我が国の固定価格買取制度に関する費用負担 見通し

電力中央研究所報告
経
営
我が国の固定価格買取制度に関する費用負担
見通しとその抑制策の検討
キーワード:固定価格買取制度,太陽光発電,太陽光発電バブル,
機動的な買取価格の改定,量的規制
背
報告書番号:Y13031
景
欧州における固定価格買取制度(FIT)の実施国では、想定していた導入目標を大幅に
超過した太陽光発電(PV)の設置が進む PV バブルが発生し、費用負担の急増が課題と
なっている。一方、我が国では経済産業省が費用負担を推計しているが、買取価格の適
用時期が設備認定時点であることが考慮されておらず、過小評価となる可能性がある。
目
的
2015 年度に予定される制度見直しに向けて、今後の費用負担の見通しを示し、FIT 先
行国における PV バブルへの対策を整理することで、制度設計の課題を明らかにする。
主な成果
1. 2018 年までの我が国における FIT 費用負担の将来推計(表 1)
費用負担の将来推計は、経産省(METI)と Bloomberg New Eenergy Finance(BNEF)
があり、これに IEA の国別導入量予測に基づくシナリオを 3 つ設定し、比較した(表 1)
。
(1)METI が 2020 年 8100 億円と試算しているのに対し、その他は 2015-17 年に 1 兆円
を超える。
これは METI の PV 導入が毎年約 300 万 kW と想定する一方、
BNEF と IEA
が買取価格の高い 2014~16 年に導入ピークがあると想定していることに起因する。
(2)買取価格適用時期の影響:FIT 買取価格が設備の運転開始時点に適用される IEA 運
開シナリオと、設備認定時点である IEA(b)と(b2)シナリオを比べると、後者は前
者より年間賦課金総額(2018 年時点)が 2000 億円以上大きくなる。運開時点の価
格適用は PV 発電事業のリスクを軽減させる一方で、
費用負担に与える影響が大きい。
(3)回避可能費用の算定変更による影響:全電源平均可変費(9.55 円/kWh)で固定し
た IEA(b2)と、2014 年導入分から同費用を 12.55 円/kWh とした IEA(b)シナリオを
比較した。年間賦課金総額の差は、当初は僅かであるが、2018 年で約 1000 億円に
達する。
2. 欧州 FIT 先行国(独・伊・西・仏・英)の PV バブルへの対策(表 2)
報告書が対象とした先行国の全てで、①買取価格の大幅な切り下げ、②買取価格改定
時期の高頻度化、③量的規制が実施されている(表 2)
。本来、FIT は導入量を直接調整
するものではないが、これら対策によって導入量(費用負担)の調整を実施している。
今後の展開
我が国の見直しにおいては、価格適用時期の変更、欧州での PV バブル対策の実施可
能性を検討するとともに、より実態に即した回避可能費用の算定方法が必要である。ま
た FIT 等の普及政策だけでなく、技術開発政策の分析・提案が望まれる。
表 1 FIT 費用負担見通しの比較(買取総額・賦課金総額・賦課金単価・試算諸元)
各種試算
実績値
買取総額
IEA運開シナリオ
(億円/年)
IEA(b)シナリオ
実績値
METI(2013)
賦課金総額
BNEF(2013)
(億円/年)
IEA運開シナリオ
IEA(b)シナリオ
IEA(b2)シナリオ
実績値
METI(2013)
BNEF(2013)
賦課金単価
(円/kWh)
IEA運開シナリオ
IEA(b)シナリオ
IEA(b2)シナリオ
PV累積導入 METI(2013)
量想定
BNEF(2013)
(万kW)
IEA(2013)
2013
4,800
3,133
3,100
4,446
0.35
0.35
0.35
2014 2015 2016 2017 2018
9,000
8,375 10,903 13,869 16,986 20,019
9,103 12,183 15,567 18,871 21,904
6,523
8,145 11,217 11,372 11,646
5,908 7,319 8,980 10,729
6,813 8,922 11,145 13,081
6,882 9,112 11,503 13,766
0.75
2019
2020
METI(2013):総合資源エネルギー
調査会基本政策分科会第10回会
合(2013年11月18日)配布資料6
8,100
11,925 12,160 12,456
12,431
14,784
15,787
986
1,659
0.77
0.67
0.78
0.79
1,245
2,876
1.05
0.84
1.02
1.04
1,504
4,018
1.05
1.03
1.27
1.31
1,764
4,428
1.07
1.23
1.49
1.57
2,023
4,828
1.09
1.42
1.69
1.80
2,282
5,228
1,140
1,590
2,090
2,690
3,290
3,890
各種試算の出所
1.11
0.92
1.14
2,541
5,628
2,800
6,028
BNEF(2013):Bloomberg New
Energy Finance, Japan’s FiT law:
legal structure and cost
