III-27 右外腸骨静脈に生じた primary venous aneurysm の 1 例 美波 1)、三浦 滝 貴 1) 崇 2)、小林 隆洋 1)、笠井 俊夫 1)、丸山 隆久 1)、池田 宇一 1)、八巻 文 3) 長野市民病院 循環器内科、2)信州大学医学部附属病院 循環器内科、3)長野中央病院 心臓血 管外科 【症例】40 歳、男性。【主訴】右鼠径部痛。【現病歴】特記すべき既往歴はなし。右鼠径部痛のため近医を 受診し、超音波検査で右下腹部に径 6cm の腫瘤を指摘された。当院を紹介受診し、造影 CT・超音波検査から は右外腸骨静脈瘤が疑われた。下肢動静脈造影では、右外腸骨静脈は嚢状に拡張しており、動脈との間に交通 は認められなかった。肺血流シンチで局所的な集積欠損が認められたため、ワーファリンによる抗凝固療法が 開始された。外傷や炎症の既往はなく、中枢側静脈の狭窄・閉塞を認めない primary venous aneurysm と診断 され、切除術が行われた。【考察】腸骨静脈領域の primary venous aneurysm の報告は少なく、非常に稀な疾 患である。塞栓症や破裂の危険性があり、抗凝固療法や外科的治療の適応となることが多い。 III-28 右胸痛にて発症しショックをきたした神経線維腫症I型の一例 国府田 上 1) 尚矢 1)、井藤 昭彦 3)、青沼 茨城県立中央病院 葉子 3)、児山 健 2)、吉田 健太郎 1)、美崎 昌子 1)、武安 法之 1)、野 和隆 3) 循環器内科、2)茨城県立中央病院 放射線科、3)筑波大学 医学医療系 循環 器内科 67 歳、女性。既往歴:十二指腸乳頭部腫瘍疑いにて通院中。朝、自宅にて突然右胸痛を訴えショック状態と なり救急搬送された。意識レベルは JCS III-300、喘ぎ呼吸で脈拍の触知不良のため気管内挿管を行い、輸液 とカテコラミンを使用し循環動態を維持した。胸部単純 X 線にて胸水貯留を認め、右鎖骨上窩、縦隔、胸腔内 に血腫を認めた。造影 CT にて右鎖骨下動脈から血管外漏出を認め、出血源と推定した。体表に多発神経線維 腫を認め、神経線維腫症I型に伴う血管脆弱性に起因した右鎖骨下動脈破裂を疑った。保存的加療では全身状 態に改善を認めないため、右鎖骨下動脈に対し緊急コイル塞栓術を施行し、止血に成功し救命しえた。多発神 経線維腫を認める患者においては、本症例のような可能性を常に念頭に置くべきであると考えられた。 III-29 外傷性上肢虚血に対して血管内治療が有効であった一例 大嶋 桜太郎 1)、東谷 1) 恵 、石井 迪昭 1)、吉井 2) 朝夫 、田中 宏和 1) 東京医科大学茨城医療センター 雄一 2)、小松 靖 1)、木村 一貴 1)、阿部 憲弘 1)、柴 千 1) 循環器内科、2)東京医科大学 茨城医療センター 整形外科 症例は 26 歳男性。ごみ収集作業中に左手を挟まれ緊急受診となった。左手関節部の変形母指~小指の掌側の 感覚障害、および末梢の冷感を認めた。右尺骨神経障害を伴った右手根骨脱臼骨折と診断。緊急で観血的脱臼 骨折整復固定、創外固定術を施行した。同日夜間に虚血症状が出現し抗凝固療法を開始するも、増悪傾向であ り血管内治療を行った。血管内造影所見では尺骨動脈、橈骨動脈、及び骨間動脈すべてが閉塞し、手関節以下 末梢が造影されない状態であった。外傷性に解離し、閉塞したと思われる尺骨動脈に対して血管内治療を行い、 手関節以下の良好な血流を得ることに成功した。動脈硬化性病変に対する血管内治療の有効性は確立されつつ あるが、外傷性に対する血管内治療の報告は未だ少数である。貴重な症例と思われたためここに報告する。 