遠方の気流を測る ドップラーライダーとその関連技術

遠方の気流を測る
ドップラーライダーとその関連技術
国立研究開発法人
宇宙航空研究開発機構 航空技術部門
航空技術実証研究開発ユニット
井之口 浜木
1
ドップラーライダーとは?
晴天
送信光
ドップラーライダー
エアロゾル
受信光
散乱光
信号強度
送信光
受信光
移動
レンジビン
ノイズフロア
観測レンジ
時間(距離)
最大観測レンジ
航空機に搭載して乱気流検知に利用、事故防止を目指す。
2
これまでの開発
高出力化の結果
レーザ光送信出力 (×100μJ *)
15
従来型の
光ファイバ
アンプ
高濃度Er
光ファイバ
アンプ
大口径シング
ルモード光ファ
イバアンプ
高出力ウェーブ
ガイド光アンプ
1350μJ
12
1NMモデル
3NMモデル
5NMモデル
高高度5NMモデル
受信強度増加
*
欠測低減
観測距離増大
9
高高度で利用可能
6
B -65
Do-228
B -65
G -Ⅱ
重量増大
3
4.5μJ
*
58μJ
*
179μJ
*
250μJ *
* 1 pulseあたりの
エネルギー
0
2001
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2011
年度
排熱増大
消費電力増大
3
運用イメージ
4
実用化に向けて
ドップラーライダーを利用した乱気流検知装置
小型軽量・省電力化
①観測ノイズ低減
光学式遠隔気流計測装置
耐久性、耐環境性向上
②警報表示
遠隔気流の警報表示方法
及びそのシステム
利用性・整備性向上
④機能追加・派生技術
航空機搭載用
大気浮遊物質検知装置
実用化
新しい装置なので、
周辺技術が未開発
③検査機器
航空機搭載レーザ
装置用レーザ光反射
方法および装置
⑤技術転用
航空機用水面及び
地面観測装置
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①観測ノイズ低減
ソフトウェアにより観測データのノイズ除去
フィルタリング処理あり
フィルタリング処理なし
風速 (m/s)
レンジ (km)
6
4
2
0
0
20
40 60 80 100
時間 (s)
0
20
40 60 80 100
時間 (s)
・現象の連続性に注目し、信号の検知確率を向上
・複数の計測値に基づき欠測領域を生成
6
従来技術とその問題点
・気流観測用ドップラーライダーは観測距離が短い。
・遠方の観測領域は検知確率が低く欠測が多い。
・観測距離を広げるには、送信出力を増大する必要があり、
航空機への搭載性低下に直結する。
新技術の特徴
・搭載性を低下させずに観測性能向上を達成できる。
・ドップラーライダーのハードウェア改修は不要である。
想定される用途
・航空機搭載乱気流検知装置の観測性能向上
・地上装置でも本技術の一部を利用可能
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実用化に向けた課題
・実験用ソフトウェアは開発済み。
・信頼性の評価方法の確立が必要である。
・JIS Q 9100に基づく品質管理が必要である。
企業への期待
・ソフトウエア開発の品質管理体制が整った企業が適している。
本技術に関する知的財産権
•
•
•
•
発明の名称
登録番号
出願人
発明者
:光学式遠隔気流計測装置
:第5376440号
:宇宙航空研究開発機構
:井之口浜木、大林茂、三坂孝志、
ファビオ ナカバヤシ
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②警報表示
気象予報データ領域
危険程度を色別で表示
30
レンジ [NM]
先行機からの情報
20
3
2
危険性に応じて
拡大表示
10
0
ライダー高分解能計測領域
ライダー低分解能計測領域
パイロットが常時ライダー画面を注視することはワークロード
の増大につながる。このため、ライダーデータを気象予報デー
タ又は気象レーダ画面に重畳させ、実用性を向上させる。
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従来技術とその問題点
・ドップラーライダーは観測距離が短い。
・パイロットに警報しても、対応時間は限られる。
・観測距離を気象レーダ並みに広げることは、現状の技術では
困難。
新技術の特徴
・パイロットは危険性の高い領域を飛行する場合に、ライダー
画面を注視すればよい。
・ドップラーライダーのハードウェア改修は不要である。
想定される用途
・航空機搭載乱気流検知装置による警報表示の実用性向上
10
実用化に向けた課題
・パイロットを含めた評価試験が必要である。
・JIS Q 9100に基づく品質管理が必要である。
企業への期待
・ソフトウエア開発の品質管理体制が整った企業が適している。
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称
• 登録番号
• 出願人
• 発明者
:遠隔気流の警報表示方法
及びそのシステム
:第5618313号
:宇宙航空研究開発機構
:井之口浜木
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③検査機器
A
支持環押さえ
ガイドスコープ
9
12
支持環固定ネジ
8
5
レーザポインタ
7
仰角分度器
1
反射鏡
10
6
方位分度器
支持環
6
支持環
4
仰角固定ネジ
1
3
反射鏡
A部詳細図
水準器
11
昇降クランク
2
三脚
レーザ放射口
試作品
12
従来技術とその問題点
・ドップラーライダーでは、強力な不可視レーザ光を用いる。
・レーザ光の指向方向は、障害物の有無や安全上重要である。
・航空機に搭載した状態でのレーザ放射は、困難であった。
新技術の特徴
・レーザ放射を伴う地上での確認試験の安全性が向上する。
・搭載状態で地上での遠隔気流観測が可能となる。
想定される用途
・航空機搭載乱気流検知装置の地上試験・検査機材
