入れた筈だったのですが、どうやら出題ミス で 線形独立なものだけ になってしまったようです。大変申し訳ございませんでした。これだと線形 従属な場合の練習になりませんので、以下に類題 (問題 4-1’.) を掲載させていただきます。試験対策 用に活用して下さい。 ミニ演習で扱ったこともあってか、比較的よく出来ていました (とはいえ提出者は 5 名でしたが)。 ミスは全て 行基本変形の計算ミス か ベクトルの写し間違え によるものだったと思います。行基本 変形を行う問題で最も多い間違いがこの 基本変形の際の計算ミス と 問題文の写し間違え の 2 つと 言っても過言ではありません。こればかりはどんなに注意をしていても完全に避けることは出来ない 類のものですので、 3 - 行基本変形を始める前に 問題文通りに正しく行列を写しとったか 確認する - 時間の余裕がある場合には 可能な限り計算のチェックをする などの予防策を各自で立てて、試験本番でミスをしないようにしましょう。 問題 4-1’. 4 次元数ベクトル 7 2 a1 = , −3 1 −4 a2 = , 9 −1 9 4 a3 = , −5 −3 −4 1 a4 = , 0 3 7 −1 2 a5 = −5 1 を考える。以下の数ベクトルの組について、それぞれ線形独立性を判定しなさい。線形従属であ る場合には、非自明な 1 次関係式を 1 つ求めなさい。 (1) a1 , a2 , a3 (3) a1 , a2 , a3 , a5 (2) (4) a1 , a3 , a4 a2 , a3 , a4 , a5 ※ 余裕があれば、R4 の部分空間 W = span{a1 , a2 , a3 , a4 , a5 } の次元も計算してみよう。 【解】(1) 線形独立 (2) 線形従属, 5a1 − 3a3 + 2a4 = 0 (3) 線形従属, a1 − 3a2 − a3 − 5a5 = 0 (4) 線形従属, 15a2 + 2a3 + 2a4 + 25a5 = 0 dim W = 3 問題 4-2. (1) 部分空間ではない x 0 理由: x = y0 がこの空間の元とする (つまり x20 + y02 + z02 = 1 が成り立っているとする) z0 と、k ̸= ±1 に対して (kx0 )2 + (ky0 )2 + (kz0 )2 = k 2 (x20 + y02 + z02 ) = k 2 ̸= 1 より kx がこの空間の元とならないから*1 。 (2) 部分空間である 基底: 連立一次方程式 3x − 4y + z −5x − 2y + 7z ( *1 = 0 を係数行列の行基本変形を用いて解く; = 0 3 −4 1 −5 −2 7 ) ( 行基本変形 −−−−−−−→ 「零ベクトルがこの空間に含まれないから」でも正解。 4 1 0 0 1 ) −1 −1 より、この連立一次方程式の解は x 1 y = t 1 z 1 1 と書ける。したがって、 1 が基底としてとれる (以上よりこの部分空間の次元が 1 次元で 1 あることも従う)。 (3) 部分空間ではない x 0 理由: x = y0 がこの空間の元とする (つまり y0 = ex0 が成り立っているとする)。もし 0 k ̸= 1 に対して kx がこの空間の元になっていたとすると、ky0 = ekx0 , 即ち kex0 = ekx0 が 成り立つ筈である。ところが k が負の数のとき、この等式の左辺は負の数となるが右辺は正 の数のままであるため明らかに矛盾する。したがって k < 0 のとき kx は決してこの空間の 元にならないから。*2 。 (4) 部分空間である 基底: この空間の元は、書き換えると全て x 3 −1 y = s 0 + t 4 z −1 2 3 −1 −1 2 がこの部分空間の基底となる (したがって特にこの部分空間の次元は 2 次元である)。 と書き表される。 0 , 4 が線形独立であることは容易に確認出来るので*3 、これら 【解説】 部分空間の判定問題。