III-30 多発外傷患者の手術中に発症した急性下壁心筋梗塞の一例 宮部 倫典 1)、増田 1) 、稲垣 大 、吉田 也 1)、北條 志 1) 新一郎 1)、古谷野 1) 精孝 、宮澤 林太郎 1)、土山 康紀 1)、時岡 1) 聡 、中田 高明 1)、小宮山 紗由理 1)、宮原 1) 晃裕 、河村 浩大 1)、深水 大輔 1)、新井 1) 岩成 、永嶺 誠二 1)、渋井 真理奈 1) 翔 、青山 祐 敬志 1)、足利 貴 2) 1) 東京都立広尾病院、2)東京医科歯科大学 医学部付属病院 循環器内科 症例は 56 歳男性。多発外傷および左浅大腿動脈完全閉塞のため緊急手術および下肢血行再建術を施行。血行 再建術後、高 K 血症が原因と考えられる wide QRS bradycardia からショック状態となったが、高 K 血症の補 正と一時的な心肺蘇生術でバイタルは安定した。その際の 12 誘導 ECG で下壁誘導に ST 上昇を認め、心臓超音 波でも下壁領域の壁運動低下が認められ急性下壁心筋梗塞の疑いで緊急 CAG を施行。CAG で#1 に 99%狭窄を認 め、引き続き PCI を行い救命し得た。外傷による力学的要因を契機に急性心筋梗塞を発症した症例は過去に報 告がある。本症例では来院時の 12 誘導で明らかな ST-T 変化は認めず、術後に明らかな心電図変化を認めたた め、外傷の力学的要因に加え手術等の侵襲による複合的要因により心筋梗塞を発症したと考えられたため、考 察を交え報告する。 III-31 鈍的外傷による心筋障害 新名 良広、吉野 杏林大学病院 秀朗、佐藤 徹、松下 健一、松下 紀子、三浦 陽平、樋口 聡 第二内科 工事現場で働く 67 歳男性。解体作業中に鉄球が左前胸部に衝突した。疼痛が持続したため近医を受診したと ころ、心電図で前胸部誘導と高位側壁誘導での ST 上昇とトロポニン I の上昇を認めたため急性心筋梗塞疑い で当院へ救急搬送となった。心臓超音波検査では心尖部よりの前壁中隔で収縮低下を認めた。緊急冠動脈造影 を施行したところ、有意病変は認められなかった。左室造影で心尖部を中心とした収縮低下を認めたことから、 たこつぼ型心筋症も鑑別に挙ったが心臓 MRI 所見からは否定的であった。診断に苦渋する症例であったが、一 時的な LAD 領域の血栓形成、もしくは鉄球の衝撃による冠攣縮が原因の心筋梗塞を発症した可能性が高いと考 えられた。鈍的外傷による心筋障害という稀な症例について文献的考察を交え報告する。 III-32 心臓マッサージが原因と思われる縦隔血腫を開胸で止血し救命しえた一例 渡辺 康志 1)、木村 1) 郷 1)、田口 水戸ブレインハートセンター 慎介 1)、上原 良樹 1)、藤崎 浩行 2) 循環器内科、2)水戸ブレインハートセンター 心臓外科 症例は 58 歳男性。危険因子に喫煙。H28 年 6 月胸痛が出現し前医で急性心筋梗塞と診断。救急車内で心室細 動があり AED で除細動。カテ室に移動し責任病変の右冠動脈亜閉塞に対して PCI を施行。その際 VF storm とな り気管内挿管、心臓マッサージ、PCPS、および IABP を装着した。左前下行枝と左回旋枝の近位部それぞれの 90%狭窄にも PCI を施行して CCU に帰室した。第 2 病日、気管チューブ抜管、PCPS と IABP を抜去した。第 4 病日、カテコラミン増量にてもショック状態が持続するので CT で縦隔血腫が心臓を圧迫しており緊急開胸術 を施行した。血腫除去および右内胸動脈の心膜枝からの出血を確認し止血した。速やかに血圧は上昇した。心 臓マッサージと大量のヘパリン使用のため出血したものと考えた。第 20 病日独歩で退院し数週間後に社会復 帰を果たした。
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