CT Colonography の臨床応用

最新技術の応用
の臨床応用
CT Colonography
服
部
昌
志
2012年1月にはCT検査における大腸CT
2015年のがん罹患率予測では、大腸がん
が男女計で最も高くなると予想されている。大
法に使用する大腸CT用経口造影剤が保険適用
なった。さらに、2016年5月よりタギング
はじめに
腸がんは早期発見、早期治療により救命可能な
となり、CTCが大腸検査の一端を担って飛躍
撮影加算が新設され、CTCは保険適用検査と
癌であることは周知であるが、大腸がん検診受
的に発展すると期待されている。
に登場したマルチスライスCT︵MSCT︶の
︵CTC︶は1994年に
CT Colonography
米国で報告され、わが国でも1990年代後半
腸内視鏡では稀ではあるが偶発症の発生リスク
視鏡の検査件数を増やすにも限界がある、④大
査として大腸検査が敬遠されている、③大腸内
がある、と考え、2003年5月より 列MS
普及とともに研究されてきた。2011年8月
当院では、①大腸がん検診受診率、精検受診
率は十分ではない、②つらい前処置、つらい検
診率は未だ %弱であり、さらには精検受診率
1)
も ・9%に留まっているのが現状である。
40
にCTC用自動炭酸ガス送気装置が薬事承認、
16
(839)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
33
53
ラフイン︶などの陽性造影剤の経口投与によっ
て標識する方法であり、欧米各国ではバリウム
CTにてCTCを開始、2012年より 列M
SCTをCTC専用機として導入し、2016
ウム製剤と検査食、下剤のセットが販売されて
いる。前述のように、本邦でも、いよいよ20
CTCの臨床応用の実際
で ㎜ 以上 %、 待される。
ACRIN CTC Trial
によるタギング製剤︵コロンフォート/伏見製
薬所︶が薬価収載され、CTCの精度向上とと
16年5月に大腸CT専用の経口硫酸バリウム
CTC の診断能評価は大腸内視鏡検査︵C
S︶がゴールドスタンダードとして用いられて
もに、前処置の軽減につながるものと大いに期
CTCの精度
施してきた。
製剤によるタギング法が一般的で、専用のバリ
®
年3月末までに2万2、
555例のCTCを実
64
いる。欧米における多施設共同研究では、検出
感度が米国の
10
90
で6㎜ 以
6㎜ 以上 %、欧州の IMPACT Trial
上 ・3%と報告されている。自験例において
2)
3)
®
4)
好な成績を得ている。
92
88
消できると考える。タギング法は、残渣・残液
めたが、タギング法が実施されることにより解
経験がある方は同様にCTCを勧めている。悪
ればCTCを勧めている。過去にCSでつらい
往があればCSを行い、初めての大腸検査であ
便潜血陽性例では過去に多発ポリープ切除の既
を硫酸バリウムやアミドトリゾ酸︵ガストログ
2013年度の成績では、6㎜ 以上の病変陽
性的中率は ・6%であり、疑陽性例を多く認
や粘液便など有症状例はほぼ全例CSを実施、
3、
45
も、 ㎜ 以上 ・5%、6㎜ 以上 ・1%と良
当院の2015年度大腸検査はCS
657例実施している。下血
3例、CTC 2、
84
84
34
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(840)
85
10
① VE(Virtual Endoscopy)
:仮想内視鏡像
ୖ⾜⤖⭠
ᶓ⾜⤖⭠
ୗ⾜⤖⭠
㻿≧⤖⭠
┤⭠
性腫瘍などの狭窄で、CSによる全大腸検査が
困難な例には同日CTCを行っているが、他院
でのCS困難例も同日に紹介していただき、C
TCを行うことで患者の受容性向上につなげて
いる。
師の責任において診断を確定している。
医師が画像を確認したうえで所見を記入し、医
は、放射線技師が病変を疑う部位をチェックし、
確認することで読影時間の短縮が図れる。読影
可能である。読影に慣れてくれば、VGPから
展開像︶
︵図③︶を用いて大腸粘膜面全
pathology
体を一望し、見落としなく存在診断を行うことが
︵仮想注腸像︶
︵図②︶で腸管全体像の把
enema
握、病変の位置確認、さらにVGP︵ virtual gross
︵仮想内視
画像の解析は、 Virtual Endoscopy
鏡像︶
︵図①︶にて腸管内の病変を確認し、 Air