(1), (3) が部分空間でないことは良く出来ていました (その殆どが「零 3 −1 −1 2 ベクトルが含まれていない」ことに着目した解答でした)。(4) は s, t で括り出せば 0 , 4 が基底の候補になることは殆ど明らかでしょう。あとはこの 2 つが線形独立であることを 問題 4-1. と同様にして証明すればおしまいです。(2) については、講義でも解説したように要は 連立方程 式を解けば良い だけの問題です。ここでも矢張り計算ミスをしている人がいました。行基本変形の 問題では常に 計算ミス に気を付けましょう。 *2 *3 「零ベクトルがこの空間に含まれないから」でも正解。 各自確認しておくこと。 5 また、「部分空間」や「基底」の概念がそもそもよく分かっていないと思われる答案も散見されま した。「部分空間」や「基底」の概念は非常に大切な概念です。分からない点は質問に来るなど早め に解決しておきましょう。 ※ 問題文ではそこまで要求していませんでしたが、(2), (4) の空間が部分空間であることを証明し ようとしてくれた答案が何枚かありました。そのこと自体は非常に素晴しいことですが、その殆ど が 誤った証明 となっており、非常に残念な結果となってしまいました。繰り返しとなりますが、 Rn の部分集合 W が 部分空間 subspace であるための条件は ✓ ✏ i) W に含まれる 任意の ベクトル x, y に対して x + y も W の元 ii) W に含まれる 任意の ベクトル x と 任意の 実数 k に対して kx も W の元 ✒ ✑ という 2 つの条件が成り立つことでした。したがって、部分空間であることを示すためにはこの ど ちらの性質も満たす ことを示さなければなりません。誤答の中には、特に ii) の方だけを証明しよう としているものが多かったです。また、 W に含まれる 任意の ベクトルに対して i), ii) の性質が 成り立つことを示さなければならないのですが、誤答の中には例えば (2) で 1 2 x = 1, k = 2 とすると、kx = 2 も W の元だから W は部分空間 1 2 のように 特定のベクトル x や実数 k に対してしか性質 i), ii) の証明をしていない ものが殆どでし た。心当たりのある人は、もう一度部分空間の定義を復習しましょう。 参考までに、以下 (2), (4) の集合が部分空間であることの証明を掲載しておきます。 [部分空間であることの証明] (2) この部分集合を W とおく。 x x 1 2 i) y1 , y2 を W の元とする。つまり、 z1 z2 3x1 − 4y1 + z1 = 0 −5x1 − 2y1 + 7z1 = 0 · · · (∗) ′ · · · (∗) 3x2 − 4y2 + z2 = 0 · · · (∗∗) −5x2 − 2y2 + 7z2 = 0 · · · (∗∗)′ が成り立っているとする。このとき、(∗) + (∗)′ , (∗∗) + (∗∗)′ を考えると 3(x1 + x2 ) − 4(y1 + y2 ) + (z1 + z2 ) = 0, −5(x1 + x2 ) − 2(y1 + y2 ) + 7(z1 + z2 ) = 0 x1 + x2 が成り立つことが分かる。したがって y1 + y2 も W の元となる。 z1 + z2 6 x ii) y を W の元とする。つまり、 z 3x − 4y + z = 0, −5x − 2y + 7z = 0 が成り立っているとする。このとき、任意の実数 k に対し、これらの式を k 倍することで 3(kx) − 4(ky) + (kz) = 0, kx −5(kx) − 2(ky) + 7(kz) = 0 が成り立つことが分かる。したがって ky も W の元となる。 kz 3 以上 i),ii) より、 W は R の部分空間となる。 (4) この部分集合を W とおく。 x x 1 2 i) y1 , y2 を W の元とする。つまり、 z2 z1 x1 3 −1 y1 = s1 0 + t2 4 , z1 −1 2 x2 3 −1 y2 = s2 0 + t2 4 z2 −1 2 と書けているとする。