forecasts
IEA運開シナリオ:買取価格は
METI(2013)、導入想定は
IEA(2013)Medium-Term
Renewable Energy Market Report
2013に依拠。(b)シナリオは、価格
適用が認定時点で決まる我が国
の特徴を考慮した(諸元参照)。
導入想定
買取価格
回避可能費用
〇PV:12年度42円/kWh、13年度住宅38円/kWh・非住宅37.8円
現在の値から、長期見通し(2009年
/kWh、14年度34円/kWh、15年度30円/kWh、以降30円/kWh。 9.55円/kWh(13年
策定)の2020年目標値まで直線的
METI(2013)
11月単価)で固定
〇他電源は2013年度の価格(風力23.1円/kWh、地熱27.3円
に増加。
/kWh 、中小水力25.2円/kWh 、バイオマス25.2円/kWh)で固定。
〇PV:14年度と15年度について、住宅用は34円/kWhと30円
/kWh(税抜き)、非住宅用は32円/kWhと28円/kWh(税抜き)。16年
以降はPVの買取は停止
7.42円/kWh
BNEF(2013) BNEF(2013)の導入予測
〇他電源は2013年度の価格(風力23.1円/kWh、地熱27.3円
/kWh 、中小水力25.2円/kWh 、バイオマス25.2円/kWh)で固定。
〇洋上風力発電は2013年度から38.5円/kWh
METI(2013)に依拠。価格適用時期が運開時点と設定(IEA(2013) 〇13年度以前の導
IEA
IEA(2013)に依拠。
の各年導入量は、METI(2013)の各年買取価格で導入される)。
運開シナリオ
入分を9.55円/kWh
IEA(2013)に依拠。ただし、PV非住 METI(2013)に依拠。ただし、価格適用時期はPVのみ認定時点と (METI2013と同じ)。
IEA(b)シナリオ 宅の認定量* で実際に導入されるの 設定。当該年度導入量の内訳は、前年度認定の買取価格分が 〇14年度以降の導
100万kW導入され、残りの導入量は前年度以前の認定分が導入 入分を12.55円/kWh
は6割** とした。
と想定。
IEA(b2)シナリ
9.55円/kWhで固定
オ
*非住宅用PV認定量:12年度1869万kW(実績値)、13年度1100万kW(想定値)。13年度の想定は、13年4-12月末までの認定実績744万kW
に、2013年1-3月認定実績約1500万kWの1/4が認定されるとした。
**経産省による12年度認定分に対する報告徴収(14年1月末時点)で、場所及び設備が未決定が認定設備容量の22%だったことから、認定
取消の想定をその倍の40%とした。
試算の諸元
表 2 欧州 FIT 先行国における PV バブルへの対策のまとめ
買取価格の最大減少率(陸上設置型)
対改定前期比
対最大価格比
ドイツ
イタリア
買取価格改定時期の高頻度化
2009年以降、半年。至近の導入
▲25%
▲76%
実績をもとに買取価格の低減率を
2012年4月改定時 2006年1月~12月 設定。2012年5月以降は毎月買
取価格を改定
第4次FIT(2011年6月)から、毎月
▲15%
▲76%
~半年毎に価格改定を実施。
2012年9月改定時 2006年1月~12月
量的規制
2012年改正で、累積導入量5200
万kWでPVをFIT対象から除外。
2014年改正で、年間導入量250
万kWとすることを検討中。
2011年6月から年間買取費用を
60億€。2012年8月から68億€に
引き上げ。
2013年6月に量的規制の上限に達したため、FIT終了。ネットメータリング等に移行。
▲29%
▲72%
2010年4月以降、四半期毎に改 年間導入量:2009年は50万kW、
2008年8月改定時 2007年1月~12月 訂。
2010年46万kWを設定。
2012年1月以降、新規買取停止中。FIT買取費用等の増加分を規制部門の電気料金から回収できず、大幅
な赤字が発生したことによる。
▲57%
▲76%(2006年7月 2009年改正により、四半期毎。至 年間導入量:2013年以降、年間
フランス
2010年8月改定時
~07年12月
近の導入実績により価格設定。 100万kW
▲72%
▲78%(2010年4月 FIT開始時(2010年)から、基本的 2011~14年の買取総額:10.6億
英国
2012年3月改定時 ~2012年3月) に四半期ごとに買取価格を設定。 ポンド
日本
▲11%
▲20%
年1度(必要があれば半年毎)
検討されていない
実施年
2014年4月改定時
スペイン
関連研究報告書
[1] Y12034「日本における再生可能エネルギー普及制度による追加費用及び買取総
額の推計」(2013.4)
研究担当者
朝野 賢司(社会経済研究所
問い合わせ先
電力中央研究所 社会経済研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3201-6601(代) E-mail : [email protected]
エネルギー技術評価領域)
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる] © 2014 CRIEPI
平成26年6月発行
13-022