医学研究 ア プ リ ﹁ ロ コ モ ニ タ ー ﹂

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トピックス
医学研究アプリ﹁ロコモニター﹂
石
島
旨
章
吉
村
祐
輔
金
子
和
夫
向上に貢献できるよう、様々な活動を展開して
ロコモの認知度向上に向けて
平均寿命の延伸のみならず、健康寿命をいか
に延伸するかが世界的に課題となっている。厚
いる。公益財団法人 運動器の 年・日本協会
これを受け日本整形外科学会、そしてロコモ
チャレンジ!推進協議会では、ロコモの認知度
生労働省による、国民の健康増進の総合的な推
本 ︵第2次︶
﹂において、健康寿命の延伸の
進を図るための基本的な方針としての﹁健康日
2016年の認知度は ・3%となっている。
による年に1度のロコモの認知度調査によると、
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ドローム︵ロコモ︶の認知度向上が掲げられて
実現に向けた課題の一つに、ロコモティブシン
以上の女性の認知度は ・1%である。一方で、
では年代が上がるごとに認知度は上昇し、 歳
これを年代別、そして性別に解析すると、女性
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いる。具体的には、2012年︵平成 ︶の認
知度 ・3%に対して、2022年︵平成 ︶
歳代の認知度は、男性が ・9%、女性が
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70
31
に向けて、若者への認知度向上が重要な課題の
80
34
74
・1%となっており、2022年の認知度 %
20
24
に認知度を %にすることが目標として掲げら
れている。
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一つとなっている。
啓発についての方法を開発するプロジェクト﹁運
動の生活カルチャー化により活力ある未来をつ
くるアクティブ・フォー・オール拠点︵中核拠
点 立命館大学︶
﹂に取り組んでいる。順天堂
COIプロジェクトでの
ロコモ予防・改善のための取り組み
﹁ロコモ予防・改善のための健康・医療イノベ
学部とが合同となり、学部横断的にCOIプロ
ーション﹂
︶として、医学部とスポーツ健康科
大学はそのサテライト拠点︵サテライト拠点名
順天堂大学は、医学部とスポーツ健康科学部
を併せ持つ大学である。1951年︵昭和 ︶
在のスポーツ健康科学部︶を併設し順天堂大学
ジェクト室を立ち上げ、このCOIプログラム
に、順天堂医科大学は、医学部に体育学部︵現
へと発展した。以来、スポーツ健康科学部を中
を進めている。
︱﹁ロコモニター﹂開発
スマートフォンでロコモ度テスト
心に、競技スポーツとともに、健康スポーツへ
の貢献を継続してきた。
2015年度から、順天堂大学では、立命館
大学と合同で、文部科学省と科学技術振興機構
プログラムの一環として、 ResearchKit
を用いて、
ロコモ度をはじめとした自らの運動機能を簡便
社が、医学研究をサポー
2015年、 Apple
︵J ST︶が推進する﹁革新的イノベーション
デバイス向けオープンソース・フレ
トする
創出プログラム︵COI STREAM
Center
iOS
﹂を公開した。われわ
of Innovation Science and Technology based Radical ームワーク﹁ ResearchKit
れはこのツールの持つ可能性に着目し、COI
︶
﹂に採
Innovation and Entrepreneurship Program
択され、健康な方を主たるターゲットに、病院
ではないフィールドにおいて、ロコモの防止や
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を想定して設計されており、被験者とともに、
に開発された。これは運動器検診のようなもの
ロコモ度テストは、自らの運動機能を安全か
つ比較的簡便に把握することを可能にするため
したことである。また、約100項目の質問や
も必要とせず、かつ繰り返し実施できるように
要したロコモ度テストを、場所を選ばず、検者
その最大の特徴は、前述のごとく、従来検者を
な臨床判断値を評価するために日本整形外科学
理学療法士など検者が測定に同席することを前
に把握するためのアプリケーション﹁ロコモニ
提としている。しかし、前述のとおり、より若
の HealthKit
データを組み合わせて加齢や疾
iOS
患に起因する運動機能を客観的に評価し、蓄積
会が策定した﹁ロコモ度テスト﹂をアプリ上に
年層、特に健康な若者のロコモの認知度向上の
されたデータを臨床研究に活用することもでき
ター﹂を開発した︵図︶
。
ためには、検診といった一定の場所に集まって
る。
完全再現し、
判定・アドバイスを提供する︵図︶
。
ロコモ度を測定するという方法に加え、日常で
て、この﹁ロコモニター﹂が役に立つものと期
自らの運動機能を知ることができるツールとし
験者の平均年齢は 歳であった。この今まで不
半数程度がロコモ度テストを実施した。その被
モニター﹂のダウンロードがあり、そのうち約
2016年2月のリリース以来、1カ月の間
場所と時間を選ばず、スマートフォンという現
000件の﹁ロコ
代社会で広く普及したデジタル端末を利用して、 に全国 都道府県から約5、
待している。
﹁ロコモニター﹂は、ロコモの段階の判定に必要
ともに、若年層そして壮年層を中心に、自らの
可能であった検診以外の場所で収集されたロコ
﹁ロコモニター﹂は、本学の医学生である共同
筆者の吉村自らがプログラムを書き完成させた。 モ度データを解析し、今後の対策に貢献すると
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ロコモニター
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運動機能の認知とその早期対策にも貢献できる
︵順天堂大学大学院医学研究科
ウンロード可能である。
︵
**順天堂大学大学院医学研究科
整形外科・運動器医学講座
教授︶
︵*順天堂大学医学部︶
整形外科・運動器医学講座
准教授、
順天堂大学COIプロジェクト室︶
ことを期待している。
ウェアラブル端末の可能性
および Apple Watch
は、近年注目を集
iPhone
めている﹁身につける︵ウェアラブル︶端末﹂
としての可能性を秘めている。普段から可能な
限り正確な情報を集めることができれば、疾患
を予防したり、進行を遅らせたり、また回復を
早めたりすることにつながる可能性がある。こ
のように、診察室以外の場所で日常の情報を記
録し、それを臨床研究に反映させることで、将
来的には患者の生活の質︵QOL︶の向上に少
しでも貢献できればと考えている。
なお、このアプリケーションのダウンロード
は、日本在住で、日常会話で日本語を使用する
ユーザーに限定されるという制限がある。
iPhone
これに該当する iPhone
ユーザーであれば、 App
から﹁ロコモニター﹂を検索し、無料でダ
Store
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