このとき、 x1 + x2 3 −1 y1 + y2 = (s1 + s2 ) 0 + (t1 + t2 ) 4 −1 2 z1 + z2 x + x2 1 という形で書けることが分かる。したがって y1 + y2 も W の元となる。 z1 + z2 x ii) y を W の元とする。つまり、 z x 3 −1 = s + t y 0 4 z −1 2 が成り立っているとする。このとき、任意の実数 k に対し、 kx 3 −1 ky = (ks) 0 + (kt) 4 kz −1 2 7 kx という形で書けることが分かる。したがって ky も W の元となる。 kz 3 以上 i),ii) より、 W は R の部分空間となる。 問題 4-3. 3 次正方行列の逆行列は、(A I3 ) の行基本変形か余因子行列の計算により求めて下さい。 (1) 基底の変換行列の定義から (e1 e2 e3 ) = (b1 b2 b3 )P1 より P1 = (b1 b2 1 = 0 −1 b3 )−1 (e1 e2 e3 ) = (b1 b2 b3 )−1 −1 −2 2 −7 −2 −8 −1 5 = −5 −1 −5 . 2 −3 −1 0 −1 同様に、基底の変換行列の定義から (p1 p2 p3 ) = (b1 b2 b3 )P1 より −1 1 −2 2 1 10 −5 P1 = (b1 b2 b3 )−1 (p1 p2 p3 ) = 0 −1 5 1 13 −6 −1 2 −3 −1 −12 6 −7 −2 −8 1 10 −5 −1 0 −1 = −5 −1 −5 1 13 −6 = −1 −3 1 . −1 0 −1 −1 −12 6 0 2 −1 (2) −7 −1 A1 = P1 A0 P1 = −5 −1 −1 −2 −8 3 −2 −1 −5 −2 3 0 −1 2 −2 −3 −7 −2 3 −5 −1 −2 −1 0 −8 −5 −1 1 −2 2 3 −2 −3 −7 −2 −8 −4 = 0 −1 5 −2 3 3 −5 −1 −5 = −6 −1 2 −3 2 −2 −2 −1 0 −1 6 B B1 −10 −11 12 1 −1 −1 A2 = P2 A0 P2 = −1 0 −1 0 −1 3 −2 −3 1 −2 3 2 −1 2 −2 −3 −1 0 3 −1 −3 −2 0 2 2 8 1 −1 1 −1 1 −2 −3 3 −2 −3 −1 0 −1 1 = −1 1 = 2 −2 3 3 −1 −3 1 0 −2 2 3 2 −2 −2 0 2 −1 0 B −15 −18 , 19 B B2 0 0 1 0 0 2 B 2 【解説】 基底の変換に関する問題。講義での説明が駆け足だったためか、何をしたら良いのかも分 かっていないと思われる答案が何枚か見られましたが、解答を見れば分かるように、基底の変換の問 題で実際に計算しなければならないものは - (b′1 b′2 . . . b′n ) = (b1 b2 . . . bn )PB→B ′ を満たす行列 PB→B ′ ′ ′ ′ (つまり (b1 b2 . . . b−1 n (b1 b2 . . . bn ) の計算) −1 - PB→B ′ APB→B ′ 位のものですので、からくりさえ分かってしまえば特にどうということもない問題です。かえって計 算するものが明確に分かっているので、解き易い問題であるとも言えるでしょう。基底の変換につい てまだ理解が覚束ない人は、詳しい解説プリント (補足プリント 4) を配布してありますので、そち らも参照しながら良く復習しておいて下さい。特に基底の変換行列 PB→B ′ については、間違えると 自動的にそれ以降の問題も間違えてしまう こととなりますので、慎重に計算しましょう。 この問題では特に (b1 b2 b3 )−1 1 −2 = 0 −1 −1 2 −1 2 5 −3 が正しく計算出来るかが鍵となっていますが、矢張り中には余因子行列を用いて逆行列を計算しよう として 余因子行列を間違えてしまっている人 が見受けられました。