一般演題 セッション1-3

I-15
大動脈弁置換術(AVR)後の治療抵抗性の感染性心内膜炎(IE)の一例
山崎 亜貴子 1)、有馬
正 2)、青木
1)
淳 2)、池田
秀紀 1)、秋津
克哉 1)、佐藤
秀之 1)、日吉
康長 1)、仁禮
隆 1)、尾本
隆徳 3)
東京都保健医療公社荏原病院
循環器内科、2)昭和大学
心臓血管外科、3)東邦大学
循環器内
科学
症例は 42 歳男性。AVR 施行 10 年後の発熱にて受診。体温 39.3℃、足底に発疹(Jameway 発疹)を認めた。血
液培養からα-streptococcus を検出。疣贅は認めなかったが、Duke 診断基準から IE と診断、ABPC/GM を開始
した。しかし PCG 系耐性であったため効果は乏しく、新たに Osler 結節、結膜出血が出現し、大動脈弁、僧帽
弁の肥厚、弁穿孔も出現した。手術適応範囲だが、再手術リスクが高く VCM/CTRX/GM、続いて DPT へ変更し内
科的治療を継続した。その後徐々に症状、炎症反応は改善し、第 36 病日に退院となった。【考察】PCG 系耐
性のα-streptococcus はまだ稀有である。今回我々は再手術困難な治療抵抗性の IE に対し、注意深い身体診
察が診断につながり、適切な抗生剤変更が治癒に寄与した症例を経験した。今後の IE 治療に留意すべき点が
多いと考え報告する。
I-16
AR jet があたる Sigmoid septum に疣腫を認めた IE の一例
井合
村
渉、小野
圭祐、鈴木
智彦、徳田
華子、田中
宏明、山口
隆太郎、矢嶋
紀幸、片山
隆晴、松
雅裕
独立行政法人国立病院機構埼玉病院
循環器内科
【症例】71 歳女性。上行大動脈拡大、AAE(径 45mm)を経過観察されていた。TTE のため来院、帰宅後の同日
夕から発熱を認めた。TTE では sigmoid septum あり、AR jet の当たる左室流出路心室中隔に 5mm 大の可動性
ある構造物を認めた。その後、38 度以上の発熱が 2 週間以上持続し当院受診、精査目的で入院となった。血
液培養が繰り返し陽性となり IE の診断、原因菌は Streptococcus mutans で、口腔内感染が疑われた。抗生剤
治療を開始、血液培養陰性後 4 週間にわたって継続した。TTE、TEE で疣腫は縮小した。治療後、AAE、AR が手
術適応と考え、遠隔期に Bentall 手術を施行、独歩退院を得た。【考察】比較的珍しいと思われる部位に疣腫
を認めた IE の一例を経験した。入院中 TTE、TEE で疣腫の経過を追うことができた。文献的考察を加えた上で
ここに報告する。
I-17
全身塞栓症を併発した感染性心内膜炎で、卵円孔に付着した疣贅が Daptomycyn で退縮を認めた
一症例
後閑 俊彦 1)、福岡
和 1)、尾本
裕人 1)、正司
正 2)、青木
1)
真 1)、茅野
淳 2)、小林
昭和大学医学部内科学講座
博行 1)、松井
泰樹 1)、辻田
裕昭 1)、渡辺
則
洋一 1)
循環器内科学部門、2)昭和大学
医学部
外科学講座
心臓外科学
部門
症例は 54 歳男性。意識混濁を認め救急搬送となった。多発性脳梗塞と肝臓、腎臓、脾臓などの多臓器に及ぶ
梗塞を、さらに血液検査で心筋逸脱酵素の上昇を認めたため緊急入院となった。経胸壁心エコーでは疣贅は検
出できなかったが経食道心エコーで僧帽弁と大動脈弁に疣贅を認めた。卵円孔右房側に浮動性の疣贅を認め
た。血液培養検査からは MSSA が検出され、SBT/ABPC、GM で治療を開始した。その後腎機能障害と共に MRSA
が出現したため Daptomycyn (DPT)を使用した。使用後に卵円孔に付着した疣贅は消失し、僧帽弁形成術を施
行した。塞栓症の合併が多数みられる Staphylococcus aureus による感染性心内膜炎の今後の治療戦略として
腎機能障害などが比較的稀である DPT の有用性が示された。
I-18
髄膜炎で発症し多発した感染性病変に対し弁置換術を含む複合処置が奏功した
感染性心内膜炎の一例
三谷 優太朗 1)、鍋田
1)
健 2)、 岸原
北里大学病院卒後臨床研修センター
淳 2)、池田
臨床研修医
祐毅 2)、阿古
潤哉 2)
2 年次、2)北里大学
医学部
循環器内科学
67 歳男性、意識障害と発熱を主訴に当院へ救急搬送された。頭部 CT にて異常を認めず、腰椎穿刺で細胞数の
上昇と糖の低下を認めたため急性髄膜炎の診断となった。ステロイドと抗生剤投与にて意識は改善するも、炎
