数理科学特論 B2 §2 ベクトルと空間図形 2.1. 直線の方程式. 点 P を通り, ベクトル u に平行な直線はただ −→ 一つに定まる. p = OP とおくと, この直線はパラメータを用いて 次のように表される: r(t) = p + tu このとき u を [ z ] という. r = (x, y, z), p = (p, q, r), u = (a, b, c) とおくと, t を消去して y x ただし, たとえば a = 0 のときは とする. 例題 2.1. 2 点 P(1, −3, 1), Q(−2, 4, 5) を通る直線を求めよ. 注 . 空間内の直線の方程式は, 連立方程式として 2 つの平面の共通部分として表されていると思える. 2.2. 空間内の平面. 1 点 P を通りベクトル n に垂直な平面は一意 −→ に定まる. この n を法線ベクトルとよぶ. OP = p とし, 平面上の 任意の点の位置ベクトルを r とすると (r − p) · n = 0 z が成り立つ. よって, p = (p, q, r), n = (a, b, c), r = (x, y, z) とおけば平面は次の式で表される: x 例題 2.2. 3 点 P(1, 2, −1), Q(−1, 1, 4), R(1, 3, −2) を通る平面の方程式を求めよ. 1 y 2 例題 2.3. 次の 2 つの平面のなす角 θ を求めよ: Π1 : 2x − y + z = 0, Π2 : x + 2y − z = 1 注 . 一般の n 次元空間でも方程式 (r − p) · n = 0 は p を通り n に垂直な点の集合を表す. n = 2 のと きは直線であり, 一般の n に対しては超平面という. 2.3. ベクトル関数. 成分が関数になっているベクトルをベクトル値関数, あるいは単にベクトル関数とよぶ. 1 変数, 2 変数のとき, それぞれ次のように表すことができる. A(t) = (Ax (t), Ay (t), Az (t)) = Ax (t)i + Ay (t)j + Az (t)k B(u, v) = (Bx (u, v), By (u, v), Bz (u, v)) = Bx (u, v)i + By (u, v)j + Bz (u, v)k 1 変数ベクトル関数 A(t) を位置ベクトル (すなわち始点が O) とみな すとき, A(t) の終点が描く曲線を [ ] とよぶ. 逆に, 空間曲線はパラメータ表示によりベクトル関数のホドグラフと して表すことができる. z x y 2.4. ベクトル関数の微分. 1 変数ベクトル関数 A(t) の導関数を次で定める. dA = lim ∆t→0 dt [ = [ z ] ] これを A0 (t) と表すこともある. x y 3 定義より, A0 (t) はホドグラフに接することが分かるので, [ ] とよばれ ] る. また特に, 運動する点の位置ベクトル r(t) の導関数 r (t) のことを [ とよぶこともある. d2 A ∂B ベクトル関数の高次導関数 2 , . . . や偏導関数 , . . . も同様に定まる. dt ∂u 0 例題 2.4. ベクトル関数 A(t) = (cos t, sin t, t) の導関数は, dA (t) = dt π t = のとき A =[ 3 この点における接線は ], A0 =[ ] だから 積の微分公式 関数 f (t), ベクトル関数 A(t), B(t) について次が成り立つ. d (1) (f A) =[ dt d (2) (A · B) =[ dt d (3) (A × B) =[ dt ] ] ] Proof. (1) のみ示す. f A = (f Ax , f Ay , f Az ) であるから 例題 2.5. ベクトル関数 A(t) に関して, 次を証明せよ. (1) (A · A)0 = 2A · A0 (2) |A(t)| が t によらない定数ならば, A ⊥ A0 . (ただし A 6= o, A0 6= o とする.) Proof. (1) 積の公式より, (A · A)0 =[ (2) |A(t)| = k とすると, |A|2 =[ ]= [ ]= k 2 . ] 両辺を t で微分して 4 2.5. 曲線の長さ. 空間曲線 r(t) = (x(t), y(t), z(t)) を動点の軌跡と考えると, 動いた距離 s(t) の変化 率は速さ (=速度ベクトルの大きさ) だから ] ds [ = dt となる. 従って, 曲線 r(t) の t = a から b までの部分 (a < b) の長さ l(a, b) を次で定義するのが自然 である: [ ] [ ] l(a, b) = = 例題 2.6. 曲線 r(t) = (cos t, sin t, t) の t = 0 から 1 までの間の長さを求めよ. 例題 2.7. 曲線 r(t) = (et , sin t, t) の t = 1 から π までの間の長さを求めよ. 注 . 特別な場合を除いて, 曲線の長さが具体的かつ簡単な式で表されることは期待できない. WolframAlpha ∫ π √( http://www.wolframalpha.com/ ) を使って定積分の計算をすることもできる. たとえば e2t + cos2 t + 1 dt は理論値が初等的に表せないが 1 integrate sqrt(exp(2t) + cos^2 t + 1) dt from t=1 to pi と尋ねたら, 20.62 と出た. もちろん理論値の表示があれば厳密な値を教えてくれる. (sqrt は平 方根 (square root), a^b は ab , pi は π を表す.) またパラメータ表示された曲線は, たとえば parametric plot (exp(t), sin t, t) のように入力すると図示してくれる.
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