どうしても余因子行列を用いて 逆行列を計算したい人は、演習問題 3 のプリントでも注意したように - 余因子の 符号の付け方 - 余因子行列に於ける 余因子の並べ方 に細心の注意を払うようにして下さい。ただ、これらのことをいちいちチェックするのは面倒です し、計算ミスもかなり出やすいですので、行列 A の逆行列を求める際には、特に指定がなければ素 直に『線形代数学 Ⅰ』で学んだ (A In ) の行標準形を求める方法 で求めることをお薦めします。 ちなみに (2) の (ii) で、B2 に関する f の行列表示が 対角行列 という非常にきれいな形になっ ていますが、これは偶然のことではありません。この問題のように、基底を「巧く」選べば線形変換 の行列表示が非常に見やすくなる ことを保障するのが、この後に学ぶ 行列の対角化の理論 (或いは ジョルダン標準形の理論) なのです。 y 問題 4-4. π の回転行列を a の左から掛ければ良いので、 2 π π( ) ( )( ) ( ) cos − sin 0 −1 1 −a 2 2 1 = b= . π a = 1 0 π a 1 cos sin 2 2 ℓ (1) 角 9 fℓ (x) O x x (2) ( (a b) = 1 a −a 1 ) ( 1 −−−−−−−−−−−−−−−→ 0 2 行目 +(1 行目)×(−a) 2 行目 × 1 a2 + 1 −−−−−−−−−−→ ( 1 −a 0 1 −a 2 a +1 ) ) ( 1 行目 + (2 行目)×a −−−−−−−−−−−−−→ 1 0 0 1 ) より rank (a b) = 2 なので、a, b は線形独立であり、特に R2 の基底となる (a2 + 1 ≥ 1 な ので、特に a2 + 1 ̸= 0 が成り立つことに注意しよう)。 y ℓ (3) 図より fℓ (b) = −b. fℓ (a) = a, a したがって、基底 B = { a, b } に関する fℓ の行列表示は ( ) 1 0 (fℓ (a) fℓ (b)) = (a − b) = (a b) 0 −1 1 0 ゆえ 0 −1 a = fℓ (a) b O x 1 fℓ (b) となる。 B (4) 標準基底を E = { e1 , e2 } とすると、B から E への基底の変換行列 PB→E は等式 (e1 e2 ) = (a b)PB→E で定められるので PB→E = (a b)−1 (e1 e2 ) = (a b)−1 ( ( )−1 1 1 −a 1 = = 2 1+a −a a 1 ) a 1 となる。したがって E に関する行列表示 Aℓ は ( ) ( )( 1 0 1 −a 1 Aℓ = PB→E = 0 −1 a 1 0 ( ) 1 − a2 2a 1 = 1 + a2 2a −(1 − a2 ) −1 PB→E ( ) 1 0 1 2 −a −1 1 + a a 1 ) と求まる。 【解説】 鏡映変換の行列表示を計算する問題。この問題は『線形代数学 Ⅰ』の内容のみを用いて解 くことも出来ますが、 基底 を自由にとることが出来るようになると、この問題のように 行列表示 が簡単に計算出来る基底を用いて線形変換の行列表示を求めておいて、後で標準基底に関する行列表 示に「翻訳する」 という見通しの良い方法で計算出来るようになります。標準基底という枠に縛ら れずに基底を自由に考えられるようになると、一気に物事の視野が広がる ということを明快に表し 10 た問題であると言えるでしょう。「基底の変換」という操作の威力をより深く感じとるためにも、こ の問題はよく復習することを 強く お薦めします。 この問題からも想像出来るように、実は線形変換には その線形変換が「見やすく」なるような基 底の選び方 があります。それがこのあと学習する 固有ベクトル eigenvectors なのです。 11
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