(筆者提供画像)
。症例は横行結腸癌
症例を提示する︵図④︶
で、仮想内視鏡像︵図④中上︶で病変を確認し
︵この際角度を変化させることで正面視も確認
(841)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
35
ᅇ┣㒊
② Air enema:仮想注腸像
㼍㼕㼞㻌㼕㼙㼍㼓㼑
㼟㼛㼘㼕㼐㻌㼕㼙㼍㼓㼑
(筆者提供画像)
③ VGP:virtual gross pathology 展開像
䐟⹸ᆶཱྀ 䐠ᅇ┣ᘚ 䐡⤖⭠䝠䝰 䐢༙᭶䝠䝎
䐣ṍ䜏 䠖 ᒅ᭤䛻䜘䜛䠄⫢ᙙ᭤䠅
䐤ṧỈ 䠖 ⢓⭷㠃䜢そ䛖䜘䛖䛻䝗䞊䝮≧䛻ᥥฟ䛥䜜䜛
䐥㏵⤯ 䠖 䝕䞊䝍㏵⤯
䐦⑓ኚ 䠖 䠎ᆺ⭘⒆
(筆者提供画像)
(842)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
36
④症例 横行結腸癌
Tubular adenocarcinoma moderately diff. INF β、ly0、v1、pMP、pN2、pPM0、pDM0、Stage Ⅱ
できる︵図④左下︶
︶
、さらに仮想注腸像︵図④
左上︶で位置を確認する。VGP︵図④中下︶
は手術標本︵図④右下︶との対比において同様
の像を呈していることがわかる。
CTC後の対応の基本方針としては、異常な
しと診断した場合には検診便潜血は必ず受ける
ように指導を行い、CTCは3∼5年毎の検査
を勧めている。5㎜ 以下の隆起病変については、
1∼2年後のCTC再検査あるいはCS実施と
し、6㎜ 以上の病変では後日、内視鏡治療を行
っている。内視鏡的粘膜下層剥離術︵ESD︶
実施が可能と思われる病変では、CTC実施同
日にCSを行うことで内視鏡治療の可否を判断、
進行癌においても同日CSを実施し、可能な限
り生検を行っている。
555例の経験
CTCの偶発症は、2万2、
で直腸穿孔が疑われた1例、0・0044%で
ある。この1例も、カテーテルによる直腸損傷
がCT上疑われるも症状を呈することなく、保
(843)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
37
(筆者提供画像)
⑤ CTC 当院での位置づけ
㻯㼀㻯
䠄䠇䠅䠄䠉䠅䛾ᩥᏐ䛷䛿䛺䛟
ㄝᚓຊ䛾䛒䜛⏬ീ䜢ᥦ♧
౽₯⾑᳨ᰝ
ᖜᗈ䛟㻴㼕㼓㼔㻌㻾㼕㼟㼗⪅䜢
ᣠ䛔ୖ䛢䜛
存的に軽快している。CSと比較して、安全性
の高い検査であると考えている。
CTCの意義
筆者は、①受容性の高いCTCをCSの前段
階に行うことで大腸検査の受診率を上げる、②
CTCの画像を見せることで受診者がCSの必
要性を納得しやすい、③早期発見により根治可
能な大腸がんだからこそ確実に拾い上げて治療
することが重要、と考えている。CTCを便潜
血検査とCSとの間の検査と位置づけ︵図⑤︶
、
便潜血で拾い上げ、CTCで診断し、CSで治
療することで、大腸がんの早期発見、早期治療
につなげることが可能である。
︵医療法人山下病院
理事長、消化器内科︶
度消化器がん検診全国集計、日消がん検診誌、
99
38
CLINICIAN Ê16 NO. 651
(844)
5)
文献
日本消化器がん検診学会全国集計委員会 平成 年
︵1︶
、 ∼ ︵2016︶
77
25
54
1)
ෆど㙾䜢ຠ⋡䜘䛟㐠⏝
䠄⤌⧊᳨ᰝ䚸἞⒪䠅
ෆど㙾
Johnson CD, et al : Accuracy of CT colonography for
detection of large adenomas and cancers. N Engl J
Med, 359, 1207-1217 (2008)
Regge D, et al : Diagnostic Accuracy of Computed
Tomographic Colonography for the Detection of
Advanced Neoplasia in Individuals at Increased Risk
of Colorectal Cancer. JAMA, 301, 2453-2461 (2009)
の臨床的研究、日消
中澤三郎ら
CT-colonography
がん検診誌、 ︵6︶
、1105∼1113︵20
11︶
服部昌志 大腸CT検査の現場、大腸CT Report
、
3︵2013︶
49
(845)
CLINICIAN Ê16 NO. 651
39
2)
3)
4)
5)