・外部に不可視レーザ光を放射するレーザ機器の試験・検査用
に転用可能
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実用化に向けた課題
・試作済みであり、実用化に特段の課題はないと思われる。
・使いやすさの向上は、まだ改良の余地がある。
企業への期待
・機構の設計および加工技術が優れている企業が適している。
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称
•
•
•
•
公開番号
米国特許
出願人
発明者
:航空機搭載レーザ装置用
レーザ光反射方法および装置
:特開2013-78978
:US 8,956,022 B2
:宇宙航空研究開発機構
:井之口浜木
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④機能追加・派生技術
氷晶や火山灰は航空機の運航にとって脅威
であり、事故や運航制限の原因となっている。
火山灰を吸い込むとジェットエンジンが停止。念のため運航停止。
氷晶の中を飛行すると着氷。飛行性能低下。
目に見えなくても、
レーダに映らなくて
も危険
火山灰は成層圏下部に滞留
旅客機が巡航する高度
高濃度の高度を回避
積乱雲の上部には氷晶があるが
レーダには映らない
飛行中に前方の脅威物質を特定して運航安全に寄与
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Y
送信光の
偏光方向
・受信部を2式とする。
・偏光解消度から物質を推定。
X
送信方向
Z
送信光
(レーザ光)
Y
受信光の
偏光方向
R
Ry
Rx
大気浮遊物質
(氷晶、火山灰
など)
受信光
(散乱光)
X
エアロゾルよりも散乱光強度が大きい
送信方向
Z
遠距離で検知できる
小出力で検知できる
乱気流検知装置への機能追加:1台で多くの脅威への対応可。
単独での実用化:スペクトル解析不要。小型簡易装置が可能。
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従来技術とその問題点
・航空機の運航に対する脅威は乱気流だけではない。
・氷晶中を飛行して着氷により操縦不能となることがある。
・火山灰によるエンジン全発停止が問題となっている。
・運航制限が広範囲となり、利便性や経済性への影響が大きい。
新技術の特徴
・飛行中に遠方の氷晶や火山灰がリアルタイムで検知できる。
・上下を観測し、安全高度の選択に利用できる。
・火山灰の流入量が推定できれば、エンジンの点検間隔を決定
するための基本情報として使える。
想定される用途
・航空機搭載乱気流検知装置の有用性向上
・可搬型の観測機材に転用可能
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実用化に向けた課題
・地上装置試作による基礎研究が必要である。
・飛行試験による検知性能の評価が必要(JAXA担当可能)。
企業への期待
・航空機搭載用は実用化まで年月がかかるため、地道な基礎
研究を継続できる企業との共同研究を希望。
本技術に関する知的財産権
•
•
•
•
•
発明の名称
公開番号
米国特許
出願人
発明者
:航空機搭載用大気浮遊物質検知装置
:特開2012-145531
:US 8,724,099 B2
:宇宙航空研究開発機構/東北工業大学
:淺原隆、井之口浜木、浅井和弘
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⑤技術転用
航空機1 送信機3
受信機4
航空機の慣性速度 V
α
レーザ光
θ
鉛直線
波の伝搬速度 W
乱反射
水面
・大気中のエアロゾルに対して散乱が強いので低出力で可
・地上装置試作による基礎研究が必要
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従来技術とその問題点
・水上航空機では、着水できる波高が定められているが、上空
から波の状態を把握することは困難。現状では目視で確認。
新技術の特徴
・上空から波高や波の向きを観測することができる。
・乱気流検知装置ではエアロゾル粒子からの散乱光を受信する
ため、高出力レーザが必要だが、水面からの散乱であれば、小
規模な装置で実用化が可能。
想定される用途
・水上航空機の安全性向上
・上空からの津波の観測(有人機、無人機)
・上空からの海流の観測(有人機、無人機)
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実用化に向けた課題
・地上装置試作による基礎研究が必要である。
・飛行試験による観測性能の評価が必要(JAXA担当可能)。
企業への期待
・試作・改良を繰り返すことができる企業との共同研究を希望。
本技術に関する知的財産権
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発明の名称
登録番号
出願人
発明者
:航空機用水面及び地面観測装置
:第5093451号
:宇宙航空研究開発機構
:井之口浜木
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産学連携の経歴
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•
•
•
2004年-2008年
2006年2010年-2011年
2010年-
三菱電機と共同研究実施
東北大学と共同研究実施
東京大学と共同研究実施
米国ボーイング社と共同研究実施
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お問い合わせ先
宇宙航空研究開発機構
新事業促進部 新事業課
e-mail [email protected]
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