症反応高値は遷延した。その後頭部 MRI で多発脳梗塞、また第 7 病日には急性下肢動脈閉塞および胸筋内膿瘍
を発症した。原因精査で施行した経食道心臓超音波で、僧帽弁後尖に弁輪部膿瘍および疣贅を認め感染性心内
膜炎の診断となった。保存的加療では改善困難と考え僧帽弁置換術を施行した。しかし術後に発熱が遷延した
ため胸筋内膿瘍に対してドレナージを行った。以後状態が改善し第 111 病日に退院となった。 実臨床におい
て感染性心内膜炎の診断・治療にはしばしば難渋し、本症例のように複合的介入を要する症例も存在する。
I-19
ハートチームによる検討にて母子ともに救命し得た妊娠 30 週の
急性僧帽弁逆流合併感染性心内膜炎の一例
加藤 宗二郎 1)、佐藤
晴裕 4)、水野
如雄 1)、出雲
将徳 5)、原田
昌樹 1)、石橋
智雄 1)、明石
1)
聖マリアンナ医科大学臨床研修センター
血管外科、3)聖マリアンナ医科大学
ナ医科大学
祐記 1)、千葉
清 2)、坂本
三樹 3)、近藤
嘉浩 1)
臨床研修医
1 年次、2)聖マリアンナ医科大学
麻酔科、4)聖マリアンナ医科大学
心臓
産婦人科、5)聖マリアン
小児科
【症例】29 歳、妊娠 30 週 3 日の妊婦。3 週間前から腰痛を自覚、その後発熱、下腿浮腫が出現し当院産科紹
介受診。心尖部を最強点に Levine 3/6 の収縮期雑音を聴取し、肺うっ血、両側胸水貯留を認め当科コンサル
トとなった。経胸壁心エコー図検査では僧帽弁前尖逸脱に伴う高度僧帽弁逆流を認め、逸脱弁尖に 18×11mm
大の腫瘤性病変が付着しており、感染性心内膜炎及び高度僧帽弁逆流に伴ううっ血性心不全と判断し即日入院
となった。造影 CT 検査にて明らかな全身塞栓は認めなかった。緊急ハートチームカンファレンスを施行し、
緊急開心術施行後、早期の帝王切開術を行う方針とした。全身麻酔下、人工心肺補助下で僧帽弁置換術を施行、
8 時間後に帝王切開術を施行した。術後経過は母子ともに良好で、約 6 週間の抗生剤投与の後、第 47 病日に
退院となった。
I-20
透析患者で上肢動静脈シャント感染から冠動脈瘤を認めた一例
敬介 1)、塩島
表
成
功一郎 1)、大澤
宏 2)、滝澤
恒基 2)、鈴木
淳 1)、表
瑠里 3)、嶋田
一
1)
1)
島田総合病院
循環器内科、2)島田総合病院
心臓血管外科、3)島田総合病院
糖尿病内科
63 歳男性。頻回な PCI 歴のある血液透析下の 2 型糖尿病患者。左シャント瘤が急速に拡大したため、結紮術
を施行したが破裂。感染も併発し局所処置、抗生剤の投与を開始した。創部および血液培養ではブドウ球菌陽
性であった。破裂部は徐々に改善し、第 32 病日に右前腕内に AVF を作成。第 40 病日に炎症反応が再燃し、胸
部 CT 上肺に septic emboli を呈しており感染源と考え抗生剤の投与を再開した。感染徴候は徐々に低下、肺
陰影も消失し第 98 病日に退院となった。退院後に行った CAG で右冠動脈に径 10mm の冠動脈瘤を認めた。ブド
ウ球菌感染症による感染性仮性動脈瘤と考えられ、発見時点で炎症反応が消失していることや右冠動脈が無症
候性に再狭窄をきたしており動脈瘤の自然消退も期待できることから経過観察とした。現在は血栓化および消
退傾向にある。
I-21
サルモネラ菌による敗血症を合併した甲状腺クリーゼにより心肺停止に至った1例
川本 尚宜 1)、寺嶋
2)
、那須野
1)
2)
豊 2)、山本
暁光 、田中
済生会川口総合病院
篤志 2)、松本
2)
孝幸 、船崎
初期研修医
卓 2)、上野
2)
俊一 、高木
厚
彰子 2)、安倍
紘嗣 2)、小村
悟
2)
2 年次、2)済生会川口総合病院
循環器内科
症例は 53 歳男性。発熱と下痢を主訴に他院を受診し、敗血症性ショック、急性腎障害の診断にて搬送された。
搬送後、心肺停止となり蘇生処置により速やかに心拍再開した。入院後甲状腺クリーゼの診断も行い、血液浄
化療法を含む集学的治療、甲状腺クリーゼに対する治療を行い、ショック状態から離脱した。入院時 EF:25%
程度と高度左室収縮障害を認めていたが、60%程度まで改善を認めた。敗血症では炎症性サイトカイン等によ
る心筋障害が惹起され、甲状腺ホルモン過剰重症例では収縮・拡張不全を来すと報告されている。今回、様々
な病態が複合的に関与し高度な心収縮障害を認め、心肺停止からの蘇生後もサルモネラ感染症に特徴的病態で
ある比較的徐脈に、甲状腺クリーゼが合併したため急性期の病態診断に苦慮した1例を経験したので報告す
る。