システム制御工学

システム制御工学
第3章 システム解析
可制御性と可観測性
制御システムの構成手順

システムモデリング; 制御対象の数式モデルを作成
 状態方程式(微分方程式・差分方程式)
 伝達関数(ラプラス変換・Z変換)

システム解析;
制御対象の特性を調査
 安定性
 可制御性,可観測性(アクチュエータやセンサの配置問題)

コントローラの設計; 目的を満たすコントローラを設計
 極配置,オブザーバ
 最適レギュレータ

コントローラの実現・実装
可制御性と可観測性

制御できるとは?観測できるとは?
理論的側面からの
問題提起
工学的側面からの
問題提起
1. 入力をうまく操作することで,状
態を望む状態に一致させること
は可能か?
2. 入力と観測データから,初期状
態を一意に決定できるか?
1. 制御するのに,アクチュエータの
数や配置は適切か?
2. 観測するのに,センサの数や配
置は適切か?
状態
入力
出力
可制御性の定義

状態: 次元ベクトル
:
行列
:
1 行列
:1
行列
考察の対象:DLTIシステム
可制御性の定義
DLTIシステムの初期状態をゼロ( 0
に対して適当な時刻
て,
0 と入力
0)とする.任意に与えた状態
,
0, … ,
1 が存在し
とできるとき,DLTIシステムは“可制御である”という
システム行列を用いて,可制御か否かを
判定する方法は?
可制御性の必要十分条件

次正方行列
可制御性行列:
可制御性の条件
DLTIシステムが可制御
rank
行列の階数(

)
行列の掃き出し法(基本演算)
二つの行(列)を交換する
 ある行(列)にゼロでない定数を掛ける
 ある行(列)の定数倍を別の行(列)に加える


階段行列
対角要素より下の要素がすべてゼロの行列
 ある行のすべての要素が
ゼロの場合もありうる
ヶ


行列の階数(rank)
基本演算で階段行列に変換
 階段行列の非ゼロである
対角要素の個数

次正方行列 が正則
 rank

可制御性の必要十分条件

十分性()の証明
ここで,
とする.
0 より
可制御性の必要十分条件

十分性()の証明
ここで,任意に与えた状態
により,
とできる
次元ベクトル
と可制御性行列を用いて構成した入力
可観測性の定義

状態: 次元ベクトル
:
行列
:
1 行列
:1
行列
考察の対象:DLTIシステム
可観測性の定義
DLTIシステムにおいて,適当な時刻
0 が存在して,入力
およ
び出力
,
0, 1, … ,
1 から初期状態
を一意に決定できる
とき,DLTIシステムは“可観測である”という
システム行列を用いて,可観測か否かを
判定する方法は?
可観測性の必要十分条件

可観測性行列:
次正方行列
可観測性の条件
DLTIシステムが可観測
rank
可観測性の必要十分条件

十分性()の証明
として, 0 , … ,
を計算すると
可観測性の必要十分条件

十分性()の証明
可観測性行列
ベクトル,行列表現をすると
各ベクトルや行列を,上のように定義すると
となり,rank
であるので,初期状態は以下で求まる
倒立振子の可制御性と可観測性

線形モデル

状態変数
:振子の角度
:振子の角速度

:台車の変位
状態方程式
:台車の速度
倒立振子の可制御性と可観測性

Scipad を起動して,倒立振子の連続時間モデルの構築



各種パラメータの設定(以前スライドの値と同じ)
システム行列 A,b,c を設定
“syslin” コマンドで線形時不変システムを定義
g
台車の質量
M kg
0.740
振子の質量
m kg
0.125
振子の長さ
l m
0.354
台車と床の摩擦係数
cM
2.6
台車と振子の摩擦係数 cM
m/sec^2
9.8
重力加速度
kg/sec
1.98e‐3
倒立振子の連続時間モデル

Scipad を起動して,倒立振子の連続時間モデルの構築



各種パラメータの設定
システム行列 A,b,c を設定
“syslin” コマンドで線形時不変システムを定義
「エル,ゼロ,1,ゼロ」です
倒立振子の連続時間モデル

Scipad を起動して,倒立振子の連続時間モデルの構築



各種パラメータの設定
システム行列 A,b,c を設定
“syslin” コマンドで線形時不変システムを定義
倒立振子の離散時間モデル

サンプル周期を設定して,離散時間モデルを構築
倒立振子の可制御性と可観測性

可制御性,可観測性行列の取得と判定
...
...
-->Mc = cont_mat(dLTI)
Mc =
......
// 前のスライドの作業を行って,
//
離散時間システムの登録を済ます
// 可制御性行列の取得
-->rank(Mc)
ans = 4
-->Mo = obsv_mat(dLTI);
-->rank(Mo)
ans = 4
// 可観測性行列の取得
状態変換と可制御性・可観測性

状態変換行列: (

変換後のシステム行列
̅, , ̅
,

の正則行列)
rank
で,逆行列が存在
,
変換前後の可制御性行列
rank
であるから,rank
rank
である.
すなわち,可制御であるか否かは変化しない
可制御正準系

行列

状態変換行列
システム(系)の
特性多項式と呼ぶことも
の特性多項式
可制御だから,
逆行列が定義できる
可制御正準系
で求まる適当なベクトル
可観測正準系

変換行列
で求まる適当なベクトル
可制御なシステムのパルス伝達関数

可制御正準系のパルス伝達関数

パルス伝達関数
 状態変換に対して不変
可制御なシステム
 可制御正準系に変換可能

パルス伝達関数
 状態方程式
の変換が可能
可制御なシステムの伝達関数は,上式で表現できる
対角正準系の可制御性と可観測性
:行列 の
相異なる固有値
(要素ごとに書き下す)
可制御  すべての
可観測  すべての
0
0
対角正準系の可制御性の条件
可制御性行列
の定義
「可制御
 すべての
は明らか
バンデルモンド行列:
,
なら正則
0」
対角正準系からパルス伝達関数へ

対角正準系のパラメータを用いたパルス伝達関数
もし,可制御でないなら,
0 なる
が存在
右辺の第 項が消える
 伝達関数の次数が,
状態方程式の次元より低くなる
 伝達関数では現れないサブシステムが存在
※ 不可観測の場合も同様の議論が可能
対角正準系からパルス伝達関数へ

対角正準系のパラメータを用いたパルス伝達関数
̅
̅
̅