資生堂、香りが化粧品の使用性に影響することを発見 資生堂は、香りがヒトの重量感覚を変化させることを世界で初めて発見しました。その香りの 働きは、クリームを肌に塗るときの伸びの感覚にも作用するというものです。本研究では、同じ クリームの伸びの感覚がレモンの香りでは軽くなり、モス(サルオガセ科の植物 ※1)の香り では重くなることを実証しました。本発見によって、従来の基剤研究だけでなく、香りの働きか らも化粧品の使用性を向上させることが可能になりました。 資生堂は、1980 年代より香りの有用性を科学的に実証する研究を進めており、これまでに香り の鎮静・高揚効果や交感神経活性化効果などを発見し、スキンケア化粧品やフレグランスなどに 応用してきました。 今回の発見は、資生堂の最新のアロマコロジー研究(香りの生理心理効果研究)の第 7 番目の 成果であり、今後も香りの有益な効果を探索して、お客さまの化粧生活の様々な領域に役立てて いきます。 ※ 1 モス(オークモス) :サルオガセ科の植物で、樫の木に着生する苔。深い森を思わせる湿った落ち葉の ような香り 香りと重量感覚 重量感覚についての先行研究では、 「色」が重量感覚を変化させることが既に報告されており、 同じ重さ、同じ大きさのものでも、白い物より黒い物の方が重く感じられ、重さの判断には色の 明度が影響しているといわれています。 資生堂は、 「香り」が重量感覚に与える影響について検証するために、香りと瓶の重さについ て実験を行いました。同じ重さの瓶のふたに様々な香りを塗布し、その香りをかぎながら瓶の重 さを比べたところ、香りを塗布していない瓶と比較して、レモンの香りは瓶の重量を軽く感じさ せ、モスの香りは重く感じさせる結果が得られました。 また同じ香りを用いてクリームの伸びの感覚を測定したところ、香りがない場合と比較して、レ モンの香りはクリームの伸びを軽く感じさせ、 モスの香りは重く感じさせることが分かりました。 香りの印象と重さの判断の関係を調べてみると、香りの透明さや明るさといった印象との相関 が高く、透明で明るい印象の香り(レモン、シトラス、フローラルなど)は、重量感覚とクリーム の伸びの感覚を軽く感じさせ、深みがあり落ち着いた印象の香り(モス、スパイス、ウッディな ど)は重く感じさせることも分かりました。 使い心地や触り心地といった「使用性」はお客さまが化粧品を選択する重要な要素の一つです。 本研究によって、香りや色などの感覚からも使用性の向上を目指した化粧品開発が可能となりま す。 今後資生堂では、 お客さまの多様な使用性のニーズに対応する商品の開発を進めていきます。 なお本研究成果については、9 月 25 日(水)の「日本心理学会」及び 10 月 1 日(火)~3 日 (木) 「日本味と匂学会」で発表します。 資生堂の香りの研究 資生堂では、古来から経験的に知られていた香りの効用を、科学的な方法を用いて証明し、私 たちの生活に積極的に活用しようとする研究「アロマコロジー研究」を 1984 年に開始しました。 1980 年代は、香りによって気分がリラックスしたりリフレッシュしたりすることに着目し、その 香りの効果を科学的に証明するために脳波や心拍変動を主な指標として香りの鎮静・高揚効果の 研究を進めました。1990 年代は、ヒトのホメオスタシス(生体恒常性維持)機能に着目した研究 を推進してきました。その結果、脳の中枢で知覚された快い香りの情報は、神経系・内分泌系を 通じて身体の各部に影響を及ぼし、生体の恒常性維持に重要な役割を担っていることが判明しま した。主な香りの研究成果は以下のとおりです。 1984 年 アロマコロジー研究スタート 1984年 ①香りの鎮静・高揚効果 (香りの効果で気分がリラックスしたり、リフレッシュする香りの働きを発見) 1994年 ②香りの不眠傾向緩和効果 (古代エジプトの香り「キフィー」が不眠傾向者の睡眠改善に効果があることを発見) 1995年 ③香りのホメオスタシスへの影響 (香りが神経系・内分泌系を通じて生体の恒常性維持に重要な働きを持つことを発見) 2001年 ④香りの皮膚バリア機能回復促進効果 (ストレスにより抑制される皮膚のバリア機能の回復が香りによって促進されることを発見) 2002年 ⑤香りによる交感神経活性効果 (グレープフルーツ、ペッパー、フェンネル、エストラゴンの香りの効果によって、交感神経が活性化し、 中性脂肪を燃焼させる新スリミング理論を確立) 2002年 ⑥香りの皮脂抑制効果 (肌のテカリやべたつきの原因である皮脂を抑制する香りの効果を発見) 2002 年 ⑦香りが化粧品の使用性に影響
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