フッ素化合物の炭素-炭素結合生成技術 の開発と工業化 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 教授 三上 幸一 1 実用化(可能な)有機フッ素化合物 ・芳香族 化合物 ・光学活性 化合物 2 (非)ステロイド性抗炎症薬 A B 3 従来技術とその問題点 既に実用化されているものには、ジアステレオ 選択的合成法等があるが、 生成物のエナンチオ選択性が低い 原子効率が極めて低い 等の問題があり、広く利用されるまでには至っ ていない。 4 炭素-炭素結合生成技術の開発 Atom economical ene reactions Ph2 P Pd2+ P Ph2 2SbF6- 5 本技術の医薬品製造プロセスへの展開 6 これまで開発した触媒的不斉反応 R1 OH R1 OH OEt R2 OEt R2 O O Org. Lett. 2010 特開2010-195736 J . Am. Chem. Soc. 2009 SiMe3 OR2 HO R2 OR N H O R Eur. J . Org. Chem. 2011 特開2010-208975 OSi t S Bu O R1 OSi t R 2 R R1 OH OEt Ph2 P R2 Pd2+ SiMe3 R2 P Ph2 2SbF6- Chem. Asia J . 2010 特開2011-162526 RO R1 O R1 CO2Et RN O Eur. J . Org. Chem. 2011 特開2010-195737 O Diels-Alder OR R2 OAc OEt BuS SiMe3 R2 2 R2 R3 AcO O R1 R1 CO2Et Synlett 2011 WO/2010/098288 A1 O CO2Et NR Tetrahedron Lett. 2011 7 触媒的不斉三成分連結反応 Ar H O Pd cat* (5 mol%) + R XF2C CO2Et 2.0 eq. Ar XF2C OH 1.2 eq. CH2Cl2 -40 °C, 24 h * CO2Et Ar' H O O O O Ar2 2SbF6P Pd2+ Ar = tBu P OMe Ar2 tBu Pd cat* 8 新技術の特徴・従来技術との比較 • 本反応は完全な無溶媒で効率的に進行し、基質/触 媒比 50,000条件下、ほぼ定量的な化学収率かつ光 学的に純粋な生成物を得ることができる。世界最高 レベルの効率性を持って進行する不斉触媒技術を発 明した。 • 従来の不斉触媒技術と比較して、1) 基質/触媒比が これまでの常識を覆すほど低減できること、b) 溶媒を 使わないため工業化で最も重要である廃棄物が少な いこと(グリーンケミストリー)、c) 光学収率が極めて 高いことから、工業的に安価でかつ高品質な重要医 薬品中間体を提供することができる。 9 想定される用途 • 生成物は、新薬として期待される抗炎症・ 抗癌剤の重要合成中間体としてプラントス ケールで供給されている。 • 医農薬中間体の実用的合成 • 機能性材料の鍵コンポーネントの実用的 合成 10 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :光学活性含フッ素カルボニル −エン生成物の製造方法 • 出願番号 :特許登録第5090773号 • 出願人 :東京工業大学、セントラル硝子 • 発明者 :三上幸一ほか 11 理想的なトリフルオロメチル源は? Trifluoromethyl Sources for Practical Synthesis 12 従来技術とその問題点 既に実用化されているものには、ケイ素試を用 いた合成法等があるが、 市販試薬が極めて高価である 試薬の原料の生産中止 反応には必ず当量以上の活性化剤が必要 等の問題があり、代替合成法の開発が急務に なっている。 13 トリフルオロメチル亜鉛試薬の合成 NMR Monitoring of Transmetalation Zn(CF3)2(DMPU)2 -42.9 19 F NMR CuI (1 eq.) [Cu(CF3)I] DMPU, rt, 1 h -29.0 ref 1) 16% O N N DMPU I [Cu(CF3)2] -31.9 ref 1) 7% (1 eq.) CO2Et 50 °C + CF3 CO2Et -59.0 1) Hu, M.; Ni, C.; Hu, J. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 15257. 14 銅塩を用いた触媒的CF3化反応 15 ペルフルオロアルキル・アリール亜鉛試薬 X-Ray Structure of Zn(CF3)2(TMEDA) 16 新技術の特徴・従来技術との比較 • 安定かつ安価な新しい亜鉛反応剤を開発したことで、 世界的に供給が危ぶまれる対応するケイ素反応剤 の代替品として、様々なフッ素官能基化反応に適応 できる。 • 我が国の元素戦略の一環として、触媒として安価な 銅塩を用いることができる。 • 医農薬品開発に欠かせない多種多様な含フッ素芳 香族化合物を高効率的に触媒的合成できるように なった。 17 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :ビス(トリフルオロメチル)亜鉛・DM PU錯体、その製造方法並びにそれを用いたトリフ ルオロメチル基含有化合物の製造方法 • 出願番号 :特願2013-180007 • 出願人 :東京工業大学 • 発明者 :三上幸一ほか 18 創薬におけるジフルオロメチル基 Bioisosteric Effects Biologically Active Compounds HO iBu F3 C N CF2H Dithiopyr 除草剤 N N CO2iPr COSMe MeSOC HO F F Tafluprost 緑内障・高眼圧症治療薬 CF2H H N O Sedaxane 殺菌剤 O H2N H2N CF2H COOH Eflornithine アフリカ睡眠病治療薬 Conventional Method (Deoxofluorination): harsh conditions! 19 フルオロホルムの有機合成への応用 Difficult to handle (bp: -82 ˚C) CF3H (HFC-23) Large-volume by-product of Teflon manufacture Greenhouse effect (>104 than that of CO2) Inexpensive and readily available 20 新技術の特徴・従来技術との比較 • テフロン生成プロセスの副産物として得られるフルオ ロホルムは温室効果ガスであるため、通常は分解・ 廃棄する必要がある。しかしながら、本反応を用いる ことで付加価値の高い含フッ素ファインケミカルズへ と容易に変換することができる。 • フルオロホルムを精密有機合成に用いた例は極めて 限られている。本反応は、入手容易かつ安価である 理想的なフッ素源であるフルオロホルムをジフルオロ メチル源に用いた世界初の例である。 21 想定される用途 • 含フッ素医農薬品における中間体の安価 な工業スケール合成 • 含フッ素機能性材料の鍵コンポーネントの 安価な工業スケール合成 • 安価且つ安全な有機合成における汎用性 のあるフッ素官能基化気体試薬としての 用途 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :α−ジフルオロハロメチルカル ボニル化合物の製造法 • 出願番号 :特願2008-331325 • 出願人 :東京工業大学、ダイセル化学 • 発明者 :三上幸一ほか 23 お問い合わせ先 東京工業大学 産学連携推進本部 産学連携コーディネーター 松本 進 TEL 03-5734-7693 FAX 03-5734-7694 e-mail [email protected] 24
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